コロナのことをしばし忘れて沼を望む

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.5.4)
(アルツハイマー)

小雨降る桃山公園の高台に立ち、コロナのことをしばし忘れて沼を望む。200504.jpg

雨に濡れ電線に止まっていたヒヨドリ、沈思黙考しているごとく動かない。200504a.jpg

仲間たちが群れて斜面林を越えて向こうに下ったのに、ただ一羽広場の芝生で餌探しするムクドリ。200504b.jpg


『よそ行きの顔でいるよ』 (2020.5.4)
妻に電話した昨日午後、いつもと違う保留音。「もしもし」「はいはい」「どなた?」「私の声が分からないの?」「私のだんな様じゃないの。テレビのところにいるからドラマのことかと思っちゃった」「どこにいるの? 自分の部屋じゃないの?」「いまから何かあるみたい。大きいホールに集められてテレビの前に座っていたら電話だって呼ばれたの」「ボランティアの人が来て歌を歌ったり体操する部屋?」「そう。スタッフの人がお話ししたり、外の人が来たときここへ来る」「いつもはデイサービスの人が使う部屋だね」「知らない。食堂からも、玄関からも入れる。お昼ご飯を食べたらここへ連れてこられた。もう一つの入り口は玄関の方で、トイレもある。ここからも外が見える。雨が降りそうで、部屋の時計は13時21分、玄関の入り口の外は何処かへ行くときの道だ。その道には行ったことのある家もあるよ。あなたはどこにいるの?」「家にいる」「久しぶりに参加した集会だから不安なの、あなたが傍にいたら心強いのになぁ」「泣いちゃダメ。近くに人がいるんだろう。笑われちゃうぞ」「泣かないよ、よそ行きの顔でいるよ」「みんな何してる?」「テレビを見ている。子どものマンガみたい。ときどき威張った役者みたいな人が映ってる」「じゃぁ、みんなと一緒にテレビを見てね」「テレビはどうでもいい。今日は家に帰るか分からない」「家には帰らないよ」「どうして?」「伝染病が流行っているから」「そうか、テレビでも家にいるようにって言っていた。帰れないよね。あなたは元気? ちゃんとご飯食べてる?」「ちゃんと食べてる」「元気でいるか心配ばかりしている。ご飯の仕度をしてやれないのは辛いよ。自分でご飯の仕度をしてる?」「自分で作っている」「男だってそうでなくちゃダメだな。偉い偉い」「みんなと一緒にテレビを見た方がいいね」「電話ありがとうね、スタッフの人に返してくる・・・終わりました」とスタッフの人に返している様子。「まだいいのよ」「もう終わりました」と会話が聞こえ切れた。200504c.jpg
(雨交じりの南風に向かって泳ぐ鯉のぼり、遠く過ぎ去った時空の向こうに置き忘れていた風景を思い出す。)

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