ひとまず終了

撮影ノート『手賀沼有情』 (2021.3.22)
(アルツハイマーになった妻)

『ひとまず終了』 (2021.3.22)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「びっくりして腰を抜かした。AとLから誕生祝の手紙が来た」「去年のものだね。花をもらった時のものだ」「今日は何月何日?」「3月21日」「去年11月に誕生日の花をくれた。花に手紙が付いていた。お父さんが来て、話をしてくれたの?」「私はその頃、グループホーム寿には行っていない。コロナが流行っていて面会禁止だったから」「私は今、返事を書いていた。その必要がないなら気が楽になった。見当違いのお祝いありがとうと、書こうとしていた。毎日、鏡台とテーブルしか使っていないが、この手紙が出てきた。何が何だか分からなくなっていた」「花を貰った時に付いていたものだが、昨日あんたが箱の中を調べたから出てきたのでしょう。何日か前に箱を探していたら、私とあんたのツーショットが3枚出てきた。その翌日には、また見つからなくなった」「知らない」「私は、毎日電話しているよ」「憶えてない。写真を見ると姉妹の名前が直ぐに出てきて言える。父の周りに姉妹7人が居る。顔を見て名前の分からない人が一人いる」「それは、あんたのすぐ下の妹のHさんだ」「私80歳。お父さんが高校3年のとき、私が1年だったから、お父さんは82」「私は片方しか見えないから、あんたの顔を忘れちゃう。だから、あんたも私もお互いに写真を見て電話するといいね」「これから、写真を見て誰だか分からなくなったりしても、声を聞くと誰だか分かる。昔のことが頭の中からなくなっていくのは辛い」「見える間に会いたい」「見える内でもあの世に行く人がいる。見えなくなった人でも生きている人がいる。人はいろいろ。年取っても同じであることはない。何かの会であっても同じことが違うことになる。父の顔を忘れても、頭の中に残っている可能性はある」「年だもんね」「今から言っておく。長い間お世話になりましたと言いたい」「私の心に刻んだよ。私も沢山面倒をみて貰った。有難うね」「50年以上一緒に生きてきた。怒られたって恐くない。そういう間柄になっている。長いことありがとう。最後にお別れするときにね、私に言えることは、昔のお父さんじゃないかも知れないが、いろいろ頭の中に残っている。長い間ありがとうね。人生にはこうしてどの夫婦も別れていった。死に別れした人は死ねるまで一緒に生きたと言える。長い間、有難う。言える間に言っておく」「私も言っておく。公子と一緒に生きて沢山面倒見てくれて有難う。二人で生きた」「お互いに、有難う・有難うで終われば、あの世に行ってきちんと報告できる。でも、まだお別れじゃないよ」「時間になったからCD鳴らして」・・・。「鳴ったから電話返してくる」

(残念ながら、急激な視力低下によってパソコンに向かっての作業が不可能になりました。これを以ってブログは終了いたします。まだまだこれからも介護のことが続くでしょう。)

小雨に霞むネコの木

撮影ノート『手賀沼有情』 (2021.3.21)
(アルツハイマーになった妻)

k小雨に霞むネコの木。
(私の目には暗い沼、撮れたのはこの一枚だけ。昨日は文章を書けたが、今日はポインターが見えなく書けるるかどうか。)



『そうか目だったね』 (2021.3.21)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」[窓の外を見ていた。駐車場の上に雲が見えて、雲がもっと高くなったらいいなと思って一句作ろうとしていた。まだ途中、さっきより雲が少し薄くなってきた。そういう詩歌を作ろうと窓の外を見ている。垣根のアカメがきれい。窓が額縁のようになって、風に煽られて赤い新芽が揺れている。直ぐ前を見るよりも、窓辺に置いてある鏡台の鏡に映って横から見た方が揺れるのがきれい。、お父さんがずっと私の遊びと付き合って、関心を持っていてくれなくてもいいよ。出来上がったらちゃんと伝えるから。何回かこうやって作って投稿したら選ばれて本に載ったことがある。これが夢だったらみんなに笑われちゃうね。今日は曇り空でも赤い葉がキラキラ輝いているように見える。窓の直ぐ外は建物の陰でそんなに風が吹いていないが、横の方を覗くと建物の向こうまで続く垣根は風に揺られている。今日は何のご用時?」「毎日電話してご機嫌伺いだよ」「私はうっかり忘れてた。お父さん元気?」「元気」「私は幾つ?」「80」「じゃぁお父さんは82、二人で建てた家にいるの?」「そう。段々歳を取るし、家も古くなるからいずれ処分しなければならない」「私はお父さんの言う通りでいい。思うようにして。施設に入って一緒に住めるといいね」「それは理想だが別々になることが多いね」「お父さんと一緒にいたいが、一緒に住まなくてもどこにいるかはっきり教えてもらって、時々会いに行けたらいい。どうしているかの情報が分かればいい。一緒の屋根の下でなくても、心が繋がっていれば一緒ってことだよ。人間らしく生きようね」「今日は公子に諭されたね」「理想を口で言っても、それじゃぁ生きられないよ」「私の目が急に悪くなって、早く家を処分することになったらごめんね」「そうか目だったね。辛いが頑張って。私はあなたに一杯ごめんがあるが、両方で言ったってしょうがない」「そうだね。時間だ。CD鳴らして」「・・・鳴ったから電話返してくる]210321ss.jpg

いつまでも暗い曇天の朝

撮影ノート『手賀沼有情』 (2021.3.20)
(アルツハイマーになった妻)

いつまでも暗い曇天の朝。代わり映えしないが心に刻んでおきたい風景。210320.jpg

日々暗くなる同じ時刻の同じ風景。いつまで撮れるか、風前の灯火と思いつつ最後の悪あがき。私にとっては挑戦。210320a.jpg


『お父さんかわいそう』 (2021.3.20)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「どうしたの?」「毎日電話してるよ」「何度も電話もらった記憶はない。何があったの?」「いつも通りのご機嫌伺いだ」「いいことだね。お父さんは元気?」「元気」「何か疲れた声、何かあった?」「市の介護認定の面会調査があった」「私の?」「違う、私の」「そんなに悪いの?」「目が段々悪くなった。今までも両腕の可動域が狭かったし、腰痛や足が弱って、私が座ったり腰掛けて立てなくなるとあんたが助けてくれていたたじゃない。何とか一人で頑張ったが、ここに来て目が不自由になって出来ないことが増えたから介護認定を申請した」「お父さんかわいそう。一生懸命働いてきたのに。お父さんに介護が必要になったら私が面倒見るつもりだった。私が帰って手助けしようか。その気になれば私だって色々できると思う」「ありがとうね。あんたがグループホーム寿にいるのはあんたも出来なくなったことが増えて、それをやってもらっているからだ。黙っていても毎日ご飯が出て来るね」「そう。私はやっていない」「掃除、洗濯、入浴、体操などは?」「自分でやった記憶はない。全部やってもらったとは考えても見なかった」「あんたの気持ちは嬉しいけど、あんたが帰ってきたら今やってもらっていることは全部私がやることになる。それが出来なくてあんたはそこに入った」「私はバカになって自分ができないこを考えなかった。私がお父さんの面倒を見られないのは辛い」「20年前に心臓の手術をしてからずっとあんたは私の面倒を見てくれていた。十分やってくれたよ。今度は私が誰かに助けてもらう」「お金は大丈夫?」「大丈夫。今まで通り近くにいて毎日電話するよ」「嬉しい。私に出来ることは何でも言ってね。隠さず教えてくれてありがとう」「公子と詮のツーショットの写真は出てきた?」「何だった?」「箱の中の二人の写真探すの」「電話終わったら探す。もうCD鳴らすよ」「明日も電話する」「待ってる。・・・鳴ったから電話返してくる」210320b.jpg

(去年も撮ったような気がするコブシとゲンペイモモの競演。)

高台まで辿り着けば木々の間に暗い沼

撮影ノート『手賀沼有情』 (2021.3.19)
(アルツハイマーになった妻)

高台まで辿り着けば木々の間に暗い沼。210319.jpg

いつまでも暗い曇天でも穏やかな沼。心に映る沼には不安の波が立つ。今日は介護認定の調査を受ける日。210319a.jpg



『外はいい天気』 (2021.3.19)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「何が何だかわからない。昼寝していた。分からないことは目が覚めてから説明する。窓の外はきれいな青空。手前の木の葉が赤くてきれい。段々目が覚めてきた。何だかを申請しなくてはならない。手賀沼大橋の向こうまで行ってきて、市役所の方から坂を登った所に何かを作った」「私たちの家?」「そうじゃない。みんなで花を植えた。あなたも参加した」「そんな記憶はない。コロナが流行って去年から外出してない」「それでも花壇をコンテストに申請した。入賞したという結果が分かった」「何か書類があるの?」「えーとね、ここにはない」「コロナが流行っていて外出できないし、さっきまで昼寝していたから夢だったかも」「眠っていて起こされたので何が何だかわからない。。今は惚けてるから何を言っているのか分からない。外はいい天気。赤い垣根の先は駐車場。その向こうは市役所の方へ降りて行く道」「そうだ、公子に言っておくことがあった。うちの自動車、処分する。目がよく見えないので乗っていなかったが、目が治ることはなさそうだし、自動車は止めると決心した。今朝Tさんに電話して土曜日に持って行ってくれることになった」「歩いて行けるところは歩いて行った方がいい。決心したら直ぐやるのは、生活も早く改善されてよくなる。窓の外の駐車場の空が青くてきれい。窓の外のアカメが輝いている。きれいだよ。目が覚めてくると段々色々な物が見えてくる」「きれいな景色でいいね」「おかげで目が覚めた。窓の脇に母の形見の鏡台がある。母はどうした?」「20年前に亡くなった」「順番だから仕方ないね」「富士山の絵がある」「昨日一番大事な写真が出てきたがどうした?」「知らない。忘れた。忘れたってことは記憶にないこと。私にはなかったこと。アハハ」「私とあんたの最後に撮ったツーショット、大事にしてよ」「怒られた。アハハ。後でちゃんと探しておく」「時間だ、CD鳴らして」「・・・鳴った。電話返してくる」210319b.jpg

(大分咲いたゲンペイモモの花。)

昨日と同じはっきりしない朝、黄砂の影響?

撮影ノート『手賀沼有情』 (2021.3.18)
(アルツハイマーになった妻)

昨日と同じはっきりしない朝、黄砂の影響?210318.jpg

岡発戸の丘の上、あまり眩しくはならない日の出。210318a.jpg




『大事な写真、直ぐ探す』 (2021.3.18)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「自分の家にいるのね。そこに行くのはまだまだだね。午前中はテーブルの片付けをして、もうちょっと残ったことをやっていた。大体整ってきた。この年になって布団を動かすと疲れる」「そうか、偉いね」「偉いでしょう。この頃、力が無くなった。部屋が整ってくると満足できる。日が西から射し、部屋には日は入らないが、窓の音は陽が当たっている。空気が入れ替わるように窓を開けた。風が入ってくる。お父さんは坂の上の家?」」「そう」「ここからどのくらい時間が掛かる?」「356を歩けば1200mだから15分と少し掛かりそう」「私は幾つ? 60くらいと思っていたが」「20もさば読んで」「80か、嫌だよう。壁の所に富士山の絵がある。誰かが来たらこれは私と夫の故郷の絵だと話す。私の一番大事な絵だ」「一番大事な絵よりももっと大事な写真がある。あんたが私の顔を忘れたら思い出すように、あんたと私二人が写った写真をあげた」「知らない」「もう三回もあげたがどれも仕舞い込んで見つからない。去年面会が禁止される直前に撮った最後のツーショットだよ」「そんな大事な写真、直ぐ探す。箱の中だ。岩滑の縁側に姉妹が並んだ写真。厚い写真帳にいっぱい写真が入ってる。誰かのヨーロッパ旅行の写真」「あんたと妹3人が旅行した写真だ」「これ宝塚でしょ、我孫子合唱祭、私とあんた、手賀沼の写真でしょ」「ちょっと待って、あんたと私の写真、あんたが濃い茶色、私が青と茶色のセーター?」「そう。他にも大きいプリントと、台に張った写真がある」「それそれ、富士山よりそっちが大事。いつでも見られるように出しておいて。他のと混じらないように別に置いてね」「分かった。手賀沼コンテストのパンフレット」「もういい、捜し物はあった」「何が」「私とあんたの写真」「どこに?」「横にに置いたでしう」「あった」「大事にしてね」「惚けてもこれは忘れない」「もう時間だ。CD鳴らして」「・・・鳴った。電話機返してくる」210318ba.jpg

(久しぶりに近所のアンテナにヒヨドリ)

晴天だろうが私の目には暗い朝

撮影ノート『手賀沼有情』 (2021.3.17)
(アルツハイマーになった妻)

晴天だろうが私の目には暗い朝、撮った写真をモニターで見ても私の目には暗い朝。210317.jpg

岡発戸の丘の上に日の出。日々斜面林に近寄る日の出の場所、少しずつ衰える視力との競争。210317a.jpg

こんな撮り方もあったと撮ってみた日の出。210317b.jpg


『お父さんはずっと元気』 (2021.3.17)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「どちら様? 分からないと出られません。何かトンチンカンなことを言って落ち着かないね。何か書いたものが受理されているかどうか」「何の書類?」「手紙がある」と友人のAさんが入所1年目にくれた手紙を読み始める。もう何度も読み聞かされた手紙だ。「心配しなくていい。Aさんには喜んでいたと伝えた」「手紙をもらうと嬉しいよ。お父さんどこにいる?」「家」「家ってどこ?」「Aさんの家から坂を登った所」「Aさんの家って?」「私が住んでいるのは、あんたがグループホーム寿に入る前に私と住んでいた家」「私は市役所の近くの部屋に住んでいる」「そこはグループホーム寿」「市役所の先を手賀沼沿いに行って、Aさんの家の横から坂を登ったら私たちの家。Aさんは何度も手紙をくれた。話をしていたらそうだって分かった。自分で自分の過去を消していた、それが事実なら甘んじて受け入れるしかない。Aさんにずっと返事を出していない」「出さなくてもいい。Aさんは返事を出せないのを知っている」「恥ずかしいが平気でこういうことを話すようになった。返事を出せないが、手紙をもらうと嬉しい」「私からあんたの謝意を伝えておくね」「お父さんはずっと元気でいいね」「20年前には心臓の手術、右目眼底出血で失明しそうになって、あんたが一生懸命助けてくれた。ずっと元気だったが、最近右目は再発し見えなくなった。左目の白内障の手術をしたが最近急速に視力が低下している。脳内血流が弱くて視神経が弱っていると。今のうちに介護認定など手を打っておきたいと思ってMさんに相談することになった」「早めに準備することはいいことだ。私がお父さんの面倒を見るつもりだったのに辛いよ」「何かあったら隠さないって約束していたから話した。だから早めに手を打った。心配しないでね」「私は悲しいけど、お父さんは相談できる人がいるからいい」「時間だ。CD鳴らして」「・・・鳴った。涙を拭いて電話機返してくる」210317c.jpg
(一日で一気に増えたゲンペイモモの花)

薄雲に浮かぶ厚い雲、朝焼けになりそうな雰囲気

撮影ノート『手賀沼有情』 (2021.3.16)
(アルツハイマーになった妻)

薄雲に浮かぶ厚い雲、朝焼けになりそうな雰囲気。210316.jpg

淡い朝焼けが色褪せ始め、岡発戸の丘の上に日の出。210316a.jpg

鳥がいないのではなく私の目には見えない広場。諦めて帰ろうとすれば目の前にムクドリ。210316b.jpg


『坂の上の家での私の原点』 (2021.3.16)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「今どこ?」「家」「会社は辞めた?」「20年前に辞めた。それからずっとあんたと一緒に暮らした」「私はどこにいる?」「グループホーム寿」「私はいつこの会社に採用された?」「会社じゃない。そこは介護施設」「私は介護する方、される方?」「される方」「あなたは会社を辞めて20年、私はここに1年。歳はそんなに違わないのに年数が合わない」「あんたはグループホーム寿に入るまで私と一緒に住んでいた」「山の上の家?」「そう」「記憶にない」「あんたはお茶や近隣センターのボランティアに忙しかった」「私らしい」「山の上の自分たちの家に一緒に住んだ?」「そう」「やっと分かった気がする」「物忘れが増えて近隣センターやお茶を辞めた」「自分から辞めた?」「そう」「鬱的になってあちこちの病院に連れて行った。依田先生の指示で柏市民病院でMRIを受け、アルツハイマーと依田先生が診断した」「バスに乗って何処かへ通った?」「ママメイト、デイサービスあびこ、ロイヤルに通った」「利根川の土手を走った。手賀沼の西の方に泊まった」「手賀沼じゃなくロイヤルの近くのわらく。ショートステイに行った。あんたが病気がちになり私が介護出来なくなって、あんたも施設に入りたいと言った。あんたと二人でグループホーム寿を見学し申し込んだ。去年1月まで待って入居できた」「私はここで元気になって、色々なことを考えられるようになった。坂の上の家に来たとき旅館に泊まった」「門松だね」「下の子の小学校のことで第一小に行ったら高野山小が出来たばかりと言われた。下の子を連れて近くの新しい小学校に行ったのが坂の上の家での私の原点」「色々思い出したね」「歴史は一つ分かるとずっと分かる。すごく嬉しい。坂の上の家は気持ちが落ち着くところ。記憶にある内に見に行きたい」「コロナが収まるまで待ってね」「記憶がなくなったら行かなくていい。お父さんに会いたい」「時間だ。CD鳴らして」「・・・鳴ったから電話返してくる」210316c.jpg
(広場のゲンペイモモの枝ににちらほらと花)

高台に立てば快晴の空の下、波立って青い水面

撮影ノート『手賀沼有情』 (2021.3.15)
(アルツハイマーになった妻)

高台に立てば快晴の空の下、波立って青い水面。210315.jpg

日に日に斜面林寄りになる日の出、ここから撮れる日の出はあと何日?210315a.jpg

日の出とともに広場にやって来たスズメたち。210315b.jpg



『今ね、困っている』 (2021.3.15)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「今ね、困っている。今日は部屋に置いてある物のチェック当番を一人でやった。あとで結果が心配になった。あるべき所にあるものがないのを気にしている。嘘か本当か分からないが、あるべき所にものがないのはちゃんと片付けていない証拠。もう止めたと思って部屋に戻った。「具体的に何がないの?」「頭にきて、何だか忘れちゃった」「あんたたちが当番でやるのはリハビリの意味もあるのかな。そこの一員として役割を果たそうとする意識を持ち続けてもらおうと言うこと。当番としてやったことの責任感は大切だが、失敗したか分からないことをいつまでもくよくよ心配する必要はない。大事なことをやってもらったら、きっと職員さんも一緒に見てくれている」「お父さんが言ったからって大丈夫とは限らない。こういうことは気になる。ちゃんと出来なければここを辞めようと思っている」「それは困る」「お父さんは家にいるから私が帰ったっていいだろう」「あんたが帰ってくると私は二人分の仕事をしなくてはならない」「じゃあ私を捨てたのか?」「そうじゃない。あんたが病気がちで介護は私の手に余った。あんたも共倒れを心配して施設に入りたいと言った。それでグループホーム寿を二人で見学し申し込んだ。直ぐには入れなかったが、去年1月から入居できた」「そうか、眠くなった」「せっかく電話した。もうちょっと話そうよ。グループホーム寿にいるから食事、洗濯、掃除、入浴、体操などの介護や生活支援、訪問診療の先生の診察を受けてあんたは元気になった」「ひどい病気?」「膵炎で二度入院した。一回は我孫子東邦病院、二度目はJA取手医療センター」「おぼろげに大きい川を渡ったのを思いだした」「車椅子であんたを病院のトイレに連れて行った。中で動きがとれなくなって助け出してもらった。アハハ」「アハハ。治って今だから笑えるね」「時間だ、CD鳴らして」「・・・鳴った。電話機返してくる」210315c.jpg

(ちょこちょこと走って立ち止まり胸を張ったツグミ、また走り出すかと思えばじっと佇む。)

曇天の裾野に幾筋も淡いオレンジ色の雲の隙間

撮影ノート『手賀沼有情』 (2021.3.14)
(アルツハイマーになった妻)

曇天の裾野に幾筋も淡いオレンジ色の雲の隙間。210314.jpg

雲の隙間の向こうに昇る太陽、赤く滲み出るように雲間の周りを丸く染める。210314a.jpg

一輪だけ赤く咲いたゲンペイモモの花。210314b.jpg


『頭の中に絵が出ない』 (2021.3.14)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「どこにいる?」「家」「あなたの家どこだった?」「Aさんの家から坂を登った所」「坂を登って右に行けば神社?」「そう」「左は駐車場になっている」「家がないのか、あんたの頭にある景色はどこ?」「頭の中は駅の方から来て左に曲がった。近くに行って絵がなくなった」「私がいるところは、二人で建て、一緒に住んで子育てをした家」「知識としては分かるが、頭の中に絵が出ない」「今はどこの景色?」「坂を下って右にAさんの家、左へ行けば神社に上る階段、登った先に私たちの家があった。そこに住んでいた?」「そう」「その道をまっすぐ行って、大きい道に出る前に左に行くと下の子を入れた学校」「高野山小学校」「新しく出来た学校だった。上の子は?」「我孫子中学校、小学校の方に曲がらず真っ直ぐ広い道に出て少し東へ行った所」「中学は分からない。その辺の見当は付くが、どこを曲がるか頭の中から消えている」「私たちが住んでいた家はどこ?」「高野山」「高野山って我孫子じゃない。高野山近くの駅は?」「天王台と東我孫子」「線路の名前は?」「天王台は常磐線、東我孫子は無人駅で成田線」「私たちの近くにあった。356はどこからどこへ行くの?」「我孫子から、消防署、タビヤ、我孫子中学校の前を通って成田に向かい、銚子まで行く」「私たちの家はタビヤの横を入ったところ」「そう」「私たちが使った駅は?」「我孫子と天王台。バスで出掛けるときはタビヤの前から我孫子に出た。あんたが車を運転して駅までの送り迎えをしてくれた」「私は運転していたのか」「依田先生からアルツハイマーの薬を始めるから車は止めるように言われ、その日からぴたりと止めた」「偉いねぇ公子さん。私、まだ会話は出来ている。耳に聞こえていることに反応できる間は生きられると思う。こういう病気を治せる薬はあるの」「まだない」「回復はしないなら、一時一時を会話できたらいいとする」「時間だ。電話機返してきて」「・・・鳴ったから電話返してくる」210314c.jpg
(風が強く広場にツグミもスズメもムクドリも来なかった朝、帰ろうとしたら目の前に飛来、レンズを向けても逃げようとしなかったムクドリ。)

雨が静かに降る朝は無彩色、心の中まで雨が降る

撮影ノート『手賀沼有情』 (2021.3.13)
(アルツハイマーになった妻)

雨が静かに降る朝は無彩色、心の中まで雨が降る。210313.jpg

最近広場から子どもたちの元気な声が聞こえないのはコロナのせいかと思ったが、こんな看板も影響しているのだろうか。210313a.jpg

街灯の下、雨に濡れて咲くコブシの花。スズメもツグミもムクドリも来ていない広場。210313b.jpg


『ここを終わりにする』 (2021.3.13)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「どこにいる?」「家」「高野山の家?」「そう」「ここを終わりにするのでお礼の手紙を職員さんに渡した」「どうして」「いつまでもいると迷惑が掛かるから引退する」「どこへ行くの?」「そこまでは考えていなかった。自分で探す」「あんたは今グループホーム寿にいる。ここだって入るのは大変だった。私と一緒に住んでいた頃病気がちになって、私はあんたの介護をしきれなくなった。あんたもこのままでは共倒れになるから施設に入りたいと言って、ケアマネージャのMさんに探してもらって、グループホーム寿をあんたと私が見学して申し込んだ。直ぐには入れず去年1月に入居できた。規則正しい食事や介護、訪問診療の先生の診察を受けてあんたはすっかり元気になった。グループホーム寿はいつまでいてもいいんだよ」「私はどうすればいいの。いつまでも世話になっていたら迷惑を掛ける。一人で死ぬしかないと思った。ここをやめてからどうするかまで考えていなかった。自然に消えると思った。私はバカになって、いいことをするつもりで手紙を渡して、清々しい気分になってあの世へ行けると思った」「死ぬのはそんなに簡単じゃない。あんたが死んだら私は悲しい」「私は何ってバカなことをした。今日はこれで最後だと思って手紙を渡した。そうすれば死ねると思った」「もう心配しないで、私がちゃんと引き取って取り消すから」「私はおばかさん。お父さんに相談すればよかった。お父さん、取り消すように頼んで」「私がちゃんと引き取ったからもう心配しないで」「私は死にたいとは思っていない。バカになっていつまでも迷惑を掛けたくない、お父さんを苦しめたくないから夫婦を早く終わらせたい。死ぬ時は、後はよろしくねというくらいに思った。だから死ぬしかない」「死んだら私は辛い」「本当は私が辛いから死にたい」「もう心配しないで。明日も電話する」「待ってる」「時間だ、CD鳴らして」「・・・鳴ったから電話返してくる」210313c.jpg
(「手賀沼だって近いが出て行けないから遠い」と呟いた妻。今朝の手賀沼を見せたら、寂しいと涙を流しそうな沼。)

上空は薄雲でも、地平線高くまで厚い雲

撮影ノート『手賀沼有情』 (2021.3.12)
(アルツハイマーになった妻)

上空は薄雲でも、地平線高くまで厚い雲。日の出はなさそうな空模様。210312.jpg

岸辺のヤナギが急に輝き、振り返れば厚い雲から出て薄雲の向こうに日の出。210312a.jpg

木の天辺に膨らんだ芽を啄むシジュウカラ。210312b.jpg


『方向が分からない』 (2021.3.12)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「午前中が終わったばかりでも太陽が部屋に入らない。私、方向が分からない。どこから太陽が入るか見当が付かない」「午後だから太陽は西へ行く。部屋の窓は東向きだから日は入らない。窓の外の垣根の向こうに陽が当たって明るくなる」「ここには冷たい風が来る」「窓は開いていない?」「さっき開けたが閉めた」「エアコンは?」「点いているけど風が冷たい」「職員さんに見て貰おう」と職員さんにエアコンのチェックをお願いした。部屋は暖まっていて風だけが出ていたので風を止めたと職員さん。妻に代わると「あっちの部屋は陽が当たっていた。外に出れば日向ぼっこできる。あなたは家にいるのね、陽は当たる?」「南側の窓からは日が入っている」「いいな、私は引っ越したい」「あんたの部屋だって午前中は日が入る」「だって私は午前中に部屋にいない」「何をしてた?」「もう思い出せない」「午後西日が入ってくると夏は辛い」「そうだね。日の入りは廊下側だね」「そう」「そういうことが分からなくなった。部屋の中に一人でいるのは辛い。お父さんに会いたい。誰だっていいから話したい。私って一人でいられない性分だね。私の部屋には太陽が当たらない。太陽はいい友だちなのに。窓の外を見て太陽はどっちか考える。それが分からないと辛い。死ぬわけではないからここで頑張る。私のお母さんは田舎にいる」「20年以上前に亡くなった」「私の故郷は掛川市岩滑、私とお父さんは別々だけど我孫子市だね」「そう」「お父さんからの電話は滅多にないから色々言いたい」「毎日電話してる」「知らない。悪い娘だね。娘は私の子どもたちだ。私は母親、お父さんも父親、あなたはお父さんじゃなく私の夫。手賀沼だって近いが出て行けないから遠い」「毎日電話する」「お父さんは近くにいても話しだけでは遠い。私の頭に景色が浮かばない時は何も分からなくなる。その時はごめんね」「時間だ。CD鳴らして」「・・・鳴った。電話返してくる」210312c.jpg
(テレビのアンテナから民家の庭に飛んだヒヨドリ、庭木の隙間から覗けば梅の小枝に。)

地平線を淡くオレンジに染め何日ぶりかの快晴

撮影ノート『手賀沼有情』 (2021.3.11)
(アルツハイマーになった妻)

地平線を淡くオレンジに染め何日ぶりかの快晴。210311.jpg

岡発戸の丘の上に登れば眩しい日の出、途端に辺りの景色は暗転。210311a.jpg

這うように頭を下げたままで何かを啄むスズメ、5~10羽の小さな群があちこちに。食べるものが変わったのかいつもと違うスズメたち。210311b.jpg

『お久しぶりって感じ』 (2021.3.11)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「お久しぶりって感じ、いつお会いした」「面会は出来なくても、毎日電話してる。部屋で面会できたのは去年2月末まで、去年夏から今年1月10日まではあんたが大きい部屋の窓、私が駐車場で少し離れていて面会できた。緊急事態宣言が出て面会出来なくなった」「そういう記憶は何もない。私は一度大橋の袂まで会いに行って会えずに戻ってきた」「ずっと面会も外出も禁止だから夢をみたのだろう」「私は帰るのを楽しみにしていたので辛いよ」「今は電話で我慢してね」「我慢するしかないって愉しくない」「私は髪が伸びたが床屋に行けない」「長髪はかっこいい」「白髪じゃね」「それもそうだ」「色々思い出すように写真を見るといい。箱に入ってる」「箱を開けた。宝塚の写真だ」「コーラスで行った時だね」「Mさんと並んだ写真がある」「あんたのケアマネージャだった人。大変世話になった」「長女夫婦と子どもの写真、名前何だった?」「A」「家で下の娘が赤ん坊を抱いて、横にAの子どもを抱いた私、ピアノの前にあなた。その横にAと夫」「何日か前にも見た。あんたは写真が見えてるが私には見えない」「こっちに来て一緒に見ようよ」「コロナが流行っていて面会できない。その内収まったら一緒に見よう」「私たちだっていつまでも生きてはいられない。あなたに会うまでは死にたくない。あなたは会社を辞めた?」「20年も前に。それからずっとあんたと一緒に暮らしていた。あんたがグループホーム寿に入ってからは一人で同じ家に住んでいる」「一緒に住んだ家は高台、手賀沼から坂を登った所?」「そう」「家の先にある小学校に下の子を入れた。上の子は中学に入れた。中学はどこ?」「家から356に出て東へ行くと自動車学校があって、その向こうに中学校がある。その先は天王台駅に行く十字路」「その辺がごちゃごちゃしていて分からない。思い出すように写真を撮ってきて」「そうしよう。時間だ、CD鳴らして」「・・・鳴ったから電話返してくる」210311c.jpg
(公園付近からヒヨドリの姿が消えて、住宅地の庭に近い電線やテレビのアンテナにちらほらと。)

厚い雲の隙間の薄雲を染めるた夜明け

撮影ノート『手賀沼有情』 (2021.3.10)
(アルツハイマーになった妻)

厚い雲の隙間の薄雲を染めた夜明け。210310.jpg

オレンジ色に染まった薄雲の中に日の出。210310a.jpg

つぼみをいっぱいつけた桐の木にツグミ。210310b.jpg



『私は誰と結婚した?』 (2021.3.10)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「どこにいるの?」「Aさんの家から坂を登った所」「近くだね」「二人でずっと住んでいた家」「私たちが建てた家?」「そう」「私たちに子どもはいた?」「AとLの二人」「私たちの子ども?」「そう」「どこへ行った?」「Aは八王子にいる」「Aって八王子にいる人の子ども?」「私たちの長女だよ」「ごじゃごじゃになって分からない」「Aは八王子にいて、もう大学生になった女の子がいる。私たちの次女のLは横浜に住んでいる。今年大学生になる長男と中学生の次男がいる」「私たちの子どもは誰と誰?」「AとL」「幾つになった?」「Aは50過ぎたしLは50手前」「私が50くらいいと思っていたのに」「あんんたは80。鏡台で自分の顔を見てごらん、80の顔になっているから」「あ~あ、私も歳を取った。私は幾つ」「80」「私は80。自分では50くらいと思っていた。私の部屋に静岡県側から見た富士山の絵がある。私の故郷だから飾ってあって、来た人に自慢して見せている。私の故郷は掛川市岩滑だけど、生まれた頃は岩滑村、段々合併して今は掛川市になった。あんたは?」「浜岡」「佐倉小に勤めていた頃講習会で行った。新野にはおばさんがいた。私は独り者?」「一人じゃない。私と夫婦」「お父さんは幾つ?」「82」「私より2年上、掛西高で一年間だけ一緒だったのね」「その頃は知らなかった」「誰の仲人で知り合った?」「S先生」「河東の人、掛西高の共通の恩師ね」「そう、化学の先生」「顔はもう思い出せない」「私は誰と結婚した?」「私と」「びっくりしたりほっとした」「今あなたはどこにいる」「Aさんの家から坂を登った所」「二人で建てた家だね。私はどこに住んでいる?」「グループホーム寿、今あんたがいる部屋」「私は一人だと泣いていたのに、あなたと結婚していて、子どもや孫もいた。二人で暮らした記憶は少しだけど、同じ故郷だと共通の話が出来ていいね」「時間だ。CDは鳴っているから電話機を返して」「どこへ?」「事務所」「行ってくる」210310c.jpg
(鳴きながらしだれ梅に止まったヒヨドリ、相棒だろうか後から来たもう一羽と連れだって飛び去る。)

高台に立てば沼上空は濃淡のある曇天

撮影ノート『手賀沼有情』 (2021.3.9)
(アルツハイマーになった妻)

高台に立てば沼上空は濃淡のある曇天。210309.jpg

しばらく待ったが人の姿が現れないケヤキの木の回り、遊歩道もジョギングの人が数人通っただけ。210309a.jpg

スズメの群がどこへ降りたか見にくい曇天の朝。210309b.jpg


『いつまでここにいるの?』 (2021.3.9)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「眠っていた。まだ眠い。元気?」「元気」「今日は何曜日?」「月曜日」「いつまでここにいるの?」「ずっと」「家に帰るかと思ってた。いやだよう、昨日は帰れると思って嬉しかったのに」「コロナが収まったら家に来て写真を見ながら話そうねって言った」「お父さんはいつまでいるの?」「どこに?」「利根川の方の大勢人がいるところに泊まってるんじゃない」「以前あんたと住んでいた家にいる」「それはどこ?」「Aさんの家から坂を登った所」「私も住んだことがある」「それは私と暮らしていた頃のこと」「私は身体の具合が悪くて大勢の人がいるところに入れられた。そこで、柏の方へ一人で歩いて行かされて、帰ってきた」「辛かった夢のことだね。いつも辛いこと、嫌なこと、家に帰れないことがあると思い出す夢の記憶だね」「私は何でここにいる?」「今あんたがいるのはグループホーム寿。私と暮らしていた頃、目眩や吐き気や頭がガンガンして病院通いした。膵炎で入院もした。私があんたを介護し病院に連れて行ったが、十分な介護は出来なかった。あんたも二人が共倒れになるのを心配して施設に入れてくれと言った。二人でグループホーム寿を見学して申し込んだが満室だった。去年1月にあんたはグループホーム寿に入居できた」「病気になったこともここへ入ったことも知らない」「ここへ入る直前、二度目の膵炎で取手の病院に入院し、その間に色んな記憶が消えた。退院して直ぐにここに来たから記憶がないのだろう。ここへ来て専門家の介護を受け、規則正しい生活や食事をし、訪問診療の先生に診てもらい目眩や吐き気、頭のガンガンも治ったし、膵炎も再発せず元気になった」「誰と来た?」「私とAとL」「二人はどうしてる?」「Aは八王子、Lは横浜」「二人を迎えに行けず悲しい思いをさせたね」「二人とも結婚して家庭を持ち、子どももいて幸せ」「よかった。泣けてきちゃう」「時間だ。CD鳴らして」「・・・鳴ったから電話返してくる」210309c.jpg
(ゲンペイモモの脇にやっと咲き始めたのコブシ、去年のように咲き競うのが待ち遠しい。)

小雨降る高台に立てば、濡れた木々と未だ暗い沼

撮影ノート『手賀沼有情』 (2021.3.8)
(アルツハイマーになった妻)

小雨降る高台に立てば、濡れた木々と未だ暗い沼。210308.jpg

また通り雨か傘に落ちる雨粒の音、白く煙り始めた対岸やネコの木。210308a.jpg

昨日よりずっと大きくなったゲンペイモモの蕾。210308b.jpg



『写真は貴重な記録』 (2021.3.8)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「こんにちは。久しぶりだね」「昨日電話した」「記憶にない。何話した?」「写真を見て話した」「写真は貴重な記録。何の写真?」「あんたのピアノの前に並んだ私たちと、AとLの家族の写真を見て話しをした。もう一枚は岩滑であんたの両親と姉妹が並んだ写真、こっちは時間切れで話せなかった」「箱を見ている。・・・これかな、父の右に母、両側に私や姉妹がいる。母の横はH、Na、M、父の左はSa、Su、No、私。後ろの列は夫たちや子どもがいるがどれが誰だか分からない。明日あなたに会いに行く。どこへ行けばいい? 一番近いところはどこ?」「一番近いのは私たちの家」「明日来いと言えば迷いながら行くかもしれない。目が衰えると記憶も衰えるみたい。メガネをどこかに仕舞い忘れた。明日、写真を持って行く」「明日はダメ」「お客が来るの? 掃除してないから? あなたの奥さんが来るから?」「私の奥さんはあんた」「えっ、そういう記憶は全然ない。写真を見て話すといろいろ分かる。何で明日はダメ?」「コロナが流行っていて外出も面会も出来ない」「そんなに大変なんだ。私の姉妹はどうしている?」「Sa姉さんは亡くなった。Su姉さんはアルツハイマーになって浜岡の施設にいる」「聞いたような気がする」「No姉さんは西ノ谷、Hさんは横地、Maさんは横浜、Maさんは八王子にいて元気」「八王子には私の娘もいる」「そう、八王子にはA夫婦と娘がいる」「Su姉さんと私の病気、直せる薬はある?」「進行を遅らせる薬はある。あんたはこうやって話しをするとちゃんと話せる。だけど後になるそれを忘れる。忘れたっていい、過去のことだから。次ぎに話すときはちゃんと話せるから、その時その時を大事に過ごせばいい」「私は何歳? 80歳?」「80歳」「靴入れに靴が二足ある。一つは私の物、もう一つは誰の靴?」「両方あんたの靴。一つは履きにくいからって履かなかった」「時間になった。CD鳴らして」「・・・鳴ったから電話返してくる」210308c.jpg
(高い木に止まっていた一人ぼっちのカワラヒワ。撮ろうとするとパラパラと周りに飛来してきた数羽の仲間。)

いつまでも薄暗い曇天の沼風景

撮影ノート『手賀沼有情』 (2021.3.7)
(アルツハイマーになった妻)

いつまでも薄暗い曇天の沼風景、「暖かくならなかったね」と後ろに来ていた散歩の人。210307.jpg

陽は昇らなくても、いつもの時間に広場へ舞い降りたスズメの群。210307a.jpg

スズメの群に割って入り込むムクドリ飛来。210307b.jpg


『顔も思い出せない』 (2021.3.7)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「今どこにいる?」「家にいる」「お父さんは掛川に来るかと思った」「どうして?」「私の高校は掛川西高、あなたも高校は掛川西よね」「あんたは高校生なの?」「その時代に戻っただけ」「今どこにいるの?」「静岡県の利根川のある方」「利根川は千葉県の我孫子と茨城県の取手の間だよ」「そのつもりで言っていた」「お父さんは掛川にいる?」「我孫子にいる」「私は結婚してどこに住んだか分からない。窓の外に市役所の方が見える。市役所と手賀沼の間を東に行って坂を登る」「坂を登った所に家がある」「そう、ある。あなたと暮らしたの?」「そう。私はあんたの夫だもの」「知らなかった。あなた誰? どこに住んでる?」「Aさんの家から坂を登った所」「私の家にいるの? 私と住んだ人がいるわ。私と一緒に住んだ?」「夫だものずっと一緒にいた」「知らなかった。私の相手は誰かかと思った。顔も思い出せない」「写真が箱の中にあるよ」「手賀沼写真コンテストのパンフレットがある。最優秀作品は雪の中の木の写真。これを撮った人が私の夫?」「そう」「女の人が赤ちゃんを抱っこしている。私は女の子を抱いている。その間に男の人がいる。後ろに私のピアノがある」「家で撮った写真だ。赤ちゃんは孫のH、抱いているのはL、横はLの夫のT。あんたが抱いている子どもはAの娘」「私の後ろにいるのが長女、名前はなんだった?」「A」「その横がAの夫、あんたは年取っていて頭が真っ白。私の家だよね。やっと家に行けた。年取った二人が私と夫?」「そう」「なんの写真か分からないがいつも想像して見ていた。やっと分かった。岩滑の玄関で私の父母と姉妹が並んだ傘寿の写真があった」「時間になったから次回に話そうね。写真を見たらいっぱい思い出してよかったね」「最高によかった。私は一人じゃないと分かった。夫がいて子どもがいて姉妹も大勢いる。涙が出てきた」「CD鳴らして」「・・・鳴った」「明日も電話するね」「待ってる。電話返してくる」210307c.jpg
(蕾の先がちょっとだけ赤くなったゲンペイモモの枝。)

曇天の朝、沼に霧が出て霞み始めた対岸

撮影ノート『手賀沼有情』 (2021.3.6)
(アルツハイマーになった妻)

曇天の朝、沼に霧が出て霞み始めた対岸。210306.jpg

段々濃くなる霧。対岸の丘が消え、フィッシングセンターも消え、ネコの木はぼんやり。210306a.jpg

スズメとムクドリが交錯しながら餌探し。スズメは地表から何かを啄み、ムクドリは嘴を地面に突き刺して。210306b.jpg


『窓から花が見える』 (2021.3.6)
昨日午後の妻との電話、「もしもし、どうしたの?」「毎日電話してる」「知らない。昼食が済んで薬を飲んでいた。元気ですか?」「元気」「どこにいる?」「家」「どこにある?」「Aさんの家から坂を登った所」「私たちの家に近いところね。あれ・・・、午前中寝ていて、先ほど起きてお昼食べ薬を飲んだ。ここは何処か言えたのに今は言えない。窓から花が見える」「食堂にいる?」「食堂にいる。ここの景色は、以前は下に降りられたが、今は通れなくした。下には家があって向こうの高いところに三角の屋根の家がある」「その家の向こうは子の神大黒天。そこから手賀沼が見える。昨年の1、2月は一緒に散歩に行った」「その景色は何となく行ったことがある雰囲気。今朝は朝ご飯を食べ、さっき昼ご飯を食べた」「朝ご飯と昼ご飯の間は何をした?」「寝てた。何が何だかわからない。窓の外の駐車場、見たことがある」「あんたと面会の時、あんたは隣の大きい部屋の窓の内側、私は駐車場に立って面会した」「いつ頃?」「1月10日まで、日曜日に面会した。その後はコロナの流行が広まってまた面会できなくなった」「まぁ、元気になれば帰れると思うが、ここは何処か、来たことがある」「今いるのはグループホーム寿、去年1月から入っている」「何でここに来た?」「一緒にいた頃あんたは病気がち、二度入院もした。私はあんたの介護を出来なくなった」「それでここに入った?」「そう。私に代わってグループホーム寿で介護してもらってる。訪問診療の先生の診察も受けている」「お父さんは大丈夫?」「自分一人の生活は何とか出来ている」「どこにいる?」「Aさんの家から坂を登ったところの家」「何となく思い出した。子どもたちは?」「Aは八王子、Lは横浜」「過去の話をしたら少し話が繋がった気がする。外に出られる時まで元気でいる」「コロナが治まったら一緒に散歩しようね」「待ってるよ、大事な私の旦那様」「時間だ。部屋でCD鳴らして」「・・・鳴った」「電話機を返して」「行ってくる」210306c.jpg
(オカメザクラが咲くとメジロが立ち寄るのを楽しみにしていた妻。ヒヨドリはメジロを追い払うから目の敵だった。)

曇天の一点が色付き、刻々と広がった淡い朝焼け

撮影ノート『手賀沼有情』 (2021.3.5)
(アルツハイマーになった妻)

曇天の一点が色付き、刻々と広がった淡い朝焼け。210305.jpg

周りの空をオレンジに染め、薄雲の中に日の出。210305a.jpg

モズの声にキョロキョロ探せば木の天辺、ラジオ体操に来た人が「あそこ」と教えてくれる。210305b.jpg


『元々の病気は何?』 (2021.3.5)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い。ニュースだよ。庭のオカメザクラが今朝咲いた」「家のどこに何があるか忘れた」「玄関にモチの木、壁沿いにあんたが植えたチャボビバ、南の花壇に大きなオカメザクラがある」「記憶にない。ごめんね。その部分のことは忘れた。言葉は忘れないが、言葉の意味するところに繋がらない」「家に来たとき見たら一目瞭然分かるよ」「今の私は見て思い出すか分からない。言葉が何であるかは分かるが、そのことは思い出せない。言葉は思い出す。景色はそれとなく思い出す。顔は写真を見てこれがお父さんかという感じ。治る病気なら何処かの病院に連れて行って欲しい」「訪問診療の先生に診察してもらって薬は飲んでる。去年1月グループホーム寿に入った頃は自分がどこにいるか分からなかった」「何で?」「ここへ来る直前に膵炎で入院し、その間に色んなことを忘れてしまった。ここに来てから体調もよくなって、しっかり話が出来るようになった」「元々の病気は何?」「アルツハイマー」「惚けたってこと?」「そうじゃない。ちゃんと話をしているが、話したことを後になると忘れちゃう」「そういう人はたくさんいる?」「たくさんいる。あんたのお母さんもアルツハイマーになってSa姉さんが介護をし、自宅で過ごした。Su姉さんは浜岡の施設に入った」「Su姉さんは死んだ?」「元気。亡くなったのはご主人」「遺伝?」「遺伝じゃない。なりやすい体質の人が、なりやすい生活をするのはよくない」「何がよくない?」「睡眠不足もその一つ」「私を含め三人とも睡眠不足が多かった。昔は惚けたと言われたが、口で言えなくなっても色々考えているし悩んでいる」「今日のことを明日忘れたって、明日は明日の話が出来ればいい」「そうか、過去は忘れても、その時その時を前向きに生きればいいんだ。私はお父さんと坂の家で暮らした。それを忘れてもお父さんは電話してくれる」「毎日電話する。時間だ。CD鳴らして」「・・・鳴ったから電話機返してくる」210305c.jpg
(昨日咲き始めた庭のオカメザクラ、毎年大騒ぎして喜んだのにもう思い出せなくなっていた妻。昨日より花数が増えたオカメザクラなのに。)

遠く地平線高くまで淡く色付いた薄雲

撮影ノート『手賀沼有情』 (2021.3.4)
(アルツハイマーになった妻)

遠く地平線高くまで淡く色付いた薄雲、近くを低く色濃い雲が横切る。210304.jpg

ぼんやりと薄雲の向こうに日の出。210304a.jpg

ここ数日、民家の庭から聞こえるヒヨドリの声、覗き込んでも姿は見えない。通り過ぎて振り返れば庭木の間に見えたヒヨドリ。
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『何があったか分かる?』 (2021.3.4)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「お父さん?」「そう」「緊張した一日が過ぎた。何があったか分かる?」「分からない」「会社は辞めたよね?」「20年前に辞めた」「お父さんの上司だった人から呼び出されて、お父さんは仕事をよくやったと言われたように感じた。何処かに行って話したがそれが現実の世界なのか空想の世界なのか分からない。あなたの育ちや心の中を探っているような気がしたから、あなたのお父さんやお母さんがどういう育て方をしたか、あなたがどんな人かを話した。紙にに書く試験でなく別な意味の試験だと思って目が覚めた」「どこで会った?」「呼ばれて神社の先の道を下ったところで会って挨拶した。手賀大橋の上に行って話した」「上司だった人はほとんど死んで、生きてる人は少ない」「生きてる人なら直接あなたに会って話せるのに、死んだ人だから夢の中で私の前に出てきたのだろう。今日は試験された気がして、うまく答えられたから晴れ晴れした気分で坂の上の家に行った」「面白い夢だね」「夢でもいい。私は自分なりに出来ることを話した。もしかして神様に話したのかもしれない。人に試されるのは気分悪いが、神様なら嫌な気持ちにならない。言われた言葉は頭に残っていないが、気持ちは残っている。穏やかな人だった」「心の中の出来事だね」「心の中の出来事でもいい。いい人だった。最後に頑張ってねと言って消えた。お父さんが笑って聞いてくれて嬉しい。この頃夢の中に出て来る人はお父さんだけ。父母は遠い前のことで顔も思い出せない。私は母親だった?」「AとLの母親」「顔も思い出せない」「あんたは二人を可愛がって育てたよ」「そう、忘れちゃった。お父さんは夫だと思って話しているが、忘れたとき誰かに夫だと言われることがある。お父さんはまだ生きてるよね、現実の電話で話してるから」「宅配弁当が来た、ちょっと待ってて」「切る?」「切らずに待って・・・もしもし、切れちゃった」。事務所に電話して電話は終わったと伝える。210304c.jpg
(昨日までは一輪も咲いていなかったわが家のオカメザクラ、今朝は南側の枝に咲いた花。忘れなければ今日の電話で妻に話しあげよう。)

沼を覆う厚い雲、今朝も散歩の人がストレッチ体操

撮影ノート『手賀沼有情』 (2021.3.3)
(アルツハイマーになった妻)

沼を覆う厚い雲、今朝も散歩の人がストレッチ体操。210303.jpg

雲の隙間の向こうの薄雲の中、ぼんやり岡発戸の丘の上を染めて日の出。210303a.jpg

ちょこまか歩き、止まって胸を反らすツグミ。210303b.jpg


『神様にだって都合がある』 (2021.3.3)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「電話届けてくれた人に寝ようとしていたと言ったら、まだ早いと言われた。お父さんに訊きたいことがある。私は何かなくした物がある。考えれば考える程分からなくなる」「気にしなくていい。必要になったときに分かるさ」「それまでの間はどうするの?」「必要じゃないからなくても困らない」「そうか、必要ないなら困らないか」「お父さんがいると景色がよく見える。いないと景色が見えなくて迷う。迷ってもちゃんと帰ってきている。私って都合よく出来てる。迷って困った時に別の私が来て教えてくれた。私って起きてる時も夢を見ているようだ。お昼の後も一生懸命探していた」「もう探さなくてもいい。迷っても気にしなくていい。今はコロナが流行っていて外出できない。本当に外に出て困っちゃうことはない」「お父さん眠くなる?」「なる」「お父さんはそっちで眠って私はこっちで眠る。同じ時に眠ったら一緒に眠ったことになる。やっぱり夢でなきゃおかしいか。死んで別れたとき、お父さんがどこにいるか分からなくなる」「私たちは大丈夫。死んだら一関の樹木葬墓地の同じ所に埋めてくれるから同じ土になる。二人の土の上に植えた一本の木に花を咲かせる」「思い出したよ、樹木葬墓地の場所の景色。いいね、あそこなら大丈夫だ」「元気になったから坂の上の家に行くね。お父さん一人でしょ」「今はコロナが流行っいて外出できない。コロナが収まったらね」「それじゃお父さん元気でいてね。足にしがみついてあの世へ行かせない。そのくらいの気持ちだよ。だけどあの世なんってないから別々だってどうってことない。自分では生きたいって思ったって神様にだって都合があるよね。あはは。何でこんな話になった?」「たまにはいいさ。ところで化粧品、まだある?」「待ってて・・・マイルドローションは半分、オリーブオイルは三分の一ある」「じゃぁ、その内買っておく。時間だ。CD鳴らして」「・・・鳴ったから電話返してくる」210303c.jpg
(ひと声鳴いて飛んできたヒヨドリ、ここにいるよと教えてくれるようにこっちを向いて。3日程出会わなかった近所の畑に来るヒヨドリ。)