薄雲の向こうに登る目映い太陽

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.7.12)
(アルツハイマー)

薄雲の向こうに登る目映い太陽。200712.jpg

干してあったジャブジャブ池に雨水が溜まり、何を啄んでいるのかカルガモが二羽。200712a.jpg

手賀大橋を潜って漕いでくるゴムボートの人。200712b.jpg


『私はどこにいるの?』 (2020.7.12)
昨日午後の妻との電話、初めて聞く女性の声が応答、「ご主人から電話です。大丈夫ですか」と起こされている妻、「えっ、電話? ありがとう。終わったらどこへお返ししたらいいですか? ・・・あっちですか、分かりました」と妻の声。「もしもし」「は~い」「うとうとしていたら電話機を持ってきてくださった」「終わったら電話機をどこに返すか分かった?」「あっちって指さした」「どこを指さした?」「分からない。部屋の外にいれば分かるが、部屋の中にいたんじゃ分からないよ。私はどこにいるの?」「自分の部屋でしょ」「鏡台があって、窓の外に背の高い垣根があって、向こうに駐車場があるから私の部屋だ。どうしてあなたは私の部屋だと分かったの?」「何度も面会に行ったから知っていたよ」「知っていたならごちゃごちゃ聞かないでよ。あなたと話していたら、でたらめ言ったってバカヤローって思って笑ってるでしょ。それでいいの。あなたとなら笑って話していられるから」「もう目が覚めた?」「覚めたけど、この建物の場所は外を見ないと分からない。窓の外には駐車場があってその向こうに行くと手賀沼の方へ下る道?」「そう」「だから、ここは私の部屋。富士山の絵がある。丸い蓋が二つあるのもある」「CDラジオでしょ」「そう」「電源ランプが点いてるから矢印を押したら鳴るよ・・・~春を愛する人は・・・~」「歌は後にして、まだ電話中だよ」「ドアの外を見たら廊下、場所が分かったよ。今度は一人で手賀沼へ行く」「伝染病が流行ってるから外出は出来ないよ」「そうか。ニュースで言ってたけど関心が無いからどんな病気か分からない。いつ会いに来てくれる?」「19日に面会に行く」「どこで?」「西側の大きな部屋の窓の内側にあんたがいて、私は外にいて面会できる」「いつ」「19日」「何かに書いておかなくちゃ。頭の中に書くと消えちゃうから」「時間になった。歌を鳴らしてから電話機を返してきて」「矢印を押すだけだから先に返してくる。・・・今村です。終わりました」200712c.jpg
(空想の世界で妻が家に帰ってくる遊歩道、路傍にひっそりとユウゲショウの花。)

パッと明るくなって雲間から射し込んだ陽光

(アルツハイマー)

曇天の沼を撮って広場を一回りすれば、パッと明るくなって雲間から射し込んだ陽光。200711.jpg

広場に雲間から陽が射し、林床に木漏れ日が落ち始めれば集まってきたムクドリ。200711a.jpg

哀れやな、花のベッドに横たわる亡骸。200711b.jpg


『帰るのはのはいつ?』 (2020.7.11)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「寝ぼけてた」「ベッドに寝転がっていると目が覚めないから起きてベッドに腰掛けて」「ベッドに腰掛けたから直ぐ目が覚めるよ。帰るのはのはいつ?」「帰る予定はない」「何処かに家を買ってそこへ行くのでしょ」「家は買わないよ」「私はどこにいればいいの?」「グループホーム寿にいればいいの」「どうして?」「去年までは二人で住んでいたが、私も年をとって体調が悪くなったあんたの介護をちゃんとできなくなった」「そうだよね。私より二つも年上だもの」「二人でグループホーム寿を見学して、いいところだったから申し込み、半年待って入居できた」「窓から見える駐車場の先は手賀沼の方に下る道だよね」「そう」「市役所の先を東に行って坂を登ったところが家。直ぐ近くだよね」「そう、今は申し込んだところにいるよ」「そうか。ここはいいところだよ。ずっとここに住んでいていいの?」「いいよ」「ちょっと出掛ければ手賀沼、その先に家がある」「その家に私が一人で住んでいる」「よかった~、あなたそこにいるの。私たちの第二の故郷だものね。私がずっとここに住んでいて支払いはどうするの?」「二人の年金と老後のための蓄えで支払うから心配しないで」「あんたは家に一人でいるの」「そう」「それじゃ私があなたの面倒を見てあげられない」「心配してくれてありがとうね。家にいた時はあんたの出来なくなったことを私がやっていたが、私もできなくなって、私に代わってグループホーム寿で面倒見て貰っているの」「そうか、それで安心した」「伝染病が流行っていて面会も外出も出来ないが、伝染病が治まったら私が面会に行くし、たまには家に来て、子どもたちも呼んで食事したりお話をして、夕方にはそこへ戻るお楽しみもあるよ」「家の中や家の近くは全部憶えている。ここはあなたと近いし、一緒に生きているから何も文句はないよ」「時間だ。CDを鳴らそう」「・・・鳴ったよ」「電話機を返してきて」「・・・電話終わりました」200711c.jpg
(大きな荷物を咥え、右に行ったり左に来たり。もしかして帰る家が分からなくて徘徊中?)

広大なハス群生が消えてしまった手賀沼の異変

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.7.10)
(アルツハイマー)

対岸のハス群生地の桟橋前、広大なハス群生が消えてしまった手賀沼の異変。200710.jpg

広場からムクドリの姿が消え、埋立地にやってきたダイサギとアオサギ。水面を叩いたダイサギの嘴、咥えているのは小魚か。200710a.jpg

今朝も市民農園跡に来ていたコブハクチョウ親子。やっぱり一羽足りないコブハクチョウの子。200710b.jpg


『旅行に行っていた?』 (2020.7.10)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「寝てた。眠っていたのに起こされて何だかへんちくりんだ。今何時?」「1時11分」「お昼食べて寝ちゃったんだ。ごめんごめん、昨日は疲れていた」「眠ってた時に電話で起こされるといつも疲れたって言うね」「今日は本当に眠い。私はどこかへ行っていたのかな。旅行に行っていた?」「どこへ?」「分からない。行ったかと思った。何で眠いんだろう。今何時?」「1時14分」「お昼食べた記憶が無い」「食べたはずだけどな」「食べたんでしょうよ。困っちゃたな、私はどこへ行っていた? 旅行に行っていなかった?」「外出禁止だからどこにも行っていないよ」「そうか、これで目が覚めるかな。寝転んでいたらダメ、いい気持ちで寝ちゃいそう。あなたは何してた?」「午前中は洗濯して、依田内科に行って採血と胸部レントゲンと心電図のあと依田先生の診察。マツキヨで薬を受け取って、コンビニで買い物。急いでお昼を食べてあんたに電話した」「わ~、忙しいね」「あんたに電話したら寝ぼけてた」「寝ぼけてたね。私は旅行に行っていた?」「行っていない。眠ってる時に起こされると疲れたって言うの、口癖かな」「し~らない。疲れてないのに疲れたって言うかねぇ。また寝たら直ぐ眠れるよ。いやになっちゃう」「寝ぼけの公子さん」「は~い。アハハ。ずっと目を瞑ってたけど今開いた。目がしょぼしょぼしている」「やっと目が覚めた?」「窓の外に駐車場が見えた。ラジオの横のケースに入った花がきれい。その横に富士山の絵。私たちの故郷だものね」「目が覚めたらもう時間だ」「心配かけてごめんね。だけど眠いのも辛いよ。いつ会える?」「19日に面会に行くよ」「どこで?」「この前と同じ大きい部屋の窓のところ」「忘れた。目が覚めた時に言って」「歌を鳴らして」「・・・・・」どうやら電話を保留してしまったらしい。事務所に電話して見に行って貰った。「部屋にいましたから電話を切っておきました」と職員さん。尻切れトンボになった今日の電話。200710c.jpg
(濡れたキンシバイの花の中、寝ぼけたようにクモ一匹。)

葉が茂りネコらしく見えるネコの木

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.7.9)
(アルツハイマー)

音もなく沼に降る雨、葉が茂りネコらしく見えるネコの木。200709.jpg

雨に濡れた草地を歩けばカワラヒワ二羽、足を止め一枚撮ったら飛び去った。200709a.jpg

雨の広場に散らばってムクドリたちが餌探し。200709b.jpg

『私はどこにいるの?』 (2020.7.9)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「今、あなたの書いたものを読んで涙を流していた。なぜここにいるのかわからなくなった。歌を鳴らしているが上の空、会いたいよ。早く一緒に暮らしたい。自分の思い通りにならないからやっきりしているのは私のわがまま。その内自然に治るから気にしないで。目から涙が出ているが口では笑ってる。~誰かさんが誰かさんが・・・小さい秋みつけた~・・・声が出て歌えるよ。歌を歌うと時間を忘れて自分で自分を慰められるよ」「歌を歌うのはいいね。頭の体操にもなる」「私はどこにいるの?」「グループホーム寿という施設」「どうして一緒に住めないの?」「、二人とも年をとって出来ないことが増えた。あんたの体調が悪くなって、私一人では介護しきれなくなって二人で泣いたし、あんたは施設に入りたいと言った。ケアマネージャのMさんが探してくれて、グループホーム寿を二人で見学して申し込んだ。今年1月、膵炎再発で入院し、退院したら直ぐここに入居した」「ここに来たことは憶えていないが、鏡台はAとLが運んでくれたって知っている。一緒に住めなくなっても、一緒に生きたいのは嘘じゃない」「家から近いから毎日面会に来ていたが、伝染病が流行って面会できなくなり、毎日電話してるよ」「そんなの直ぐ忘れる。別れて住むのが何の役に立つの?」「私は楽になれるし、あんたはグループホーム寿に入ってから膵炎の再発もなくなり、目眩や吐き気の苦しみもなくなった。訪問診療の先生の薬の処方や、スタッフの人たちの介護で、私には出来ない面倒を見て貰ったからだろう。去年あんなに苦しんだこともなくなって、別れて住む事で得たものは多かったでしょ。伝染病流行が収まったら毎日面会に行くし、たまには子どもたちも来て一緒に家でご飯食べたり話をして、夕方にはそこへ戻ることだって出来る。19日にはまた面会に行くよ」「会いに来てね」「もう時間になった。電話機返してきて」「分かった。電話ありがとうね。・・・今村です。電話終わりました」200709c.jpg

(ヒメブットレアの花の下、今朝はもういなかったアマガエル。)

今朝もまた曇天の下で強風に波立つ沼

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.7.8)
(アルツハイマー)

今朝もまた曇天の下で強風に波立つ沼。200708.jpg

母さん先頭、子どもたちの後ろから父さん。一羽足りないコブハクチョウの子ども。200708a.jpg

ヒメブットレアの花房の下、揺れる葉にしがみつくようにアマガエル。200708b.jpg


『わあ大きい音』 (2020.7.8)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「懐かしい声で嬉しい。本当は直ぐ近くなのに。私、泣けてきた。何をするのにも最初から考えないと間違えると思うから疲れるの。一つ一つ順を追って念を押さないと安心できない。あちこちから声が入ってくると困る。あれもこれもと言われると混乱する。あなたから声が掛かると安心して、もっと近くに行って聞きたいが電話じゃ出来ない。何が何だかわからないが泣けてくる」「今日は泣き虫?」「アハハ。違うよ。早くここに慣れて色々なことを判断できるようになって一ヵ所に落ち着きたい」「あんたはグループホーム寿にいる。ここはあんたと二人で見に来て申し込んだ施設。介護の専門の人が面倒見てくれるし、食事や洗濯などの生活面も、訪問診療の先生、歯医者さん、床屋さんも来てくれる。ここに来てから膵炎、目眩や吐き気で辛かったことも治まって、日曜日に面会した時はびっくりするほど元気、落ち着いた穏やかな表情で嬉しかった」「嬉しい。人間として大事にしてくれているんだね」「そうそう、あんたに城東中学第6回卒生の同窓会延期のお知らせがMさんから来ていた」「Mさんは小学校から中学、高校まで一緒だった。小貫の人だよ。今は子どもの頃の景色に戻っている」「コロナの伝染病で今年予定していた同窓会は延期だって」「そうか、Mさんが面倒見てくれているんだ」「ぼつぼつ歌を鳴らそうよ」「・・・わあ大きい音。びっくりした」と叫んで電源スイッチを切ってしまった。「-」ボタンを押して音を小さくさせようとするが電源を入れずに押したり、電源を入れれば音量を変える前に慌てて電源を切ってしまう。3~4回繰り返してから、「職員さんの所に行って頼んで」と言えば「いやだ~」「私が頼むから電話機渡して」「・・・夫が何か頼みたいそうです」と職員さんに代わり音量を調節をして貰う。「調節しました」と職員さん、妻に代わり、「治ったよ」「明日また電話するね」「電話ありがとう」と言った途端に通話が切れた。200708c.jpg
(延びてきた庭の草をどうしようかと眺めてたら、妻が植えたのかフェンス際にヤブカンゾウの花。)

吹き付ける強風、波立つ沼上空を低く飛ぶ雲

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.7.7)
(アルツハイマー)

吹き付ける強風、波立つ沼上空を低く飛ぶ雲。200707.jpg

波立つ沼を低く飛んできたカワウ、埋立地の杭に一番乗り。200707a.jpg

広場には一羽も姿が見えず、風を遮る高台の雑木林の陰にムクドリたち。200707b.jpg


『おはようございます』 (2020.7.7)
昨日午後職員さんに電話機を渡された妻、「もしもし」「は~い」「おはようございます。・・・違うの?・・・こんにちはだって言ってるよ。今何時?」「1時11分」「起きたばかり、朝だと思った。私惚けてる。惚けてるとあなたが困るよね」「目が覚めていないんだ。まあ、いいよ」「いいよじゃない。ちゃんと憶えているかどうか私が言うのを聞いてて。市役所の先を左に行って、坂のあるところで左に登る。広い畑があって最初が私たちの家でしょ」「そうだね」「目を瞑ると景色が分かる。憶えているよ」「憶えていたね。昨日面会したのは憶えてる?」「知らない。景色が出てこないと思い出せない」「あんたは広い部屋の西側の窓の前、私は外の坂道」「何話した?」「あなたの奥さん元気かって聞くから、あんたじゃないのと答えたら、長く会わないから別の人と暮らしてるかと思ったって言って、横でSさんが笑ってた」「嫌だよう。だから一緒に住まないとダメ。一緒に住んでもダメか。昨日面会したって言われても、そのときの情景を思い出せない。それが中学の前だとか何処かの角だって言われたら思い出すけど」「2月28日以来、久しぶりで会ったが、元気そうで、落ち着いた穏やかな感じだったよ。痩せてもいなかった」「ここのマンマをちゃんと食べてるからだ。おいしいし、ここの生活は豊かでいいところだよ。惚けて分からなくなって、何処かの人が来てあんたの夫だよと言ったらそうかなって思うようになったら嫌だよ。年はとりたくないがそれは無理だ。私がここにいてあなたが近くにいるからいいが、あなたが惚けて遠くの施設に入ったら会えなくなる。話も出来ないし会うことも出来ない。ここなら土地勘があるが遠くだと分からなくなる。それじゃあ人生に希望が持てないよ。あなた惚けないでね」「惚けないようにするよ。時間になった。歌を鳴らしてから、電話機返してきて」「・・・スイッチオン・・・鳴ったから行ってくるよ。分かった。・・・今村です。電話終わりました」200707c.jpg
(ケヤキの木の下に朽ちたベンチ。よく手入れされた水生植物園だった頃、まだ元気だった写真仲間が集まって写真談義をした頃のノスタルジア。散歩帰りの妻たちが手を振りながら藤棚を潜って行った日。)

傘をちょっと上げ一枚撮ればレンズに雨滴

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.7.6)
(アルツハイマー)

傘をちょっと上げ一枚撮ればレンズに雨滴。沼から吹き付ける雨と風。200706.jpg

激しくなった雨の中で草を啄んでいたコブハクチョウ親子。一羽足りないと思えばずっと離れて父さんの傍に。200706a.jpg

雨と風を避け、斜面林の隙間から眺めたケヤキの木。200706b.jpg


『 あなたの奥さんは元気?』 (2020.7.6)
建物の南側窓の前に行くと、Sさんが身振り手振で西側の窓へ行けと指示。声がよく聞こえない。西側通路に行くとガラスの向こうに妻と付き添っていたSさんの姿。やはりガラス窓越しでは声が聞こえない。窓を少し開け金網越しにやっと会話できる。カッパを着て車から降りると満面笑みで手を振った妻。「しばらくぶりだね。嬉しいよ。どこから来た?」「高野山の自宅」「私は元気だから心配ないよ。あなたは?」「元気だよ」「子どもたちは?」「二人とも元気」「どこに住んでるの?」「八王子と横浜」「私のお母さんは?」「ずっと前に亡くなったよ」「あなたのお母さんは?」「私の母も亡くなっている」「あなたの奥さんは元気?」「私の奥さんはあんたじゃない」「そうだったか。誰かに会った時に私の主人ですって言えるかな。ずっと会わないからもう別な人と一緒にいるかなって思うじゃん」と言えばSさんも笑い出す。「来週の予約はもういっぱいです」とSさん、19日と26日の2時30分を予約して貰う。横で聞いていた妻、「私の頭はいっぱい詰まっていて動かない。もうじき80だから仕方ないか」「写真撮るからちょっとだけ網戸を開けて。AとLに送るから。・・・はい撮れた」と言うと網戸が閉まる。「雨だからこの辺で終わりましょう」とSさん。短い面会は終わり、まだ話したそうな妻。後で電話することにして、2時30分に妻に電話、「もしもし」「は~い」「どこにいる?」「高野山の自宅」「356の先、利根川の方の施設じゃないの?」「それはあんたが以前通っていたロイヤルと和楽園。私はあんたと一緒に建てた家にいる」「家に帰りたい。帰るとあなたの負担になるからちょっとだけでいい」「伝染病が治まったらね」「昼間行って、子どもたちが夕方自分の家に帰り、私も自分のベッドに戻るから」「今日は面会できてよかったね」「電話で話すのと会ったのでは一緒の人だとは思えない。会えてよかった」「歌を鳴らして、電話機を返してきて」「・・・鳴ったから返してくる。・・・終わりました」200706c.jpg
(網戸をちょっと開けても邪魔な窓枠の格子。「後ろへ下がって、ちょっと左に行って」と隙間を見付けて撮った127日ぶりの妻。元気になって、穏やかな表情に安堵。網戸を閉めた途端にリラックスしてか笑い出す)

手賀大橋の先がちょっと明るくなった曇天の朝

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.7.5)
(アルツハイマー)200705.jpg

囀りを頼りにきょろきょろ見回し、木の天辺に見付けたホオジロ。200705a.jpg

ちょんちょんと遊歩道を歩くスズメ、電光石火啄んだ虫。嘴からはみ出ていた獲物。200705b.jpg


『眠っちゃった』 (2020.7.5)
昨日午後の妻との電話、眠っていたらしく「アキラさんからお電話ですよ」とSさんの声。「ありゃ~・・・こんにちは。今日は午前中、う~んと草臥れた」「毎日草臥れたって言ってるね」「・・・・・」「もしもし、もしもし、・・・おーい。どうしたの?」「眠っちゃった。胸の上から声が聞こえたがよく聞こえない。眠って胸の上に電話機を置いたのね。目が覚めたよ」「昼ご飯の後に眠ってたでしょう」「草臥れているから眠ったのかも。寝ると寒い感じ。あ~ぁ、あなたがここにいてくれるといいのにねぇ」「明日は面会に行くよ」「いつ?」「1時30分」「どこで?」「あんたは体操したりみんなで歌を歌う大きな部屋の南側の窓、私は駐車場にいる。ガラス越しに面会できるよ」「ガラスがあったら聞こえないじゃない? 私が外へ出ようか?」「伝染病が流行っているから外へは出られないの」「あなたは感染してるの?」「そうじゃない、外から来る人は誰が感染してるかわからないから」「明日は何曜日?」「日曜日」「明日はそれまで起きていなくちゃ。今日は起きた時、一瞬ここは何処か分からなかった。もういやだいやだ。何でからだが怠いのかな。寝てたからかな。授業に行ってもぼーっとしてるの」「何の授業?」「体操をしたり歌を歌う授業」「まだベッドに寝てるんでしょ。起きてベッドに腰掛けて」「電話が終わったらまた寝るから布団の上に座っている」「電話が終わったら事務所に電話機を返しに行くでしょ。さあ起きて」「電話機持って天井見てたら眠っちゃった。叱られると怖いから起きたよ。ベッドに腰掛けた」「目が覚めた?」「目が覚めたら怠いのが治った。あなたは何のご用?」「あんたの声を聞くだけ。目を覚まさせたらもう時間じゃないの。CDを鳴らして」「どこで?」「ラジオはテーブルの上だよ」「よっこらしょ。・・・壁にCDの聞き方の絵が貼ってあるから大丈夫。・・・出来た。鳴ったよ」「電話機を返してきてから歌ってね」「行ってくる。・・・ごめん下さい。電話終わりました」200705c.jpg
(釣堀を越えて飛んで行った相棒を待つのか、水を落としたジャブジャブ池の縁にカルガモが一羽。)

音もなく降る雨になぜか淋しげに見える沼

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.7.4)
(アルツハイマー)

小降りになって桃山公園のゼロポイントへ。音もなく降る雨になぜか淋しげに見える沼。200704.jpg

高台から見下ろせば、クローバーを啄み水溜まりに入っていたコブハクチョウ親子。200704a.jpg

雨だってへっちゃら、誰もいない広場にムクドリの群。200704b.jpg


『フクロウは頭の奥の方にあった』 (2020.7.4)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「ダーリンさんからって電話機を持って来てくれた。笑っちゃった。眠いから布団を直して寝ようとしたが目が覚めた。あなたは頭が痛いとか咳が出るとかはないの?」「何ともないよ」「東の空が曇ってきて天気が悪くなりそう。部屋に帰ったら寒いから廊下を通った人に寒いと言ったら係の人が来て直ぐ治してくれた。寒さは和らいだよ」「よかったね」「部屋が広いから淋しくて寒い。あなたは元気?」「元気だよ」「一人でいて淋しくない?」「ちょっと淋しい」「あはは」「今日はご機嫌がいいのかよく笑うね」「あなたと話せてプンプンすることはないよ」「昔は家の西が林で、入り口に大きなケヤキがあったのを憶えてる?」「あったね。午後になる直ぐ日が陰っちゃう」「夜になると椎茸を作っていた林でフクロウが鳴いたのを憶えてる?」「毎晩だったから憶えてる。最初は神社の山で鳴いたけど木を切って住宅地になったから近くの椎茸山で鳴くようになった」「よく思い出したね。写真を撮ろうとしたが撮れなかった。ケヤキを切って、林が住宅地になって、次が谷を埋めてまた住宅地が出来た」「家に日が当たるようになったが、庭に鳥が来なくなった。昔の近所は思い出せるが、今の景色はあやふやだ」「フクロウの写真を譲って頂けることになった。プリントしたら持って行くね」「嬉しい。フクロウは頭の奥の方にあった。神社の周りに林があったとき、神社に巣があったのは知っていた。こっちに引っ越してきて家を建てたのはマイナスじゃなかった。分かった事がいっぱいあったし、色んなことを経験したよ。でも、色んなことがどんどん消えちゃう」「昔のことを思い出せてよかったね。時間になったから歌を鳴らそう」「・・・ランプが点いてボタンを押したが鳴らない。あっ、鳴りだした。・・・~春を愛する人は・・・~」「おーい、電話機返してきてから歌って」「何か言った?」「先に電話機を返してきて」「分かった。・・・今村です。終わりました」200704c.jpg
(雨に濡れ水玉がきらめくキンシバイの花。)

薄雲の向こうに日の出

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.7.3)
(アルツハイマー)

薄雲の向こうに日の出。天気予報は曇りだったが、上空に広がり始めた青空。200703.jpg

遊歩道で餌を啄んでいたスズメ、散歩の人が近づけば急いで逃げた頭上の木。200703a.jpg

餌を与えに来たかと思えばただ近寄っただけ、餌も与えず飛び去ってコスモス畑の上を旋回するツバメ。200703b.jpg


『徘徊の疑似体験』 (2020.7.3)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「電話機を届けてくれた人がジェスチャーで終わったら連絡してって言っていた。寝ていて怖い夢を見た。手賀沼から坂を登ると家だよね。家の前を神社と反対の方へ行くと広い道」「356だね」「右へ行くと少し賑やかなところ。左に曲がって天王台の駅前を右にい行くと病院。線路の方に車を止めて表から入った。途中で途切れたから場所が分からなくなった。その内どこにも行けなくなって帰って来た」「どこへ帰った?」「ベッドに戻っていた。夜寝ていた時と朝起きた時では場所が違うからどこにいるか判断できなくなる。家の前から356に出て東へ曲がり、中学のところを手賀沼の方へ左折、当てずっぽうに歩くと神社に出た。あなたが居る家は近いから行こうとすると途中で行けなくなった」「全部夢?」「夢だよ。あなたが恋しくて行こうとしても、どこへ行けばいいか誰にも聞けない。困って、恐ろしかった。朝になったらベッドに帰っていた。世の中は伝染病で大騒ぎしているね」「今日は東京で感染者が100人を越えたとテレビで言っている」「私みたいに夢の中で歩き回るのは感染しないよね」「夢の中で歩き回っても、どこにも行っていなから大丈夫だよ。自宅にいる人が、夢か現実か分からなくなって外に出て迷子になるのはよくあること。グループホーム寿にいたら職員さんが見ていてくれるから、勝手に外に出て迷子になることはないよ」「夢の中で迷子になると恐ろしいが、目が覚めるとベッドの上にいて、ああよかったと思うよ」「あんたは夢の中で徘徊の疑似体験をしたんだ。徘徊して迷子になった人の気持ちも同じだろうね」「私はグループホーム寿にいる自覚がなくて外を歩く夢が怖いけど、ここにいたら大丈夫だね。夢の中じゃそれを忘れているから怖いよ」「夢の話を聞いていたら時間になった」「電話機を返してくる」「その前に歌を鳴らして」「・・・鳴ったよ」「じゃあ電話機返してきて」「・・・今村です。電話終わりました」200703c.jpg
(遊歩道を越えて飛んできて、何度も背伸びはするが鳴かないキジ。待って待って、8分経ってやっと鳴いて羽ばたく)

雨は上がり、もうじき晴れてきそうな空模様

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.7.2)
(アルツハイマー)

雨は上がり、もうじき晴れてきそうな空模様。200702.jpg

広場にうずくまって待っているツバメの子たち、戻ってきて子どもに餌を与える親ツバメ。200702a.jpg

広場を低く旋回して餌を探す親ツバメ、戻って来て代わる代わる子どもに餌を与える。200702b.jpg


『何の手紙?』 (2020.7.2)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「何の用事? ご飯のあとダウンしていたら手紙が来たって言われた。何の手紙?」「寝ぼけてるね」「あなたが手紙をよこしたの?」「私が電話したから、事務所の人があんたに電話機を持って来てくれたの」「電話?」「いま電話で話してるじゃないの」「声は聞こえるよ。電話機は?」「手に持って耳に当ててるでしょ」「これか。手紙は?」「手紙は出していない」「どこにいるの?」「高野山の自宅」「あなたは帰ってこないじゃないの」「どこへ?」「ここ」「伝染病が流行っているから面会に行けないの」「ああ、つまんないなあ」「今度の日曜日に会いに行くよ。あんたは体操をする広い部屋の南側の窓の内側、私は駐車場にいて会えるの」「玄関を回って駐車場へ行けばいいの?」「外出禁止だから外へは出られない。あんたは窓ガラスの内側にいて、私は外の駐車場。ガラス越しの面会だよ」「つまんない面会だ。ずっと待っているから抱きつきたい気分なのに。いつ?」「7月5日の午後1時30分を予約した」「私はどうしたらいいの?」「職員さんが連れて来てくれるから大丈夫」「会えると分かっただけでいいか。その内外出禁止が解除になったら家に行ける?」「解除になったら娘たちを呼んで、家で食事をしたり話をして、近くに散歩に行こう。夕方になったらあんたはグループホーム寿に戻り、子どもたちはそれぞれの家に帰る」「どこに住んでる?」「Aは八王子、Lは横浜」「あんたは?」「一人で家に残る」「いつになったら帰れる?」「分からない」「簡単じゃないね」「やっと目が覚めてきたら時間になっちゃたね。歌を鳴らそうか」「スイッチオン、CD押した、はいスタート。・・・鳴ったよ」「出来たね」「あなたが買ってくれたラジオだから毎日使うよ。壁に使い方の絵が貼ってある。歌は鳴らしておく。また電話してね。寝ちゃってデタラメのメだったね」「電話機返してきて」「・・・今村です。終わりました」200702c.jpg
(マユミの木の幹に何度もジャンプするスズメ、幹に虫でも見付けたのだろうか。)

背伸びしなくても撮れるようになった沼

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.7.1)
(アルツハイマー)

高台に差し掛かれば、きれいに刈った草地、笹と葛の蔓に覆われていたドウダンツツジもきれいに剪定。背伸びしなくても撮れるようになった沼。200701.jpg

行く手に飛んできたスズメ、私が邪魔なのか首を傾げてこっちを見る。仕方が無いから遠回り。200701a.jpg

餌を啄むスズメの周りに飛来したムクドリ数羽。場所を譲りサッサと遠ざかるスズメ。200701b.jpg


『声が近いね』 (2020.7.1)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「声が近いね。近くにいるの?」「高野山の自宅にいるから近いよ」「私には遠い。午前中疲れたからお昼の後は眠った」「目が覚めたばかりで記憶が飛んでいないだろうね」「自分じゃわからない。近くにいるでしょ、坂の上の家?」「そうだ」「悔しいね。ここは自分の家じゃない。あなたは自分の家だけど私はよその家。自分の家みたいなものか。行き方を絵に描けって言われたら描けるよ。家の前を北へ行くと広い道」「その道は356」「近いね。今何してる?」「あんたに電話してる」「それは分かってる。私はベッドに寝てあなたと電話してる。その前には?」「お昼の仕度をして、食べたら洗い上げをして、家の中の雑用をした」「ここまで直線で来ると何メートル?」「よその家の屋根の上を飛んで直線で来れば800m」「アハハ。歩いたら?」「356を歩いてきたら1250m」「何分?」「20分とちょっとかな」「私は下を通って家に行く道を思い出す」「手賀沼の遊歩道を散歩したことが多かったからね」「昨日はお祭りがあった。外に出られないから部屋の中で、・・・お遊び会かな。何をしたか分からない。色々な行事が終わるとやれやれだ。行事は好きじゃない。私だって80だもの」「あと三ヶ月でね」「そのくらいいいじゃん。私は退職したらどこに行くの? 家に帰るの?」「そこはグループホーム寿、施設だから退職はないの。ずっといていいの」「えっ、ここはどこ?」「市役所の前から356に向かって坂を上り、コナカの手前を左に入ったところ」「だんだん道が分かってきた。私はここにいて、もう一緒には住めないの?」「近くにいるから、伝染病が治まったらしょっちゅう会いに行くよ。家にいると伝染病が心配だが、そこにいたら安心だよ」「隔離されてるから? そのことはよかったよ」「時間になった」「とりとめも無い話しでごめんね。元気に頑張るから大丈夫だよ。電気入れるから・・・鳴ったよ」「電話機返してきて」「・・・事務所に着いた。・・・終わりました」200701c.jpg
(妻が好きな沼を一望できる高台。沼から吹き上げる雨交じりの強風、波立ち荒々しい水面。)

クローバーを食べに来ていたコブハクチョウ親子

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.6.30)
(アルツハイマー)

クローバーを食べに来ていたコブハクチョウ親子。200630.jpg

待っても鳴かなかったキジの雄、近くに雌がいたからか。200630a.jpg

三脚を立てていた友、振り返れば思いがけない雲間の日の出。200630b.jpg



『本当のことを教えて』 (2020.6.30)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「昼寝しようとしていたら電話を持って来てくれた。今日は忙しかった」「何が忙しかった?」「何だろう、次々と何かやった。高野山の家はまだあるの?」「あんたがグループホーム寿に行った時のまま。私が一人で住んでる」「いいなあ、行きたいよ。家のことは頭の中にある」「37年も一緒に住んだ家だものね」「なぜ私は家にいられないの? 何も出来なくなったから? 本当のことを教えて」「去年はあんたの体調が悪くなって何も出来なくなった。私も年をとって十分な面倒を見られなくなった。あんたも施設に入りたいと言って、ケアマネージャのMさんが探してくれたところを二人で見学し、グループホーム寿に申し込んだ」「申し込んだのは憶えている。私はどこが悪かったの?」「目眩や吐き気に何度も悩まされ、膵炎になって二度も入院した」「原因は何なの?」「よく分からないが、JAとりで総合医療センターの救急外来で脳神経内科の先生は、体質が変わって背中に貼っていた薬の副作用かもしれないと言っていた。依田内科でも同じことを疑い一時その薬を中断し、薬の量を減らすなど試そうとした矢先、膵炎が再発して今年正月に入院した。退院して直ぐグループホーム寿に入居した。平和台病院の訪問診療の先生が診てくれ、背中に貼る薬は中止して、まず目眩や吐き気と膵炎の治療をしてくれている。それ以来、目眩や吐き気、膵炎は起きていない」「なんで忘れる病気になった?」「アルツハイマーのこと?」「そう」「本当のことは分からない。あんたのお母さん、S姉さんも同じ病気になったから、なりやすい体質かもしれないね」「S姉さんは死んだ?」「亡くなったのはご主人、S姉さんは施設に入っている」「そうか。私はここにいて全部やって貰えるから、ここにいるのがいいのだね」「時間になった」「・・・歌を鳴らしたよ。私の好きな歌だ」「電話機を返してきてから歌ってね」「・・・ごめんください。電話終わりました」 電話での会話はいつもと同じようなことの繰り返し。200630c.jpg
(コスモスの蕾へ待ちかねたようにトンボ。)

雲から出て雲に隠れた瞬時の日の出

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.6.29)
(アルツハイマー)

雲から出て雲に隠れた瞬時の日の出。200629.jpg

揺れる蕎麦畑を見詰めたら、蕎麦の実を啄んでいたスズメ数羽。200629a.jpg

草むらに頭だけが見え隠れ、前に出て鳴いて羽ばたいたキジ。200629b.jpg


『ぎりぎりで幸運だったね』 (2020.6.29)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「電話、今受け取りました。元気ですか?」「元気です」「ここにいると危ないことから隔離しているってあなたから聞きいて、ありがたいって思った」「面会と外出を禁止して伝染病からあんたたちを守ってることね。ちょっと前にAと電話で話した。会社に行かず、家で仕事をしているよ」「Aはどこに住んでるの?」「八王子」「何処かへ逃げて引っ越したかと思った」「伝染病から?」「そう」「人から人へ伝染するし、誰が罹っていいるか分からないから、引っ越しするよりも人に近寄らないようにする方がいいの」「あなたはどこへ隔離されてるの?」「家にいる。丸いテーブルの前に座って電話してる」「あなたは湖北の方の施設に隔離されてるかと思った」「ロイヤルや和楽園のこと? そこは去年まであんたが火木土のデイケアやショートステイに行っていたところ。私は家にいるよ」「私は今みたいに危なくなる直前にここに入れて、ぎりぎりで幸運だったね」「いつそんなこと考えた?」「さっき考えた。ここへ来る前に何処かの病院にいたよね」「去年は膵炎になって入院したり、目眩や吐き気で何度か救急車に乗ったし、休みの日や夜に病院に連れて行ったこともあったし、グループホーム寿に入居する直前も膵炎再発でJAとりで総合医療センターに入院した」「利根川を渡った時の景色を思い出した」「ここに入居して平和台病院の訪問診療を受けるようになって膵炎も目眩や吐き気も再発してない」「元気になったからあなたに会いたい」「一週間後に面会できるよ。あんたは体操したり歌を歌う大きな部屋のガラス窓の前、私は外の駐車場にいてガラス窓越しに面会できる」「何でもいいから会えれば嬉しい。希望が持てる。それまでに病気しないでね」「もう終わりの時間。CDを鳴らして」「・・・これでいいかな。・・・鳴った」「電話機を返してきてから歌ってね」「よっこらしょ。転びそうだ。・・・今村です。お返しします」

(38年前引っ越してきた頃はベランダから手賀沼が見えたが、今はびっしりと立ちはだかる住宅。散歩の帰り道、遊歩道から自宅が見えたと数年前の妻の思い出話。まだ思い出せるかその風景。)200629c.jpg

対岸は雨に消えて微かに見える一番近い岸辺

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.6.28)
(アルツハイマー)

対岸は雨に消えて微かに見える一番近い岸辺。200628.jpg

早起きで食いしん坊なムクドリでも、一羽も来ていない雨の桃山公園。200628a.jpg

市民農園跡に降りてきたら、微かに見えたビオトープのネコの木。200628b.jpg


『医者はどうしてる?』 (2020.6.28)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「お昼を食べたらバタンキューでダウンした。いやになった。あと一日だよね」「何があと一日?」「家に行くのが」「伝染病が流行っていて、今は外出も面会も出来ないよ」「じゃぁあなたはどうしてる?」「高野山の家にいる」「私はここにいて、あなたはなぜ家にいるの?」「あんたがいるところはグループホーム寿という施設。あんたは介護認定が認められたので入居できた。私は介護認定が下りないので入れない。だから伝染病に罹らないように自分で気をつけて家にいる」「医者はどうしてる?」「依田内科に通って、検査にはJAとりで総合医療センターに行っている」「JAはあなたが入院したところ?」「入院したのは私じゃなくてあんた」「私はそんなに悪かったの?」「去年は目眩や吐き気、頭がガンガンしてたびたび病院に通った。夏には膵炎になって東邦病院に入院した。私も年取って、あんたを病院に連れて行くのが困難になった。あんたも施設に入りたいと言って、グループホーム寿を見学して申込んだ」「二人で申し込みに来たのは憶えてる」「去年暮れ空きが出来て入居できることになった。今年正月にAとLが家に来た」「えっ、私もいたかった」「あんたは家にいて、嬉しくて食べ過ぎた。子どもたちが帰った後で膵炎再発でJAとりで総合医療センターに入院した。そして退院して直ぐグループホーム寿に入居した。依田内科とJAとりでから平和台病院に手紙を出して貰って、訪問診療を受けるようになった。その後、膵炎の再発も、目眩や吐き気も無くなって元気になった」「忘れたけど、あなたには苦労かけたね。そういうことだと分かってすっきりした」「伝染病が治まったら、子どもたちも呼んで、家で一緒に食事したり話そうね。夕方になったら戻って自分のベッドで寝る」「嬉しいよ」「歌を鳴らそうよ」「・・・二番目のボタン、何だった?」「CD」「・・・鳴ったよ。電話機を返してくる。・・・終わりました。お返しします」と職員さんと会話する妻。200628c.jpg
(落ちてタコさんウインナーにならないように、枝にしがみついていたザクロの実。)

久々に手賀大橋から眺めた沼

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.6.27)
(アルツハイマー)

久々に手賀大橋から眺めた沼、雨だろうか白く霞み始めた対岸。200627.jpg

カッパの噴水前を横切るゴムボート、涼しげにのんびりと。200627a.jpg

橋の下から飛び出してきたツバメ。何気なくシャッターを押したら撮れていた。200627b.jpg


『人間はみんな死ぬ』 (2020.6.27)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「やっと片付けが終わって一眠りしようと思っていた。電話だと言われてびっくりした。お元気ですか」「元気ですよ」「午前中は天気が悪かったがいい天気になってしまった」「そうね」「私の感覚は間違っていないよね」「間違っていないよ。昼寝して眠っちゃう前でよかった」「どうして?」「眠って、目が覚めると色んなことが分からなくなって、しばらく話が通じなくなるから」「それは言える。目が覚めるとそこからスタートするから何も分からなくなってるの。朝は定時に起こされるから、午後は休みたい。みんなは早く寝ても、私はやりたいことを思い出して遅くなる」「家にいた時から宵っ張りの朝寝坊だったからね」「痛いところを突かれた」「あんたのN姉さんから電話があって、S姉さんのご主人が亡くなる少し前、長いことはないと医師に言われS姉さんに手紙を書いていると電話で言っていた。葬儀の時は亡くなったと悲しんだが、直ぐに忘れてしまったと」「S姉さん、かわいそう」「N姉さんが電話でS姉さんの施設の職員さんと話したら、息子さんが手紙を渡して読んだ時はご主人が入院していると思って悲しんだが直ぐに忘れて仕舞った。何度もその手紙を読むからすり切れそうになっているそうだ。でも直ぐ忘れて悲しみは長くは続かないと」「ずっと悲しむのはかわいそう。忘れて悲しまない方がいいと思う。人間はみんな死ぬ。死後の世界なんか無いからそれで全部終わりになる。割り切れるか割り切れないかは残った人個人の考え方でいろいろある。死はその人とのこの世での別れで、死ぬ人は何も考え無くなって終わりになるだけ。その内、残った人も忘れて考えなくなる。死ぬってそういうことだと思っている」「死ぬ話は終わりにして、歌を鳴らそう」「もう終わりの時間? 鳴らしてくる。よっこらしょ。・・・鳴ったよ」「聞こえた。電話機返してきて、戻って来てから歌って」「・・・事務所の前に着いた。今村です。終わりました」200627c.jpg
(遊歩道に漂うほのかな香り、垣根の向こうにクチナシの白い花。)

立ち止まりひと声鳴いて羽ばたいたキジ

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.6.26)
(アルツハイマー)

今朝もいつもの畦道を歩き、立ち止まってひと声鳴いて羽ばたいたキジ。200626.jpg

コロナ対策で使用中止になっているジャブジャブ池、ただ一羽水を落とした池にハクセキレイ。200626a.jpg

遊歩道を歩けば道端の草に隠れたつもりかスズメ、まん丸な目でじっとこっちを見ている。200626b.jpg


『頭がぼーっとしている』 (2020.6.26)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「電話機を届けてくれたけど頭がぼーっとしている。ガーンとした感じ。痛いと言えば嘘になるが、ガーンと痛いような気分。眠たい感じもする」「お昼食べたから眠くなったのかな。何食べた?」「もう忘れた」「サクランボは?」「食べた」「頂いたからあんたと他のみなさんで食べるように届けた。お昼に出してくれるって職員さんが言っていた」「みんなにもあげちゃうの?」「みんな外出も面会も出来なくて、あんたと同じように淋しいでしょ」「そうか、その方がやさしいね。二人で撮った写真を送るって、あなたからの手紙を読んでいた」「1ヶ月くらい前の手紙でしょ。写真はあるの?」「ない」「鏡台の引き出しに仕舞ってあるかも」「よっこらしょ。・・・あったよ。二枚、もう一枚あった」「私の顔を思い出せないと言うから送ったら、仕舞い忘れてまた送ったから三枚あるんだ」「仕舞わないと誰かに持って行かれる」「人の写真を持って行く人はいないよ」「羨ましいと思って持って行くかも」「そんなことないよ」「決めつけないで。意地の悪い人だっているかもしれない」「じゃぁ大事に仕舞って置いてね」「なんで私は家にいないの?」「去年はあんたの体調が悪く、年をとった私にはあんたを病院に連れて行くのが難しくなった。あんたも何処か施設に入りたいと言った」「それでここにいるの?」「そう」「会うのもダメ?」「伝染病が流行っていて、あんたの外出も、私が面会に行くのもダメになった。だけど7月5日には面会できる。あんたは建物の中、私は裏の駐車場にいて、ガラス窓越しに面会できる」「会ったら抱きつきたいのにそんな面会? だったら来るなよ」「行かなくていいなら止めようか」「いやだいやだ。ニコニコ笑って挨拶するから来てよ。アハハ。もう直だね」「時間になったよ。CD鳴らして」「そうか。・・・聞こえる? 鳴ってるよ」「聞こえた。電話機返してきて」「よっこらしょ。立ち上がるのも大変だ。・・・今村です。終わりました」200626c.jpg
(ポツリポツリと咲き始めたコスモスの花)

斜面林の隙間に水生植物園のケヤキの木

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.6.25)
(アルツハイマー)

沼を望む高台の柵沿いに伸びた笹や葛の蔓、背伸びしても撮れない雨の沼。斜面林の隙間から水生植物園のケヤキの木。200625.jpg

桃山公園の広場に出ればご馳走を見付けたスズメ、邪魔しないようしばらく眺めて待つ。200625a.jpg

公園の小径から犬の散歩の人が近寄れば、一斉に傾斜地に移動したムクドリたち。200625b.jpg



『これは飲む薬?』 (2020.6.25)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「あなたは中国から帰っているよね」「ずっと家にいるよ」「だって、帰って来られなかったよ」「それは30年も前の天安門事件の時だ。20年前に会社を退職してからずっと高野山の家にいるよ」「じゃぁ何で私は家に行けないの?」「伝染病が流行っていてあんたのいる施設では面会も外出も禁止だから」「中国の伝染病に罹らないように?」「そう」「それで少し疑問が解けた。ここは施設なの?」「そう、グループホーム寿だよ」「ここはただで入れてくれてるの?」「有料だよ」「あなたは?」「自分たちの家だから無料」「私のお金は誰が払ってる?」「心配しなくても、私が払ってる。昨日置き忘れたオリーブオイルは見つかった?」「どんなの?」「高さ10センチ直径2センチくらいのウグイス色のビン」「鏡台の前にあるよ。これは飲む薬?」「薬じゃない、化粧品だよ。5~6日前に無くなったと言うから、私が買って届けたよ」「中国の病気の患部に塗るの?」「薬じゃない。お化粧の仕上げに、水分が逃げないように塗る化粧品でしょ。長い間ずっと使っていたよ。使い方が分からないなら女性の職員さんに教えて貰って」「それはいい考えだ。そうする。飲むんじゃなくて塗る薬ね」「薬じゃなくて化粧品だよ」「お化粧する時に思い出すかもしれないね。私がでたらめなことを言ってもあなたはちゃんと買ってくれた。私って困った人だねぇ。アハハ。きれいな花があるよ」「父の日にAがくれて、きれいだから昨日あんたにあげた」「水をやらないとダメだね。事務所の人に訊く。事務所の人は親切で、行くとニコニコしてくれる。何も怒らないし、愚痴らない。居心地のいいところだよ」「時間になった」「・・・CD点けた。・・・鳴ったから電話返してくる」「職員さんに代わってね」「・・・主人が代わってって」「もしもし」「5~6日前に無くなったオリーブオイルを補充したら、中国の伝染病の薬かと言い出したので心配。様子を見て説明してやって下さい」「分かりました」200625c.jpg
(梅雨に濡れきらめくしずく、悲しみを止めるキンシバイの花。)

妻が好きな桃山公園からの手賀沼

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.6.24)
(アルツハイマー)

妻が好きな桃山公園からの手賀沼。いつになったら外出解禁、妻に見せてあげたい高台からの沼。200624.jpg

桃山公園の広場にムクドリの群、市民農園跡に降りたら市民農園跡に舞い降りてくる。200624a.jpg

市民農園跡の蕎麦の花、終わる頃には咲きそうなコスモス。三つ四つ咲いていたコスモスの花。200624b.jpg


『プレゼントが届いた』 (2020.6.24)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「素晴らしいプレゼントが届いた」「花?」「そう」「Aが父の日にくれた花。昨夜、Lがくれたつまみで晩酌しながら花を見て楽しんだ。あんたにも見せたくて、注文してあったオリーブオイルと一緒に届けた」「花は事務所の人が持って来てくれた。オリーブオイルは知らない」「花に気をとられ置き忘れたのだろう。鏡台の前に置いてない?」「見えない」「ベッドの上には?」「ない」「あとで事務所の人に手伝って貰って探してね」「分かった。行ってくる」「まだ電話したばかりじゃないの、電話機を返す時にお願いしたら」「そうする。今日はきれいな花を貰って嬉しいよ。ありがとう」「Aが私にくれたが、きれいだからあんたにも見せたかった」「眠ろうとしたら持って来てくれて、感動して眠らなかった」「眠らなくてよかった。眠ったら、ボケボケになるものね。お昼ご飯は何を食べた?」「急に言わないでよ。おいしかったよ。お皿を片付けちゃったからもう分からない」「午前中は何をした?」「何処かに集められて何かした。毎日無我夢中で過ごすから頭に残らないよ。あなたは何をした?」「雨だったから水の館の前のカッパや手賀大橋の写真を撮ってきた」「水の館って知らない」「エレベーターで展望台に登ると手賀沼が遠くまで見えるところ」「景色が浮かんでこない」「1階にお降りるとレストランがある」「思い出した。うどんを食べた」「そう」「その近くから坂を登ると家だよね」「私はそこに住んでる。家の南側の道を桃山公園に行って、高台から手賀沼を眺めたね」「私の好きな場所。行きたーい」「外出が解除になったら散歩に行こうね」「今は外出禁止?」「伝染病が流行っているから」「そうか、じゃあ家にも行けないね」「もう時間だ」「電話機返してくる?」「先にCDを鳴らそう」「・・・鳴らしたよ。じゃあ行ってくる。・・・終わりました」「代わりました」と職員さん、「渡して頂いた化粧品を置き忘れたようです」「花と一緒にお渡ししたけど、見に行きます」200624c.jpg
(長女がくれた花を見ながら、次女がくれたつまみで晩酌。妻にも見せたくて妻に届けた父の日の花。)

小降りになって出掛けたカッパ前の桟橋

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.6.23)
(アルツハイマー)

小降りになって出掛けたカッパ前の桟橋、月曜日なのに手賀大橋を通るトラックは一台も見えない。200623.jpg

口からはみ出る獲物を咥えたハクセキレイ、上を向きパッと飲み込んだ獲物。200623a.jpg

親水広場では、雨に濡れ餌探ししていたムクドリが数羽。200623b.jpg


『今日はすっきりしている』 (2020.6.23)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「こんにちは。よくこの時間帯に電話をくれるね。おーいと呼んだら聞こえるほど近いのにねぇ。今は何か仕事をしている?」「仕事は二十年前に退職したよ」「お金は給料じゃなくて、年金を貰っているんだね」「そう。あんたの年金振込先を銀行振込から郵貯に変更しに行ってきた。郵便局なら歩いて行けるからね」「それがいい」「お昼食べた後眠らなかった?」「眠っていない。午前中は忙しかった」「何をした?」「えーとねぇ、忘れちゃった」「体操をしてお風呂に入った?」「よく知ってるね、見てた?」「想像だ。眠らなかったからしっかりしてる」「今日はすっきりしている」「昨日は、目覚めたら静岡にいるつもりだったよ」「あはは、おかしいね。私は何で高野山の家にいないの?」「二人とも年をとって、私があんたの面倒を見切れなくなって、二人で住むのが無理になったから」「そうだったね。私はここにいたらご飯が出るが、あなたはどうしている?」「コンビニや通販、宅配弁当を使ってちゃんと食べている」「仕事がなくてお金は大丈夫?」「私とあんたの年金だけでは足りないから、老後のための預金を使っている。あんたが心配しなくてもいいよ」「別に悪いことはしなかったのに、私は何でこんな罰を貰うことになたの?」「罰じゃない。悪いこともしていない。物忘れの病気になりやすい体質だったのだろう。S姉さんとあんたはお母さんと同じ病気になった。体質だよ」「S姉さんは最近死んだ?」「姉さんじゃなく、亡くなったのはご主人。姉さんは施設で元気にしてる」「施設に入るっていいことだよ」「日々楽しいことを見付けることが大事だね」「ここにいると一人でやることはなくて、色々やることを用意してくれる。年寄りの末路だね。みんなそうなるから仕方ないさ」「時間になったから、歌を鳴らして、電話機を返してきて」「行ってくる。・・・もう事務所の前・・・終わりました」「もしもし、代わりました。切りますね」とOさん。200623c.jpg
(妄想の中で家に戻る妻が通る道、カッパの前を通って、近くの坂道を登れば自宅。)