桃山公園の高台に立って眺めた晴天の夜明

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.9.30)
(アルツハイマー)

桃山公園の高台に立って眺めた晴天の夜明け。200930.jpg

埋立地の杭から次々飛び立つサギ、ダイサギだろう東我孫子の丘を越えて飛んで行く。200930a.jpg

近くから聞こえる鳴き声に辺りを見回していたら、斜面林の天辺に飛んできたモズ。200930b.jpg

『今は何もしたくない』 (2020.9.30)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「べそかいて押入の片付けをしていた」「どうして?」「しばらく見ていなかったから。午前中は呼出が多いが、午後は暇だから窓の外を見ると駐車場。その先の広い道を市役所の先で東に曲がって坂を上ると家に行けるが行く勇気がない。今は何もしたくない。思い切って行こうと思うが、行ったらあなたがいなかったり、家が誰かの手に渡っていいたらと思うと心配になって泣けてくる。みんなといたら泣かないが、あなたと話すとつい泣けてくる」「二人の家には私一人が住んでいて、以前と何にも変わっていない」「私も家に行っていい?」「伝染病が流行っていて今は外出できない」「伝染病はそんなに大変?」「世界中に蔓延していて100万人も死んだ。年寄りの死亡率が高く、年寄りがいるグループホーム寿では外出と面会を中止した」「外へ出れば一人で家に帰れるが、抜け出すのは悪いことだから外へ行かない。頭の中だけだ」「日曜日には面会に行っている。一昨日も行った。あんたが窓の内側、私は駐車場にいて面会した」「せっかく来ても会った気がしない。帰った後で今日も来なかったと思う。今電話であなたの声を聞いて本物だなと思う。窓の内と外の駐車場ではあなただとの確認がないから、私には会った実感がない。でも、会いに行ってるよと言ってくれると嬉しい」「2月末から6月末までは全く会えなかったが、グループホーム寿では色々考えて窓の内側と駐車場に離れて面会できるようにしてくれた」「面会に来てくれても、別れた後であの人は誰だったかと思う。あなただったと言われても抱きついたりしがみついて確認しないと納得できない。私も家に行きたい。今はダメと分かっても気持ちでは分からない」「伝染病が治まるまで待とうね。時間になった」「CD鳴らせばいいのね。・・・ボタン押した。・・・鳴った」「電話機返して」「電話ありがとう。年取っても会いたいものは会いたいよ・・・電話終わりました」と泣き声で電話機を返す妻。200930c.jpg
(岡発戸の丘の上、雲の中から日の出。日の出の位置が丘を下って沼の向こうになるのはまだ先のこと。)

未だ暗い沼に雲の隙間から朝の光

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.9.29)
(アルツハイマー)

未だ暗い沼に雲の隙間から朝の光。200929.jpg

もう飛び始めた朝が早いダイサギたち。今朝もまた東我孫子の丘を越えて行く。200929a.jpg

遊歩道を渡るカルガモとマルガモ。横断するのを足を止めて待っていた散歩の人。200929b.jpg


『子どもはどこにいる?』 (2020.9.29)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「元気?」「元気」「あなたは自分の家に来ることがあるの?」「自分の家にいる」「子どもはどこにいる?」「Aは八王子、Lは横浜」「八王子で何してる?」「家庭を持って、会社勤めをしている。二人とも子どももいるよ」「嬉しい。お爺ちゃんとお婆ちゃんだね、私たち。孫がいるから元気を出さなくちゃ。離れていると忘れて、親子や夫婦の縁が切れてしまう」「そんな簡単に縁は切れない」「早く会いたい」「二人は来られないが、私は昨日面会したよ」「知らない」「あんたは窓の所、私は駐車場にいて面会した」「同じ部屋じゃないから面会じゃない」「そういう面会はもうやめる?」「嫌だ、それでもいいから来て。会いたくて泣いている。会わないとあなたや子どものことを忘れてしまうから。早く電話が来ないかと思っていたら電話が来た。心の中で呼ぶと通じるんだ。ネコの写真を見てネコちゃんって呼んだりしている。こういうことが続くと赤の他人のような感情になるって聞いた。そうなる前に抱きついて会いたいよ」「あなたはまだ帰れないの?」「天安門事件の時に帰れなかったのは30年以上前。天津の出向から帰ったのは28年前、一関の単身赴任からは20年前に帰た」「そう言われて思い出した。思い出すと泣けてくる」「どうして?」「夫婦のつながりがなくなったら辛いから。私の両親の顔は忘れたが、鏡台で自分の顔を見て母のことを思い出す」「あんたの顔はお母さんに似ている」「想像で、母の実家から海に行く道を歩くと父や母に会えるような気がした。母の実家に母の妹と子どもたちが満州から引き上げて、物置を改造して住んだ。やっとおじさんがシベリヤ抑留から帰って、巣鴨の引き揚げ者住宅に入った。おじさんは公安に勤めて課長になって定年退職した。おばさんはおじさんがいなくて苦労した」「急に思い出したね」「お母さんを思い出したから」「時間になった。CDを鳴らしたら電話機を返して」「・・・鳴った。・・・電話終わりました」200929c.jpg
(赤いそばの花が咲き始めた市民農園跡。赤い花の中に背伸びして咲く白い花も混じって)

星も見えていた青空に突如張り出してきた黒い雲

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.9.28)
(アルツハイマー)

星も見えていた青空に突如張り出してきた黒い雲。200928.jpg

埋立地の杭から次ぎ次ぎ飛び立つサギたち、気がつけば立ちこめていた対岸も見えない霧。200928a.jpg

霧に霞む遊歩道の木から鳴き声、近寄って見上げればやっと見えたモズ。200928b.jpg


『嬉しいから涙が出てきた』 (2020.9.28)
昨日午後の妻との面会、電話での会話にコーラスの活動の記憶が残っていたので、コンテストの時の写真何枚かを持参しOさんに渡した。Sさんと窓辺に来た妻は、車の中にいる私に手を振っていた。車から出ると「お父さん来てくれたのね、ありがとう。嬉しい」と言って泣き出した。「なぜ泣くの?」「嬉しいから涙が出てきた」「泣かないでよ」「だって涙が出てきちゃう。そこの隅に階段があって下の畑へ下りられた。階段を外して下へ行けなくなった。畑の下にある道は何度も通ったよ」「まだ面会や外出が出来たころ、一緒に散歩したね」「その向こうの高いところにも行った」「子の神大黒天だね。一緒に散歩に行ったね」「今はフェンスの横のベンチに座って眺めるだけ。下の道を行くと広い道、手賀沼の方に曲がって、市役所の先を左に折れて坂を上ったら私たちの家。あなたそこにいる?」「そこにいる」「誰と?」「一人で」「一人じゃ淋しいね。ご飯作ったり買い物したり、全部自分でやるの?」「そう」「家に行きたい」「伝染病が流行っていて今は外出できない。伝染病が治まったら見に行ける」「そんな伝染病、国は解決しないの?」「新しい伝染病で、まだ予防薬も特効薬もない。だから外で人と会って感染しないように外出も建物のなかでの面会も中止した」「こんな所に監禁されているのは嫌だ。家に戻って一緒に住みたい」「家に帰っても、私が病院に連れて行ったり、介護することは出来ないからグループホーム寿に入れてもらった」「そうだね、あなたも82歳だものね、無理だね」「庭に今年もヒガンバナが咲いた」「ずっと見ていないから忘れた」「じゃあ、次は家の写真を持って来る」「思い出すように持ってきて。何で私はこうなった。勝ち気で動き回っていた私が弱気になった」「みんな年をとるし病気もする。いつまでも若くはない」「我慢して元気でいるしかないか。暑いからもう帰ってもいい」「来週も来る。来ない日は電話する」と言って車に乗り込めば、また泣き顔で手を振っていた妻。200928c.jpg200928d.jpg

未だ暗い沼、埋め立て地の杭にサギの群

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.9.27)
(アルツハイマー)

未だ暗い沼、埋め立て地の杭にサギの群。ダイサギらしきガ飛び立ったがまだ撮れない。ダイサギ、チュウサギにコサギも数羽。200927.jpg

ダイサギが飛び立った後、チュウサギが近くのコスモス畑跡に飛来する。200927a.jpg

背中側を飛ぶ金属音の鳴き声。振り返れば網を干すパイプにカワセミ。200927b.jpg

『あなた私の夫?』 (2020.9.27)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「ここは女の人ばかりだから賑やかだ。仕事はもうしてないね。元気?」「元気」「元気じゃないと困る。そこはどこ? 遠い?」「高野山の自宅。Aさんの家の前から坂を上ったところ」「私たちが建てた家ね。誰といる?」「一人で」「どうして?」「一緒に住んでいたあんたがいなくなったから」「私、忘れた。あなた私の夫?」「そう」「分からなくなった。私は孤独だ」「夫もいるし、子どももいるよ」「子どもがいた? 子どもって孫?」「あんたが生んだ子ども」「忘れた。私には空間がなくなった。ここから駐車場の横を進んで広い道に出て、市役所の前を過ぎて左へ行き坂を上ると家。私たちの家?」「そう」「私、一人でいるのが淋しい」「一人じゃない。夫と二人の子どもがいる」「女の子だったように思う。最後に私が家から出たとき、手賀沼の横を通って病院のような施設に来たところで記憶が切れている」「最後に家で子どもたちに会ったのはグループホーム寿に入居したとき」「道を言ってみて」「家からAさんの家の方に坂を下り、手賀沼沿いに西へ行き、十字路を右折。市役所入り口や東邦病院の前の坂を上って、十字路の手前を左に入ると駐車場。その先がグループホーム寿」「よく分からない。私が言うよ。駐車場の脇を進むと広い道、右に折れ手賀沼の方に行く。市役所の先を左に曲がって、Aさんの家の所から坂を上ると私たちの家。合ってる?」「合ってる」「表現が難しいが、私ひとりでも行ける。そこに一人で住んでる?」「そう」「私、行きたい」「伝染病が流行っていて今はダメだけど、伝染病が治まったら行ける。外出して家に行き、子どもたちも呼んで一緒に過ごす」「夕方になったらそれぞれの所へ帰るんだね?」「そう。時間になった。CDを鳴らして電話機を返してきて」「・・・ランプが点かない」「電源コード抜けてない?」「外れてた。・・・鳴ったから返してくる」「明日は面会に行く」「嬉しい。・・・今村です。電話終わりました」200927c.jpg
(生い茂る葛の葉の間に伸びて、たった一輪咲いていた淡いピンクのヒガンバナ)

市民農園跡前の埋立地にサギの群

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.9.26)
(アルツハイマー)

市民農園跡前の埋立地にサギの群。ダイサギだろうか第一陣が飛び立っても、未だ暗くて撮れないサギたちの飛行。200926.jpg

市民農園跡を旋回するチュウサギ、水神山古墳を越えてどこへ行く。200926a.jpg

雨で早々に帰宅すれば、したたかにハランと庭石の間から伸びるヒガンバナの蕾。200926b.jpg

『私の歴史を書いてね』 (2020.9.26)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「昼寝したら起こしてくれた。元気?」「元気」「いつから自由になった?」「ずっと家にいるよ。一関から20年前、天津からは27年前に戻った。天津にはあんたとAさんが遊びに来たね」「言われればそんな気がする」「我孫子に来てからあんたは忙しかった」「色々やったが思い出せない」「さんきゅう会で高齢者支援や、外国人に日本語を教えるボランティア活動、高野山に近隣センターを欲しいと市への陳情から建設、運営まで熱心に係わった。あんたのスケジュールはいつもいっぱい、一緒に出掛けたことは僅かだった」「あなたをほったらかしごめんね」「私も手賀沼の写真撮影や情報発信にのめり込み、あんたは忙しくても香港、韓国、タイやヨーロッパ旅行にも行った。その合間に茶道、コーラス、友だちとのウオーキングもやっていた」「お互いに自分のことをやったね。あなたの話を聞いてぽつぽつと思い出した。一つ一つのことを憶えているのではなく、ごちゃ混ぜに色んな記憶があって、話を聞くとああこれかなと思う。住んだところもごちゃごちゃ」「結婚して武蔵小山に住んで立会小学校に勤め、等々力に引っ越してAが生まれた。横浜の片倉台団地が当たって引っ越し、Aを等々力近くの保育園に預けてから大井町まで通勤した。私の両親が倒れて静岡の病院に入院し、Aをあんたのお母さんに預け、私と交代で病院に通った。体力的にも無理なのであんたが退職した。Lが生まれ、AとLが小学生になったらPTAの役員になり、校長先生に頼まれ産休の欠員代替の教員になった。終わったら次の学校に頼まれ我孫子に引っ越すまで次ぎ次ぎ続いた」「校長先生が頼みに来てくれたのを思い出したが、どこのどの学校か分からない。全部記憶が消えたのではなく、ぽつぽつと残っていて嬉しいよ。私は忘れたから、あなたが私の歴史を書いてね」「時間になった。CDを鳴らしたら電話機を返してきて」「・・・鳴った。・・・電話終わりました」200926c.jpg
(ビナンカズラの葉の間から白いヒガンバナ、草取りもせず荒れた庭を覗いて嘆いているように。)

傘を差し、背筋を伸ばして沼を眺めていた人

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.9.25)
(アルツハイマー)

雨の高台に着けばすでに先客。傘を差し、背筋を伸ばして沼を眺めていた人。200925.jpg

埋立地から飛び立って東我孫子の丘を越えて行くダイサギ。杭の上に残っているサギの群はもう半数以下。200925a.jpg

最後まで杭に残っていて、コスモス畑の刈り跡に飛来したチュウサギたち。200925b.jpg

『今どこにいると思う?』 (2020.9.25)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「今どこにいると思う?」「自分の部屋じゃない」「よく分かるね」「電話の声が響くから食堂かな」「窓の外はあなたが面会に来る駐車場。その先の低いところの道を通ったことがある」「二人で散歩したとき通った」「広い道に出て右に曲がると市役所、その先の交差点を左に行って坂を上ると私たちの家」「そうだね」「ここでは私たちひとりひとりに部屋が与えられているから嬉しい。私の鏡台があって、自分のベッドがあって、ラジオもある。押入れもついている。誰かが来れば自分の部屋でも会える」「あなたは家でひとりで留守番してる?」「そう」「私が帰ってもいい?」「泊まるのはダメだけど、伝染病が治まったら昼間来ることは出来る」「何で?」「夜に体調が悪くなったら私じゃ助けられない」「私だってあなたがどうかしても助けられない。寝るのはこっちに戻った方がいい。家の前の道から広い道に出て、右に行って中学の前を過ぎ、天王台駅の方へ曲がると郵便局の前辺りに誰かと行った」「Aに天王台の美容院に連れて行ってもらい、帰りに寄ったコメダ」「その記憶が頭の中にあった。ひとりじゃ思い出さないが、誰かと話してると思い出せる。天王台駅の橋を越え向こうに下りる」「北口だね」「先の方の施設に行った」「ママメートだ。歌の先生が来ていたから最初はそこに通った」「親切な人が二人いた」「歌の先生が辞めたので、コーラスをやっていたロイヤルに行った」「利根川の横だね。山の方にも行った」「ロイヤルもコーラスの先生が辞めてがっかりした。和楽園で音楽のイベントがある時にはショートステイした」「話していたら忘れたことが順に出てきた。記憶の中で、あなたは出てきても、子ども二人が出てこない」「我孫子に来て間もなく中学、高校、大学に行きあまり家にいなかったからかな。子どもたちの話をしたら思い出すと思う。時間になった。ラジオを鳴らして、電話機を返してきて」「・・・鳴った・・・電話終わりました」200925c.jpg
(雨に濡れ、宝石を鏤めたようにムラサキシキブの実。)

撮れる明るさになれば半数以下に減ったサギ

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.9.24)
(アルツハイマー)

暗い小雨の朝、撮れる明るさになれば半数以下に減ったサギ。200924.jpg

やっと明るくなってきた沼。行き先が変わったのだろうか、埋立地より飛び立っていつもより高く飛ぶサギ。200924a.jpg

枝もたわわにマユミの実、公園になる前から生えていた木。200924b.jpg


『いつ家に帰るの?』 (2020.9.24)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「今どこ?」「家にいる」「家ってどこ」「高野山」「近くだね。どうしてもあっちかこっちかと考えちゃう。元気?」「元気」「私は元気だけど淋しい。昼間は体操をしたり、みんなと一種に呼び出されるが、夜は淋しくて辛い。涙が流れちゃう。家族が多い少ないじゃなく、夫や子どもにズボンがずれてるよとかシャツがはみ出してるって声をかけることも出来ない。こんなこと考える私って悪い妻や母親じゃないよね。私はいつ家に帰るの?」「帰っても、私があんたの面倒を見られなくなったから帰れない」「ひとりでやれって言うんじゃなく、共同でやればいい」「去年まで家に二人で住んでいて、あんたの方がたくさんやったが、私も分担していた。去年はあんたが病気がちで、病院に連れて行ったり、家事のほとんどを私がやって、あんたの介護も十分に出来なくなった。施設に入りたいとあんたが言って、二人でグループホーム寿を見学して申込み、昨年12月空きが出来て1月12日に入居した。正月にあんたは膵炎再発で入院し記憶がほとんど消えちゃった。退院して直ぐグループホーム寿に入った」「そういう事情が初めて分かった」「伝染病が流行って2月末からは面会も外出も出来なくなったが、家にいたら伝染感染の心配まで増えたはず。いいタイミングで入居できたと思う。伝染病が治まったら家に外出して日中を過ごし、夕方にはここに戻ることだって出来るようになる」「そうしたら全部を忘れることはないよね。話を聞いて分かるから私の頭は全部潰れてはいないよね。ああ、泣けてくる。泣くと自分の気が紛れる。子どもは泣いたらご機嫌がよくなるでしょ。この施設には面倒見てくれる人がいるの?」「職員さんはみんな介護の専門家だ。あんたが元気でいるのが私の生きがい」「私の生きがいは?」「あんたが元気で私が喜ぶこと」「嬉しいよ」「時間になったからCD鳴らして、電話機を返してきて」「・・・鳴った・・・電話終わりました」200924c.jpg
(草が生い茂る我が家の庭に、今年最初に咲きそうなヒガンバナの蕾)

小雨がぱらつく高台、いつまでも暗い沼の夜明け

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.9.23)
(アルツハイマー)

小雨がぱらつく高台、いつまでも暗い沼の夜明け。200923.jpg

昨年の10月、亡くなる前の18日間を一緒に高台で撮った友、「ネコの木がオッドアイになる」と呟いた。今朝立った位置、もしかしてここが友のつぶやきの位置だったのか。200923a.jpg

少し明るくなって埋立地から飛んだサギ、シャッター速度が遅くモヤモヤの飛行姿。200923b.jpg


『そこから出たよ』 (2020.9.23)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「今どこにいる? 近くだよね。駐車場の横から広い道に出る。市役所の方へ坂を下って手賀沼の近くで東へ行く。Aさんの家から坂を上ったところ?」「そう」「家で何してる?」「雨戸を開け、食事の用意、食器洗い、掃除、洗濯など、あんたが家でやっていたこと」「誰のために? 言ってご覧よ」「自分のために」「アハハ」「あんたのようにグループホーム寿にいれば食事、洗濯、掃除、入浴、体操などの面倒を見てくれる」「そこから出たよ」「グループホーム寿にいるよ」「寿に入ったのは憶えているが、そこから出たよ」「窓の外を見てご覧」「どこの窓?」「鏡台の向こう。垣根があってその先に駐車場がある」「あっ、鏡台がある。垣根の向こうに駐車場がある。私がいた部屋だ」「ずっとこの部屋にいる。訪問診療の先生もその部屋に来て診察してくれる」「それとなく分かる。現実問題と私の頭の中の想像が同じだとは自信がない。家はAさんの家から坂を上ったところ、間違いないよね」「間違っていない」「誰と住んでいる?」「ひとりで」「私がここにいてあなたはひとりになった。申し訳なくてかわいそう」「去年はあんたが病気がちで家事も出来なかった。何度も病院にも連れて行って、私の手に余るようになった。今、グループホーム寿で面倒見てくれているから、私ひとりでも何とかなっている」「ひとりで病院に行けないと困るね」「ここでは訪問診療の先生が来て診てくれている」「ここじゃないところに出て行ったと思っていたが、ここにいてよかった」「親、あなた、姉妹、子どもの関係が分からなくなるから家系図を作った。昨日見つからなくて職員さんに探してもらった」「知らない・・・あった、これだ。図式ですごくよく分かるよ」「時間になった。CDを鳴らして」「・・・コードが外してある。機械の方、どこへ挿すか分からない」「電話機返してきて。職員さんに見て貰うから」「・・・夫です」と職員さんに代わり、接続と操作をお願いした。200923c.jpg
(妻がグループホームに入ってから、草取りを急かせる者がいなくて伸び放題の庭の草。草の上まで伸びたヒガンバナのつぼみ、今年も咲いてくれそう。)

地平線をうっすら赤く染めた晴天の朝

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.9.22)
(アルツハイマー)

昨夜見た天気予報は曇天だったのに、地平線をうっすら赤く染めた晴天の朝。200922.jpg

日に日に数が増えてきた滝下広場付近のカルガモ。200922a.jpg

刈られたコスモス畑跡に舞い降りたチュウサギ。200922b.jpg

『あれ、どこだろう。ない』 (2020.9.22)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い。公子の夫の詮です」「なつかしくて泣けてきた」「昨日面会したばかりだよ」「短時間で夫婦らしい会話も出来なかった」「あんたは早く帰りなって言ってたよ」「それ、いいかっこしいだ。あなたどこに住んでる?」「高野山の自宅。Aさんの家の前から坂を上ったところ」「そこだろうと思っていた。ひとりで淋しくて泣いていた。私も家に呼んでくれなきゃ」「伝染病が流行っていて外出できない」「そうみたいだね。ここにいては情報が入らない。家に帰っちゃダメ?」「そこにいたら食事、洗濯、入浴、体操などの面倒をみてくれるし、訪問診療の先生が来て診てくれる。家に帰ったら私が病院に連れて行ったり介護しなくちゃならない。それが出来ないからそこに入った」「あなたがやるのは無理だね。私にも出来ない。ここでは全部やってくれていたんだ。いつまで家にいた?」「1月12日の朝まで。ここへ入居する直前まで膵炎再発で取手の病院に入院していた」「あなたの事情を分からなくて、辛いい辛いと言っていた」「伝染病が治まったら日中に家を見に来ることは出来る」「いつのことやら」「まだワクチンの開発さえも終わっていない。直ぐには治まらない」「色んなことが分からない。私ってこんなにバカだった?」「バカじゃない。直ぐ忘れるだけだ。忘れても思い出せるように家族の関係を家系図に書いてあげた」「あれ、どこだろう。ない」「鏡台の引き出しは」「ない」「ベッドのサイドテーブルの引き出しは?」「空っぽ。どうしよう。泣けて来ちゃった」「大丈夫。今度の面会の時にまたプリントして持って行く」「ないと嫌だ。あなた来て探して」「私は建物の中に入れない。職員さんに探すのを頼んであげる」「頼みたくない。辛いよう」「時間になった。CD鳴らしたら、電話機を返しに行って職員さんと代わって」「・・・鳴ったから行ってくる・・・主人とつながってます」と職員さんと代わり、昨日持って行った家系図を探して下さるようお願いした。200922c.jpg
(晴天の朝の光に早い目覚めか、開き始めた今朝のフヨウの花。)

暗い曇天の下、出発が遅いサギの群

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.9.21)
(アルツハイマー)

暗い曇天の下、出発が遅いサギの群。200921.jpg

ちょっと見は可愛いが、よく見ると恐ろしげな目。200921a.jpg

遊歩道脇を黄色に染めるキクイモの花。200921b.jpg


『待っていたよ』 (2020.9.21)
昨日午後の妻との面会、用意した私と妻の親世代から孫世代までを展開した家系図と写真3葉をSさんに渡し、面会票記入。Sさんに連れられてきた妻は「待っていたよ、なかなか来てくれないから。もうこんな所にいるのが嫌になった。私は動き回りたい人、何もやることがなくただぼんやりしているのは嫌。もうどうでもいい。押し込まれて何処にも行けないなら、サッサと別れて別な人と一緒になればいい」「伝染病が流行っていて、入居している人が感染しないように建物の中での面会も、外出も出来ない」「昨日電話で、夫が誰か分からなくなるから、親から私たちや兄弟、子どもたち、孫たちの関係を紙に書いてと頼まれた」「私が頼んだ? 昨日は電話だから夫だと分からなかっただけ。顔を見て夫だと分かったし、私の姉妹の名前だってちゃんと言える」「あんたの姉妹はあんたが去年書いたメモをコピーした」「私の字だ。Sa姉さんは天国、Su姉さんは入院? 死んだんじゃない?」「死んだのはご主人、Suさんは浜岡の施設に入っている。あんたの三枚の写真も持ってきた」「どこで撮った?」「鳥博の駐車場と遊歩道の間に咲いていたコスモス畑のあんた」「入ると湿った低いところ?」「今は埋め立てて駐車場になった。次のは自宅でお茶会をした時のあんたの着物姿。もう一枚は去年12月にあんたが私にコーヒーを入れてくれた写真」「私、家にいたの?」「12月は家にいた。今年正月に膵炎が再発して取手の病院に救急車で搬送されて入院し、退院したら直ぐここに入居した」「何でここに来た?」「去年は目眩、吐き気、頭がガンガンして何度も病院に行ったし、膵炎で東邦病院にも入院した。私があんたの介護をできなくなってここに入った」「そうか、私はここで面倒見て貰うから、あなたは無理しないで」「雨が降って来たからもう帰る」「こうやって大きな声で話しをすると、気分が弾んで楽しくなる」「明日も電話するし、来週日曜日も面会に来るよ」「ありがとう、待ってる」と手を振っていた妻。200921c.jpg200921d.jpg
(ご機嫌がなおって手を振って見送ってくれた妻。)

朝の光りが漏れてくる地平線近くの雲の隙間

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.9.20)
(アルツハイマー)

朝の光りが漏れてくる地平線近くの雲の隙間。200920.jpg

ゆっくりと浅瀬を歩くダイサギ、突如動きを止め、獲物を狙うのか首から上だけを曲げ伸ばしする。200920a.jpg

哀れやな、カルガモとマガモのハイブリッドか羽を怪我。怪我してからはカルガモの群から少し離れて群の後を追う。200920b.jpg


『私の相手はあなた』 (2020.9.20)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い、あんたの夫の詮で~す」「詮ちゃん、今どこにいるの?」「自宅にいる」「何処の自宅? 掛川の在?」「岩滑のこと?」「そう」「そこはあんたの生まれた家」「Sa姉さんの生まれた家と同じ。Sa、Su、No、私、H、M、Naの7人。Sa姉さんだけが死んだ。私の相手はあなた。どこに住んでいる? 静岡?」「我孫子、千葉県我孫子市高野山」「えっ、私の家と同じ。誰と住んでる?」「一人だけ。去年まではあんたと二人で住んでいた」「私がここにいるから一人になった? 淋しくしてごめんね。頭がごちゃごちゃして分からなくなったから、私の姉妹と私の子どもたちについて紙に書いて」「明日の面会に持って行く」「そうしたら夫が誰か分かる。私たちが建てた家に誰が住んでいるか忘れていた。私はひとりで淋しいから泣いていた」「ひとりじゃない、毎日電話している」「あなたが夫だという自覚が私になかったが、今初めてあなたが夫だと分かった。頭の中にある場所を確認したいから連れて行って。自分が誰だか分からないのは淋しくて辛いよ。結婚していたのに誰とだか分からなくなっていた。自分の夫が何処かにいるっていう感じ。夫と一緒にお祭りに行った。池の上の道を歩いて、二階のような所から手賀沼を見た。写真がいっぱい並べてあった」「写真仲間と最初のハス祭りをやったときのことだね」「そうだと思う。ごちゃごちゃした頭の中を整理したい。連れてって見せて」「見に行こうね」「私たちの家から中学の方へ行って、橋を越えて駅の方へ曲がったところの家にもいた」「近隣センターこもれびだね。Aさんたちと近隣センター作りを一生懸命やったね。出来上がってからもしょっちゅう行って運営に参加していたよ」「頭の中にあるけどごちゃごちゃ。行って確認して頭の中を整理したい。連れて行って」「伝染病が治まったら行こうね。時間になった。CD鳴らしてから電話機を返してきて」「・・・鳴った。近いから行ってくる・・・電話終わりました」200920c.jpg
(遊歩道を見下ろして飛んでいるのか、夜明けの空へ飛び立ったダイサギ。)

重く伸しかかる雲、いつまでも暗い曇天の夜明

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.9.19)
(アルツハイマー)

重く伸しかかる雲、いつまでも暗い曇天の夜明け。200919.jpg

いつもより遅いサギたちの出発、また一羽飛び立ったダイサギ。200919a.jpg

帰り道の前に飛んできたハクセキレイ、驚かさないよにしばし立ち止まって待つ。200919b.jpg


『私たちが建てた家』 (2020.9.19)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「今どこ?」「自宅」「二人の家だね。ここから10分くらい?」「今の足だと15分くらい」「足は速かったじゃないの?」「10年前は遊歩道を歩いてみんなを追い越した。今はほとんどの人に追い越される」「腹は立たないよね」「追い越されても何とも思わなくなった」「年相応だものね。長いこと何処かに行っていていつ帰った?」「中国からは20年前に、一関は20年前に帰ってきた。それからはずっと家にいるよ」「ここから広い道に出て、市役所の先を東に曲がって、坂を登ったら私たちが建てた家。あっ、写真撮りに来た。さっき電話機を持ってきてくれた人」「写真撮ってもらいな」「近くにいるのに必要ない」「撮ってもらったら私がもらえるよ」「ああ、そういうことか。家からここへ来るのは、坂を下りて手賀沼に出て右に行く。橋の手前で右に曲がって坂を登る。窓の外の駐車場のところが外に出て見ないと分からない」「私は356を通って来るよ。近道だから」「私は手賀沼散歩でよく通って、慣れているから下の道を通る。その道ならちゃんと説明できる。何で近くにいるのに離れてる?」「あんたがグループホーム寿に入ったから」「その辺の後先が分からない」「去年までは二人で暮らしていたが、あんたが病気がちで私があんたの介護をできなくなって、あんたはグループホーム寿で介護を受けることになった。去年夏にあんたと二人でグループホーム寿を見学して申し込んだ。12月に空きが出来て今年1月から入居できた。ここでは食事、洗濯、入浴など生活面の支援を受け、訪問診療の先生も来てくれる。膵炎も再発していないし、目眩、吐き気、頭のガンガンするのも治って元気になった」「良いところに入ったんだね」「部屋で面会できないのや、外出できないのは流行っている伝染病が治まるまで待つしかないね。時間になった。歌を鳴らしてから電話機を返してきて」「・・・鳴ったから返してくる。・・・電話終わりました」と妻の元気な声。200919c.jpg
(草に埋もれて咲いていたヒガンバナ、最近見かけない球根を植えていた人。)

近くの雲が去れば遠くの雲が朝焼け

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.9.18)
(アルツハイマー)

足早に流れる雲、近くの雲が去れば遠くの雲が朝焼け。妖怪でもでも現れそうな空の色。200918.jpg

埋立地から飛び立ったサギ数羽、風と空の色に惑わされたか舞い戻る。200918a.jpg

散歩の人が通る時刻になっても飛び立たず、じっと留まっているダイサギやチュウサギ。200918b.jpg


『私の夫だと何度も言って』 (2020.9.18)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「昨日ここに来たはず。午前中風呂に入って昼ご飯食べた。明日帰るの?」「他所へは行っていない。グループホーム寿にいるよ」「窓の外には駐車場がある。市役所の方に行ったら手賀沼がある。橋を渡らないで東に行って坂を登れば私たちの家。鏡台の横にネコの写真が二枚ある。女の人が可愛い子猫を二匹抱いている」「20年ほど前のあんただよ」「そんな古いことは憶えていない」「もう一枚は大きな二匹のネコちゃん」「おとなになったみるともも」「可愛いい。まだ生きてる?」「もう生きていない。20年以上長生きしたよ」「娘たちはどこに住んでいる?」「Aは八王子、Lは横浜」「何かの関係でそっちにいるの?」「結婚して独立した」「嬉しい。会いたい。子どももいるだろうから見に行きたい。家にも帰りたい」「伝染病が流行っていて外出できないから、伝染病が治まったらあんたが私たちの家に来て、子どもたちや孫たちにも来てもらって、一緒に食事したり話をしようね。夕方はそれぞれ自分の所に戻って、あんたもグループホーム寿に戻る」「そうなったら嬉しい。みんなに迷惑をかけて、生きているのが辛くなった」「あんたには生きていて欲しい。あんたが生きていることが私の生きがいだもの」「あなたの生きがいになるように元気になるよ」「元気だと嬉しい」「この約束は頭がバカになっているからどうなるか分からない。電話の時と面会の時では別人格になっていて、電話してる時はすごく辛くて早く会いたいが、面会の時は頭がくしゃくしゃで、面会の人が来たと言われてもあなただとは分からなくなっている。誰と話しているか分からないので体裁を整えて色々話しているのではないかと思う。面会の時あなたと会ったという認識はない。あなたは私の夫だと何度も言って欲しい」「面会の時は、あんたの夫だって言うことにするよ。時間になった。CD鳴らして、電話機を返してきて」「・・・鳴った。・・・電話終わりました」と泣き声の妻。200918c.jpg

(沼へ吹き抜ける風に揺れ、なかなか撮らせてくれないフヨウの花。)

日の出は見られそうにない曇天の夜明け

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.9.17)
(アルツハイマー)

日の出は見られそうにない曇天の夜明け。200917.jpg

親から少し離れて四羽のコブハクチョウの子、羽繕いし、水を被って大きく羽ばたく。200917a.jpg

遊歩道脇に生い茂り、近寄り難いところにばかりクズの花。200917b.jpg


『お父さんと夫婦?』 (2020.9.17)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「どこにいる?」「高野山の家」「何処だか分からない。岩滑の家の近く? 岩滑の家も、そのほかの家も忘れた。子育てをした。可愛かった」「今あんたは岩滑に行っているの?」「分からない。私はどこにいるの?」「我孫子のグループホーム寿にいる」「あなたは?」「高野山の家。あんたと一緒に建てた家に二人でずっと住んでいたよ」「お父さんと夫婦? 子ども何人?」「二人」「Sa、Su、No、キミコ、H、M、Naでしょ」「それはあんたの姉妹、真ん中のキミコってあんたでしょ。あんたが産んだ子はAとL」「あなたは私の兄弟?」「違う、あんたの夫」「あなた誰の子?」「今村恒治ときんの子の詮」「あなた私の何なの?」「詮と公子が結婚して夫婦になった」「そんなことまでごちゃごちゃになった。私の子どもは?」「長女のAと次女のL」「私は岩滑から掛川西高に通った。その後どうした?」「静岡大に入って人形劇などやっていたんだね。卒業して佐倉小に勤めた」「何であなたと結婚した」「二人の高校の恩師S先生の家に呼ばれたら見合いだった。それで結婚することになった。高校ではあんたより二年上だがあんたを知らなかった」「私も知らなかった。やっと少し整理できた。私は子育てを岩滑でやったの?」「結婚して武蔵小山に住み、等々力に引っ越してAが生まれ、Aをナオミ保育園に入れてあんたは教師を続けた。公団住宅が当たって、横浜の片倉台団地に引っ越しLが生まれた。私の転勤で我孫子に引っ越し高野山に家を建てた」「家を建てたのは憶えているが、途中がごちゃごちゃして思い出せない。一つずつ整理しないと分からない。家を建ててから、家を広くした」「あんたの趣味の茶室を増築した」「その家にずっと住んでいたのに何でここにいる?」「去年あんたは病気がち、私が介護出来なくなってグループホーム寿に入った」「ここは親切でいいところだよ」「時間だ、CDを鳴らしたら電話機を返してきて」「そうする・・・鳴った・・・電話終わりました」200917c.jpg
(遊歩道脇の木の天辺にモズ、鳴きもせずただじっと何を沈思。)

夜明けの空へ飛び立ったダイサギたち

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.9.16)
(アルツハイマー)

夜明けの空へ飛び立ったダイサギたち。飛んだあとに残っているのはチュウサギばかり。200916.jpg

遠くに日の出か、空高くまで瞬時に染まった薄雲。200916a.jpg

稲刈りの済んだ田んぼにキジ、田んぼに散らばっていた母さんと子ども8羽200916b.jpg

『あなた誰?』 (2020.9.16)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「どこにいる?」「家」「何処から帰ってきた?」「今日はJAとりで総合医療センターで胃カメラの経過観察を受けて来ただけ。あとは家にいるよ」「元気?」「元気だけど朝食抜きだったから朝食兼昼食を済ませたところ」「大丈夫だった?」「前回、前々回の検査で良性か悪性か判別がつかなかった胃の入り口のポリープ、大きさが小さくなって色が薄くなったと言われた」「状態がよくなって幸せだね。ここ一週間の日程でここに来られないの?」「伝染病が流行っているから建物の中には入れてもらえない」「あなた誰? 私たちの親戚?」「詮だよ」「詮だね。よかった。誰だろうと思って話していた。頭の中がごちゃごちゃで分からなかったが、お父さんだと分かった。ここでは夫が死んだとか、兄弟が死んだとか、淋しい話しばかり。話を聞いていると私も悪いことばがり考えてしまう。あなたの家は何処?」「Aさんの家の前から坂を登ったところ」「岩滑の家の近く?」「岩滑じゃない。あんたは今我孫子のグループホーム寿にいる」「そうだったのか。悪いことばかり考えていた。夫殿はどうしている?」「今あんたと話してる。あんたと私は夫婦だよ」「何が何だかわからない。岩滑もここも悪い話しだけが頭に入ってくる。ここにいる人も淋しい話しかしないから、ついお節介に頑張ってねと言っちゃう。取手の病院に行ってきたって聞いて、ここにいる人はみんな近くの人で取手の病院のことを言うから、誰のことか分からなくなった。今どこにいる?」「そこから市役所の前を通って東へ行って、Aさんの家の前から坂を上がったところ」「私たちの家じゃない。あなたは私の夫、生きていて嬉しい。ごめんねあなたを死なせて。ここは自分の部屋、鏡台もネコの写真もある。どうやってごちゃごちゃを整理する?」「CD鳴らして一緒に歌えばすっきりするよ」「私もそう思う・・・鳴らした」「電話機を返してきてから歌ってね」「分かった・・・電話終わりました」200916c.jpg
(~でんでんむしむし かたつむり おまえのめだまは どこにある つのだせ やりだせ めだまだせ~ この歌を歌うとき両手でつのの仕草をしていた妻、電話機片手だったらどうするだろうか。)
  

曇天の空の裾、ちょっぴり色づき始めた夜明け

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.9.15)
(アルツハイマー)

曇天の空の裾、ちょっぴり色づき始めた夜明け。200915.jpg

埋立地の杭や葦の群落から次々飛び立つダイサギの群。200915a.jpg

少し明るくなったら遊歩道の木の天辺、鳴き声を頼りに見付けたモズ一羽。200915b.jpg


『道を思い出せる』 (2020.9.15)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「今どこにいる?」「家」「あなた個人の家?」「そう」「ここから出て市役所の先で東へ行き、Aさんの家の前から斜めに坂を登ると家。私たちが建てて住んだ所?」「そう」「家の前の道を北に行き、左に曲がると下の子が行った小学校、356を右に行っら上の子が通った中学校。小学校は教室が足りなくて運動場に仮校舎を建てた。PTAをやったから小学校によく行った。頭の中にあることは間違っていない?」「合ってる」「さっきダーリンから電話って言われてあなただと分かった。いつも声を聞かないと忘れちゃう」「毎日電話してる」「家を建てたころ、天王台駅は千代田線の工事をしていた。我孫子まで行かないと千代田線に乗れなかったが不便じゃなかった。高台だから手賀沼も見えた。天王台に千代田線が停まるようになって便利になった。バスで柏に行くことも出来た」「あんたは我孫子の中や拍も、松戸や取手だって自分で車を運転して行った。だから道の話しが得意なんだね」「ここと家は直ぐ近くなのに、なんだか今は遠いところになった。夫婦でも一緒に住めないのは淋しい。あなたは一人で住んでるんでしょう、一緒に住みたい。顔も忘れちゃう」「一緒に住んでいたが、私があんたの介護を出来なくなって、グループホーム寿で介護してもらうことになった」「ここに来たときのことをいま思い出した。みんなが集められて、私は紹介されて、挨拶をした。ここに入っていたら色々分かった。介護してもらう人が入っているって分かった。柏へ行く道も分かった。356に出て旅館の角を右に曲がって6号を左に曲がって柏へ行った」「ここに来てから行ってないから空想かな。でも道は正しい」「空想だったか。今、だんだん道のことがつながって思い出せる。こうやって話すと楽しいし、道を思い出せる」「時間になったからまた話そう。CDを鳴らしたら電話機を返して」「・・・鳴った・・・廊下に出たら人が来た。電話終わりました」と職員さんに電話機を返す妻の声。200915c.jpg
(刈り取ったばかりのコスモス畑の跡、首を伸ばしじっと獲物を見詰めるチュウサギ一羽、振り下ろした嘴に咥えていたのは虫だろうか。)

小雨に煙り泣いているような沼の夜明け

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.9.14)
(アルツハイマー)

小雨に煙り泣いているような沼の夜明け。200914.jpg

埋立地から飛び立って旋回するダイサギ、まっすぐ飛んだ仲間たちはゴミのようにもっとひどいブレブレ。200914a.jpg

雨に濡れまだ咲いていたブットレアの花。200914b.jpg


『この子どもは誰?』 (2020.9.14)
玄関先で面会票記入、妻に渡すものを入れた袋を職員さんに手渡す。裏の駐車場で待っていたら職員さんと一緒に窓側に来た妻、「この手紙は?」「この間電話で読んであげた神戸のYさんからの手紙」「中学、高校、大学と一緒だった人。後でゆっくり見る」「返事用の便せんを頼まれたから、袋に入れてあるよ」「私が頼んだ?」「頼まれた」「この子どもは誰?」「子どものころのAとL、岩滑の玄関前で撮った」「私の生まれた家に行きたい。この家まだある?」「建て替えて新しい家になった。もう代替わりしてT君夫婦しかいない」「お父さんさん、お母さんは死んだ?」「お父さんは28年前、お母さんは20年前に亡くなった」「お姉さんは?」「お姉さん夫婦も亡くなった」「浜岡のお姉さんは?」「介護付きの老人ホームに入っていて元気」「西之谷のお姉さんは?」「元気」「妹たちは?」「三人とも元気」「この子どもは誰の子?」「あんたが産んだうちの子」「なんで岩滑にいる?」「会社が休みの時、岩滑と浜岡に行った」「頭の中がごちゃごちゃして何処が何処だか分からない。こっちの写真は私たちの家の前?」「そう。去年の正月の写真だ」「一番右は私みたい。コートは私のものだもの。私の横は?」「Lだよ」「背が高いんだね」「そうね」「一番左がA?」「そう」「前の人は?」「Aたちの娘のAだよ。もう大学生」「その後ろは?」「Aの夫のM」「分からない。見たことのない人が入ってるとごちゃごちゃしちゃう。家に帰りたい」「伝染病が流行っていて外出できない。治まったら家を見に行って、子どもたちも呼んで一緒に過ごし、夕方になったらここに戻ることが出来るようになる」「それまで頑張る。なんで私はここにいる?」「私があんたの介護を出来なくなって、グループホーム寿にあんたの介護をお願いしたから」「ここはいいところだよ。みんな親切でやさしい」「今日は帰るけど、また来週面会に来るね」と、車に乗り込むと職員さんと一緒に手を振っていた妻。今日は直ぐに泣き出し、ついに笑顔が出なかった日。200914c.jpg200914d.jpg
(泣くのを堪えた顔で手を振って、窓越しに見送ってくれた妻。)

風の通り道は波立ち上空を映してブルー

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.9.13)
(アルツハイマー)

地平線の空を染めて晴天の夜明け、風の通り道は波立ち上空を映してブルー。200913.jpg

市民農園跡前の埋立地にダイサギやチュウサギ、何に驚いたのか一斉に飛び立つ。200913a.jpg

首を伸ばして水面を見詰め、さっと振り下ろしたダイサギの嘴。頭を上げれば咥えていた小魚、咥え直し飲み込んだ一瞬の早業。200913b.jpg


『私は明日帰るの?』 (2020.9.13)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「久しぶりだね」「昨日電話した」「そうか、頭がふわんふわんしている」「眠ってた?」「いま起こされた。私は明日帰るの?」「何処へ帰るの?」「今ままでいたところ」「今どこにいるの?」「二日くらい前に来たところ」「1月からずっとそこにいるよ。そこはあんたの部屋でしょ。ベッドの上に寝転がって半分眠ってるな、起きてベッドに腰掛けて。起きないと目が覚めない」「起きてベッドに腰掛けた」「目が覚めた?」「ちょっと覚めた。窓の前にAとLが運んできてくれた鏡台がある。窓の外に駐車場がある。前にもここにいた気がする」「ずっといたよ。空想であっちこっちに出掛け、空想から覚めると戻ってきた気がするんだ」「大きな声で、こんなとこ嫌だと叫びたい」「やめてよ」「ここはよその家だからしないよ」「テーブルの上にラジオがある。岩滑のネコかな、可愛い子が二匹いる」「あんたが可愛がっていたみるとももだよ」「何処で?」「高野山の自宅で」「明日か明後日帰るの?」「帰らない。明日は私が面会に行く」「この部屋に来るの?」「建物には入らない」「駐車場に来て、私は窓から見るの? そんなの嫌だ」「伝染病が流行っているから、入居者が感染しないよう建物の中での面会と外出は禁止されている」「窓の外の駐車場の向こうに行くと市役所の方へ行く広い道、その先を東に行ってAさんの家の前から坂を登ると家。私とあなたが一緒に暮らした家?」「そう。横浜から引っ越してきたときはAとLがいて4人暮らし、子どもたちが独立してから二人で住んでいた」「早く来て、会いたいよ」「明日面会に行く」「窓から見るだけでもいいから来て」「明日行くよ。もう時間だ。まだ言いたいことがある?」「あるようなないような、言っても仕方ないことばかりだ」「CD鳴らしてから電話機を返してきて」「自分一人でも時々鳴らして聞くよ。・・・鳴った。~春を愛する人は~」「電話機返してきてから歌って」「分かった・・・電話終わりました」200913c.jpg
(遊歩道の片側に群れて咲いたキクイモの花。)

静かに明けた曇天の手賀沼

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.9.12)
(アルツハイマー)

天気予報は雨だから自宅近くの桃山公園の高台へ。静かに明けた曇天の手賀沼。200912.jpg

岡発戸新田釣堀前に繋がれた小舟、網を干す鉄パイプの棚にはサギの群。200912a.jpg

市民農園跡の前の埋立地から飛び立つサギの群。また一羽東我孫子の丘に向かうダイサギ。200912b.jpg


『あなた暇でしょ』 (2020.9.12)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「ちょっと昼寝した。お昼食べてベッドに横になったら眠っちゃった。ちょっとだから大丈夫だよ。あなた暇でしょ、なにやった?」「食事の用意、掃除、洗濯をしたから散髪に行ってくる」「全部自分のことじゃない」「いままでやっていなかったことをやるんだから大変だぞ」「私がいなくなったからかわいそうだね」「この家に住むのもそんなに長くならないから、不用品やあっても使わないものを整理して棄てている」「偉い偉い」「からかっているが、あんたが空いている場所に突っ込んだものの整理だって大変だ」「私、家にいないから出来ないもん。あなたはいずれ何処に入る?」「まだ具体的なことは決めてない」「ここに来て私と住んだら?」「私は要介護の認定をされていないからまだ入ることは出来ない。もし私が何処かに入ったらあんたに面会にも来られなくなるでしょ」「そうか、お互いに健康に気をつけて、手がかからないように生きなくちゃ。私はここに入っていて楽ちんだけど、あなたのことを考えると心配だよ。そうなったら私が先に死ななきゃダメか」「あんたが生きていてくれるのが私の心の支えだから、あんたには長生きして欲しい」「そんなこと言われると泣けて来ちゃう。長生きしてあげるからあなたも頑張って。私がここに入るのはあなたと一緒に決めたが、あなたは一人でどうするの?」「大丈夫、一人で判断できなくなったら娘が二人いる。一緒に考えてくれるよ」「そうか、二人がいたか。私は女の子を二人産んでおいてよかった。私はあなたと一緒に暮らしたい」「先のことは分からない。それよりいま一日一日を楽しく過ごそう。伝染病が治まったら家にきて一緒に日中を過ごし、夕方にはそこに戻ることだって出来るようになる」「それが出来るまで一生懸命元気に生きるよ」「時間になった。CDを鳴らしたら電話機を返してきて」「私のつまらない話しで時間になったか、ごめんね。・・・鳴ったから返してくる・・・電話終わりました」200912c.jpg
(妻が好きな沼を見下ろす高台、背中側に咲くザクロの花。桃山公園が出来るころ地主さんが間引きした杉林に植えた木。家神様の愛宕大権現の碑があるから、公園になってもこの一角は私有地のまま。)

遠くの雲の朝焼けが始まったネコの木の上

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.9.11)
(アルツハイマー)

遠くの雲の朝焼けが始まったネコの木の上。200911.jpg

埋立地に集まったダイサギやチュウサギ、次々と飛び立って東我孫子の丘を目指すダイサギ。200911a.jpg

朝日が射し込み始め自宅近くの住宅地向こう、もくもくと膨らみ始めた雲。200911b.jpg


『顔を忘れると辛い』 (2020.9.11)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「ご主人からだって。顔を忘れると辛い。大事なことが他のことを考えると消えてしまう。絶えずインプットし続けないと忘れてしまう。ご主人じゃなくてお父さんって言ったら頭の中のあなたとつながった。お父さん、本当は私の夫。私の父の顔はもう思い出せない。遠い人になっている。窓の外を見て、駐車場の先へ行くと広い道、市役所の方へ下って東へ行く。Aさんの家の前から坂を登ると家。そのことを思い出すと帰りたいと思う。次々と色んなことを忘れるから泣けてくる」「子どもたちや私の顔を忘れないようにAとLとあんたと私の写った写真をあげた。見ている?」「持っていない」「昨日までベッドの枕元にあったよ」「見つからない。私はこういう病気になりたくなかったがなっちゃった。自分の名前は覚えているが、そのほかの空間は忘れてしまう」「何処かへしまって、何処だったか忘れたんだ。心配しなくていい、今度の日曜日に面会に行くから、その時に持って行くよ」「ああいやになっちゃう。こうだからあなたに対する力がなくなっちう。もう泣くのはやめた。あなたはどこにいる?」「高野山の家」「私も行って会いたい。思い出したことは頭の中に張り付いている」「持って行く写真は大きいのがいい? それと小さいの3枚くらいプリントしようか?」「どっちでもいい。お父さんや子どもたちの顔を忘れないように色々考える。写真を見ても、その絵と頭の中の記憶が一致しないと別のものになっちゃう。私の田舎やNECの横から利根川に沿って走る道は直ぐ思い出す」「ロイヤルに行く道だね」「川沿いの右にあった。そこから山の方へ行くと知ってる人がいる」「ショートステイに行ったわらく、そこにはケアマネージャのMさんもいたよ」「次のことを考えると消えちゃう。忘れたときに頼りになるのはあなただけ」「時間になった。CD鳴らしてから電話機を返してきて」「点かない。コードが抜けてた。・・・鳴った・・・電話終わりました」200911c.jpg

(ひっそりとフヨウの花に閉じこもるモンキクロノメイガ。)