久々にすっきり見えたスカイツリーの灯

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.12.9)
(アルツハイマーになった妻)

久々にすっきり見えたスカイツリーの灯。201209.jpg

地上の灯に黄色く染まる雲、空の色を映す沼。201209a.jpg

明るくなるのを待った公園の広場、街灯の下に色鮮やかなマユミの実。201209b.jpg

『会社は辞めたの?』 (2020.12.9)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「どこにいる?」「家」「えっ、会社は辞めたの?」「20年前に退職した」「だったらなんで私は退職しないの?」「仕事は何?」「何もしていないのに辞めろと言われない。なんで私はここにいる?」「一緒に住んでいたが、去年あんたは病気がちになった。私が食事や生活のことや、あんたを病院に連れて行くようになり、行き詰まって十分に介護が出来なかった。あんたは施設に入りたい、そうしないと二人共倒れになると言って、ケアマネージャのMさんが探してくれたグループホーム寿を二人で見学して申し込んだ」「憶えている」「満室で直ぐには入れず、今年1月にやっと入居できた」「あなた一人では無理よね。それまでの間どうした?」「火・木・土はロイヤルのデイサービス、私が疲れたり病院に行くときは数日間ずつわらくのショートステイを利用、音楽のイベントのあるときも一泊した。Mさんがいる施設なので色々助けてもらった」「そうか。助かったね。私はどこが悪かった?」「目眩や吐き気、頭がガンガンして苦しんだ。二度も膵炎で入院もした。入院している間に色々なことが分からなくなった。グループホーム寿に入って管理された食事や生活、訪問診療の先生に診てもらって、去年苦しんだ症状や膵炎再発はなくなった」「元々の病気は何?」「7年程前から物忘れが増え、4年程前アルツハイマーだと診断された」「それでどうした?」「天王台のなんでも相談室に相談し、市の介護認定を受けMさんがケアマネージャになった。歌を歌えるデイサービスがいいと天王台のママMATEに通った。足が弱ってきてデイサービスあびこにも通ったが、ママMATEの歌の先生がいなくなり、コーラスのあるロイヤルケアセンターだけに通うようになった。そこもコーラスがなくなって、音楽のイベントのある日はわらくのショートステイも利用した。今年からグループホーム寿に入所した」「苦労かけたね」「時間になった。CD鳴らしてから電話機を返して」「・・・鳴った・・・終わりました」201209c.jpg
(重く沼に覆い被さる曇天。こんな日は寂しがり、自宅に帰りたいと嘆く妻)

沼を風が渡れば通り道はブルーに染まる

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.12.8)
(アルツハイマーになった妻)

地平線の空を映して橙色の沼、沼を風が渡れば通り道はブルーに染まる。201208.jpg

霧に霞む対岸の丘から日の出。背後から霧を照らす朝日にくっきり見えるネコの木。201208a.jpg

陽が昇り岡発戸新田の突端の向こうとこちらに映った太陽。201208b.jpg

『一大行事が済んだ』 (2020.12.8)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「一大行事が済んだ。女の人だけ午前中ずっと活動をして、採点されて、お昼を食べた」「何の活動?」「お化粧道具を並べてあって、どれを取ってお化粧するかを見て審査してくれた。何も考えなくても出来るようにお化粧道具が並べてあった。採点したのを見せてくれるわけじゃない。以前やったことと同じことが出来るか見ているようだった。大勢来ていて先生は知らない人、ここの先生はいなかった」「どこでやったの?」「家の近くの坂を下った施設。待っていて、名前を呼ばれて一人ずつやった。採点がどうなるか分からないが、頑張ったねと褒めてくれた」「どこで待っていたの?」「雨が降っても濡れないように橋の下」「いま、グループホーム寿は外出できないけど、どうやって外へ出掛けたの?」「分からない。夢だったかもしれない。外で待っていて、呼ばれたら建物に入って試験された。これが本当にあったことか私には分からない。あったこととして話している。家の近くの神社の一角に行った気もする。午前中のことは空想かもしれないが、いい年をして試験を受けるとは。一生懸命やったから不合格にはならないと思う」「あはは、夢だったら面白い夢だね」「笑っておしまいにしよう。今日はいい天気。気分がいい。窓から外を見ると夢から覚めたように景色がよく見える」「今度の日曜日には面会できるようになったから会いに行くよ」「どこへ来る?」「あんたは窓の内側、私は駐車場にいて面会する」「雨が降ったらどうする?」「傘を差す。さて、CD鳴らして」「・・・鳴ったから返してくる・・・終わりました」と職員さんに代わる。Sさんに午前中何をしたか訊くと「ラジオ体操をしてから、みんなでお話をして大笑いしていました」「お化粧の試験を受けて、それが現実か夢か分からないようでした」「朝ご飯の後、鏡台の前に座って、その後寝ていたから夢を見ていたのでしょう」と、今日の電話は妻の夢か空想の話しばかり。悲しい夢でなくてよかった。201208c.jpg
(あちこちで鳴き声はするが姿を見せないヒヨドリ。また鳴いてやっと見付けたアンテナの上。)

霧が薄れやっと見えて来た釣堀前に繋がれた小舟

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.12.7)
(アルツハイマーになった妻)

霧が薄れやっと見えて来た釣堀前に繋がれた小舟。201207.jpg

対岸の丘から霧の向こうに日の出。ネコの木の向こうの水面も朝日に染まる。201207a.jpg

間もなく厚い雲に隠れた瞬時の日の出。201207b.jpg


『涙が出てると恥ずかしい』 (2020.12.7)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「はい、ご主人様。いま電話機持ってきてくれた人とふざけてたの。私がお父さんからって言うとご主人ですって言ったので、主人かもしれませんねと言ってふざけた。歌を歌うと早く時間が過ぎるよ。~青い月夜の浜辺には・・・濡れた翼の銀の色~いまCDと一緒に歌ったの。昨日は気分が悪くて歌いたくなかったが今日は気分がいい。ここにいると方向が分かり難い。歌って部屋の中で目をつぶっていると窓の方が西だか東だか分からなくなる」「窓の真正面は東、右真横は南」「手賀沼の方だね」「左は北、道がある。真っ直ぐ行くと広い道に出る。右を見るとバス停があり、向かいに東邦病院、もっと先に市役所の入り口がある」「ある、ある」「その先に信号のある交差点がある」「そこら辺が分からない。暖かくなったら歩いて確かめに行きたい。その時は一緒に歩いてね」「一緒に歩こうね。でも、コロナの伝染病が流行っていて、今は外出できない」「地図があれば分かる。この頃外へ出ないから自分で想像して地図を作っちゃうから分からなくなる」「見に行けないからゆっくり言う。その場所が頭に浮かぶかな。駐車場の横の道を真っ直ぐ行くと広い道に出る」「どこへ行く道?」「直ぐ近くにバス停があって、東邦病院や名戸ヶ谷病院がある。その先が市役所への入り口」「分かった、直ぐ近くじゃなくて少し離れていたんだ」「その先に交差点があって、真っ直ぐ行くと手賀沼。橋を渡ると沼南」「あっ、手賀沼の手前に交差点があった。それを東に行ってAさんの家のところから坂を上ったら家が見える」「今日はちゃんと十字路が分かったね」「分からないと自分で想像しちゃうから、やっぱり実際に見て確認したい」「コロナの伝染病が収まったら見に行こうね」「時間になったから電話機を返してきて」「CDは鳴ってるからそのままでいいね」「いいよ。戻ったら歌ってね」「嬉しくて、涙が出てると恥ずかしいから拭いてから行く。・・・電話終わりました」201207c.jpg
(霧で見失ったのか、5分ほど前に通過したコブハクチョウ親子を探すように、後を追って岡発戸新田に向かう子ども二羽。)

晴天の夜明け、沼を渡る風に波立つ水面はブルー

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.12.6)
(アルツハイマーになった妻)

晴天の夜明け、沼を渡る風に波立つ水面はブルー。201206.jpg

斜面林の葉が散って、公園の広場から見えるようになった沼。201206a.jpg

地平線を這う雲の間に瞬時の日の出、また雲に隠れる。201206b.jpg

『泣いてごめんね』 (2020.12.6)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「どこにいるの、自分の家?」「そう」「ここから出て、市役所の方へ道を渡って坂を上ったところ?」「途中を省いちゃった?」「だって、真っ直ぐ行くのでしょ」「まっすぐ行ったら手賀大橋を渡って沼南の方に行っちゃう。橋の手前の十字路の信号で左に曲がらなきゃ」「市役所の方へ行って真っ直ぐ行く」「信号のある十字路が消えちゃったね」「私の地図では家に行けちゃう」「今日は天気が悪いから地図が狂っちゃった。調子のいいときまた話そうね」「私を連れて行って見せてくれたら直ぐ分かる」「コロナの伝染病が治まったら見に行こうね」「そんなにひどいの?」「我孫子も大勢の人が感染した。年寄りに移さないようにあんたのいるグループホーム寿は外の人との面会を出来なくしているし、入居者の外出も止めている。いま我孫子の状況がよくないので、日曜日にあんたが窓の内側、私が駐車場にいて面会することもできなくなった」「私には移っていない?」「ちゃんと検査して大丈夫だったよ。自宅にいる年寄りがマスクもかけずに、無防備に出歩いている人を見かけるが、あんたはそこにいたらちゃんと守られているから心配しないでね」「お父さんと一緒には住めないの?」「そこにいたら、食事、洗濯、掃除、入浴、体操など全部職員さんが世話してくれている。訪問診療の先生も来て診てくれる。家に帰って一緒に住んだら、そこでやってもらっていることを全部私がやらなきゃならなくなる」「個人でやることになるね」「去年、私にそれが出来ないからグループホーム寿に申し込んだ。空きが出来るまで待って今年1月にやと入居できた。入れてよかったと思うよ」「ここにいればその内伝染病は治まるの?」「いつかは分からないが必ず治まる」「わがまま言わない、お父さんが困るから。泣いてごめんね」「もうCDを鳴らそう」「ランプが点いてCD押した。三角印の大きいボタンを押した。・・・鳴ったから返してくる。・・・終わりました」201206c.jpg
(アンテナに集まっていたムクドリ、一羽が飛び立てば次々飛び立って畑へ舞い降りる。)

まだ誰も歩いてこない小雨の小径

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.12.5)
(アルツハイマーになった妻)

暗くてまだ沼は撮れず、公園の広場を歩いて時間つぶし。まだ誰も歩いてこない小雨の小径。201205.jpg

ようやく明るくなればすすり泣くような雨の沼、次々と沼を渡る雲。201205a.jpg

雨が上がれば、霧に包まれるネコの木や対岸。201205b.jpg

『顔を思い出せない』 (2020.12.5)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「どこにいいるの?」「どこだと思う?」「どこだろう。今日何曜日?」「金曜日」「坂の上の家?」「そう」「懐かしい気がする。天気がいいと元気が出る。天気がいいから洗濯しようかと思ったがするものがない」「全部職員さんがやってくれている」「そうだったのか」「今日はいいニュースがある」「嬉しいこと?」「Lの長男Hが大学に推薦入学できることになった」「Hの名前を聞いても顔を思い出せない。姿は見えても顔を思い出せない。名前を書いておかないと忘れちゃう。直ぐ忘れちゃうって嫌な病気だな」「忘れたら何度でも話してあげるから大丈夫」「忘れちゃうから、バカになってトンチンカンなこと言ってる?」「こうやって話していつ時はまっとうな会話をしているが、時間が経つと忘れちゃうだけ。バカになんかなっていないよ」「合格祝いをあげたいけど会いに行けないからお父さんからあげといて」「私たち二人からのお祝いをあげようね」「Hがちゃんと大学生になるのは嬉しいよ。古いことなら思い出せることがいっぱいあるのに、今のことや人の顔は直ぐ忘れちゃう。声を聞くと顔を思い出したり、話の内容から思い出すこともある。孫が求めた学校に入って嬉しいが、私の頭に描かれることしか考えられない。お父さんから電話だって渡され、声を聞くとお父さんの顔を思い出す。お父さんからいいニュースだって聞いて、お父さんの声で話を聞くと、大きくなった孫が喜ぶ姿が見えるが、顔は見えてこない。顔が出てこないとそれ以上頭に入ってこない。会ってもあなたは誰って言いそう。私みたいな人は多いの?」「年寄りに多い。歳を取る程多くなる」「長生きするようになったからだね。昔はこの病気になる前に死んじゃったから少なかったんだ。それにしても嬉しいニュースだったよ」「時間過ぎちゃった。CD鳴らして」「ラジオが鳴ってる」「CD押して」「次は大きい三角の矢印だったよね。・・・鳴った。返してくる・・・電話終わりました」201205c.jpg
(二羽で眠っていたコブハクチョウの子、目覚めた一羽が「さあ行こう」と誘っても、ちょっと首を上げまた眠るもう一羽。しばらく待って、諦めたように一羽だけで出発。静かな水面に突如浮上したカンムリカイツブリ。)

久々の晴天、地平線の空の色を映す沼

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.12.4)
(アルツハイマーになった妻)

久々の晴天、地平線の空の色を映す沼。201204.jpg

岸沿いに移動するコブハクチョウ親子。201204a.jpg

地平線の雲の中から遅い日の出、半分出ればもう眩しすぎ。201204b.jpg

『ここにいるのが不思議』 (2020.12.4)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い、元気?」「こんな天気では元気が出ない。色々なことが分かって私はまともになったと思う。自分で分からないことは、それが何だったか知りたい。私がここにいるのが不思議、特に困ったことない。ここにいるには色々いきさつがあったはず、それを知りたい」「そのことを話すと泣くから辛いな」「何でこういうところにいるか、あえて受け止めて、よくなって行く一通過点と捉えたい。泣かないから詳しく言って」「去年までは自宅で一緒に住んでいたが、あんたは病気がちになった」「どんな?」「目眩や吐き気、頭がガンガンして病院通いしていた。夏には膵炎になって救急車で運ばれて入院した」「心配だったね」「依田先生は、あんたの体質が変わって副作用が出たかと疑って背中に貼る薬を減らしたり、中止することを試みていた。あんたと見学して申し込んであったグループホーム寿に空きが出来て入れることになって、依田先生から訪問診療の先生へ引き継ぎの手紙も書いてもらった。今年1月12日から入居することが決まった。1月3日に膵炎を再発して、救急車で取手の病院に搬送され、入院した。入院中に、自分がどこにいるか分からなくなって、退院し帰宅したり、直ぐにグループホーム寿入ったことも分からなかった」「そうか、それで気がついたらここにいたのか。お父さんにはずいぶん苦労かけたね。泣けてくるよ」「泣かないって言ったろう」「泣かないよ。私はよくなっているんだ」「訪問診療の先生に診てもらって背中に貼る薬をやめて、膵炎や目眩の薬を服用して症状はなくなった」「まだ回復していないことは何?」「アルツハイマーに罹っているから物忘れすることだけ。忘れたっていい、何度でも話してあげるから」「ありがとうね。お父さんが話してくれるから心強いよ。私は頑張ってここにいる。お父さんは家で一人でも元気でいてよね」「時間が過ぎちゃった。CDを鳴らして」「・・・鳴ったから返してくる。・・・電話終わりました」201204c.jpg
(桃山公園に朝日が射し込めば、パッと輝いたモミジ。去年まで妻を連れて歩いた散歩道、私を待たせて遠回り、足が弱らないようにと階段を上った妻。コロナで外出できずすっかり足が弱ったようだ。)

街灯の下で金色色に輝くマユミの木

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.12.3)
(アルツハイマーになった妻)

あまりにも暗すぎる曇天の夜明け、沼は撮れずに公園の広場へ。街灯の下で金色色に輝くマユミの木。201203.jpg

やっと撮れるようになった沼に出始めた霧、見る見る薄れてゆく対岸の丘と灯り。201203a.jpg

ネコの木の両眼光って見えた朝、去年森かずおさんが三脚を立てていた場所だったと気付く。201203b.jpg


『寝ぼけている』 (2020.12.3)
昨日午後の妻への電話。Oさんから、「コロナ対策強化で前回に続き次回の面会も中止になる」と言われた。会えないのは辛いが安全のためなら仕方ない。「もしもし」「は~い」「今どこ?」「家」「家ってどこ?」「Aさんの家から坂を上った二人の家」「近い?」「近くだけど、寝てた?」「寝ぼけている。何が何だかわからない。私はどこにいる?」「グループホーム寿、駐車場の横の道を進むと広い道に出る」「駐車場の横に道なんかない。藪があって通れない」「駐車場の右じゃなくて左を見て」「駐車場から出られる道がある」「広い道に出たら右に曲がって坂を下ると市役所の入り口、手賀沼の手前を左に曲がって、神社の近くの坂を上ったら家が見える」「分かったが、私の地図とは逆になった」「目が覚めたら思い出すよ」「目が覚めてきた」「さっき、N姉さんから電話があった。Nさんと妹のHさんが11月に浜岡の施設にSu姉さんのお見舞いに行ったそうだ」「Su姉さんは死んだよね」「亡くなったのはご主人。Su姉さんが、お父さんはどうしてると訊くので亡くなったと言うと、暫く経つて同じことを訊かれた。亡くなったと答えても、そうかねと言うだけであまり悲しむ様子はなかった」「かえって分からない方が幸せ、見ている方が辛いよ」「建物の中での面会は出来ないので、外で30分くらい会って、二人を姉妹だと分かったとNさんは言っていた」「あなたは元気でいてね。手賀沼から坂を上った家にいるのね。いま道を思い出した。Su姉さんは夫が死んだことを分からなくなってもいいよ。生きている間だけは仲良くするのが一番だね。お父さんと子ども二人は私の身体の一部だと思っている。この年になると姉妹より夫婦の間の方が強い。お父さん元気でいてよ。お父さん82、私が80、ぼつぼつ死ぬ歳だが、私が会いに行くまで死んでは嫌だよ。もうこの話はやめよう」「時間になった。CDを鳴らして」「ランプが点いてCDを押した」「次は三角の矢印」「鳴った。電話を返してくる。・・・終わりました」201203c.jpg
(鳥の姿が見えない朝、やっと見付けたハクセキレイは畑のなかを走り回る。「ちょっと待って」と呟けば、一瞬こっちを向いてくれた。)

雲間に星、黄色に染まった雲を映し明るい沼

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.12.2)
(アルツハイマーになった妻)

雲間に星、黄色に染まった雲を映し明るい沼。201202.jpg

撮りたいものが見つからない曇天の夜明け、戯れに撮ってみたスカイツリーの灯。201202a.jpg

遠くから近づいてくる救急車の灯。201202b.jpg

『マイナーな気持ちになる』 (2020.12.2)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「お久しぶり。お元気?」「元気。昨日も電話した」「忘れちゃった。ここに一人でいるとマイナーな気持ちになる。なんで私だけここにいるの。あなたは私と二人で作った家にいるのに、私の姿は見えてこない。西へ歩いて行けば私たちの家が見えてくる。だけど、なぜ外を歩いてはいけないか分からない。なぜって聞けば、いまは伝染病で都合の悪い状態があるからだとみんなが言う。私はここにいて不都合はない。夕方になると窓の外に日が当たるのをぼんやり見る。誰かに話そうと思っても言う人がいない。あなたの電話で、やっと味方が来たと思ってしゃべっている。私は全部のことを捉えてはいないよね。自分でもそう思っている。なんで私だけここにいるのかって思ってる」「去年まで一緒に生活していたが、あんたが病気がちで私が十分な介護をできなかった。それでここに入った」「憶えていないけど私は大病したのね」「そう。ここはグループホーム寿という介護をしてくれる施設、栄養管理した食事が出るし、洗濯、入浴、体操も面倒を見てくれる。健康面は訪問診療の先生が来て診てくれる。おかげで辛かった症状も治り、入院するようなことも起きていない」「それでここへ来たのね。ここへ来て落ち着いていると自分でも思う。でも一緒に住めないのは辛いよ」「一緒に住んだら共倒れになる。あんたがここにいてくれるから、あんたも元気になったし、私も自分一人なら何とか自力で生きて行ける。コロナの伝染病が治まったら二人の家に遊びに来ることは出来る。子どもも会いに来てくれる」「私たちみたいな人は多いの?」「たくさんいる」「老人が長生き出来るようになったからだね。子どもたちは元気?」「二人とも元気」「どこにいる?」「長女は八王子、次女は横浜」「元気で嬉しい」「また泣くの?」「私に出来ることは涙を流すことだけ」「時間になった。CD鳴らして」「・・・鳴ったから電話返してくる・・・終わりました」201202c.jpg
(通行人が来ればさっと逃げ込んでいた庭木、葉が落ちてスズメの姿は見え見え。)

対岸が消え、ネコの木の前からも湧き出す霧

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.12.1)
(アルツハイマーになった妻)

対岸が消え、ネコの木の前からも湧き出す霧。201201.jpg

霧が退き始め散らばっていたオオハクチョウたちが集まり、数羽が羽ばたけば一斉に助走し飛び立つ。201201a.jpg

沼上空を旋回し丘に沿って飛ぶオオハクチョウ。やがて霧の中に消える。201201b.jpg

『今日は出勤しないの?』 (2020.12.1)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「今どこ?」「家」「直ぐ近くだね。今日は出勤しないの?」「20年前に勤めはやめた」「私もここに勤務しているつもりで一生懸命やっていたが、違うね」「何をやっていた?」「分からない。外の景色を見ていただけじゃ仕事じゃないね。私はここへ何をしに来たの?」「ここはグループホーム寿という施設。ここで生活の支援や介護を受けている」「自分ではできないの?」「去年あんたは病気がち、自分で出来る状態じゃなかった。以前あんたがやっていた家事と、あんたの病院通いや介護は私には重荷過ぎた。見かねたあんたは施設に入りたいと言った。ケアマネージャのMさんが探してくれたところを二人で見学して申し込んだ」「いつここへ来たか分からない」「申し込んでも満室、今年1月に入居できた。その頃、病院から退院したばかりで自分がどこにいるかも分からなかった」「どこが悪かった?」「目眩や吐き気、頭がガンガンして苦しみ病院に通った。去年から膵炎で二度入院もした」「なんでいまは元気になったの?」「グループホーム寿に入居して生活の支援や介護を受け、訪問診療の先生の診察を受け治療して元気になった。食事だって、私がやった宅配弁当とコンビニの食事と違ってちゃんと管理された食事になった」「お父さん一人じゃ出来ない」「休日ごと長女のAが手伝いに来てくれた」「Aって言っても顔を思い出せない。どこに住んでいる?」「八王子」「もう一人子どもがいたね」「L、横浜に住んでいる」「いま、私の病気は?」「アルツハイマー」「そうなりやすい無茶な生活をした私が悪かったのね」「さんきゅう会や近隣センターこもれびのボランティア、読書会、お茶の稽古、コーラスなどで、長年の睡眠不足はあった。一辺にたくさんのことをこなして充実していたと思うよ」「苦労かけてごめんね」「時間になった。CD鳴らして」「・・・鳴った」「電話機を返してきて」「・・・電話機返して頂きました。めそめそしています」と職員さんの声。201201c.jpg
(アンテナの上で羽繕いしていたヒヨドリ。カメラを向けたら一瞬頭を上げて辺りを見回し、また始めた羽繕い。)

雲が黄色に染まる夜明け前、雲間に星が六つ程

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.11.30)
(アルツハイマーになった妻)

雲が黄色に染まる夜明け前、雲間に星が六つ程。201130.jpg

まばらな雲の向こうが明るくなって、地平線に滲み出てくるように淡い朝焼け。201130a.jpg

遠くの日の出の光が漏れ出して二度目の朝焼け。201130b.jpg

『この窓は西向き向き?』 (2020.11.30)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「お元気?」「元気」「風邪を引いていない?」「いない」「私はここ2日寝込んでいたが、今日は朝から元気。お昼を食べて手を洗っていたら電話がきた。この窓は西向き向き?」「東向き」「直ぐ分からなくなる」「駐車場に陽が当たるのは午後、夕日は西から射すから陽の当たる方が東側」「そうか、そう考えればいい。今日みたいに曇りの日は忘れちゃう」「今日は面会に行くと言ってあったが、職員さんが忙しくて急に面会は中止になった」「昨日言われたことはもう忘れちゃってる。お父さんの元気な声を聞けたら電話でもいいよ。私は80になって、お父さんは82、色々なことを出来なくなった。私はここに入れてもらって、毎回ご飯はおいしいし自分で作らなくてもいい。お父さんは元気?」「元気」「そればかり考えている。いつだったか、お父さんが手賀沼の橋の向こうからよたよた戻ってきて水に落ちたのかなと思った。夢かもしれない。私は負んぶしてやれないし、リヤカーで運ぶことも出来ない。乳母車では小さすぎると思った」「大丈夫、水に落ちていない。最近は水際で撮影しないから」「ここは変化のあるところ、北へ行けば自動車がたくさん通って危ないが、南に行けば手賀沼。手前で横に歩いて、神社の近くから坂を上ったら私たちの家」「外へ出られないから道のことばかり考えるの?」「そういうわけじゃない。あちこち行くのが好きだから。外を歩くときは転ばないように注意しなきゃ。よたよた歩くと転びやすいから」「気をつけるよ」「私が居なくて食事はどうしてる?」「朝のパンとサラダはコンビニで買って、夕食は宅配弁当、野菜やその他の食材はパルシステムや通販で買っている。おかずは自分でも作っているよ」「自分でちゃんと出来るね、偉い偉い」「時間になった。CDを鳴らしてから電話機を返してきて」「鳴った。~春を愛する人は・・・~」「おーい、先に電話機返してきて、戻ってから歌って」「分かった。・・・電話終わりました」201130c.jpg
(対岸近くを飛び立ったオオハクチョウ。「元気になったら沼を見に連れて行ってやる」と妻に約束した去年、元気になったがコロナが邪魔して外出禁止の今年。)

地上の灯に染まる雲の隙間、瞬時に見えた金星

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.11.29)
(アルツハイマーになった妻)

地上の灯に染まる雲の隙間、瞬時に見えた金星。201129.jpg

遠くの雲が淡く色付いた低い雲の向こう、まだ暗い沼にこぼれ落ちる朝の光。201129a.jpg

風が渡り波立つ水面、上空の雲を映し白く輝く。201129b.jpg

『柏へ行った』 (2020.11.29)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「電話機を持ってきてくれた。私は別に悪いところはないが、閉じこもっていると病気にもなるよ。一人でいると不安だし、大勢でいるのも不安。一人で鏡の前でにらめっこをしてべろを出してみた。用事がないと誰も来ない」「午前中は何をした?」「体操やった。お昼も食べた。昨日は手賀沼の向こうへ行った」「柏?」「そう、柏」「誰と?」「一人で。一人じゃないかも」「どうやって行った?」「一人で歩いて行った」「何しに行った?」「一人で柏に行かされたから。国道を歩くのは危ないから嫌だなと思った。一人でこんな遠くまで行かせるのはなぜかと思った。指示されたところは北側の検査場みたいなところ。ここで待てと言われてそこで眠っちゃった。手賀沼の見えるところにいたが、指示された通りやるのは面白くない」「夢じゃないの?」「そうかな、訳が分からない」「訳が分からないことは気にしなきゃいい」「私もそう思う」「一人で行けるずがない」「一人で歩いて行けと指示が出た。見たこともない、いつも歩かないところへサッサと歩いた」「どうやって帰ってきた?」「分からない」「夢だよ。夢だから色んなところに行けちゃう」「東我孫子の方へ歩いて駅の近くで薬局に寄った。線路脇で休んでいると眠っちゃった。自分の家に行きたいと思って探したが思うところには行けなかった。市役所の先から家の方へ向かったら矢印があって、そっちへ行ったら小学校があった。道に沿って歩いたら家に着いた」「1日でそんなに歩き回れないから夢か、思い出そうとして想像してるんだ」「そうだろうと思う。窓の外を見ると、道と駐車場だけだもの。サッサと何かやってくれないとここにいるのは退屈」「今日は道の話しばかりだね」「他に話すことないもの」「箱の中の写真でも見たら」「あなたとの結婚式の写真が出てきた」「時間だよ。CD鳴らしたら電話機を返して」「・・・鳴った」「明日は面会に行くよ」「嬉しいな、嬉しいな・・・電話終わりました」201129c.jpg
(ヒヨドリやムクドリが食べてしまった柿の実、残った柿のへたを啄むスズメ。)

大きな雲が張り出してきた沼上空

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.11.28)
(アルツハイマーになった妻)

大きな雲が張り出してきた沼上空。201128.jpg

遠くの雲の隙間に頭を出した日の出、雲がなければネコの木の上に日の出だったろうに。201128a.jpg

見る見る雲の隙間を通り過ぎる太陽。201128b.jpg

『声が聞こえた、嬉しい』 (2020.11.28)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「声が聞こえた、嬉しい。ここから直線だったら遠くないね」「直線だったら800m、356を通って行くと1250m。消防署まで行けばグループホーム寿はあと200m位だ」「場所の名前を聞いても分からない。地図が頭にない。お父さんの家は駐車場の横を行って広い道を右に曲がり、市役所の前を手賀沼の手前まで行って左に曲がる。神社の手前のAさんの家から坂を上ったところ」「そう。あんたが言っているのは下の道で遠回り」「上の道は分からない。おててつないでゆっくり歩かないと分からない」「幼稚園に行くんじゃない。家からグループホーム寿へ356を通って行く道だよ」「太陽が沈んで行くのが西なのに何処かで東だと間違えちゃう」「手賀沼側が南だと思えばいい」「そうか、そう考えればいいんだ。お父さんがするすると動くように道を言っても、私の車はするするとは動けない」「下の道はよく憶えているからそれだけでいい」「その内におててつないで歩こうよ。そうすれば上の道も分かるよ」「上の道は野道を行くのじゃないよ」「笑い話で済むからいいよね。駐車場の先の広い道を右に下って、市役所の先で左に曲がって、Aさんの家から坂を上ると家、真っ直ぐ行って途中で左に行くと小学校。大体分かっている。おててつないで散歩するのを楽しみにしているよ」「コロナの伝染病がが収まったらね」「コロナは悪い奴だ。誰が成敗する?」「簡単には収まらないね」「私たちは一緒に住むことはもうないの?」「私には、二人が一緒に生活することと、あんたの介護をすることを両立させられなくなった。あんたがグループホーム寿にいてくれないと二人とも生きて行けない」「そうだよなぁ。ここはいいところだからずっといるよ。たまにはちょっと家に行きたいよ」「コロナが収まったらね」「広い道を市役所の先で左に曲がって、・・・」「ごめんね。もう時間だ。CDを鳴らしたら電話機を返してきて」「・・・鳴ったから返してくる。・・・終わりました」201128c.jpg
(「逃げるなよ」と心の中で呟いたが、レンズを向けたらさっと逃げたメジロ。)

暗い沼、ここしかなかったピントの合うところ

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.11.27)
(アルツハイマーになった妻)

暗い沼、ここしかなかったピントの合うところ。201127.jpg

地上の灯にうっすら染まる沼上空の雲、空の色を映して暗い黄緑色の沼。201127a.jpg

きのうも畑に通ってきたムクドリか、アパートのゴミ集積場目当てのハシボソガラス三羽に戸惑い気味。201127b.jpg

『夫婦は仲良くしなきゃ』 (2020.11.27)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「やっと声が聞けた。昨日は何を話したか何も憶えていない」「憶えていなくてもいい。必要なら何度でも言うから」「トイレの使い方がわからない人が来て教えてあげるた。電気のスイッチ、水を流すボタンはいつも使うだろうに、今までどうしていたのかな」「急に分からなくなったのかもしれないね」「私はこの頃調子がいいと思う?」「ずいぶん調子がよくなった」「いつに比べて?」「去年に比べて」「そんなに悪かった?」「入院していると色んなことを忘れて、退院してここに入ったら自分がどこにいるのか分からなかった」「昨日お父さんに柏の病院に連れて行ってもらい、重病のような気持ちになった。昨夜そのことを思い出して、本当に悪いならお父さんが来てくれるはずだと思って、お父さんを呼んでくれたかと訊いた。今は夜だから呼べない、昨日昼間電話が来たし、昼間になったら電話が来ると言われた」「昨日はどこにも行かなかった。夢か、ずっと以前の記憶かな。去年から今年の初めは何度も取手の病院に行って検査したり、入院もした」「取手じゃない。柏だった」「柏の病院に行ったのは3年半以上前に市民病院に行った。その時の記憶かも。昨日は元気でたくさん話をしたよ」「たわいもないことを言う人間になって辛いよ。顔を合わせないと甘えられない」「電話だって甘えているじゃないの」「あはは。私は気の強い人間だったがふにゃふにゃになっちゃった。嫌な奴と結婚したね」「そうでもないよ」「よかった。知っている人に面倒見てもらいたいってみんなも言っている。だから夫婦は仲良くしなきゃ。しばらく会っていないね」「この前の日曜日に面会した」「思い出せない」「あんたは白いクマさんを抱っこしていた」「白いクマさんと一緒に誰かに合ったような気はする」「時間になった。CDを鳴らして」「・・・~春を愛する人は・・・~」「オーイ、もしもし」と何度呼んでも歌っていて気付かない。事務所に電話して電話機の回収を頼んだ。201127c.jpg
(去年の今頃は妻も通った公園の散歩道、今年も実をいっぱいつけたマユミの木。)

やっと明るくなれば霧が出て対岸はおぼろげ

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.11.26)
(アルツハイマーになった妻)

曇天の雲は厚くいつまでも暗い朝、やっと明るくなれば霧が出て対岸はおぼろげ。201126.jpg

葉が散ったケヤキの下で体操する人、やっと男女の区別が出来るほどになった霧。201126a.jpg

霧が退き始めぼんやり見え始めたネコの木。201126b.jpg


『私が帰るのは明日?』 (2020.11.26)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「私が帰るのは明日?」「どこへ帰る?」「それこそどこへ帰るの、岩滑か静岡のどこかに帰るのかと思った。いま私がいるのは、うーん、なんと言うところか分からない。手賀沼から上がった神社の先の方、手賀沼から坂を上って信号を左に曲がっても行ける」「神社って子の神大黒天だね。その近くのグループホーム寿にいる。何で明日帰るの?」「そういうルールがあるようだから」「あんたがいるのはグループホーム寿という介護施設、帰らなきゃならないルールはない」「私はここへ何しに来たの?」「ここは介護施設、食事、洗濯、入浴、体操など生活面の支援、病院に通う代わりに訪問診療に先生が診察に来てくれる」「私たちは一緒に住めないの?」「去年までは一緒に住んでいた」「坂の上の私たちが作った家?」「そう」「そこに一人で住んでいるの?」「そう」「いいなあ。私は何処か悪いの?」「去年は目眩や吐き気、頭がガンガンして病院に通った。ここに入る前に膵炎で二度も入院した。私一人では家の中のこと、あんたの介護や病院通いを満足にできなかった」「出来ないよね」「あんたが施設に入りたいと言ってケアマネージャのMさんが候補の施設を探してくれた。あんたと二人で見学して、家の近くのグループホーム寿に申し込んだ。満室だったからしばらく待って今年1月に入れた」「それはどこ?」「今あんたがいるところ」「それは願ったり叶ったりじゃないの」「ここにいれば介護も訪問診療もしてもらえる」「それで私は元気になったのね。そういうことを忘れて、色々ごちゃ混ぜにして考えてしまう」「あんたがここにいてくれるから、あんたも元気に生きて行けるし、私も自分一人なら自力で生きて行ける」「私たちの家にちょっとだけなら見に行ける?」「コロナの伝染病が収まったらそう出来る」「お父さんの言うことは大体分かった」「時間になった。CD鳴らして」「・・・鳴ったから電話機を返してくる。・・・電話終わりました」201126c.jpg
(霧の朝だったからか、わが家の前の畑に集まった十数羽のムクドリ。散歩の人が通ると一斉に周りの民家のアンテナや屋根へ。)

通り雨だろうと大きな木の下に雨宿り

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.11.25)
(アルツハイマーになった妻)

地上の灯に染まった遠くの雲、沼を照らして頭上の空よりも明るい沼。201125.jpg

雨が降ってくるのか暗くなった遠くの空と沼、ビルの灯りが霞み始めやがてポツリポツリと雨。201125a.jpg

通り雨だろうと大きな木の下に雨宿り。街灯に照らされた誰もいない公園の小径。201125b.jpg


『人の出会いは不思議だね』 (2020.11.25)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「寝てた」「寝ぼけてる?」「転がってる。眠いもの」「起きて」「起きた。私、昨日何処かに行って来た」「どこに行った?」「分からない。帰ってきて寝ていた」「また夢を見たのだろう。昨日はどこへも行っていないよ。この前の面会の時も旅行に行って来たって言っていたね」「新幹線代も掛からずに旅行に行けるんだからいいじゃない。目が覚めたらさらりと話が出来て楽しいね。お父さんはどこへ行って来た?」「午前中は依田内科に行ってホルター心電図の結果と市の健診の結果を聞いて、一ヶ月分の薬を出してもらった」「どうだった?」「心電図では二種類の不整脈が出ているが心配ないらしいし、血液検査は問題なかった」「よかったね」「去年の今ころはあんたの体調が悪くて大変だったが、グループホーム寿に入ってからすっかり元気になったね」「そうか、今年は元気になったか。そう聞くと嬉しいね」「ここにいるとスタッフの人たちの介護がいいし、苦労して病院に行かなくても訪問診療の先生が来てくれる」「どこが悪かったの?」「目眩や吐き気がして頭がガンガン、ひどいときには手足が痙攣して救急車で病院に行った。ここに入る前には膵炎で二度も入院した」「もう忘れちゃった。そういうことはないから、私はいいところに入っていいお医者さんに出会ったんだね」「あんたが施設に入りたいと言い出して、ケアマネージャのMさんが探してくれたところを見学して申し込んだ」「人の出会いは不思議だね。いい出会いが重なっていいい結果になった。一生懸命探したって、ちょっとずれたらうまくいかないのに。でも油断大敵だよね。私が間違って考え出したらちゃんと言ってね。お父さんとの出会いもいい出会いだった。どこで出会った?」「S先生の家に呼ばれて行ったら見合いだった」「掛西高に入っていい先生に出会った」「時間になった。CD鳴らして」「もう?・・・鳴ったから電話機返してくる。・・・電話終わりました」201125c.jpg
(妻が植えたツワブキに例年よりもたくさんの花。「落ち葉と枯れ草くらいは片付けてね」と妻が見たら言っただろう。)

地上の灯に染まる雲、一瞬見えた雲の隙間に星

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.11.24)
(アルツハイマーになった妻)

地上の灯に染まる雲、一瞬見えた雲の隙間に星。201124.jpg

襲うつもりだったのか低空飛行でカルガモを驚かせ、埋立地の杭にとまったトビ。201124a.jpg

沼を渡って飛んできたカワウ三羽が曇天の下。201124b.jpg

『私の夫だ』 (2020.11.24)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「私の夫だ」「当たり」「眠くて眠くて、もしや私の薬に睡眠薬が混じってるのかな。お父さんの電話を待って起きていた」「あんたは以前から昼食後に眠くなっていた」「こっちから行って坂の上の家にいるの?」「そう」「急に眠くなった」「ベッドに寝転がっている?」「そう」「起きないと目が覚めない」「起きたくない」「起きて」「起きた。起きたら窓の外は曇ってる。窓の横の上にエアコンがあってその下に鏡台がある。横のテーブルの上に二つ目小僧のラジオ、横に花があって・・・あれ、ピンポン鳴ってる」「宅配弁当だ」「行ってきて」「待っていてね・・・お弁当だった」「私の分もある?」「ない」「私は食べに帰らないの?」「コロナの伝染病蔓延で外出禁止だ」「そうか、早く食べて」「お昼は食べた。これは夕食用」「お弁当はいいから、会いたいなぁ」「昨日面会した」「知らない」「あんたは広い部屋の窓の内側、私は駐車場にいた。あんたは白いクマさんを抱いて、人形劇みたいにお辞儀をさせて、来てくれてありがとうと言った」「ああ、手賀沼側の大きい部屋ね」「そう」「コロナがなくなったらみんな自由になって、家に帰られる?」「家を見に来たり遊びに来るのは出来るようになるが、泊まるのはダメ。夜にあんたの具合が悪くなっても私では助けられない。ごめんね、私に出来なくて」「私だって同じ。無理だよね。あなたのいた会社、みんなどうやって働いてるの?」「Aと同じように自宅で仕事してる人が多い」「Aは私の姪?」「あんたが産んだ私たちの長女」「どこで働いてる?」「八王子」「誰と住んでる?」「夫と娘の三人暮らし」「元気?」「元気だよ。次女はL」「私は誰を産んだの?」「AとL。Lも元気だよ」「二人は私の子。会わないと忘れちゃう。分からないってこんなに辛いことはない。二人が元気で嬉しいよ」「コロナが終わったら二人とも会いに来る。時間になった。CD鳴らして、電話機返してきて」「・・・鳴った・・・夫との電話終わりました」201124c.jpg
(ハクセキレイがたった一羽、飽きもせず広い畑を右に行ったり左に行ったり。)

橙色が一瞬に塗り替えられてブルーの水面

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.11.23)
(アルツハイマーになった妻)

地平線の空の色に染まった沼に風が吹き、橙色が一瞬に塗り替えられてブルーの水面。201123.jpg

風が強まりブルーの沼、風の当たらぬ岸辺沿いに移動するコブハクチョウ親子。201123a.jpg

ハシボソガラスが飛び去れば、透かさず飛んできたツグミとムクドリ。201123b.jpg

『来てくれてありがとう』 (2020.11.23)
昨日午後の妻との面会、面会票を記入して提出。駐車場で待つと白いクマのぬいぐるみを持った妻が現れ、職員さんに渡された眼鏡をかけて網戸を開けた。風に吹かれもじゃもじゃになった髪を片手で直し、クマにお辞儀をさせ「来てくれてありがとう」「人形劇うまいね」「大学の時に始めたの。このクマさん、昨日旅行に行く前に誰かがくれた」「Aさんに頂いたんだ」「そうか、Aさんはいつも気にしてくれてありがたいね。まだお礼を言っていない」「昨日はどこへ旅行に行ったの?」「行ったよ。えーとね、バスに乗って行った。朝から行ったが泊まりはしなかった」「昨日電話したときは自分の部屋にいた。昼寝して夢を見たんじゃない?」「夢かもしれない。でも行ったよ。玄関前からバスに乗って前に座った。酔わなかったよ。どこへ行ったか忘れたが、ちゃんと帰ってきて部屋にいた」「今まで昼寝して寝てたんじゃない」「そうかもしれない。眠い」「そんなところで眠っちゃ嫌だよ」「眠らない。遠くが見えない」「老眼鏡かけてるからだ」「外したら見えたけど眩しい。年を取ると忘れることが多くなる。私も80になったから。あなたは90?」「82だよ」「おかしいんじゃないお父さんが二つしか年が違わないって」「あんたのお父さんは幹さん、私はお父さんじゃない、あんたの夫だよ」「夫だよね。あなたの奥さんは元気?」「私の奥さんはあんたじゃないの」「えっ、私はあなたの奥さんか」「マスクしてるから私のことが分からなくなった?」「分かるよ。声で分かる。人間、年を取ると色んなことを忘れる。どんどん忘れてしまって、忘れることまでなくなるのは死ぬときだ。人生っておもしろい。記憶がどんどんなくなっていくのは、自分の心がどんどんなくなっていくってことだね。それは淋しいよ」「昔のことを話したり、昔の写真を見ると忘れたと思っていたことも思い出すことがある。また来週来るよ」「来てくれてありがとう。気をつけて帰ってね」と、走りだした車に手を振っていた妻。201123c.jpg201123d.jpg

風が吹いて波立った水面はブルーに

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.11.22)
(アルツハイマーになった妻)

地平線の空の色に染まった沼、風が吹いて波立った水面はブルーに。201122.jpg

空を赤く染め片山の丘から日の出。後ろで日の出を眺めていた人たち、ラジオ体操をしに広場へ向かう。201122a.jpg

電線に仲睦まじくカワラヒワ二羽、右が雄で左は雌だろうか。201122b.jpg


『白い熊さん抱いてあげる』 (2020.11.22)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「電話だって言われたので、珍しいねって言ったら毎日来てるって肩を叩かれた。そろそろ私もけりをつけて出て行く仕度をしようと思う」「どこへ行くの?」「分からない」「今いるのはグループホーム寿、あんたの介護をしてくれている。外の病院に通わなくても訪問診療の先生が来て診察してくれる」「そうだね、掛川の病院に連れて行くのは大変だね」「ここは我孫子、岩滑じゃない」「その辺がごちゃごちゃしている。なんで我孫子に来た?」「私の職場が我孫子に移転したから」「それで坂の上に私たちの家を建てた。それで私たち結婚したの?」「もっとずっと前。私は会社に入って3年目、あんたは佐倉小の教師だったころS先生の自宅に呼ばれた。それが見合いだった」「高校の時、私はS先生に可愛がられたし、あなたもそうだったみたい」「結婚して武蔵小山に住んで、あんたは立会小の教師になった。等々力に引っ越し、Aが生まれナオミ保育園に預けた」「家の横は渓谷で滝の音が聞こえた」「公団住宅が当たって横浜の片倉台団地に引っ越したがAを預けるのに困って、またナオミ保育園に預けて、あんたは遠回りして職場に通った。そこへ私の父母の入院もあって退職を決意し、学期末までの3ヶ月間Aを岩滑に預けた」「私が迎えに行ったら縁側にいて、キミコって大きな声で呼んだ。淋しくなると、キミコ、アキラって叫んでいたって聞いた」「Lが生まれ、Aはいくわ幼稚園に通い、中丸小、六角橋中へ進み、LもAと同じコースで中丸小に入った」「その後に我孫子へ来て家を建てたんだった」「そう」「そういう足跡を子どもと一緒に訪ねたい。過去に戻ることは出来ないが、私の過去の心を慰めたい」「友だちのAさんから熊のぬいぐるみをもらった?」「もらった。電気スタンドの横に置いて、いい子いい子してあげている」「そろそろCDを鳴らして」「もう時間か。電気は入ってる。鳴ったでしょ。・・・戻ったら白い熊さん抱いてあげる」と職員さんに話す妻の声。201122c.jpg
(付かず離れずハクセキレイ二羽、広い畑で餌探し。)

風が吹いて波立てば上空を映し銀色の水面

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.11.21)
(アルツハイマーになった妻)

地平線から膨れあがる雲を映して暗い沼。風が吹いて波立てば上空を映し銀色の水面。201121.jpg

消えたハス群生地に現れたオオハクチョウ17羽。自転車道には数人のカメラマン。201121a.jpg

上空の雲を染め、広がった雲間に日の出。201121b.jpg

『今は泣いていた』 (2020.11.21)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「お父さん?」「そう」「今は泣いていた。辛くて」「何が辛いの?」「自由に動けないことが一つ。私は捕まえられ拘束されているのが辛い。何処かに閉じ込められている。それが分からないのが辛い」「誰も捕まえて閉じ込めていない」「夢かもしれないが、手賀大橋を渡った右の建物の一つで誰かに会って、お前は捕まったからもうどこにも行けないと言われた。ほっぺたに白い印をつけられて、急に泣けてきた」「近隣センターこもれびの案を作ったころ、どんな設備や機能が必要か見て歩いて、色んな施設を見学した時の記憶が残っていたのだろう。最近は行っていない」「夢か」「夢だろう。今あんたはグループホーム寿の自分の部屋にいる」「どうして?」「去年あんたは病気がちだった。私があんたの介護をしても不十分で混乱した。あんたが何処か施設に入れてと言って、ケアマネージャのMさんが探してくれた。布佐平和台病院系列の施設を二ヵ所見て申し込んだ」「申し込んだのは憶えている」「その一つがここグループホーム寿で、家に近いし、こじんまりしていて入りたかったところ。満室だったが、今年1月になって入居できた」「憶えていない」「直前に二度目の膵炎で取手の病院に入院した。退院して帰宅したら直ぐここに入った。入院中、自分はどこにいるかも分からなくなり、自分が入りたかった施設だとは理解できなかった」「私はどこが悪かった?」「目眩、吐き気、頭がガンガンするのが辛くて病院に通ったし、膵炎で二度も入院した」「直ったの?」「ここに入って訪問診療の先生に診てもらい、薬をもらって今は元気」「原因は?」「通院していた依田先生の見立て通り、体質が変わってアルツハイマーの薬の副作用が出たのだろう。膵炎の原因は分からない」「そうか、良い所にいるんだ」「監禁されてるんじゃなく、コロナの伝染病蔓延で自分の部屋での面会や外出が出来ないだけ。時間が来た。CD鳴らして」「・・・鳴った。・・・電話返してくる」201121c.jpg
(どの柿もちょっとずつ味見するのかムクドリ、あっちを突きこっちを突く。)

見る見る上空へ広がる朝焼け

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.11.20)
(アルツハイマーになった妻)

風の音に目が覚めていつもの時間に桃山公園の高台へ。地平線の雲の隙間から遠くの日の出前の光、やがて雲が染まり始め、見る見る上空へ広がる朝焼け。201120.jpg

風に波立つ沼は暗く、朝焼けだけがどんどん上空の雲を染める。201120a.jpg

朝焼けのドラマは終わって色褪せた空、やがて日の出。目映い陽光に黄金色に染まった雲。瞬時に終わった第二のドラマ。201120b.jpg

『あなた何してた?』 (2020.11.20)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「今日はお休み?」「やることはいっぱいある」「私は午前中寝てた」「お昼ご飯食べた?」「食べた。おいしかった」「朝ご飯は?」「岩滑で食べた」「あんたどこにいるの?」「ベッドに転がって天井を見ている」「あんたはグループホーム寿にいる。外出していないから岩滑には行ってない。起きて、起きなきゃ目が覚めない」「岩滑?」「岩滑で朝ご飯食べたと言った」「それは本当じゃない。私はいつまでここにいるの?」「ずっと」「なんでずっと?」「あんたが家に帰っても私はあんたの介護を出来ない。だからグループホーム寿に入った。コロナの伝染病が治まったら、外出して日中家で過ごし、夕方はグループホーム寿に戻ることも出来るようになる」「お父さんは82、帰るのは無理だよね」「昨日は誕生日、誕生会してもらったね」「もう忘れた」「AとLに誕生祝いの花をもらった」「花、どこにある?」「テーブルの上」「これは誰かがくれた。いい花だよ」「カードにAとLって書いてある」「ない、後で探す」「あんたの代わりに二人にお礼の電話しておいた」「私が風邪引いたとか、わがままばかり言ってるって言った?」「言っていない」「よかった。娘にはいいかっこしたいから。女って狡いよ。女と女だと互いに気が強いから言わなくても、男には甘えて色々不満やわがままを言う。いいことを言って欲しいが、男はうん、うんって聞いてりゃいいの。女には言えないけど、私が言えるのはお父さんだけ」「それが80歳になった感想?」「80になったね。本当は、自分が元気になるって気持ちでいないと自殺と同じ、元気になるって気持ちがなくてもっと生きたいって言うのはわがままだ。今夜来るの?」「面会に行くのは22日の日曜日。あんたは広い部屋の窓辺、私は駐車場での面会だけど」「つまらない。それでもいいから来て」「ぼつぼつ時間、CDを鳴らして」「・・・鳴った・・・夫です」。Sさんから「昨日はおいしいケーキをみんなで頂いて、誕生日を祝いました」と。201120c.jpg
(いつも二羽で来るハクセキレイ。ちょこちょこと畑を歩き、連れを待つのか立ち止まっては振り返る。)