風が沼を渡れば広がるブルーの水面

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.10.31)
(アルツハイマーになった妻)

風が沼を渡れば広がるブルーの水面、風が止めばオレンジの水面が押し戻す。201031.jpg

飛んできたのはホシハジロの群か。転んで壊して以来買っていない双眼鏡、片目しか使えぬのに両目分の値段かとつい買いそびれる。201031a.jpg

岡発戸の丘から眩しい日の出。あと何日かで丘を下る日の出の場所。201031b.jpg

『近くでも会えないね』 (2020.10.31)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「近くでも会えないね。歩いて10分くらい?」「356を通っても10分はきつい。1.2Kmあるから。家から出てタビヤの前ではまだ半分以下、胃腸科病院辺りが真ん中」「最近、建物の名前を聞いても頭に浮かばなくなった。自分一人で出歩いたら迷いそう。今まで行ったところは頭に入っているはずだが、自分だけだと心配だ。行けなくなったら淋しい。そっちに行きたいが、ここから見て駐車場の横から広い道に出る。右に曲がって市役所の入り口を過ぎて交差点を東に行く。神社の手前からいい道になった坂を上ったら家。」「正しいよ」「ああよかった。このくらいなら行ってもいい?」「今はダメだよ。コロナの伝染病が流行っていて、あんたは外出できないから。コロナが収まったら一緒に歩こうね」「いつ終わるの?」「伝染病だから分からない」「それまで待てるかな。私は早くそっちに行って、頭の中の地図と比べて確認したい。いま道をどんどん忘れている。家に行く道、家から中学の前を通って、郵便局の方へ曲がり天王台駅に行く。駅には入らないで依田内科へ行く。もっと行って橋を渡って利根川に出る。頭の中がごちゃごちゃしてきた。頭の中の地図が正しいか確認したい。それが楽しみなの」「ずいぶん道をよく憶えているね」「こっちに来てずいぶん走ったもの。この辺り、天王台や東我孫子は、我孫子に来てからたくさん友だちができた。Aさんの家から坂を上った家、二人で建てた家はまだあるの?」「あるよ。今も私が住んでいる」「ああよかった。元気な内に確かめに行きたい」「コロナが収まったら見に行こう。それまで元気でいようね」「静岡から見ると遠くの我孫子に住んだ。元気だよね、私」「元気になったよ。グループホーム寿に来てから訪問診療の先生も来てくれ去年に比べて元気になった。時間だからラジオを鳴らして、電話機を返してきて」「電源が入らない。コンセントが抜けていた。・・・鳴ったから返してくる。嬉しいな、嬉しいな。・・・電話終わりました」201031c.jpg
(隣のアンテナに遊びに行ったわが家の軒下に住むスズメ。)

曇天の空を地上の灯が染め、いつまでも暗い沼

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.10.30)
(アルツハイマーになった妻)

曇天の空を地上の灯が染め、いつまでも暗い沼。201030.jpg

サギの群がいる埋立地の杭の向こう、昨日から現れたオオバンらしき群の間を抜けて泳ぐカンムリカイツブリ数羽。ホシハジロも7羽ほどその先に。201030a.jpg

今朝から現れたカンムリカイツブリ十数羽、埋立地の杭の前を通り過ぎて親水広場方向へ進む。201030b.jpg

『まだ係をやっている?』 (2020.10.30)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「具合悪いところない?」「ない」「まだ係をやっている?」「何の係?」「私をここから解放してくれる係」「そんな係りはしていない。あんたのいるところはグループホーム寿」「何でここに押し込められている?」「ここで食事、洗濯、入浴、体操などの生活の介護をしてもらっている」「お父さんがやってくれないの?」「去年まで一緒に住んでいた。去年はあんたの体調が悪くて食事や病院通いは私が面倒を見ていた。目眩や吐き気、頭がガンガンして、震えが来たようなひどいときは救急車で病院にも行った。膵炎になって入院した後は私では十分な介護が出来なくなった。あんたも施設に入りたいと言って二人でグループホーム寿を見学して申し込んだ」「その頃のことはちょっと憶えている」「申し込んだけど満員で、12月になって空きが出来て今年1月に入居した」「手賀沼の近く?」「ちょっと離れてる。市役所の前から坂を上って、356の交差点の手前を左に入ったところ」「分かった」「今いるところはあんたも入りたくて申し込んだところ。食事、洗濯、入浴、体操などの面倒を見てくれている」「ご飯もおいしいし、体操の時間もある」「健康面は訪問診療の先生が来て診察してくれる」「知っている」「ここでは、私では出来ない介護をしてもらって、私にとってもあんたにとっても、良い所にいるはずだよ」「それなのに、私ってわがままばかり言っていてだめな子ね。これからはいい子になるって約束は出来ない。後になったらまた忘れちゃうから。そんな自分を恥ずかしくて顔をそむけたら誰も顔を見せに来てくれない。本能的に身内の人には顔を見せてもらいたい。惚けた人は哀れ。自分が分かってやったら哀れだけど、分からずにやったら仕方ないよね。あんたは惚けないでね」「そんなに悩まないで。私が心臓の手術を受けたときはあんたが面倒を見てくれた。時間が来たからCDを鳴らしてから電話機を返して」「・・・鳴った。電話機を返してくる」201030c.jpg
(日の出も朝焼けもなさそうな曇天の朝、こんな日は泣き虫になるアルツハイマーの妻。)

上空は晴れていても、東の空には暗い雲

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.10.29)
(アルツハイマーになった妻)

上空は晴れていても、東の空には暗い雲。201029.jpg

沼に霧が出てきて、対岸がかすみ始めネコの木がくっきりと見える。201029a.jpg

じゃれ合って追いつ追われつハシボソガラス、斜面林を下り沼上空を飛ぶ。201029b.jpg

『嘘か本当か知らないが』 (2020.10.29)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「どこにいる?」「家にいる。ちょっと前に依田内科から帰ってきた」「嘘か本当か知らないが、死んだはずの私のおじさんが生きていて、おじさんと一緒にいる人と会ってきた。今日だか、明日だかその人がおじさんを連れてくると言った」「夢を見たんじゃないの。戦死したおじさんならもう100歳を越えた人だよ。あんたはそこから外出できないし、館内での面会は禁止だからあんたには会えなかったはずだよ」「私がその人から聞いたんじゃなく、事務所の人に聞いたのかな。ほんのちょっと前に事務所から戻ったところ。私は眠ってはいなかった」「グループホーム寿は面会禁止、入居者は外出も禁止だから、そんな変な人が入ってくることはないから心配しないで」「それを聞いて安心だ。でも、もし入ってきたらどうする? あなたがここに来ていて一緒に会ってくれる?」「私だって中に入って面会することは出来ない」「それなら、入ってきてはいけない人が入ってきたから、私は絶対に話をしないと言えばいいの?」「そうね、相手にしなければいい」「来るって事務所の人に言って、事務所の人から私が聞いたのかもしれない。事務所の人に聞いてみて」「夢か空想じゃないの」「寝ていなかったし、電話のちょっと前に事務所で聞いた。来てしまったらどうすればいい? あなたが話を聞いてくれる?」「面会禁止だから行けない。会いに来る人だって面会禁止で入れてもらえない」「それなら安心だ。でも入ってきたらどうする」「困ったな、事務所に行って職員さんと代わって」と話し、職員さんに代わる。職員さんにも同じことを言っていったと。どうやら夢を見て事務所に行って話し、事務所から聞いたと思い込んだらしい。もう一度妻と代わって、「事務所に変な人が会いに来る話しはなかった。もし来ても面会禁止で入れてもらえないから安心して」と伝え、「分かった」と言ったがまだ分かっていない口調。後のフォローは職員さんにお願いして電話を切った。201029c.jpg
(庭のムベの実が色付いた。ここ数年、焼酎に漬けるから欲しいと持ち帰っていたおばあさん、コロナのせいか今年はまだ現れない。)

日の出前の色に染まり始めた地平線の空

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.10.28)
(アルツハイマーになった妻)

青空の裾に伸びてきた雲、日の出前の色に染まり始めた地平線の空。201028.jpg

日の出前の地平線の空の色に染まった沼、風が吹けば細波が立ち上空を映してブルーの模様。201028a.jpg

岡発戸の丘の上、空を赤く染め雲の中から眩しい日の出。201028b.jpg

『何が何だかわからない』 (2020.10.28)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「眠ってた」「目が覚めた?」「目が覚めた。何が何だかわからない。お父さんは帰っていたの?」「どこにいると思っているの?」「会社を辞めてどこかへ行った」「どこへ?」「岩滑か何処かのあなたの家」「岩滑はあんたの生まれた家。私は手賀沼の方から坂を上がったところ。二人の家だから直ぐ近く」「ああ、よかった。私は気が弱くなって泣けてくる。ここを出されて帰る時は鏡台をどうやって運ぼうかと考えていた」「どこへ帰るの?」「何処かにお父さんの家があるかなと考えたり、岩滑へ帰ろうかと思ったりした」「岩滑にはT君夫婦しかいない」「父や母は死んだ?」「両方とも20年以上前に亡くなった」「Sa姉さんは?」「姉さん夫婦も亡くなった」「岩滑はもう私の家じゃない。結婚してあの家の人じゃなくなった」「あんたが帰れる家は私の所だけ。私は二人で建てた家に住んでいる」「直ぐ近くだね。市役所の先を東に行って坂を上ったら私たちの家。ここを出なければならなくなっても帰る家があった」「あんたがいるところはグループホーム寿、あんたと一緒に見学して申し込んだところ。しばらく待って入れた」「帰れと言われたら?」「帰れとは言われない。ずっといていい」「帰ってはダメ?」「私と一緒に住んでも、年を取って私はあんたの介護をうまく出来ない」「そうだよね。ここはどこ?」「家からAさんの家の前へ坂を下り、手賀沼沿いに少し西へ歩いたら交差点。右に曲がって市役所の前を通って坂を上り、交差点の手前を左に入ったところ。消防署の近く、コナカの裏辺り」「やっと頭の中が整理できた」「時間になった。CDを鳴らして」「ベッドから出られない・・・電源入れた・・・~春を愛する人は・・・~」とCDにあわせて妻の歌声。「おーい、おーい」「どうしたの? 歌うのなら任せておいて」「先に電話機を返して」「どこへ返す?」「事務所」「ラジオ点けたままでいい?」「いい。戻ったら歌ってね」「分かった。・・・電話終わりました」201028c.jpg
(朝の光が水生植物園跡にも回り込み、紅葉が色濃くなったケヤキの木。)

日の出も朝焼けもなさそうな曇天の夜明け

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.10.27)
(アルツハイマーになった妻)

日の出も朝焼けもなさそうな曇天の夜明け。201027.jpg

鳥もいないとぼやきながら帰る散歩道、ここにいるよと鳴いてくれたモズ。201027a.jpg

柿の木の脇を通れば飛び立って、早く行けと催促かアンテナの上で鳴くヒヨドリ。201027b.jpg


『写真どこにある?』 (2020.10.27)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「眠っちゃった。しばらくぶりね」「昨日面会して話をした」「えっ、会ったの?」「岩滑の古い家の写真を見て話した」「写真どこにある? あなた来て探してよ」「コロナの伝染病が蔓延していて面会禁止だから行けない」「そうだったね。いつまで続くの?」「伝染病だからいつ終わるか分からない」「いい加減にしてよ。私は元気ならそっちへ出掛けてもいい?」「あんたが感染してそこへ戻ると他の入居者に移してしまうから外出禁止になっている」「雁字搦めだな。詮から公子への手紙が出てきた。Kさんから手紙が来たから送るって」「電話で読んであげたよ」「憶えていない。Kさんはどこにいる人?」「神戸にいるあんたの中学、高校、大学の同級生。返事書くから便せんを欲しいと頼まれ届けたよ」「返事書いた?」「知らない。多分書いてないよ」「家の玄関前で子どもたちと撮った写真があった」「行方不明だった写真がどんどん出て来るね」「大事なものはこの箱に入れている」「入れたらもう見ない?」「時々見ている。あなたと二人で並んだ写真があった。あなただって分かるよ」「私もホルダーに入れてテーブルの上に置いてある」「家の前で撮った子どもたちとの写真、嬉しくてよく見るよ」「昨日渡した写真はあった?」「見つからない。他の写真はどんどん出て来る。来て探して」「面会禁止だから部屋には行けない」「じゃぁ後でゆっくり探す」「この頃うまく話が出来るようになったね。グループホーム寿にいるのがあんたの身体にいいと分かったって昨日あんたが言ってた」「いいこと言うね公子さん。でもね、お父さんとバカな話しができて、自分でも回復の兆しが出てきたと思って嬉しい」「時間になった。CDを鳴らして」「立てない。何するんだった?」「CD鳴らして」「鳴った。~春を愛する人は・・・~」「もしもし、おーい、電話機返してきてから歌って」「・・・夫と話しました」と言って職員さんに電話機を返す。201027c.jpg
(通るたび気になる小さな門番、近所の家の門の上。)

大きな朝焼けになりそうな夜明けの空

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.10.26)
(アルツハイマーになった妻)201026.jpg

空の色に染まった沼を渡るコブハクチョウ親子。201026a.jpg

大きな朝焼けになった日の出前の空。201026b.jpg


『私が生まれた家だよ』 (2020.10.26)
昨日の妻との面会。前日の電話で、娘二人の名前と顔を思い出せないから写真を欲しいと言われ、集合写真と妻が育った実家の写真を探して持参した。裏の駐車場に行くと妻が自分で窓ガラスと網戸を開けて何か言っていた。車から降りると、「これ、私が生まれた家だよ」と、渡したばかりの写真をかざした。「家の前にいるのは若いころのあんた」「本当だ。この家は明治の初めに建てた家だよ」「没落した旧家の半分を買って移築したから江戸時代の建物だと聞いていた」「祖父は頼まれて、学校の校長をやめ村長を三期やった。農地を売ったりお金を持ち出し大変だったって。曾祖父の代までは自宅で塾をやっていて蔵には寺子屋の机みたいなのがいっぱいあった」「よく憶えているね」「蔵を探検するのが好きだったから。大きい写真、みんなの名前を書いてくれたね。抱っこしてる赤ちゃんは私の孫、可愛いね」「もう大学生だよ」「子どもは変わっちゃうけど、おとなは変わらない。私たちの家は近いよね」「車で3分、歩いて十数分」「ここにいると私の身体のためにはいいって分かった」「そうだよ。食事、掃除、洗濯、入浴も手伝ってくれる。訪問診療の先生も来てくれる。歯医者さんも美容師さんも来てくれる」「ここに来る前は大変だった?」「目眩や吐き気がして歩けなくなったり、手足が震えたり、何度も病院に行った。膵炎で二度も入院した。体質が変わって薬の副作用が出るようになったことを疑って依田先生が薬の量の調整や一時中止をしていたころここに入った。依田先生とJAとりでの先生から訪問診療の先生に引き継ぎをしてくれた。アルツハイマーの薬を中止し、膵炎予防や三半規管の薬を出してくれて、去年からの苦しみはなくなった」「その話を誰かに聞いて、ここにいるのがいいと思った。わがまま言った職員さんに謝らなきゃ」「ここへ来てからちゃんと話しが出来るようになってきたね」「自分でもそう思う」「今日はもう帰る。次の日曜にも面会に来る」「待ってる。気をつけて帰って」と見送ってくれた。201026c.jpg201026d.jpg
(いつになく明るい表情での見送り、「また来てね、待ってる。気をつけて帰って」と手を振る妻。)

快晴の朝、地平線を這うように細く長い雲

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.10.25)
(アルツハイマーになった妻)

快晴の朝、地平線を這うように細く長い雲。201025.jpg

沼を低く飛んで旋回したコブハクチョウ三羽、埋立地の杭の前に着水すれば待っていたもう二羽。201025a.jpg

岡発戸の丘の上から眩しい日の出。201025b.jpg


『今日帰るのでしょう』 (2020.10.25)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「いつ来るか分からないから寝ていた。今日帰るのでしょう、布団はどうする?」「今日は行かない。明日面会に行く」「嬉しい。何時?」「10時30分に裏の駐車場に着く」「大きな木の下に車を止めるのね」「そう。あんたは職員さんが大きな部屋の窓の所まで連れてきてくれる」「明日行くって言われると泣けてくる」「泣かないでよ」「他に嬉しい表現はないじゃない。お父さん、私がお父さんって言うけれど本当のお父さんじゃない」「AやLがお父さんて言ってたからね」「AとLは私の子? 私の子どもの名前をずっと思い出そうとしていた。顔も思い出せない。写真を欲しい。箱の中に入れてあるが分からない。明日帰るから布団や洗濯物を用意しなくちゃ」「明日は帰るんじゃない、面会だよ」「迎えに来て帰るんじゃないの? 私たちの家に帰って一緒に住みたい」「あんたは去年病気がちで、私があんたの介護をうまくできなくなったから、グループホーム寿に入って私の代わりに介護してもらっている。ここでは食事、洗濯、入浴などの生活面の面倒、訪問診療の先生が来て診察もしてくれている」「ずっといていいの?」「ずっといていい」「元気になったが、まだ病気があるの?」「アルツハイマーになった」「遺伝する?」「年取ってからのアルツハイマーは遺伝じゃないが、なりやすい体質の人がなりやすくなる生活をすると更になりやすくなる。睡眠不足もよくないと聞いた」「私はやりたいことがあると、人の忠告も聞かないで夜遅くまでやったし、徹夜もした。よくなかったね。家に住むのじゃなく、家を見に行って、子どもたちも来て話したりして、時間になったらここへ送ってもらうのならいい?」「今は伝染病が蔓延していて外出できないが、収まったらできる」「岩滑にも行ける?」「千葉県と静岡県だから無理」「そうか。私は空想で行かれるから便利だ」「時間になった。CD鳴らしてから電話機返してきて」「・・・鳴った。行ってくる。・・・電話終わりました」201025c.jpg
(水生植物園跡に朝日が射し込めば、パッと輝いたケヤキの木。)

どんどん広がる上空の青空、まだ残っていた金星

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.10.24)
(アルツハイマーになった妻)

どんどん広がる上空の青空、まだ残っていた金星。201024.jpg

未だ暗い曇天の空へ飛び立ったダイサギ。201024a.jpg

やっと咲き始めた家庭菜園の菊の花、今朝はまだ来ていなかった顔見知りの主。201024b.jpg

『私も中国に行った』 (2020.10.24)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「眠ってた。何かご用?」「お話ししようと思って」「私たち二人だけだものね」「子どもたちもいる」「何人?」「二人」「AとLか。思い出したら泣けてくる。どこにいる?」「Aは八王子、Lは横浜」「八王子には誰かいたね」「あんたの妹のMさん。もう目が覚めた?」「覚めた。私とお父さんは一緒に住んでいない」「去年までは一緒に住んでいた」「ずっと前から別れていたと思った」「ずっと昔、アメリカへ長期出張、中国や一関に単身赴任したのを思い出したのかな。でも20年前からはずっと一緒だった」「私も中国に行った」「赴任したとき2ヶ月くらい天津に来た。そのあと友だちのAさんと一緒に遊びに来た」「子どもは大きくなっていた?」「大学生と高校生だった」「もっと最近のことかと思った。いまどこにいる?」「私は直ぐ近くの家、あんたはグループホーム寿」「近くなら一緒に住めばいい。私は身体が悪くなったの?」「アルツハイマー病になった」「そうだ、惚けたっけ」「物忘れするようになって、いっぱい活動していたことをやめた。近隣センターのこと、コーラス、読書会、茶道、そのほかのボランティア、みんなやめた。去年からは目眩、吐き気、頭がガンガンして病院通いし、二度も膵炎で入院した。私が十分に介護出来ないからあんたも施設に入りたいと言って、二人でグループホーム寿を見学して申し込んだ」「申し込んだのを憶えている」「ここに入居する直前に二度目の入院をして、ここが申し込んだところだとは理解できなかった」「そうか」「ここでは食事、洗濯、入浴などの支援、訪問診療の先生の診察もあってすっかり元気になったよ」「家を見に行きたい」「伝染病が収まったら見に行ける」「そうか、伝染病か」「明後日は面会にくるよ」「来てね。窓越しに駐車場にいるお父さんと?」「そう。会えるだけだっていいよ。時間になった。CDを鳴らして、電話機を返してきて」「・・・鳴った・・・今村です。電話終わりました」201024c.jpg
(柿の木の繁みから聞こえるヒヨドリの声、やっと見えた姿を撮ろうとしたら逃げられて、撮れていたのは柿の実だけ。)

いつまでも暗い曇天の沼、雨か霧かぼやけてきた対岸

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.10.23)
(アルツハイマーになった妻)

いつまでも暗い曇天の沼、雨か霧かぼやけてきた対岸。201023.jpg

埋立地の杭から飛び立ったのはダイサギだろう、少し明るくなれば大きいシルエットはいなくなる。残っていたのはチュウサギだろう、思い思いに飛び立って散って行く。201023a.jpg

雨が迫ってくるのか、対岸が消えネコの木が霞む。急いで散歩道をショートカットして歩く間にポツリポツリと降って来た雨。201023b.jpg

『私の病気は他人に移る?』 (2020.10.23)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い、夫の詮です」「私はいつも詮をお父さんと言っている。こんなになって情けなくて泣いている。泣いてばかりいては生きる価値がない。生きているから泣いてはもったいない。外の景色を見て家へ帰る道を思い出している。二人で建てた家を見に行きたい」「伝染病流行が収まったら見に行こうね」「そんなにひどいの?」「オリンピックも中止になりそう」「私個人だけでなく、多くの人も同じこと。泣いてはダメだね。私の病気は他人に移る?」「移らない」「それなら家に行ってもいい?」「今は行けない。外出してコロナに感染したり、グループホーム寿に持ち込まないため外出や建物内の面会をやめている。今日は天気が悪いから泣いてばかりいるね」「今はお父さんの声を聞いて嬉しいから。私の病気はどういう病気?」「アルツハイマー」「それは知っている」「忘れる病気。あんたのお母さんもアルツハイマーになったが長生きをした。Su姉さんも同じ病気がだが元気で施設にいる」「遺伝する?」「若くてなる人には遺伝もあるが、なりやすい体質の人が生活習慣や環境の影響を受けるとなりやすい。宵っ張りの朝寝坊はよくないって聞いたことがある」「頭がどうなるの?」「若い時から頭の中にゴミがだんだん溜まって、ある程度溜まると症状が出る。だから年寄りに多い病気」「分かったけど、またすぐに忘れる」「あんたと話をしていると感情やものの考え方はちゃんとしているが、考えたり話したことを時間が経つと忘れるだけ。内臓は悪くないし、生きているからその時々を大事にして生きていればいい。あんたが忘れても私が憶えているから、同じことだって何度でも話してあげる。心配しなくても、いつも近くにいて電話したり面会にくるから安心して」「あなたの顔を忘れても、声はちゃんと憶えている。話していると嬉しくて泣けてくる」「泣かないで。時間になったからCD鳴らしたら電話機を返してきて」「・・・鳴った。・・・電話終わりました」201023c.jpg
(誰もいない桃山公園、街灯の明かりに照らされたマユミの木。まだ公園になる前に地主さんが植えた小さかった木。)

刻々と上空へ広がり始めた朝焼け

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.10.22)
(アルツハイマー)

曇天の地平線が微かに赤みを帯びた夜明け、刻々と上空へ広がり始めた朝焼け。201022.jpg

日の出の刻を過ぎても見られなかった日の出、上空の雲の縁を黄金色に染めただけでやがて色褪せた。201022a.jpg

ソバの花は色褪せ、色づき始めたケヤキの木の天辺。201022b.jpg

『寝ぼけてます』 (2020.10.22)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「寝ぼけてます。お父さんも寝ぼけてる?」「寝ぼけていない」「いい子だね。ご用はなあに」「特にないけど、毎日電話してるでしょ」「そうね。でも何も憶えていない。電話くるのは当たり前と思ってるからかな」「昨日は、歌を歌ったら電話してることを忘れて何度もしもしと言っても気がつかない。困って職員さんに電話して見に行って貰った。だから尻切れトンボの電話になった」「そんなこと憶えていない。笑い話だね。笑いの提供じゃなく、ほんとのことだからみんな笑うだろう。お父さんにおもしろい話しをされて目が覚めた。窓の外は、大きな雲がゆっくり北東から流れてくる。雲が西へ行くと雨になるよね。雨だと嫌だな。明日は何曜日?」「木曜日」「まだ日曜日は先だね」「日曜には面会に来るよ」「どこで?」「あんたは大きな部屋の窓辺、私は駐車場」「あっ、足が速い雲が出てきた。自然の中には色々な変化があるね。下から大きな雲が上がってきた。お父さんご用件はなあに?」「特にないけど。あんたに質問されたから答えていると、あんたの話はまた雲のことになっちゃった」「雲がどんどん窓の上に来る。大きな雲で窓がいっぱいになりそう。西日が射して雲が真っ白。あなたの任期はいつまで? 仕事でどこかへ行ってるのでしょ」「直ぐ近くにいる。坂の上のあんたと作った家にいる。仕事は20年も前にやめた」「私は雲を見てるけど、あなたは暇で寝てるの?」「朝早く写真を撮りに行って、戻ったら朝ご飯を作って食べ、掃除洗濯をして・・・」「まだ写真やってるんだ。あっ、白い雲が動いて青空が出てきた。片方の窓は半分以上青空」「雲の話をしていて時間になった。明日も電話するし、日曜日には面会に来るよ」「嬉しい。どこで会うの?」「あんたは大きい部屋の窓辺、私は裏の駐車場にいる」「分かった」「CDを鳴らしてから電話機を返してきて。戻ってから歌ってね」「・・・鳴ったよ。近いから行ってくる。・・・今村です。電話終わりました」201022c.jpg
(雲話ばかりした妻との昨日の電話、今朝の沼は大きな朝焼けが映って赤い沼)

オレンジ色に染まり始めた地平線

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.10.21)
(アルツハイマー)

いつもより早くから眺めた手賀沼、晴れた空は未だ暗くオレンジ色に染まり始めた地平線。201021.jpg

埋立地の杭から次ぎ次ぎ飛び立って、オレンジ色の空を飛ぶサギのシルエット。201021a.jpg

金色に輝く雲の縁、雲から出てきた眩しい太陽。201021b.jpg

『ろれつが回らない』 (2020.10.21)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「ろれつが回らない。寝ていたからかな。まだ目を瞑ってる」「ベッドに寝転がっているの?」「そう」「起きないと目が覚めないよ」「嫌だけど、起きたよ。だんだん目が覚めてきた。窓の外は久しぶりにいい感じの日差し。今日は何曜日?」「火曜日」「火木土はどこへ行く日?」「火木土はロイヤルに通っていた日」「ロイヤルって?」「ここへ来る前通っていた施設。お風呂に入ったり、体操したりしたところ」「思い出せない」「利根川に沿って下流へ走って右側」「全然思い出せない」「もう行かないから思い出せなくてもいい。今日は目が覚めないね」「眠い眠い。お父さんの電話が終わったらまた眠っちゃう。昼間眠ると夜眠れなくて辛くなるね。もうじき覚めると思う」「また寝転がった?」「ベッドの上にあぐらを掻いて座ってる」「ベッドから下りて」「座っているので下りたくない」「ラジオの電源入れてCDを鳴らせられる?」「出来るよ」「下りないとラジオを点けられないね」「一歩歩いた。ラジオの電源入れた。次のボタン、これでいい。横に座った。鳴ったよ。~春を愛する人は・・・~」「目が覚めた?」「覚めそう。覚めつつある」「目が覚めたらちょっとお話しして、電話機を返しに行こう」「だんだん姿勢がよくなった。歌うと自然によくなる。何かするときも鳴らして、聞きながらやるよ。~かあさんは夜なべをして手ぶくろ編んでくれた・・・~」「もしもし、もしもし、オーイ」と言っても歌い続け、曲が終わると「この歌を歌ってると横須賀の母の実家から海の方へ歩いてる。~あした浜辺をさまよえば・・・貝の色も~ この歌を歌ってると大坂から千浜を通っている。~・・・月の色も星のかげも~ 今は岩滑へ歩いてる」「もしもし、オーイ」と呼んでも、電話機はどこかに置いたまま、CDに合わせて空想の世界で故郷を歩いている。仕方なく電話を切って職員さんに電話、「歌を歌って空想の中、電話中なのを忘れた」と伝え、職員さんが妻の部屋へ向かった。201021c.jpg
(久々に秋晴れの朝、眩しい太陽に沼も岡発戸の岸辺も暗転。)

まだ仄暗い沼、上空の薄雲の向こうに星一つ

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.10.20)
(アルツハイマー)

地平線の雲が高くまだ仄暗い沼、上空の薄雲の向こうに星一つ。201020.jpg

朝焼けも日の出もなさそうだと広場に出たら、斜面林の向こうに色付き始めた空。201020a.jpg

急ぎ高台に戻れば沼上空は一瞬の朝焼け。201020b.jpg

『帰る日はいつ?』 (2020.10.20)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「詮さんですか。帰る日はいつ?」「予定はない」「改めて帰る日を決めよう。ここが嫌だからじゃない」「家に帰っても私は介護出来なくなった」「私はどこも悪くない。帰れば自分で何でも出来る」「去年あんたは病気がち、入院したり病院に度々通った。家の中のことを私がやったが、私では十分な介護が出来なく、あんたは施設に入りたいと言った。二人でグループホーム寿を見学して申し込み、半年待って入居した。食事、洗濯、入浴、体操や、訪問診療の先生が来て診察もしてくれる」「忘れていた」「おかげで目眩や吐き気、頭がガンガンするのが治って膵炎も再発していない」「この状態をしばらく続ける?」「そう」「時には会いに来てくれる?」「毎日電話してるし日曜日の度に面会に来ている」「憶えていない。ここの経費は?」「毎月払い込んでいる」「お父さんはどこにいる?」「坂の上の私たちの家」「一人で? 誰か一緒に住んでいる人がいるの?」「一人だよ」「私はそこへ遊びに行きたい」「今はコロナの伝染病が流行って外出できないが、治まったら家に来てお話ししたり食事をしよう。子どもたちも呼ぼう。夜、何かあっても私では助けられないから、夕方にはグループホーム寿に戻る」「それは分かる。車で送り迎えしてくれる?」「もちろん。あれ、泣いてるの? ~公子なぜ泣くの公子は弱虫~」「~まあるい目をしたオタンコナスよ~ あはは。あなたが先に死んだら嫌、私も死にたくない」「今は生きてる。今を生きることだけを考えよう」「私はここにいればいいのね?」「そう」「毎日電話するし、日曜日の度に面会に行く」「会っても憶えていない」「直ぐ忘れるのが公子の病気。頭の中に記憶は残っていて、直ぐには思い出せないだけ。時々思い出しているよ。今は生きている。生きることだけを考えよう」「そうね。分からないことはその時考える」「時間になった。CD鳴らしてから電話機を返して」「・・・鳴った・・・電話終わりました」201020c.jpg
(空想の中での妻の散歩道、「中学校の脇には花が咲いている」と言ったのを思い出して、撮影の帰り道は遠回り。色とりどりの花が並んで咲いていた。)

雲間から漏れる陽光に染まる雲

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.10.19)
(アルツハイマー)

星が見えていた空に雲が迫り出し、雲間から漏れる陽光に染まる雲。201019.jpg

三羽でじゃれ合っていたハシボソガラス、トビを見付けてからかえば逃げるトビ。執拗さについに怒ったトビ、一羽に的を絞って逆襲。201019a.jpg

埋立地の杭から仲間はみんな飛び去って、出遅れて飛び立ち仲間を追うダイサギ。201019b.jpg


『あっ、これ私の実家』 (2020.10.19)
昨日の妻との面会、玄関先で面会票を記入、Sさんに11月の予約をお願いし今日の話題にと持参した妻の実家建て直し以前の写真と7人の姉妹が並んだ写真を渡す。「ここ数日ずっと明るく元気でした」とSさん。裏の駐車場で待つと、ガラス窓の向こうにニコニコ笑った妻が登場。Sさんに写真を渡されると眼鏡をかけて写真を取りだし、「あっ、これ私の実家。玄関が綺麗になって建て直した家?」「建て直す前の家だよ。私たちが結婚したときは明治の初めに建てたときの玄関だったが、しばらくして玄関の作り替えや、土間や台所に床を張って今風に直した」「私が思い出すのは土間だったころ。こっちの写真、何処かの旅館だね。女ばかり7人、よくもまあも産んだね」「あんたが生まれたとき、産婆さんがおじいさんに、またお忘れ物してきましたって言ったとお母さんに聞いた」「私の後にまだ3人、最後は双子だものね。私はどこにいる?」「右から3番目」「一番右は長女のSa姉さん、隣は誰?」「No姉さん」「三女じゃない、次女のSu姉さんは一番左にいた。生まれた順に並べば分かりやすいのに。あなたはどこに住んでる?」「直ぐ近く。坂の上の二人の家」「出てきて捕まらないの?」「捕まるような悪いことはしてない」「私は何も悪いことしないのに捕まえられてここに押し込まれている」「捕まえられたんじゃなく、ここに入れてもらって、面倒見てもらってる。外出できないのはコロナの伝染病が流行っているから」「そうか、逆に考えていた。ちゃんと謝らなきゃ。ここの人は親切で優しいよ。外に出られないから捕まえられて押し込まれてるかと思った。戦争だったから捕まえられたと思った」「戦争って?」「太平洋戦争」「あんたが小学校に入る前に終わってる」「変だと思った」「伝染病が終わったら一緒に散歩して、家をも見に行こうね。来週の日曜は10時半、再来週は1時半に面会の予約をした」「そんなに先まで」「今日は帰るよ」「来てくれてありがとう」と言って、Sさんと一緒に見送ってくれた。201019c.jpg201019d.jpg

対岸は雨が降り出したのかにわかに霞む

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.10.18)
(アルツハイマー)

桃山公園の高台に立てば、対岸は雨が降り出したのかにわかに霞む201018.jpg

早朝の雨が止んで、僅かに色付いていたケヤキの天辺。201018a.jpg

ちょっと遠回りした撮影帰りの散歩。玄関脇の庭に白く小さな点、よく見れば雨に濡れた蛙の置物。201018b.jpg

『昔の歌の歌詞は心に響く』 (2020.10.18)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「昔の歌を歌っていたら涙が出て泣きべそ。歌っていると情景が浮かび、歌詞がいいからついつい泣けてくる。昔の歌の歌詞は心に響く。頭に浮かぶ風景は子どものころの岩滑の景色みたい。だから涙が出る」「CDは自分で鳴らした?」「自分で出来たよ。~かあさんは夜なべをして 手ぶくろ編んでくれた~・・・」「うまいね」「うまいよ、私。歌いながら、今度はどこへ行こうか、どこへ食べに行こうか、次は何を歌おうかって話しながら歌えたらいいな。こういう話しをする人がいると、泣いても直ぐに切り替えられる。窓の外の垣根の先は大きな駐車場。その横を通って広い道に出て市役所の入り口の先で東の方へ行って、坂を上ると私たちの家。頭の中ではちゃんと行ける。空想の中で家に行くが、いつもお父さんはいない。だからまっすぐ通り過ぎると356に出て、右に行くと中学校。上の子がそこに入った。家の前から356に出る前に左に曲がって坂を下ると小学校。そこに入れた子の名前と顔を思い出せない。市役所の入り口の病院は何だった?」「名戸ヶ谷我孫子病院」「そこに行って確認したい」「何か検査したいの?」「確認したいのは頭の中とお同じかどうか」「あそこには二度も救急車で行った。一度はマツモトキヨシの駐車場で転んで顔から出血したとき、もう一回は目眩と吐き気で動けなくなったとき」「行ったような気はするが、何でだったかは思い出せない」「昼ご飯食べた?」「一人で食べた。みんなと一緒に食べた気はしないから自分の部屋かな」「廊下に出て左に行くと何がある?」「みんなでご飯を食べるところだ。顔見知りもいるよ。食べ終わるとごちそうさまって言って、手を洗って自分の部屋に戻る」「みんなと一緒に食べているんだ」「そうだね。テレビはめったに見ない。あっ、事務所の人が来た。長くなったから電話を取りに来たみたい。・・・・」「もしもし代わりました。もういいですか」「終わります。ありがとうございました」201018c.jpg

(妻の空想の中の散歩、目印の一つはこの中学校)

雨に霞む沼、水門の灯りにネコの木はシルエット

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.10.17)
(アルツハイマー)

雨に霞む沼、水門の灯りにネコの木はシルエット。201017.jpg

誰も来ていないケヤキの木の回り、しっとり濡れたソバの花を独り占め。201017a.jpg

雨に濡れたソバ畑、紅葉した一際大きな葉が一枚201017b.jpg

『おろおろしている』 (2020.10.17)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「お父さん?」「そう」「何も分からなくておろおろしている。私は気が強かったが、気が強いだけではダメだと分かった。窓の外からお父さんが覗いたと思って外を見たら誰もいなかった。私に用があるときどうやって連絡するの?」「毎日電話しているよ」「そうか、電話か。私は部屋の中に閉じ込められて半間分の窓があるだけ。自分の思い通りにならないからやっきりしている。ここのルールが分からない。外から来る人の予定が分からない。誰に訊いても分からない。今日は何処かに行った」「閉じ込められている人が外へ行ったの?」「あはは。そうか。電車から降りて歩くとどこへ行くのか分からない。線路を渡って外へ出たら誰も来ないから訊くことも出来ない。玄関から入ると自分の部屋が分からない」「もう一つドアを開けると廊下の先があんたの部屋」「実際に行って見ないと分からない。コロナのせいでお父さんに聞くことも出来ない」「あんたが怒っているのは空想の中の出来事でしょう」「空想の中か。駐車場の先を曲がって市役所の方に下り・・・」と次々と道のこと。場所があちこちに飛ぶので相槌を打つしかない。「あんたが空想の中で歩いて誰かに質問しても、その答えはあんたが空想の中で作っている。だから誰に訊いても答えがでない」「淋しいからお父さんと叫びたいが、距離があるから聞こえない。外へ出たいが出られない。小さな窓から外を見たって小さな世界しか見えない。こんな所に来なきゃよかった」「去年はあんたは病気がち、私も年で十分な介護ができなくて、あんたは施設に入りたいと言った。二人でグループホーム寿を見学して良い所だったから申し込んだ。今、あんたはそのグループホーム寿にいるよ」「私が怒っているのは自分のバカさ、直ぐ忘れてわがままを言う。あなたが悪いのじゃない」「時間になった。CD鳴らしてから電話機を返して」「・・・鳴った。気分がよくなった。・・・今村です。終わりました」201017c.jpg
(モズが鳴いていた遊歩道の木の天辺、しばらく鳴いて桃山公園へ飛び去った。)

撮れたのはスカイツリーの灯だけ


撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.10.16)
(アルツハイマー)

沼を撮ろうとしても暗すぎる曇天の夜明け、撮れたのはスカイツリーの灯だけ。201016.jpg

雲の向こうはもう日の出、雲間から漏れてくる朝の光。201016a.jpg

色付いてきた桃山公園のマユミの実。201016b.jpg


『泣きながら歌っていた』 (2020.10.16)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「泣きながら歌っていた」「自分でCDを鳴らした?」「自分で出来た。外は雨で淋しいし、歌っていたらぽろぽろ涙が出てきた。雨が降って垣根の葉が揺れている。垣根に真っ赤な花が咲いてきれい」「垣根はアカメモチだから芽が赤い」「葉っぱかぁ、赤くて花みたい。いい年して泣くのは子どもみたい。あなた元気?」「元気」「ここの人はみんな親切、何か頼むと直ぐ来てやってくれる。自分で出来るつもりでもCDが鳴らないとき、頼むと直ぐ来てくれる。頼むことも大事だね」「そうだね」「雨に濡れた垣根は何でこんなに淋しいのかと思ったら泣けてきた。天気が悪いとご機嫌が悪くなる。私はもうすぐ80なのに、あなたは82。私の方が二つ若い」「結婚したときからずっと私の方が二つ年上だ」「だけど空想してるときは自由に年齢が変わる」「あんたの空想は便利だね」「あはは、こうやって電話していると笑顔になっている。あなたが近くにいて電話したり来てくれるからここはいい場所だ」「申し込んだときは順番待ちが多くて一年以上かかると言われたが、半年で入れたのは幸運だった」「そのころ私の体調が悪かったから?」「悪かった。私は十分な介護ができないし、このままじゃ共倒れになるから施設に入りたいってあんたが言い出した。ケアマネージャのMさんの紹介で、二人で見学して申し込んだ」「申し込んだの、思い出した。あんたの両親は生きてる?」「父は36年前、母は17年前に死んだ。父が認知症になって母と我孫子に来て、江戸川病院に入るまではあんたと交代で介護、病院に入ってからは母が毎日面会に行きたがり、ウイークデーはあんたが、休日は私が母を連れて行った。心身ともに疲れたね」「今思い出した。私が施設に入りたいと言ったのはその時のことがあったから。年をとった親の面倒見はさせたくないと思っていた」「時間になった。CDは鳴ってるから電話機を返してきて」「・・・今村です。終わりました」201016c.jpg
(もう4~5年前か妻と散歩中、咥えた骨が折れていたのを見付けたのは。)

雨になるのだろういつまでも暗い曇天の朝

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.10.15)
(アルツハイマー)

雨になるのだろういつまでも暗い曇天の朝。201015.jpg

未だ暗い曇り空に向かって飛び立ったチュウサギ、頭上で旋回し水神山古墳を越えて行く。201015a.jpg

ケヤキの下をソバの花を眺めながら歩く人。201015b.jpg


『元気な声で嬉しいよ』 (2020.10.15)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「元気な声で嬉しいよ。いつもありがとう。張りのある声だよ。今どこにいる?」「家」「直ぐ近くだよね。そこから坂を下って・・・えーと、分からない」「グループホーム寿から家への道は分かっているのに、逆だとごちゃごちゃになるね。グループホーム寿から家への道をおさらいしてみよう」「窓の外の駐車場の先に広い道、右に曲がって市役所の先を東に曲がって、神社の近く、Aさんの家の前から坂を上ると家が見える」「じゃあ、家からAさんの家に行くのは?」「坂を下る景色が出てこない。ごちゃごちゃで分からない」「そこから家への道は分かるのに」「いつも家に帰る道のことばかり考えているから。実際に歩いたら知ってる景色が出て来るから分かると思う。道を言うとき、目を開けているとごちゃごちゃになるから目を閉じている。緊張して言っているから肩を上げていた」「家とグループホーム寿の間の地図を書いてあげようか」「それがいい、書いて。でも、自分の思っている通りの地図でないと分からなくなりそう。我孫子は第二の故郷と思っていたが実際に行かないとどんどん忘れちゃう。手賀沼があって渡ると柏、やめた、やめた。行く先が言葉になって出ない。お父さんがここに来て一緒に歩いてよ」「今は伝染病が流行っていてあんたは外出できないし、私は建物に入っての面会は出来ない」「早く終わってくれないかなぁ」「終わったら外出して一緒に散歩したり、家に来て子どもたちも呼んで話をしたり食事をしよう。夕方になったらそれぞれ自分の寝る場所に帰る」「泊まるとあなたが大変だからね」「今日もいっぱい話した。時間になった」「声を聞いて嬉しかった。元気でね」「CDを鳴らして」「電源を入れた。涙でCDボタンが見えない。・・・終わりました。まだつながってる」と職員さんに電話を代わる。「もしもし」「涙でラジオのボタンが見えないそうです。すみません、CDを鳴らしてやって下さい」とお願いし電話を終わった。201015c.jpg
(昨日まではいっぱいあったのに、探さなくては見つからなくなったムラサキシキブの実。)

地平線の隙間が色づき始め沼を染める

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.10.14)
(アルツハイマー)
上空を覆う黒い雲、地平線の隙間が色づき始め沼を染める。201014.jpg

岸辺から出てきたコブハクチョウの子どもたち、先を行く親を追って羽ばたき助走。201014a.jpg

ちょっと色づき始めたケヤキの木、まだまだ咲いている周りのソバの花。201014b.jpg


『浜松まで行ったもの』 (2020.10.14)
昨日午後の妻との電話、「今村さん、そのままで話せますか?」と職員さん。「真夜中?」と妻、「ご主人から電話。昼間ですよ」と電話を代わる。「こんばんは、じゃないこんにちは」「はい、こんにちは」「昨日の体操で疲れた。浜松まで行ったもの。あなた誰なの? もうひとり私くらいの年の人は? あれ、夢か」「夢だよ。あはは」「笑ったな。私はでたらめの夢を見た」「誰の夢もでたらめだよ」「そうか、気が楽になった。ご飯食べて寝たら早速夢を見た。岩滑のタビヤへ行った」「タビヤは我孫子の家の近く。岩滑はさきさの店」「そうだね、私惚けてる。私たちに子どもがいた?」「AとLの娘二人」「それは自分の子ども、頭の中がしっちゃかめっちゃか。Lと誰だった?」「Aだよ」「せっかく遠い旅から帰ってきたのに」「どこへ行って来た?」「アメリカへお父さんを探しに。かわいそうな公子さん」「50年も前のことを思い出していたのね。何年も一年の内半分くらいアメリカに出張してたから」「二人の娘は誰の子?」「詮と公子の子」「やっと目が覚めた。子どもの名前は?」「AとL」「忘れないよう書いておく。あなたは今もアメリカにいるの?」「坂の上の二人の家」「日本?」「そう」「会社は?」「20年前に62歳で退職した」「じゃぁ今は80くらい?」「82歳」「家はどこ?」「坂の上の二人の家」「だめだなぁ、私の頭はバカ。一度見に行く。見に行けば分かる。昔のことを考えて夢を見たのか。あきれたね。今日は何曜日?」「火曜日」「中国にいたら誰かが日曜日だと言った」「あんた、ベッドに寝転がっている?」「寝転がっている」「起きないと目が覚めない」「起きたら頭がボーッとしている」「目が覚める前に時間になった。CDを鳴らして」「・・・鳴った。音が大きい」「上の列のマイナスボタンを押して。どうして電源を切っちゃうの。鳴らしたままでマイナスボタンを押す。・・・また切っちゃった。電話機を職員さんに渡して職員さんと代わって」「・・・夫からです」と職員さんに代わり、ラジオの調整をお願いした。201014c.jpg
(市民農園跡から飛んできて、斜面林の天辺で鳴くモズ。)

森さんが来ているような気がした今朝の高台

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.10.13)
(アルツハイマー)

一年前の同じ時間、ゼロポイントに差し掛かると見覚えのある森かずおさんの後ろ姿とアルミの大きな三脚。また森さんが来ているような気がした今朝の高台。その日から半月ほど、彼の最後の撮影を一緒に付き合ってくれた。201013.jpg

古い思い出から覚めさせるようにモズの声、頭上の木の天辺に来ていたモズ。201013a.jpg

昨日いたムクドリたちか電線に飛来、また下りていった昨日いた庭へ。201013b.jpg


『今、写真見ている』 (2020.10.13)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「どこにいる?」「坂の上の家」「私も帰りたい。近いから歩いて帰れる。今、写真見ている。岩滑の父と母のお祝いの写真」「その写真、昨日面会したときに渡した写真。写真を見ながら話したね」「知らない。昨日あなたと会った?」「あんたは大きい部屋の窓の所、私は駐車場にいて面会した」「思い出せないけど、写真は誰かにもらった。前列は左から私、No姉さん、Su姉さん、Sa姉さん、椅子に座ってるお父さんとお母さん、その右に妹のH、Na、M、わからない人。私の姉妹は全部分かる。お父さんとお母さんの顔も写真を見て思い出した。写真をもらって嬉しかったよ。お父さんの後ろにSu姉さんのご主人、お母さんの後ろにあなたが立っている。あとは分からないけど、まあいいや」「娘のAとLもいるよ」「どこ?」「左から3番目に焦げ茶のワンピース着た子がL、その右がAだと思った」「薄い色の服を着てる?」「分からないよ、ここに写真がないから私には見えない」「あはは、そうか。Aは髪を長くしている?」「していると思う」「おとなは年月が経ってもあまり変わらないが、子どもはドンドン変わるから分からない。写真があって、みんなが分かるから嬉しいよ。岩滑の家の前で撮った写真はどこだか分かるが、この写真はどこで撮った?」「蓮池跡の小菊荘」「どこ?」「法事の時に食事に行ったり、兄弟会で大勢の時には泊まった」「思い出した。お父さんやお母さんは生きてる?」「お父さんは28年前、お母さんは20年前に亡くなった」「私たちのお墓はどこだった」「一関の樹木葬墓地。あんたと見に行って場所を決めた」「思い出した。入り口の直ぐ横」「千坂さんが樹木葬墓地をはじめた頃に私も少し手伝ったから、千坂さんが門番みたいな場所を探してくれた。埋めたら鳥が来るようにガマズミの木を植えるつもり。時間になった。CD鳴らしたら電話機を返してきて」「・・・鳴った」と言って、廊下に出たら職員さんに会って電話機を返した。201013c.jpg
(植木屋の畑のサルスベリの木に巻き付いた蔓、黄色に衣装替えした目立ちたがり屋の葉。)

曇天の夜明け、くっきり見えたスカイツリー

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.10.12)
(アルツハイマー)

曇天の夜明け、くっきり見えたスカイツリー。201012.jpg

埋立地の杭からダイサギらしき一団が飛び去って、杭に残ったほとんどはチュウサギか。201012a.jpg

民家の庭からスズメが飛び立って、舞い降りてきたムクドリ数羽。201012b.jpg


『これ誰、分からない』 (2020.10.12)
昨日の妻との面会、玄関先で面会の話題にと妻の父の傘寿と母の喜寿の祝に子どもや孫が集まった時の写真をケアマネージャのSさんに渡す。台風14号は伊豆諸島の南部から遠ざかって、やっと悲しくて辛い空想ばかりしていた妻の顔にも笑みが出てきた。Sさんより先に窓辺に来て、「久しぶりね、来てくれてありがとう」と笑顔で出迎えてくれた。Sさんから写真を渡されると「これ誰、分からない・・・あっ!、若いときのSa姉ちゃん、Su姉ちゃんはあまり変わっていない。これN姉ちゃん?」「若くて分からない?」「分かった。真ん中にいる二人はお父さんとお母さん?」「そう」「私、忘れちゃって分からない。・・・だんだん思い出してきた。お父さんとお母さんだ。忘れてごめんなさい」と泣き出した妻。「泣かないでよ」と言ったが泣き止まず「鼻水が写真に落ちちゃう」と妻がポケットを探ったがハンカチがなく、Sさんがティッシュを渡してくれた。「これ、何歳の時?」「80歳と77歳」「あなたと私より若いね。お母さんは元気?」「20年前に亡くなった」「知らなかった」「あんたと一緒にお葬式に行った」「忘れた。お父さんは?」「27年前亡くなった。私が天津にいて、一時帰国してあんたと掛川の病院に見舞いに行って、数日後天津に戻る直前に亡くなった。あんたとお葬式に行ったが忙しかった」「全部忘れちゃって思い出せない。一日前のことだって忘れちゃう私だものね。あなたひとり暮らし?」「ひとり暮らしだよ」「今いるのは坂を上った所にある私たちの家?」「そう」「私も行きたい」「コロナウイルスの伝染病が流行っていて外出できない」「病気にかかってもいいから行きたい」「あんたが感染したら、一緒に住んでいるみなさんは大迷惑だよ」「分かった。伝染病か。嫌だな」と妻。横からSさんが「もうお昼ご飯だから終わりにしましょうか」「分かった。あなただってちゃんと分かったから嬉しかったよ。来てくれてありがとう」と手を振る妻は久々に明るい顔。201012c.jpg
(散歩の帰り道、近所の菜園に一輪だけ咲いていたゴーヤーの花。)

201012c1.jpg201012c2.jpg今朝、ブログとFacabookの作業中、妻との面会の写真をドラッグしていて何処かに落とし、探しても直ぐには見つからずゴーヤーの花で代用。昼食後ハードディスクの中を検索してやっと見付けたので追加します。

ネコの木の耳や腰の辺りに残っていたサギたち

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.10.11)
(アルツハイマー)

ネコの木の頭と背中から一斉に飛び立ったサギの群、まだ暗くて撮れない。少し明るくなって撮れば、ネコの木の耳や腰の辺りに点々と残っていたサギ。201011.jpg

市民農園跡の埋立地の杭にもサギの群。コブハクチョウが岡発戸新田の釣堀前へ向かうころは、残っているサギは僅か十数羽。201011a.jpg

誰もいないケヤキの木とソバ畑の周り、「近くで見たい」と階段を下っていった散歩の人。201012b.jpg

『眠っていた。今何時?』 (2020.10.11)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「眠っていた。今何時?」「1時11分」「お昼ご飯の後だな。食べていつ寝たか憶えていない」「寝転がってる? 起きて」「起きた。耳が遠い」「聞こえてる?」「全然聞こえてる。一生懸命目を開けようとしてる。窓の外は雨だから暗い。私、ダメになったからもう死んでもいい」「いやだよ。私のためにも生きてよ」「そうか、お父さんのためなら生きなきゃ。昨日は家に行って留守番した」「私はいなかったの?」「いなかった」「外出禁止なのに抜け出したの?」「どうして出ちゃダメ?」「伝染病が流行っているから」「そうか。伝染病か。私は昨日何をしていた?」「去年も台風が来たとき空想したり夢を見て、それが現実と区別できなくなった。今、台風が来てる」「寝てたから夢を見ていたのかな。頭ぽんぽん叩いたら痛い。お尻ペンペンの方が痛くない。あはは」「また寝転がった?」「ベッドにお尻を下にして頭を上に向けてる。あはは。こんなこと言ってると目が覚める」「台風が近づいて、昨日は悲観的な空想をしていたようだった」「今日は悲しくないよ」「もうじき台風が消えるからかな」「家に行って留守番したのは昼寝の夢か。私眠ってた?」「さっき、昼寝していて電話だって起こされた」「昼寝したか忘れた。そんなことまで忘れて、私、死んだ方がまし」「死んだら私がひとりぼっちになっちゃう」「ああ、そうか。私はあなたを元気にするために生きてなきゃならなかった。こんなこと言ってると劇のセリフみたい」「あんたは大学のころ人形劇をやって伊豆の学校を回っただろう」「えっ、・・・人形劇やった。夏休みに学校を回った。何で知ってた?」「アルバムの写真を見た」「写真どこにある?・・・ラジオの台の下にいっぱいあった。片倉台団地を見に行った写真、子どもを抱いた写真、・・・もっと下かな」「時間になった。明日は面会に来るよ」「嬉しい」「CD鳴らしてから電話機返してきて」「・・・鳴った・・・ありがとう。あはは」と職員さんと話す明るい声。201012c.jpg
(パンを買いに行こうとしたらバッテリーが上がってしまった車、昨日朝からルームランプを点けたまま、「ドジやなぁ」と笑っているように見えたシュウメイギクの花。)

じっと動かない残った半数のサギたち

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.10.10)
(アルツハイマー)

埋立地の杭の上にダイサギとチュウサギが混じった群。雨だっていつものように飛び立った約半数、じっと動かない残った半数のサギたち。201010.jpg

小降りになって飛び始めた残っていたサギたち。桃山公園や水神山古墳を越えてどこへ行く?201010a.jpg

ザアと来た雨にケヤキの木もソバの花も霞む。201010b.jpg


『私の夫ですか?』 (2020.10.10)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「どなた?」「詮です」「私の夫ですか?」「そう」「この近くにいる人?」「はい」「声が違うから一瞬誰かと思った。ここに一番近いあなたからの電話を待っていた。今日帰るのに、自分では帰れないから、お迎えが来ると電話連絡があるだろうと思った。お金がないし、来なければもう一泊すると誰に知らせようかと思っていた」「あんたはグループホーム寿に今年1月からずっといて、帰らなくてもいい。お金も心配しなくていい。毎月支払っている」「知らなかった」「今いるのはあんたの部屋。ベッドもある。鏡台もある」「鏡台はAが発送してくれた。私は病気が多かったからここに入ったって誰かに聞いた」「去年、あんたは病気がちだった。私が十分な介護が出来なくなって、あんたと二人でここを見学して申し込んだ。満室だったので待って、今年1月に入所出来た。私が十分に介護でなくてここに入った。ごめんね」「ごめんねはないよ。私があなたの面倒を見るつもりだったのに、こっちがごめんだよ。家は坂を上った所。土地を探しに来てこに家を建て、子どもは小学校と中学校に通った。玄関前に駐車場、中に入ると左にお風呂とトイレ、居間の左に台所、奥に茶室。二階に私とあなたの寝室もあった。頭の中にある家に帰りたくて、わんわんとは泣かないけど心で泣いていた。誰か来てくれないかなと思っていた」「二人で暮らしても、私が介護出来なくなって、二人で見学して申し込んだ希望の所に入れた」「私は邪魔で追い出されたとは思っていないよ」「家にいて病気がちだったのがここに来て元気になった」「悪かったこと、よくなったことの自覚はない」「以前もそうだったが、あんたは台風が近づくと悲しいことばかり考える。もうすぐ治るからね」「電話くれて嬉しい。生きる力が出てきた」「明日も電話する。CDを鳴らしたら電話機を返してきて」「・・・鳴った・・・」、無言で電話機を返し「電話機受け取りました」と職員さんの声。201010c.jpg
(色づくのを楽しみにしていたカラスウリの実、蔓をたぐり寄せてもぎ取られ、残ったのは二つだけ。地面にはおびただしい蔓。)

ザアと来て、雨を降らせて沼を渡る低い雲

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.10.9)
(アルツハイマー)

ザアと来て、雨を降らせて沼を渡る低い雲。201009.jpg

傘を叩く雨粒の後ろから拍手を打つ音、愛宕大権現の碑に祈っていた散歩の人。201009a.jpg

通り雨が遠ざかれば、くっきりと見え始めた釣堀前に繋がれた小舟。201009b.jpg

『どこが悪かったの?』 (2020.10.9)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「ご主人の詮様からって言われた。どこにいるの?」「Aさんの家から坂を上ったところの家」「私の家だ。二人で建てた家?」「そう」「一人で?」「一人でいる」「いいなぁ。私も終わったらいてもいい?」「何が終わったら?」「身体の悪いところが治ったら。なんで私はここで寝ている?」「去年あんたは病気がちで私が介護していたが、十分な介護をできなかったので、私の代わりにグループホーム寿で介護してもらっている」「私はどこも悪くない。どこが悪かった?」「目眩や吐き気、頭がガンガンして何度も病院に行った。去年の夏には膵炎になって、救急車で東邦病院に入院した。今年の正月にも膵炎が再発してJAとりで総合医療センターに運ばれて入院した」「なぜ私はここにいいるの?」「去年の夏、私があんたの介護を十分出来なくて、あんたは施設に入りたいと言った。二人でグループホーム寿を見学して良い所だから申し込んだ。満室なので待って、今年1月からここに入居できた。正月にあんたの入居の仕度をしにAとL二人の娘が来たら、あんたは嬉しくて食べ過ぎた。娘たちが帰った後で膵炎を再発して入院した」「おばかさんだったねぇ」「入院中に色んなことを忘れ、ここに入所したのも憶えていなかった」「全部忘れたのじゃなく、何かの拍子に思い出すこともある」「ここでは食事や洗濯などの生活面、訪問診療の先生の診察もある。目眩や吐き気、頭がガンガンするのはなくなったし、膵炎も再発していない」「何が原因だった?」「膵炎は分からないが、目眩や吐き気などは、体質が変わって、背中に貼っていた薬の副作用だったかもしれない」「私と別に暮らしてあなたは助かってる?」「助かってる。同じ屋根の下じゃないが、お互いに生き延びられる。近くにいて電話も出来るし、面会も出来る」「あなたは苦労したね」「時間になった。CD鳴らして」「・・・鳴った」「電話機返してきて」「・・・今村です。電話終わりました」201009c.jpg
(また降り始めた通り雨、誰もいない赤と白のソバ畑の前。)

寂しさが雨粒に乗って落ちてくる沼の夜明け

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.10.8)
(アルツハイマー)

寂しさが雨粒に乗って落ちてくる沼の夜明け。201008.jpg

誰もいないケヤキの周りのソバ畑、ふと「雨に濡れたソバの花を撮りに行こう」と思った。201008a.jpg

ケヤキの木と、赤と白のソバの花。これに日の出を入れて撮ったであろう昨日朝のカメラマンたち。濡れた草が踏みしめられていた撮影の跡。201008b.jpg


『昨日は病気になった』 (2020.10.8)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「昼寝しにベッドへ入っていた。昨日は病気になった。夜になって吐いて、薬を飲んで落ち着かせた。胃の気持ちが悪かったが眠って、今朝起きたら治っていた。昨日、家に帰りたいと言ったら今は夜だからダメだとか言われた」「今日、ご飯は食べた?」「お昼ご飯を食べて部屋に戻って寝た」「朝ご飯は?」「食べた。午前中は何か手伝うことがあるかと思って待っていたが何もなくてゆっくりした。部屋に戻ったら昼ご飯だと呼びに来た」「ちゃんと食べた?」「おいしく食べた」「治ってよかったね」「昨日は色んなことがあって気持ちが休まらなかった。お父さんと話していると安心していられる」「私はあんたのお父さんじゃなくて夫だよ」「分かってるけど、ずっとお父さんって言って慣れているから」「昨日電話したとき、あんたは私があんたの夫であることや子どもたちとの関係も分からなくなっていた。そのことばかり考えてパニック気味だった。私は子どもたちのお父さん、あんたの夫だと分かって落ち着いたようだった」「昨日電話した? そんなこと話したのも知らない。昨日の夕方は地獄だった。部屋の前の流しに吐いて、トイレに入ったら誰かがドンドンって戸を叩いた。ランプが点いているから分かるはずだと怒ったら叩くのをやめた」「治ってよかったね。今日、家の中を整理していたらあんたのお父さんの傘寿、お母さんの喜寿のお祝いを娘たち夫婦と孫たちでやったときの写真が出てきた。今度の面会に持って行くね」「嬉しい」「時間になった。CDを鳴らして。自分で出来る?」「出来るよ。・・・鳴った」「電話機返して職員さんと代わって」「・・・夫からです」「もしもし、代わりました」と職員さん。昨日午後の電話のことは憶えていないのに、夕方気分が悪くて吐いたことは具体的に話した妻。空想の話しかと思って確認したら吐いた事実はなかった。昨日気分が悪かった感情だけが残り、忘れた部分を空想して埋め、私に話したらしい。201008c.jpg
(雨に濡れ透き通るように白いソバの花。)

上空の空の色に染まる夜明けの沼

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.10.7)
(アルツハイマー)

北北東の風に波立ち、上空の空の色に染まる夜明けの沼。201007.jpg

岡発戸新田の釣堀前、波立つ水面に小舟のシルエット。201007a.jpg

日の出とソバの花を撮ろうとしているのか、日に日に増えるカメラマンの数。201007b.jpg


『何をやっても全部空振り』 (2020.10.7)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「公子です」「詮です。もう泣いてるの?」「泣くのが商売になった。何をやっても全部空振り」「何があった?」「私はひたすらお父さんを探していたの。私を育てたのは岩滑でしょ」「公子は岩滑の中島幹さんとさか江さんの間に生まれた四女、私は今村恒治ときんの長男。詮と公子が結婚し今村公子になった。私はあんたの夫」「知らなかった」「あんたは私をお父さんと呼ぶけど、あんたのお父さんは岩滑の幹さん。二人の子どもが私をお父さんと呼ぶから、子どもに分かりやすいようにあんたも私のことをお父さんと呼んだ。癖になって、ずっと私のことをお父さんって呼んだ。私は子どもたちのお父さん。あんたの夫だよ」「子ども二人は誰の子?」「公子と詮の子ども。AとL」「AとLがいるのに、私は突き放されて、一人になって柏の何処かに入った」「今年初めからずっとグループホーム寿にいる。去年はあんたが病気がちで、私が面倒を見るのが困難になった。あんたが施設に入りたいと言って、ケアマネージャのMさん紹介でグループホーム寿を二人で見学した。良い所だから申し込んだが空きがなく、空き待ちをして今年1月からここに入居した。今日までずっとここにいる」「そうか」「ここでは食事、洗濯、掃除、体操などあんたの面倒を見てくれているし、訪問診療の先生が来て診察してくれる」「病気になったのは忘れた。何かの事情でここにいると思った」「ここへ来てから、目眩、吐き気、頭がガンガンするのが治って膵炎も再発していない」「公子って誰?」「あんたのこと」「だったら私はあなたの妻だった?」「そう」「その辺があやふやでトンチンカンになった」「子どもたちと一緒に私のことをお父さんと呼んでいたからこんがらがった」「私はお父さんが二人いると思ってこんがらがった」「これからは私のことを詮さんとかあなたって呼べばいい」「ああ目がパッと開いた」「時間になった。CD鳴らして」「・・・鳴った。電話返してくる。・・・電話終わりました」201007c.jpg
(「私を忘れないで」とゴーヤーの棚の隅にアサガオ)

なかなか明るくならない曇天の沼

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.10.6)
(アルツハイマー)

なかなか明るくならない曇天の沼。201006.jpg

水神山古墳の裾にくっきりスカイツリーの灯。201006a.jpg

昨日一日でずいぶん食べられてしまった桐の実。201006b.jpg

『今日は何した?』 (2020.10.6)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「元気?」「元気」「今日は何した?」「依田内科に行った」「どうしたの?」「インフルエンザ予防接種をし、市の健診、膵臓のエコー検査の予約をした」「膵臓の検査は何を期待するの?」「嚢胞の大きさが前回と変わっていないこと。もう何年も変わっていない」「よかった。もし悪かったらどうしようかと思った。私たち、別に暮らしてた方が長いね」「結婚して56年の間に、中国2年と一関6年の単身赴任、海外出張が4年、それと今年あんたがグループホーム寿に入ってからの9ヶ月。離れて暮らしたのは56年の内12年そこそこ。一緒にいた方が長いよ」「一緒にいたのは短いと思ったが、そんなに長かったんだ。一人で生きていると、もうやめたって気持ちになりそうだが、夫や子どもがいると思ったらしっかり生きようと思うよね」「そうだね」「今日は気分がいいけど、体調が悪いときはあなたがいたらって思うことがある。くよくよしたって治らない。もうやめたと思って眠っちゃう」「二人で暮らした時も体調が悪いと辛かった。去年は目眩や吐き気、頭がガンガンした。膵炎にもなって苦しんだ」「苦しかったことはすっからかん忘れた。嫌な奴と結婚したって言わないでね」「そんなこと思わないよ」「しばらく会っていなかったね」「昨日面会に来た」「どこへ?」「あんたは広い部屋の窓の内側、私は裏の駐車場にいて面会した」「何を話した」「私たちの家の中や外、近所の写真を見て話した」「忘れた。その写真は」「あんたに渡した」「どこだろう。・・・ないよ」「鏡台の引出は?」「見た」「他の写真は?」「それもない」「写真は持って行ったときに見て、しまい忘れたのが出てきたらまた見ればいい」「また写真持ってきて」「あんたの双子の妹を連れて、厳美渓、毛越寺、中尊寺、十和田湖、三内丸山へドライブしたときの写真にしようか」「見て思い出したら嬉しい」「時間になった。CD鳴らしてから電話機返してきて」「鳴った。返してくる。・・・プッ」と切れた音。201006c.jpg
(「もう帰るのか」と呼び止めるようにモズの声。)

赤く染まった地平線の空と沼

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.10.5)
(アルツハイマー)

家を出て歩き始めたらポツリポツリと雨。急ぎ戻って、雨ガッパの上着だけ羽織り桃山公園の高台に立てば、赤く染まった地平線の空と沼。201005.jpg

やがて岡発戸の丘の上を赤く染めて日の出。201005a.jpg

ケヤキの木の脇でソバ畑を撮っていた人、ソバ畑の先の日の出を待っていたのだろうか。201005b.jpg

『来てくれたの、嬉しい』 (2020.10.5)
昨日の妻との面会、グループホーム寿の玄関先で妻からリクエストされていた自宅の中と外、近所の写真を職員さんに渡し、妻へのインフルエンザ予防注射の調査票を記入しサイン。裏の駐車場で待っていたら満面笑みの妻が窓ガラスの向こうに現れ、「来てくれたの、嬉しい。これ邪魔ね」と言いながら網戸を開ける。職員さんから写真の入った封筒を渡され、写真を見た途端に泣き顔になって手で顔を覆う。「どうして泣くの?」「だって、これ、私たちが建てた家。涙が出てきて止まらないよ」と顔を上げたらよろけ、職員さんが持ってきてくれた椅子に座る。「これ、南側から見た家。これ、玄関前。これはどこから見たの?」「写真見せて」「これ」「家の前を通り過ぎて三軒ほど北側」「ベランダから見た手賀沼の方だ。台所でしょ、リビングも変わっていない。洗面所とトイレの入り口、タオルはしわくちゃじゃなく掛けてる?」「毎日取り替えてるがしわになって掛かっていたね」「写真見るとちゃんと思い出す。家に帰りたいよ。子どもたちは? AやLは来ている?」「仕事もあるし家庭もあるから来ていない」「何で家に帰っちゃダメ?」「伝染病が流行っているから。伝染病が治まったら外出して家を見に行こうね」「なんで私は外に出ちゃダメであなたは出て来るの?」「私だって気をつけて車で来てる。あんたと一緒に住んでる人はみんなお年寄り、あんたが外出して伝染病になったらみんなも感染しちゃうじゃない」「そんなら一緒に住んだらいい」「あんたと二人暮らしになったら、去年のようにあんたのことまで私がやらなきゃならない。私がちゃんと出来ないからあんたにはここに入ってもらった」「そうだったね。私がここにいたらあんたが助かるね」「そうだよ」「あなたも年だから気をつけてね」「気をつけるよ。私はあんたの夫だって分かってる?」「今日は最初から分かっていたよ」「来週の日曜も来るし、来ない日は電話するからね」「来てくれてありがとう。また来てね」と泣き顔で手を振る妻。201005c.jpg201005d.jpg

赤くなってスーッと消えた雲の隙間

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.10.4)
(アルツハイマー)

暗い曇天の南側、赤くなってスーッと消えた雲の隙間。201004.jpg

花を撮って以来忘れていたザクロに木、ふと見上げたら色づいた実が幾つも。201004a.jpg

遠回りして帰った住宅地、そっとレンズを向けたのに逃げたヒヨドリ。201004b.jpg



『明日来てね』 (2020.10.4)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「お昼食べて眠くなって眠った」「目は覚めた?」「覚めてきた。外は曇っていて天気みたいにボーッとしてる。起きたばかりだから。あなたまだ何処かに勤めている?」「勤めは20年も前にやめた。」「今は何してる?」「家にいる」「ひとり暮らしででしょ。何してる?」「朝早く写真を撮りに行って、食事の仕度、洗濯、掃除、細々したことがいっぱい。あんたが家でやってたことを全部やる」「男だってやってもいいんだよ。ここにいれば食事は作ってくれる。楽だよ」「化粧品がなくなったからオリーブオイルと化粧水を用意してとSさんから電話があった。注文するので化粧水の空ビンの品名を読んで」「見てくる。・・・あなたとの結婚記念の写真があった。私、白いドレス着てる」「何処かに仕舞い込んで見つからなくなった写真だね。化粧水のビンは?」「ない」「お化粧に何を使った?」「やったときでないと分からない」「以前、化粧品がないと顔が突っぱると言ったね」「なければクリームをつける」「名前は?」「眼鏡をかけないと読めない。なくて困ったとき言うよ。眼鏡があった。ユースキンだ」「顔に塗るの?」「塗ると思うよ。お化粧するとき困ったらメモして渡す。今は電話の時間がもったいない。探すとあっちもこっちもごちゃごちゃになる」「もういい。ずっと前に買ったマイルドローションを買っておく。もう探さなくていい」「バカな私の頭、ぽんぽん叩いてやる。アハハ」「明日は面会に行く」「嬉しい。来てくれるの」「いつものようにあんたは広い部屋の窓の内側、私は裏の駐車場にいて面会する」「そんなの知らない。もう忘れた。こんな人だから気にしないで。引出から出していっぱい散らかった。出したもの、整理しないで又入れておく」「時間だ。CDを鳴らして。明日行くね」「明日来てね、・・・鳴らないよ」「コンセントに挿してある?」「外れてた。・・・鳴った」「電話機返してきて」「あかんべーだけど返してくる・・・電話終わりました」201004c.jpg
(散歩道の道路脇。コンクリートの継ぎ目に根を張ったコスモス、「ここだって悪いとこじゃない」と花一輪。)

高台に着けば、雲の裾と沼を赤く染めた夜明け

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.10.3)
(アルツハイマー)

高台に着けば、雲の裾と沼を赤く染めた夜明け。201003.jpg

雨埋立地の杭から次ぎ次ぎ飛び立つサギの群、東我孫子の丘を越えて行くのはダイサギだろう、あとに残ったチュウサギらしきは対岸や水神山古墳を越えて行く。201003a.jpg

岡発戸の丘の上から日の出。沼を眺めていた散歩の人に「日の出は未だですか」と問われ「あと10分くらい」と答えたら、待ちきれず日の出直前に立ち去った。201003b.jpg


『自分専用の部屋って幸せ』 (2020.10.3)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「あれ、出ていない」「もしもし」「聞こえた。耳に当てるところを上に向けていた。一休みしようとしていたら電話が来た。ずっと家にいた?」「午前中は家にいた。この電話が終わったら病院に行く」「何処へ?」「JAとりで総合医療センターに検査結果を訊きに行く」「何の検査?」「先日、胃の入り口に見つかったポリープを胃カメラで検査した。心配することはないと思う」「私は、部屋のチェックに人が来るかもしれないから部屋の中を片付けている。こういう仕事は疲れる。私の不得意なことだもの」「今日は、あんたの夫は私だって分かる?」「分かってる。どうして?」「昼寝した後はよく忘れられるから」「アハハ。今日はまだ寝ていなかったから分かる」「昨日Aさんを知らないと言ったが分かる?」「分かってるよ。古くからの友だちだし、Aさんの家から坂を上ると私たちの家。話しの中で突然出てきたり、この人の話しだと図星でないと誰のことか思い出せなくなるだけ。疲れたときや眠いときは頭がごじゃごじゃでトンチンカンになるよ。みんなと一緒に色々やるけど、私みたいなものがやっても無駄になることばかりだよね」「無駄じゃない。何でも自分でやってみないと出来なくなるよ」「そうね。お父さん」「は~い」「こういう会話をすると嬉しい。疲れがとれる気がする」「いま一休みしようとベッドに座ってる」「寝転がっていないね」「大丈夫、寝転がっていない。寝転がったら直ぐ眠っちゃう。私みたいなのがやることは部屋の掃除くらい、何をやるかわからない人が何人もいるが、私がやるべきでないことにしゃしゃり出て、仕事を貰いには行かない。言われたことだけをやる。自分の部屋に自分の鏡台、ラジオ、ベッドがあって、押入には自分のものが入っている。自分専用の部屋って幸せだよ」「時間になった。CDを鳴らして」「・・・鳴った」「明日も電話するよ」「ありがとう、元気の素だよ」「電話機返して」「・・・電話終わりました」201003c.jpg
(白く輝くような蕎麦畑の脇、凜と立つケヤキの木)

振り返れば霧に霞む住宅の上に月

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.10.2)
(アルツハイマー)

桃山公園の高台に立ったが沼どころか直ぐ下の市民農園跡さえ見えない濃霧。振り返れば霧に霞む住宅の上に月。201002.jpg

流れる霧が薄くなったら現れた対岸の鉄塔。スカイツリーの灯か水神山古墳の斜面脇に。201002a.jpg

水生植物園跡を通過する霧の塊、ケヤキの木の根元は霧に見え隠れ。201002b.jpg


『Aさんって誰?』 (2020.10.2)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「公子です。泣きべそをかいている。今どこにいる?」「高野山の家」「どこ?」「Aさんの家の前から坂を上ったところ」「Aさんって誰?」「あんたと一緒に近隣センターこもれび設立に尽力したり、一緒に香港や天津に旅行した人」「じゃあ一番近しい人じゃない。私、頭がバカになってて思い出せない。この狭い部屋から外は分からない」「窓の外に駐車場があるね」「ある」「その先に進んで広い道を市役所の方に行き、手賀沼の手前から東へ行く。Aさんの家の前から坂を上った所に住んでいる」「私たちが建てた家の近く?」「二人で建てた家。去年まで二人で一緒に住んでいた」「えっ、私たち結婚してたの? ご苦労様だねえ。家の前を通り過ぎて左に行くと新しい小学校が出来た」「高野山小学校だね。我孫子に来たころ、プレハブの仮校舎を建て、新校舎に建て替えていた。もう35年以上も前」「私の頭からその後が抜けている」「私の転勤で、横浜の片倉台団地から我孫子に引っ越すので、高野山に土地を買って家を建てた」「片倉台団地のことは思い出した。家を建てたのは手賀沼側から神社の近くの坂を上った所。何回思い出そうとしてもごちゃごちゃ。部屋の中と窓の外を見て自分がどこにいるか自覚した。鏡台は古くなって壊れ、テープで止めてある」「私があんたの夫だって分かる?」「数日前に思い出した気がする」「昼寝した後は忘れちゃうね」「鏡台も、ベッドもある。私はいつまでここにいられる?」「いつまでいてもいい」「鏡台の引き出しに外国の写真アルバムがある」「あんたと、妹三人のヨーロッパ旅行だね」「最後の方に凱旋門がある」「パリだね」「船で瀬戸内海を渡るのがある」「ライン川でしょ」「写真があると思い出す。お茶もやった。身につく財産だから惚けても体が覚えている。ここでもお茶を点てた」「目が覚めたね」「嬉しい。思い出した。もう電話機返さなきゃ」「CDを鳴らしてから返して」「・・・鳴った・・・電話終わりました」201002c.jpg

(霧に消えた岡発戸の丘、ときおり微かに見える滝前の住宅地。霧の中に湧き出るように日の出。)

細かい雨が舞っていた桃山公園の高台

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.10.1)
(アルツハイマー)

細かい雨が舞っていた桃山公園の高台。今月は撮れるものがあろうがなかろうがここに通おうと思う。手賀沼を教えてくれた友が昨年11月始め急逝する前、最後の二週間ほどを一緒に撮った場所。まだ聞きそびれていたことを自分で見付けようと。201001.jpg

埋立地のサギの群、撮れたころは半数以上が飛び立った後。201001a.jpg

公園の広場を歩けば街灯の下、浮き上がっているように見えたマユミの実。201001b.jpg


『私はいつ帰るの?』 (2020.10.1)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「昼寝してた。今日は何でか疲れてる」「毎日疲れてるって言うね」「眠い。食べ物はちゃんと食べている。眠いのは寝るしかない」「私と話してるのに眠っちゃ嫌だよ」「分かってる。天気はいいし空は青空。窓の外の垣根を剪定して綺麗になった。左の方の下に切ったのが落ちている。その先はまだ剪定してない。三本の枝がぶら下がっていてどこともつながっていない。外を見ていると目が覚める」「目が覚める前に電話の時間が過ぎちゃう」「私はいつ帰るの?」「どこへ帰る?」「分からないがあなたが探してくれたところ」「二人で見学して申し込んだのはここだよ」「何処かへ帰りたい。その思いが募ると泣けてくる」「あんたは何でも自分でやりたい人がが、目眩や吐き気、頭がガンガンして去年は自分ではほとんど出来なくなった。代わりに私がやったが、私じゃ出来ないことがいっぱい。二人で困って、あんたは施設に入りたいと言い出した。去年7月にケアマネージャのMさんの紹介でここを二人で見学し、あんたも気に入って申し込んだ。去年12月に空きが出来て入れることになった。入る直前にも膵炎で入院し、その間に色んな記憶が消えた。記憶が回復する前にここに入ったから、申し込んだところとここが別なところだと思い込んでしまった」「申し込んだのはうっすら憶えてる。何処かに入った時、担架に乗せられて運ばれた。私はもうダメ、死ぬのかなと思った」「最初の膵炎の時は東邦病院、今年正月の再発はJAとりで総合医療センターに救急搬送してもらった。退院して直ぐここに入居した」「いつよくなった?」「ここに入って、訪問診療の先生に診て貰っている。おかげで膵炎も再発していない。目眩や吐き気、頭のガンガンも治っている」「そういう苦しい時のことは憶えていない」「こんなに元気になって嬉しいよ。もう時間が過ぎた。CD鳴らして」「電源入れてボタンを押した。鳴った」「電話機返して」「・・・電話終わりました」201001c.jpg
(妻が見たら、「もうちょっと透いて見えるようにしたら」と言いそうな我が家の庭のヒガンバナ。)