なぜか沼が泣いているように見えた曇天の朝

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.3.14)
(アルツハイマー)

この高台は、アルツハイマーの妻が空想の世界で手賀沼を眺める場所。見せてやりたいがコロナが邪魔してグループホームは面会禁止。なぜか沼が泣いているように見えた曇天の朝。200314.jpg

「どこ見て飛んで来るんだ」「おっと失礼、横ならいいかい」200314a.jpg

「ごめんごめん、びっくりさせちゃって」 目の前の畑で餌を啄んでいたツグミ、ミカンの木の天辺に逃げおいらの通り過ぎるのを待つ。200314b.jpg



『私の頭に入るように説明していないから』 (2020.3.14)
「もしもし、暫くぶりだね。どうして迎えに来てくれないの。今から外に出て歩くつもりで洋服を着替え、散歩の鞄を掛けていたところ」「今は外に出られないよ」「ここは知らない人ばかりで誰とも話をしていないし、誰も来てくれない。一人孤立して耐えられないよ。家に帰る道は知っているから歩いても帰られる」「道はちゃんと分かっていても、外に出ることはできないの」「なぜ出られないか誰も教えてくれない」「何度も電話で説明したけどなぁ」「私の頭に入るように説明していないから。ただ出られないと言われても分からない」「伝染病が流行っていて、高齢者が罹ると重症の肺炎になる。だから私も家にいて、食べるものがなくなったらマスクをして買いに行くだけ」「だったら肺炎になってみんなを呼んでやろうと思う」「肺炎になると苦しいし死亡率も高い。一人が勝手なことをして感染したらみんなに移してしまう。だからそこでは面会もできなくなったし、外へも出られないようにしてあなたたちを守っているんだ」「外のことが分からないから私の頭に入ってこない。ご飯は作ってくれるから食べるよ。私は社会の何なの? 私は情報不足なの。何をしたらいいのか分からない」「どう説明したら分かってもらえるかな。もうお手上げだよ」「お手上げの人など相手したくない。でも、あなたのい言うことを聞かないと、誰も私に教えてくれないからあなたに聞くしかない。今やっと分かったよ」「あんたも、そこにいる高齢者の人も感染しないように、面会できなくして、外に出さないようにしてみんなを守ってくれているよ」「伝染病が治まれまで外に出ちゃダメだって分かったよ。それまで我慢しなきゃならないことも分かったよ」と言って泣く。「私だってあんたに会いたいよ。だけど我慢してる。あんたもいっしょに頑張ってね。明日も電話するからね」「分かったよ。・・・電話どうやって切るんだろう」と小さな声が聞こえた。
毎日電話で説明し納得しても、直ぐに忘れて同じことの繰り返し。どうせ忘れるから妻にしゃべりたいだけしゃべらせると、「あんた、何か隠しているの?」と疑う。悩ましきことよ。200314c.jpg
(妻の散歩道だった滝下広場に咲き始めたイトザクラ)

枯れた葦の穂の向こうに日の出

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.3.13)
(アルツハイマー)

遊歩道を歩けば枯れた葦の穂の向こうに日の出。200313.jpg

まだ日差しが届かない岸近く、水を被り羽ばたいたコガモ。200313a.jpg

繁みで鳴くウグイスを撮ろうとすれば、ウグイスを追い出し小枝の新芽を啄むバン。200313b.jpg



『家に帰る道は分かるから遊歩道を歩いて帰る』 (2020.3.13)
昨日の午後も電話。Oさんが「お元気ですよ」と電話を代わってくれたが、「もしもし」と最初から泣き声。
「どうした?」「もうここにいるのは嫌」「今そこからは出られないの」「あなたはどうしてる?」「じっと家の中にいて、食べ物がなくなったら買いに行くだけ」「ここにいたら食事は全部やってくれるけど、ちょっと挨拶するだけでずっと一人でいるのは耐えられないの。家に帰る道は分かるから遊歩道を歩いて帰るよ」「今は外に出られないの。伝染病が流行っていて、高齢者が罹ると重症になるから、あんたを守るためにそこから出さないようにしているの」「どうしたらいい?」「今は伝染病の流行が治まるのを待つしかない。我慢してそこにいてちょうだい」「あなたのいる家に帰りたい。外に出られないなら迎えに来て」「外から病気をそこに持ち込まないように面会はできない」「会社の仕事はどうしてる?」「私は20年も前にやめたよ。Aは在宅勤務になって自宅で仕事をしているよ」「普通に生活できないのか。分かったけど分からない。家に帰りたい」「家に帰ったら共倒れになっちゃう。今の私たちでは、片方が感染したらお互いに面倒見られない。そこにいればあんたは食事も洗濯も、健康管理もしてくれて守ってくれる。つらいだろうが、面会が許されるまで我慢してね」「自分の気持ちを抑えるのが私の仕事か。私もそう思い直すしかない?」「そう」「あなたに会って、かぶりつきたい気持ちだけど仕方がないか。淋しくて泣いてたよ」「そこにいるのが一番安全。面会できる様になったらすっ飛んで会いに行くよ」「私を連れて行くのもダメだと分かった。家へ歩いて行こうと思ったが行ってはいけないと分かった。もう泣かないようにするね。会いたいって考えてもダメ?」「考えてもいいけど、考えるとつらくなるよ。ノートに日記みたいに思ったことを書いたら気が紛れるかも知れないよ」「ノートがあるから書いてみる」「昨日みたいに元気になってね。明日も電話するよ」「あなたも気をつけてね。電話切るよ」と、ずっと泣き声の妻だった。200313c.jpg
(妄想の中で妻が歩いて家に戻る道)

昨日が暖かかったので肌寒く感じた晴天の朝

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.3.12)
(アルツハイマー)

昨日が暖かかったので肌寒く感じた晴天の朝。シルエットになっていた水生植物園跡のケヤキの木。200312.jpg

遊歩道を歩けば、枯れた葦の穂の向こうに日の出。200312a.jpg

細い枝が重なり合う繁みにウグイス、毎朝鳴いていたが姿を見たのは今朝が初めて。200312b.jpg



『お昼ご飯食べたらAから手紙が来ていた』 (2020.3.12)
昨日午後の電話、スタッフの方から電話機を渡された妻は元気そうな声。
「もしもし、私。元気?」「元気だよ」「私は今日も雨かと思うと涙が零れそうになって、鼻水が出て、元気じゃなくなる。今日は天気がよくなったから外を歩きたいと思う。外に出られるようになったら、歩く練習をして遠くまで歩けるようになったらどこへ行こうか考えているが、まだどれだけ歩けるか分からない。玄関まで行って外を見るが、外のことは分からない」「外へ出られなくても、部屋の中や廊下を歩けばいい。それだって脚の運動になるよ」「昨日、オカメザクラの写真のハガキをもらった。きれいだね」「それを見て少しでも元気が出ると嬉しいよ」「そういう会話があると泣いちゃう」「泣くのはよくないよ」「会いたくても我慢してる。私は泣くよ」「今日は天気がよくなってよかったね」「あなたは元気?」「元気だよ」「外を見ると明るいから私も元気な声になったよ。元気になってもどこへも行けない。なんちゅうこっちゃ。お昼ご飯食べたらAから手紙が来ていた」「よかったね」「三人とも元気だって。2月にAと会ったとき、お父さんとわらくのMさんと子の神大黒天に行ったと書いてあるが、まだ思い出せない。流行している病気が収束したらお母さんに会いに行く。いっしょに散歩しよう。体に気をつけてって書いてあるのを見たら涙が出る」「今日は元気な声を聞いて嬉しかった」「世の中のごちゃごちゃもその内よくなるだろうね」今朝、写真撮りに遊歩道に行って、菖蒲園跡近くの畦道に菜の花が一本だけ咲いていた。家に帰ってきたら、散り始めたオカメザクラにメジロが来ていたよ」「あなたの声を聞いて、あなた相手に憎たらしいことを言ったら、泣きたい気が直ったよ。電話ありがとう。もう切るよ」「また明日ね」200312c.jpg

ケヤキの木の向こうに見えた月

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.3.11)
(アルツハイマー)

水生植物園跡に差し掛かれば、ケヤキの木の向こうに見えた月。200311.jpg

遊歩道脇の木の天辺、空を見上げて鳴くホオジロ。200311a.jpg

振り子が幾つも重なって揺れるように葦の枯れ茎、瞬時の隙間から撮れていたオオジュリン。200311b.jpg


『なんで私はここに入ったの?』 (2020.3.11
昨日午後電話したらSさんが応答「元気にしてますよ。ラジオ体操はやったし、ニコニコしてます。今は部屋にいます」と言って、「ご主人から電話」「ああよかった」と電話機を受け取る妻の声。
「もしもし、暫くぶりね」「昨日も電話したよ」「電話じゃ分からなくなっちゃう。なんで私は監獄みたいに閉じ込められているの?」「コロナウイルスが流行で、感染しないように外に出ないようにしてるんだ」「じゃああんたも家の中にいるの?」「家の中にいるよ」「何してるの?」「ご飯食べて寝るだけ」「私だけじゃないんだ。なんで私はここに入ったの?」「二人で家にいたとき、何回か救急車を頼んだり、タクシーの運転手に助けてもらってあんたを病院に連れて行ったが、私も年を取っていざというとき一人であんたを助けることができなくなってきた。それでそこの人たちに助けてもらうために入った」「そうだったのか。言いたい放題言ってはだめだけど、あんただからつい言ってしまった。」と、説明したときは理解するが、何度説明しても直ぐ忘れて、なぜ家でいっしょに暮らせないのか、なぜここにいるのかを悩んでいるようだ。
「昨日ハガキを出したよ」「今日来るかな」「未だなら明日だな」「あんたの声を聞いたら元気が出たよ。久々に笑った。いつ伝染病は治まるの? 憎たらしいけど手が届かない。だからふて腐っている。家の中じゃ動けないけど、テレビでニュースの時や音楽の時は見に行く。今は本も読みたくない。家の中じゃあ運動量も足りないよ」「部屋の中を歩き回ったり、本の文字を追うだけだっていいさ。気が晴れるよ」「声を聞いたら生き返った」と言って泣き声。「泣かないでね」「電話ありがとう。どうやったら切れるの、忘れちゃった」200311c.jpg
(写真:3年前ころは、ジャックに会いたい妻を連れて歩いた遊歩道)

霧雨に包まれ泣いているような沼

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.3.10)
(アルツハイマー)

霧雨に包まれ泣いているような沼。200310.jpg

霧雨が上がり始め、遊歩道を走り去った若い人二人。200310a.jpg

ツバキの花の蜜を吸っていたヒヨドリ、畑で餌を拾うツグミになんで焼き餅。200310b.jpg



『庭のオカメザクラがきれいだった』 (2020.3.10)
昨日午後、スタッフから電話機を渡された妻。「もしもし、私」と元気な声。「もしもし、元気そうな声だね」「今どこ? 家? 高野山の私たちの家?」「そうだよ」「電話機届けてくれたけど、何が何だかわからない。近くにいるんだよね」「いるよ」「電話が鳴ると私にかと思って慌てて部屋の外に出るが、直ぐ誰かが話し始めて、私にじゃないって分かる。やっと慌てなくても話せるね」「あんたの元気な声を聞きたくて電話したよ」「さっきまで、電話したのは昨日のことだったか、今日のことだったか分からなくなっていた」「毎日電話するから気にしなくてもいいよ」「今日は何をした?」「順天堂の先生からY内科に手紙が届いて、Y先生から薬の処方箋を出してもらって、薬局で薬をもらってきた」「よかったね」「私は案外冷静だよ。変なところへ電話しようとも思わないし、あんたが自分の家にいて家を守ってくれてるって分かったし、家も近いから安心したよ」と言って急に泣き声になる。「泣かないでよ」「泣くよ。早く正常に戻って、会いたいよ」「庭のオカメザクラがきれいだったから、朝の撮影から戻ってオカメザクラを撮ったよ。プリントしたハガキを出した。いつも写真を撮って戻る頃にあんたが雨戸を開けていたが、今は私だけだからまだ雨戸が閉まったままの写真だよ」「私がいないとダメだね。逃げ出して来いと言って欲しいな。でも、逃げ出したら大問題だね。何にもやることがないからつまらない」「歌を歌いなさいよ」「歌う気にならない。ひこひこ生きてるよ。ご飯も食べてるよ。みんなは外で伝染病が大変だって知らないみたい。だから私も言わないようにしている。玄関に行って外を覗くだけじゃ分からないよ」「ラジオを鳴らしておいたら一人じゃない気分になるかもね。明日また電話するよ」「あんたも外に出ないで、大きい病気をしないように自分を守ってね。電話ありがとう」と、少し落ち着いている様子だった妻。200310c.jpg

我が家の屋根やベランダの一部が見えた38年前

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.3.9)
(アルツハイマー)

我孫子に住み始めたころ、ここから我が家の屋根やベランダの一部が見えた38年前、いつの間にか新築の家が密集し我が家は見えなくなった。200309.jpg

遊歩道で何かを啄んでいたツグミ、散歩に人が来たら舞い上がり小枝の先に待避。200309a.jpg

何を見ているのかじっと動かないモズ。200309b.jpg

『生きながらえることを頑張るだけだね』 (2020.3.9)
昨日午後、グループホーム寿に電話、スタッフの方から「元気にお話ししていました。今は部屋にいるようです」と言って電話を代わってくれた。
「もしもし、あなたはどこにいるの? 心配していたよ。ここも何だかごちゃごちゃしていている」「どうしたの?」「何があったか分からない。もしかしたら私たちはここから出されるのかなぁ。あなたはここへ来ることはできないの?」「ずっと家の中にいて、そちらには行けないよ」「それなら私が家に行こうか」「それもできない。世の中、伝染病が流行っていて外に出られない」「そうかぁ。出るに出られないのだったね」「私もできるだけ家の中にいるし、そちらも外出はできなくなっているよ」「歩いて10分の近さだからあなたの様子を見に行こうかな」「あんたはそこから出してもらえないよ」「そうだったね。どうすればいい?」「そこにいればスタッフのみなさんに面倒を見てもらえるから、そこにいてね」「会えないのはつらいよ」「会いに行ってあげられなくてごめんね。私だって会えないのはつらいよ。みんな同じだ。我慢してね」「ラジオを点けても世の中のことも、あなたが元気だかも分からない。もういやだ。子どもたちはどうしてる?」「Aは会社には出勤せず、八王子の自宅で仕事をしている。Lは横浜でマスクをして勤務先に通ってる。みんな元気だよ」「それならよかった。早く正常になって欲しい。何もせずここにいるのはもういや」「コロナウイルスが治まったら、Aに来てもらって家を見に行ったり、手賀沼を見て、ご飯を食べに行こうね。それまで我慢して待っていてね」「我慢するけどいやだな」「我慢するしかない」「会いたくても会えない。外に出たくても出られない。生きながらえることを頑張るだけだね」「明日も電話するからね。私だってあんたに会いたいよ」「そう言われると泣けて来ちゃう」「泣いたり悲しんだり怒ったりすると病気になりやすい。病は気からでしょ、歌でも歌って、楽しいことを見付けよう」「電話ありがとうね。会いたいよ。顔を見たいよ。我慢してるよ。じゃ、さよなら」と電話を切ったが、最初から最後までイライラしているような妻だった。200309c.jpg
(妻が好きな手賀沼を見渡せる高台)

雨は止んだが未だ暗い沼

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.3.8)
(アルツハイマー)

右に行こうか左に行こうか迷って立ち止まれば、雨は止んだが未だ暗い沼。200308.jpg

カッパの噴水に行きたいコサギ、噴水の周りはカワウたちが占拠。200308a.jpg

遊歩道を横切り田んぼに舞い降りたコガモたち。200308b.jpg



『ここは平和でも心の中の満足度はゼロ』 (2020.3.8)
昨日午後の電話、「今日も落ち着いています」とOさん、妻に代わって「もしもし、あなた? 私、泣きそう。今日は私の鏡台のある部屋にいたり、広い部屋に呼ばれたり、今は小さい部屋にひとりだけ。窓の外の駐車場には車がたくさん見える。あんたは高野山の家にいるの?」「そうだよ」「近いから歩いても行ける。あとで歩いて行く」「今はダメだよ」「分かってる。今、ここは平和でも心の中の満足度はゼロ。誰か来た。ちょっと待っていてね・・・えっ、置いてあった?ありがとう。これ何だったっけ、えーと・・・眼鏡、眼鏡のケースだ。トイレかどこかに置いて来ちゃったんだ。それで、あなたはどこにいるの?」「自宅」「遠いの?」「高野山だから近いよ」「どこだか分からない。どんな風景だった?」「市役所の先を遊歩道に曲がって水の館の前からAさんの家の前を通って坂を登ったところ」「風景が見えない。今行ったら迷っちゃう」「来るときは迎えに行ってやるから心配ないよ」「高野山の私の家なら分かる」「そこが私の家だよ」「私の家をとっちゃったの?」「我孫子に来て二人で建てた家じゃないの」「そうか、自宅って私の家のことだったのか。国際的に蔓延している病気はどうなった?」「コロナウイルスね、世界中に広がっている」「悔しい、今すぐに飛んで帰りたいのに。いつ治まるの?」「分からない」「直ぐ帰りたいよ」「今は感染しないよう外には出られない。八王子にいるAだって会社に行かず自分の家で仕事をしているよ」「手賀沼に行った?」「朝早く、マスクを掛けて遊歩道を歩いて写真を撮ってきた。人が来ると近寄らないようにしてるよ」「直ぐ帰りたい」「今はダメ、そこに泊まっている人は外へ出してもらえないよ。みんな同じだから我慢してね」「分かってるよ」「風邪を引かないようにね。一人だけでいると空想の世界に入っちゃうから、みんなといっしょに広い部屋にも行ってね」「だいじょうぶ。会議か何かでしょっちゅう呼びに来るから」「Oさんに代わって」と頼んで電話を代わる。「はいOです」「毎日同じように家に帰る道の話しばかりです」「みなさん同じですよ」「デイサービスを中止するところもあって大変ですね」「こちらはまだそこまで行っていませんが、細心の注意をしています」と聞いて電話を終わった。200308c.jpg
妻が空想の世界の中で家へ帰ってくる遊歩道

ぽつりぽつりの雨に早々に退散

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.3.7)
(アルツハイマー)

散歩中の友と歩いた遊歩道、話題はコロナウイルスのことばかり。ぽつりぽつりの雨に早々に退散。200307.jpg

常連のカワウ、来てみれば指定席のつもりがカルガモの先客。200307a.jpg

食事の邪魔をしないようそっと構えたカメラ、二枚目を撮ろうとしたらムクドリたちに気付かれた。200307b.jpg



『声を聞いたら泣けてきちゃった』 (2020.3.7)
グループホーム寿に電話した昨日午後、Oさんは「お元気ですよ」とだけ言って電話機を妻に渡しに行った。名古屋では南区と緑区でデイサービスが全面休業になるとのニュースがあったように、介護施設での感染が心配されるようになった。ここでも感染防止対策に忙しいことだろうと思った。
「はい。電話ありがとう。嬉しいよ」と言って泣き声になった妻。「元気な声を聞くと嬉しいよ。泣くのは好きじゃないから泣かないで」「声を聞いたら泣けてきちゃった。今どこにいるの?」「自宅にいる」「高野山? 直ぐ近くだから家を見に行ってきた」「空想だろう?」「行ってきたと思うよ。手賀沼を見て坂を登ったら家が見えた。玄関前でピンポンって鳴らしたたけど誰も出てこなかった」「空想だよ。ずっと家にいたけど誰も来なかった」「でも、行ってきたけどなぁ」「コロナウイルスが流行っていて、そちらも外出できないはずだよ」「Aさんから手紙が来た。えーっと眼鏡。眼鏡がない、あった。新型のコロナウイルスが蔓延していて国中が人と人の接触をしないようにしているから会いに行けなくなった。分からなくなるのは自然の摂理だから嘆かないようにって書いてある。Aさんの俳句も書いてある」「今朝も親水広場まで行って写真を撮ってきた。あんたと仲よしだった大きな犬、シベリアンハスキーのジャックに会ったよ。家の庭ではオカメザクラがきれいに咲いている」「見に行きたい」「今はダメだから、写真を手紙で送るよ」「コロナウイルスだからって、なんで見に行ってはいけないの?」「感染すると重い肺炎になるから」「分かるけどいやだ。戦争が終わったら行けるよね。戦争じゃないコロナウイルスか」「ダメなものはダメ。みんな我慢してるんだ。わがままはダメだよ」「だって、話せるのはあんたしかいないんだもの。明日はいい子になってるから電話してね。あんたも生き残ってね、死んだらいやだよ。一人になっちゃうから」と言って泣きながら電話を切った。200307c.jpg

沼を渡る風に波立つ水面はブルー

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.3.6)
(アルツハイマー)

地平線の空がオレンジ色に染まっても、沼を渡る風に波立つ水面はブルー。200306.jpg

お気に入りのカッパの頭目指して飛んできたセグロカモメ。200306a.jpg

帰ろうとしたら、やっと陽が差し込み始めた親水広場。200306b.jpg



『庭のオカメザクラがきれいだったよ』 (2020.3.6)
昨日午後、Oさんに妻の様子を聞いた。「落ち着いていて元気にしている。体操をしたし、ご飯も食べた」と言われてしばらくしたら、「電話だよ」「はいはい。ありがとう」と漏れてきた声。
「もしもし、私。昼休みが済んで、私の分担の片付けをして部屋に戻ってやれやれといったところ」と、想像していた以上に元気そうな声。「頭はどう? もう痛くない?」「痛くないよ。今日はみんなが動いていて、その中に入って動いていたから気分がいいよ。今日は外へ出たよ。裏口の方で、ぐるっと回ると広い道に出る方。何て言ったらいいのかな、言い方は分からないが、下へ行く道が見える方」「駐車場側のテラスのこと? いつも洗濯物を干してあるところ?」「そうかも。天気が悪いときは廊下に干すよ」「それでどうしたの?」「天気がいいから外に出たらいい気持ちだった。私の部屋は東側に窓があるから外を見ると駐車場がある。その先に行くと広い道に出て東邦病院がある。ノートの地図を見てるから間違いないよ。もっと行くと市役所の方」「そうだね。地図の話しは今度会ったときのお楽しみにしようね」「私が考えていた道は、ノートの地図と同じだから、一人で歩いてもだいじょうぶ家に帰られるよ。天気がいいときに外へ出たら家に行くからね」「今はダメだよ」「どうして?」「コロナウイルスに罹ると高齢者は肺炎になっちゃうから」「そうだよなぁ。あんたも罹らないように気をつけてね」「今朝早くマスクをして、遊歩道を歩いてカッパの前まで写真を撮りに行ってきた。誰かが来ると近寄らないように注意して歩いたよ。でも人の集まるところには行かないよ。今朝は庭のオカメザクラがきれいだったよ」「天気がいいから外に出て歩いて家に帰ろうかな」「今はダメだよ」「そうだったね。頭の中で考えたことを言おうとすると、ごちゃごちゃになって分からなくなっちゃう」「地図の話しはまたの時に話そうね」「あんたはいま病気じゃないのね? この前、何処か悪いと言ったような気がする」「だいじょうぶだよ」「よかった。安心した。私たちは二人だけだものね」「他の人も電話を使うからもう切ろうね」「明日も電話してね。電話機、返してくる」と、また家に帰る道にこだわっていた妻。200306c.jpg

雲間からの淡い光に色鮮やかになったカッパ

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.3.5)
(アルツハイマー)

雲間からの淡い光に色鮮やかになったカッパ。アルツハイマーの妻が散歩する空想の時空、高々と噴水を上げていたかつての姿らしい。200305.jpg

遊歩道を歩けばホオジロの声、小枝の隙間を探して見上げれば天を仰ぎ鳴く姿。200305a.jpg

潜ったカイツブリの波紋を追って待てば、獲物を咥えて浮上したカイツブリ。二度三度咥え直してパッと丸呑み。200305b.jpg



『手賀沼を見て遊歩道を歩きたいよ』 (2020.3.5)
昨日午後、グループホーム寿のOさんから電話、「元気にしています。午前中は体操をやり、ご飯もおいしいと言って食べ、今は部屋でラジオを聞いているようです」と妻の様子を知らせてくれた。電話機を渡しに妻の部屋へ歩く気配、「あれ、眠ってる。お父さんから電話よ」、今度は「もしもし」と妻の声。「今日は参っちゃってる。眠ってしまったよ。昨日から頭がバカになっちゃった。今はどんな天気?」「雨が降ってる」「こっちは朝から雨が降っている。昨日夜から頭が痛くなった」「具合はどう?」「今は頭も冷たくなって痛くない。あんた今どこにいるの?」「家にいる」「どこの?」「我孫子の高野山だよ」「ここはどこ?」「我孫子市寿にあるグループホーム寿」「いまやっとどこにいるか分かった。ちょっとバカになってたのが治ってきたみたい」と、眠りから覚めて、訳がわからなくなっていたらしい妻。
「あんたはどこにいるの」「高野山の自宅」「それ、どこにあるの?」「そこから市役所の前を曲がって、水の館の前を通って坂を登ったところ」「私はずっとそこへ行くことを考えていた。ああ、帰りたい。ここから直ぐ近くだよね」「今はダメだよ。みんな家にいて外に出られないの」「どうして?」「中国から来たコロナウイルスが流行っていて、罹ると高齢者は肺炎になって危険なんだ。そこのホームにウイルスが入り込まないように面会を中止しているし、散歩などで外出することもできないんだ」「コロナウイルスってテレビで言っていた。しばらくはここで足止めってことか?」「そう」「コロナウイルスのせいなのか、いずれ治まる?」「その内に治まる」「いつ?」「それは分からない」「外に出たい」「今は出られない。泣かずに待っててね」「泣かないけど悔しいよ。帰りたいよ。手賀沼を見て遊歩道を歩きたいよ」「みんな同じように大変な時だから、一人だけわがままを言ってはダメだよ」「いやだけど分かった」「また明日電話するから電話を切って」「どうやって切るの?」「スタッフの人に終わりましたと言って返してきて」「じゃぁ事務所に行くよ」
前日とは一転して混乱気味の妻。やはり天気や気圧の変化があったからか、去年の今頃も天気が変わったとき同じようだった。そんなときは水分を取らなくなり、脱水気味になったことを思い出した。水を飲んでいるかが気になる。200305c.jpg



雨は止んでいたが今にも降りそうな空

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.3.4)
(アルツハイマー)

雨は止んでいたが今にも降りそうな空。200304.jpg

鳥のいない朝、岸辺に近寄ると驚いたように泳ぎ出てきたカイツブリ。レンズを向けたら飛び立って逃げた。200304a.jpg

コガモとカルガモしかいない岸近く、撮ろうとしたら羽ばたいてくれたコガモ。200304b.jpg



『物わかりのいいモードに戻っていた妻』 (2020.3.4)
昨日午後、グループホーム寿のSさんから電話、「奥様はお元気です。今日は泣いていませんでした。午前中は風呂に入ってさっぱりしました。自分でできることは自分でやってスタッフは見守っていました。今日はおひな様、ちらし寿司や天ぷらのお祝いの食事を楽しみました」と今日の様子を聞いた。
「だんな様から電話ですよ。元気な様子を話しておきました」「終わったらどこに返したらいい?」「ここで待っています」と電話機を渡しているような会話が聞こえ、妻の声で「もしもし、暫くぶりね」「昨日も電話したよ」「そうだった? 毎日隣にいるような気がしてたけど、考えてみるとずっと会っていないな。待っていてもなかなか来てくれないじゃない」「コロナウイルスの感染が怖くてずっと家の中にいるよ。そっちも面会中止になっているから会いに行けないよ」「天気がよくなったからここから出て散歩しながらそっちの様子を見に行こうと思ったけどダメだったか。いつになったら行けるかなぁ」「分からないけど、早くコロナウイルス流行が終わるといいね」「近くに散歩に出るのもダメかな。外出できるようになったら歩いて行きたい。300mくらいかな」「それよりは遠い。356を通って行くと1250m、市役所の方から手賀沼沿いだと2000mくらいかな」「けっこう遠いんだ」「家の庭のオカメザクラ、きれいに咲いてるよ。ハクレンの木にもいっぱい蕾があって三つくらいが膨らんで咲きそうになっているよ」「見たいけど行けないから今年は見られないね」「Sさんが待ってるでしょう。電話を代わって」と言ってSさんに代わる。お礼を言って、昨年同時期も天気が急変したり気圧の変化が大きいとき混乱することがあって、去年はふる里の道を歩くことばかり言って、空想の世界に入り込んでいた。そんな時は水分を取らなくなり脱水気味になったことがあり、今回も脱水気味だったかもしれないと伝えた。電話の声も元気になっていて、歩いて家に帰ることにもさほどこだわらず、物わかりのいいモードに戻っていた妻。200304c.jpg

赤紫に染まった空にケヤキの木はシルエット

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.3.3)
(アルツハイマー)

霧が出始めたころの水生植物園跡、赤紫に染まった空にケヤキの木はシルエット。200303.jpg

遊歩道を歩けば何かを啄むアオジ、一歩近寄って撮り、また一歩近寄って撮る。200303a.jpg

朝の散歩の帰り道、遊歩道脇の木から木へ、行く先行く先に飛び移って誘うモズ。200303b.jpg



『明日は迎えに来てね』 (2020.3.3)
昨日午後もOさんから電話、「昨夜はよく眠れた。朝はスタッフがお手伝いして着替え、食事もよく食べた。午後には皆さんとばば抜きのゲームをして、端は曲者だと言いながらゲームを楽しんでいた」と聞いてから、妻に代わってくれた。
「事務所に来たら皆さんが親切にしてくれてうれし涙が出るほど。居心地よく一日を過ごしている」「楽しく過ごせてよかったね」「でも、なんで私がこうなっているのか分からない。ここの人は過去のことは分からないから聞けないし、知らないうちにこうなっていて、過去のことが分からなくても自分ひとりで消化することにしたら気持ちは明るくなった」「過去のことが分からなくなったのは、忘れる病気になったから。めまいの薬をもらって頭がガンガンしたり、吐き気や目眩は治ったね。今はこうなんだと思って、余り深くは考えないで一日一日を楽しもうね」「今は市役所の先を曲がって手賀沼沿いに水の館の前を通って家に行く道のことばかり、繰り返し考えている。家に帰ってあんたの様子を見たり過去のことを聞きたい。自宅が近いのは自慢だが苦痛だ」「今は面会に行けないが、行けるようになったら過去のことを話してあげる」「そう聞いて嬉しくて泣けてくる」と涙声。「コロナウイルスの流行が治まって外出できるようになったら、A(長女)にも来てもらって一緒に歩こうね」「コロナウイルスはテレビで見た。そんなにひどいの?」「学校は休校、大相撲もプロ野球も観客なしで試合、会社も従業員は自宅で仕事。あんたはそこにいたらスタッフの方々が見守っていてくれるし、訪問診療でお医者さんも来て診てくれる。そこにいれば安全だから心配しないでね」「あなたは一人で住んでるの。お医者さんはどうするの?」「順天堂の先生が依田内科に手紙を出してくれて依田内科で診察してもらう。あんたとは電話では話せるから、面会が再開するまで我慢していてね」と話して電話を切った。
夕方、突然妻から電話、「私です。とりあえず今夜はここに泊まるのでお知らせします。明日は迎えに来てね」と、前に電話で話したことはもう忘れていた。「ごめんね、今はそこに行けないの。高齢でコロナウイルスに感染すると肺炎になりやすいし、私は心臓に人工弁が入っていてリスクも大きいからできるだけ外出を控えて家いるし、そちらも面会を中止している。そこにいればスタッフの皆さんが見守ってお世話してくれるし、訪問診療でお医者さんも来てくれる。そこは安全だから、スタッフの皆さんの言うことをきいて待っててね」「そんなに大変なの?」「日本中、世界中が大騒動、オリンピックだって中止になるかもしれないほどだよ。明日また電話で話そうね」「知らなかった。あんたも気をつけてね」と言ってOさんに代わった。「今は何もわからなくなっている時間だから、心配しなくてもだいじょうぶよ」と言ってくれた。何も分からなくなって、皆さんを煩わせている様だ。200303c.jpg

しばらく眺めた小雨降る沼

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.3.2)
(アルツハイマー)

傘を差し桃山公園の高台に立って、しばらく眺めた小雨降る沼。200302.jpg

埋立地の杭近く、じっと動かないカイツブリ。200302a.jpg

岸に近寄ったらバンが飛び立ち、泳ぎ出てきたコガモとカルガモ。200302b.jpg



『水を忘れずちゃんと飲んでね』 (2020.3.2)
昨日午後、グループホームのSさんから電話があった。「お変わりなく元気にしています。泣かなかったし、だいじょうぶです。ご飯も全部召し上がりました」とのメッセージのあと、「もしもし、誰でしょう」と妻の声。「もしもし」と言うと「あっ、身近な人」「そう、夫だよ」「だんな様でした」とちょっとふざけ気味。
「どうして電話してきたの?」「あんたが元気にしているか聞いていたの。そのあとあんたに代わってもらった」「闇取引か、なんか調べてたな」「違うよ。あんたが元気かどうか教えてもらい、そのあとあんたと話そうとしていたんだ」「そうだったのか。電話くれてありがとうね。いま、こっちではみんなが体操する部屋に呼ばれて、何かお話があるみたいだけど行って見ないとなんだかは分からない」と、呼ばれていることが気になっている様子。「ご飯ちゃんと食べてる?」「食べたよ」「泣かなかった?」「泣かなかった」と答えたあと、「どうして来ないで電話掛けてきたの?」「コロナウイルスが流行っていてできるだけ外出しないで家の中にいる。そちらのホームでも外からウイルスを持ち込まないように面会を中止している。面会に行けないから電話したの」「みんなと一緒に呼ばれたのもそういう話があるのかな。大事な話だったら今夜7時過ぎに電話するけどどこにいる。電話掛けるときはどこへ掛けたらいい? 家なの? 岩滑(妻実家)なの?」「自宅にいるけど、あんたは携帯電話を持っていないよ」「あぁ、そうだ。でも頼むからいいよ」「そこにいれば食事も洗濯も掃除も、体操だって、健康管理もみんな職員さんがお世話してくれるから心配しなくてもいいよ。もし大事な話があったら明日電話で話すときに教えてね」「分かった。ここにいたら安心していられるのね」「一昨日庭のオカメザクラが一輪咲いて、昨日はいっぱい咲いてた」「オカメザクラを見に行きたいな。でも今年はダメね」「去年はあんたが雨戸を開けたときに見て私に教えてくれたけど、今年は私が見て教えてあげるよ」と言って、ふと長女が書いた『水を飲もうね』の張り紙が目にとまった。「水を忘れずちゃんと飲んでね」と言うと、「ちゃんと飲むよ。係の人の指示をよく聞いて、ここにいるから心配しないでね」「また明日ね」「電話くれてありがとう」と言ってSさんに代わった。
電話しているときは状況を理解できているが、時間が経てば忘れてしまいそう。泣いたりパニックになったら魔法の水(リンゴ黒酢で味付けした水)を飲ませるようにSさんにお願いした。一口飲むと「おいしい」言って泣いていたのを忘れる魔法の水だから。200302c.jpg

今朝から撮影のスタート点を市民農園跡に変更

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.3.1)
(アルツハイマー)

月が変わったから、今朝から撮影のスタート点を市民農園跡に変更、当分は足慣らしに岡発戸新田の釣堀の先で折り返し。200301.jpg

背中だけを見せて動かないアオジらしき一羽、「ちょっと向きを変えてよ」と念じたらチラリとこっちを向いて飛び去った。200301a.jpg

「陽が当たってきれいよ」と散歩のおばさん、手招きして上を指さす。そっと近寄って見上げたら小枝の隙間に朝日を浴びたモズ。200301b.jpg



『そんな話聞いていなかった』 (2020.3.1)
昨日午後、グループホームのOさんが知らせてくれた妻の様子、「午前中は元気だった。入浴をして出てきたらみんなが体操をしていて、私体操大好き人間といって参加しました。食事は完食、食後に皆さんはゲームを楽しんでいたので誘っら、ゲームはしたくないと言って部屋にこもってしまった。午後からは落ち込み気味です」と。
「いま呼んできます」とOさん、「いいですか、あそこに座るわ」と妻の声。「もしもし、私です。待っていたのにどうして来てくれなかったの?今度会ったときにはバカ、バカ、バカ、と言ってうんと文句を言ってやろうと思ってた」と不機嫌そうな声で一気に言った。「いまコロナウイルスが世界中に流行っていて、日本でも安倍首相が集会やイベントを中止してと呼びかけ、翌日には全国の小学校、中学校、高校、などを春休みまで休校にするように要請して、働いているお母さんは困っちゃっているよ。看護師さんが出勤できなくなって診療できない病院も出てるほどだよ」「休校にしたらお母さんたちが大変だって知らない男が多いのかな。安倍さんもバカだね。あんたも来なくてもいい言い訳ができたのでしょ」とご機嫌斜め。「高齢者が感染すると重症の肺炎になるリスクがあるから、私もできるだけ外出しないで家に閉じこもっている。そちらのホームだって、外から来た人がウイルスを持ち込むのが怖いから面会はさせないようになった。だから会いに行けないので、電話であんたと話しをさせてもらってる」「そうか、そうだったのか。そんな話聞いていなかった」「テレビでもいっぱい報道してるよ」「それじゃぁニュースを見るよ。知らなかったから文句を言おうと思ったが、もう文句は言えないね」「ゲームはしないの?」「ゲームはいや。ご飯の後みんなとお話はするけど、部屋に戻るとひとりで淋しいから、なんで来てくれないと泣きそうになっていた」「困ったりつらいのはあんただけじゃない。高齢者が自宅にいる家庭では、家族が感染して高齢者に感染させることが心配だし、休校で子どもが家にいるお母さんは働きに行けなくなって困っているし、そこであんたたちの面倒を見てくれている職員さんたちだっていろいろ困っていると思うよ。それでもあんたたちを守ってお世話してくれてる。そこが一番安全だから、安心して過ごしてね」「分かった」「明日も電話で話そうね」「あんたも気をつけてね」と電話中は物わかりがいいが、直ぐ忘れて怒ったり泣いたりしないか気掛かりだ。
電話を終わって、オカメザクラを覗いた。たくさん花が開いていた。去年までは妻が雨戸を開けオカメザクラが咲き始めたこと、満開になったことなどを私に話しに来ていたことを思い出した。200301c.jpg

朝の光が零れ落ち水面に描いた白い模様

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.2.29)
(アルツハイマー)

桃山公園の高台に着けば暗い曇天と暗い沼。小さな雲の隙間だどんどん大きくなって、朝の光が零れ落ち水面に描いた白い模様。200229.jpg

目の前を横切った小鳥の姿を目で追えば、遊歩道の脇の小枝に止まったシジュウカラ。200229a.jpg

撮ろうとしたら逃げたモズ。帰ろうとしたら追い越して、撮ってもいいぞと小枝に止まる。200229b.jpg



『あなたがこっちに泊まらないの?』 (2020.2.29)
1時30分ちょうどにグループホーム寿のOさんから電話。「午前中は落ち込んでいて、頭も痛いと言っていた。ベッドに寝たり起きたりして、ごそごそと何かを探している様子だった。今日は何日か、何曜日か分からなくなったと言っていたが、メモを書き込んだカレンダーを見て何日か分かったと嬉しそうにしていた。食事は全部食べたが、午前中の体操もお掃除も参加しなかった。お風呂も入るのをやめた」と妻の様子をい説明してくれ、妻と電話を代わってくれた。
「お父さんからよ」とOさんの声、「私?いいの?」と妻の弾んだ大きな声。「もしもし、私。明日は来てくれるの?」「コロナウイルスが流行してるから外出は控えているの。ホームに訪ねて行ってもウイルスを持ち込む恐れがあるから面会はできないよ」「面会?あなたがこっちに泊まらないの?」「私はそっちに泊めてもらえない」「それなら私がそっちに行こうか?」「あんたが外出するとウイルスの感染が怖いし、誰かが迎えに行っても外出は許可してもらえない。家に戻って来ても、私が年を取り過ぎてできないことが段々増えたから、あんたの体調が悪くなっても助けてあげられない。だからあんたにはそこに泊まってもらって、ホームの職員さんにお世話をお願いしてるんだ」
「そうか、そうだったね。わかったよ」「ウイルスの流行が治まったら面会に行くから、それまでは電話で我慢してね。私が来ないからって泣いちゃあダメだよ」「分かった」「また明日ね」「楽しみに待ってるよ」と、声の調子から笑顔が見えるような気がした。
電話が終わって庭を見たら。オカメザクラの蕾が一輪だけ咲いていた。明日はもっと咲くだろう。200229c.jpg

オレンジ色に染まった地平線の空

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.2.28)
(アルツハイマー)

オレンジ色に染まった地平線の空、沼に映ってオレンジ色の水面。200228.jpg

久しぶりに歩いた遊歩道、鳴き声に呼び止められて振り返ればモズ一羽。200228a.jpg

目の前の岸近くに浮上したカンムリカイツブリ。200228b.jpg


『「分かった」と言いながらも不安そうな顔』 (2020.2.28)
妻に面会に行った昨日午後、部屋を覗くとベッドに仰向けに寝てノートを見ていた。開口一番、「一つ一つのことはちゃんと理解できるが、それぞれの関連性が分からない」と言う。「どういうこと?」「ノートに書いてある一行一行は分かるけど、それがどう絡み合っているかさっぱり分からない。みんなが私のことを頭がおかしくなったと言ってるのかなぁ。私はどこが悪いの?」「頭がおかしくなったんじゃない。こうやって話をしてるとちゃんと理解できて会話になってる。だけど時間が経つとそのことを忘れちゃう病気なんだ。それもずいぶん回復したと思うよ。以前は頭がガンガンして、目眩がしたり吐き気があったことで苦しかったが、背中に貼っていた薬を中断して、ここに診察に来てくれる先生が処方してくれた目眩の薬を飲むようになって頭がガンガンしたり吐き気や目眩も治って、頭がすっきりしたよね」「それは治ったけれど、耳がよく聞こえないのは治っていないよ」と、まだ合点のゆかない顔。
コロナウイルス感染拡大で多くのイベントが中止、学校は閉鎖、病院では面会を中止する中で、いずれグループホームも面会できなくなるだろうと思って、前日から面会に来られなくなることもあると妻に話してきた。「コロナウイルスの大流行でここも面会に来られなくなりそうだ。しばらく面会に来られなくても泣かないでね」と言ったら、昨日話したことやテレビを見たことを思い出したようで、「泣かないようにするよ。私はここにいたら心配ないけど、あなたはどうするの?」「自宅にいるよ」「ひとりだけで?」「そうだよ」「ご飯の仕度も洗濯も、買い物だって全部自分でやるのね。私がこんなになっちゃってごめんね。何もしてあげられないのがつらい」「お互い様だよ。悲しいことばかり考えないで、歌を歌ったり、楽しいことを探して気分転換し、面会が再開できるまで待っててね」「分かった、それまで頑張るよ。あなたも気をつけてね」と不安そうな顔で答えた。
帰ろうとすると玄関にOさんが出てきて、「昨日から状況が急に変わって、皆さんに面会中止の電話をしていた。安全確保のためご協力ください」との話があった。「妻の状況問い合わせの電話を掛けてもいいですか」と訊ねたら、「毎日、一時30分頃こちらから電話でお知らせします。そのときは同席してもらいますからね」と見送りに来ていた妻にも分かるように話してくれた。解錠してもらって玄関を出るとき、「気をつけてね。ご飯ちゃんと食べてね」と言って手を振っていた妻。200228c.jpg

上空は晴れて明るい青空

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.2.27)
(アルツハイマー)

上空は晴れて明るい青空、地平線には日の出を邪魔しそうな雲。200227.jpg

雲の隙間にちらりと見えた日の出。200227a.jpg

ハス群生地の桟橋付近で一斉に羽ばたいたオオハクチョウ5~6羽、ちょっと助走しただけで飛ぶのをやめた。200227b.jpg


『ここから歩いて家を見に行きたい』 (2020.2.27)
妻との面会に行った昨日午後、事務所には誰も姿が見えず来訪者の靴だけが多かった玄関、見学者が来ていたのだろうか。マスクを掛け面会票記入、家を出る前の検温結果36.4℃も書いておいた。数日前からおいてあったアルコールで手の消毒をし、うがいをしていたとき現れた職員に面会票を渡すと、「マスクを掛けてくださいね」と言われて外したマスクを指さした。面会の時やるべき注意事項は全部やったことを確認して妻の部屋に入室。
鏡台の前の椅子に座って化粧中だった妻と目が合った。「来たよ」と言うと、「泣きたい気持ちになったからお化粧していた」と眉を書く手を休めずに言った。「どうしてお化粧してたの? 何処かへ行くつもり?」「一人でいたら泣きたくなったからお化粧してたの。お化粧してると気が紛れるから」と言ってしばらく無言。「はい、終わった」と言って立ち上がり、ベッドに腰掛けたときは笑顔になっていた。「私、ずっと考えていたんだけど、ここを出て駐車場の先の家の前を通り過ぎると東邦病院がある広い道に出る。坂道を下ると市役所入り口、その先の交差点を曲がって鳥博の前に出たら、Aさんの家の前を通って坂道を登ると私たちの家がある。この道を歩いて家を見に行きたいの」「写真を持って来ようか?」「写真じゃダメ。実際に行って見てきたいの。家の前の道を歩いて公園の高台から手賀沼を眺めたいの。ひとりでも簡単に行けると思う」「途中で気が変わって別なところに行こうと思わなければ行けるだろうけど、途中で別のことを考えちゃったら自分がどこにいるか分からなくなるかもよ」「それなら誰かと一緒に行けばいい」「そうだね。暖かくなって娘たちが来たときに行ってこようね」「今すぐでなくたっていいんだ」「歩いて行くんだったら、散歩をして弱った脚を強くしておこうね」「ああ、家を見に行きたい」と言って、ここから家までの道と目印の家や風景を何度も繰り返して話した。それを聞きながらノートに言うとおりに絵地図を書いた。どこも間違えていなかった。CDを掛けたが歌わず、ずっと家に帰る道のことばかり。コロナウイルスが治まったら、車で家や桃山公園を見せに行きたいと思う。200227c.jpg

いつまでも暗い曇天の沼

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.2.26)
(アルツハイマー)

桃山公園の高台に立って撮ろうとしたらカメラにメモリーカードが入っていない。大急ぎ自宅まで戻って再び高台へ。いつまでも暗い曇天の沼は先ほどと少しも変わっていない。200226.jpg

高台の下、市民農園跡まで降りたら埋立地の杭の付近に集まっていたカルガモ、コガモ、バン、ちょっと離れてカンムリカイツブリ。200226a.jpg

市民農園跡地の菜の花畑の脇、何かを啄んで歩いていたツグミ、犬の散歩に人が来たら飛び立って遊歩道脇の木の枝に。200226b.jpg



『人混みのスーパーに行くのは嫌だね』 (2020.2.26)
おやつの時間の前にはピアノのボランティアの人たちが歌わせてくれる時間、おやつが終わる頃を見計らって面会に言った昨日午後。玄関を入ってOさんに会い、コロナウイルスの感染が拡大が話題になり、「ここでも初動対応を間違えないように面会を中止することを考えている」と聞く。いよいよ面会にも来られなくなるかと一瞬言葉が出なかったが、「毎日来てくれているし、当面来る前に検温して発熱していないことを確認し、マスクを掛けてきて、入り口に置いておくアルコールで手を消毒して下さい」と言われた。
妻はまだおやつのテーブルの前、妻の部屋に入って待っていると、どなたか職員さんに私が来たことを告げられたと言って戻って来た。お茶を残してきたのだろうと思って、とりあえずコップ一杯水を飲ませた。おやつの前にたくさん歌を歌って気分がよくなっていたのか泣き顔にもならず、笑顔だった妻。コロナウイルスの感染が拡大していることを話すと「テレビで見た」と。ここでも面会が制限され面会にこれなくなるかもしれないことを説明すると、「じゃぁ、あんたもここに泊めてもらったら」と言い、それができないと分かったら「あんたが感染したら大変だから人混みのスーパーに行くのは嫌だね、電車やバスに乗らないようにもしないとダメね」「そうするね。夕食は宅配弁当が来るし、昼食にはレトルト食品を通販で大目に買っておくよ。そうすれば近くのコンビニで朝のパン、ハム、サラダ、タマゴ、豆乳を買うだけで、そのほかの買い物には行かなくていいし、順天堂での診察は先生に依田内科宛てに手紙を出してもらって依田内科にお願いするから、当面順天堂に行かなくて電車もバスも乗ることはなくなる。外出は朝の手賀沼撮影くらい、外出しないように気をつけるからね。私が面会に来られなくなっても泣かないでね」と言ったら、「分かった。泣かないよ。私はここにいれば安心だから」答えたが、ちゃんと思い出してくれるかが気になる。
帰宅してテレビで政府の基本方針を聞いていたら、症状が軽ければ自宅でじっと静養しろ、感染の検査は重篤にならなければやってもらえない。韓国とは大きな違いだ。調べなければ感染数に数えられないし、死んでも調べてなければ感染数のカウント外だ。こうすれば見かけ上の感染数を減らせるからか。法解釈だって、記録文書だって捏造する政府、素直に政府発表を聞けないのは私だけだろうか。200226c.jpg

薄雲が淡く赤紫に染まると沼もまた赤紫

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.2.25)
(アルツハイマー)

地平線に沿った薄雲が淡く赤紫に染まると沼もまた赤紫。200225.jpg

上空を赤く染め岡発戸の丘の上にゆっくりと登る日の出。200225a.jpg

薄雲の上まで登れば眩しい太陽。暖かい晴天の朝だが、午後からは天気下り坂だと天気予報。200225b.jpg



『せんべいを指揮棒代わりに振って歌う』 (2020.2.25)
おやつの終わる頃に面会に行った昨日午後、まだおやつ中だったので妻の部屋で待つ。職員さんがお茶を持って来てくれて、しばらく待ったらドアをちょっとだけ開け、「誰が来たのかなぁ」とふざけながら、片手にお茶のカップともう一方にせんべいを持ってニコニコしながら入ってきた。「まだ皆さんはお話中でしょ」と言うと、「ここの人たちはテーブルの前ではあまりしゃべらないの。しゃべるのはテレビの前だけ。まだここに来たばかりで他の人のこと分からないでしょ、余分なことを言ってしまわないように黙っているの」と、周りの人との関わりに慎重になっている様子。
昨日撮った私とのツーショットの写真を渡すと、「ぼんやりした顔は私じゃないみたい。見たくない私だな」と言いながら、カレンダーに私が来たことを記入しようとして「あきらの漢字を書けない」と手が止まった。ここ10日ほど前から書けなくなって欄外に大きく『詮』と書いてあったがそれも見付けられなくなった。毎日私が来るのを待っていて、カレンダーに来たことを書き込んでいるのに、私の名前や夫であることを忘れ始めたような気がする。お手本の大きな字を指で押さえると「あった」と言って書き始めた。
日本の歌のCDに合わせて何曲か歌って『かなりや』歌い終わったら、「私もここに棄てられたのかなぁ。歌ってたら家に帰る道が浮かんできたよ。ここの玄関を出て、広い坂道を下って市役所の前まで行って、鳥博の前からAさんの家の横を通って坂を登れば家。一人でも歩いて行けると思うよ。歩いて家に帰りたいけど、勝手に脱走したらみんなに迷惑がかかるよね」と言う。「暖かくなって子どもたちが来たとき外出届を出して家に行ってこようね」と答えるしかなかった。次の曲の途中、急に手を伸ばし食べかけのせんべいを手に取った。食べるのかと思ったら、せんべいを指揮棒代わりにゆっくり振りながら歌った。話題を変えようと「何の曲が好き?」と問えば、「歌はみんな好き。詩の好き嫌いはあっても歌っていたらみんな好きになる」と答えた。帰ろうとすると「もう帰っちゃうの」と言いながら玄関まで見送りに来た。200225c.jpg

地平線に帯を這わせたような雲

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.2.24)
(アルツハイマー)

木立の間を通り抜け沼が見える高台に出れば、地平線に帯を這わせたような雲。雲の上がオレンジに染まっても風に波立つ沼はブルー。200224.jpg

岡発戸の丘の上、雲の中から抜け出せば眩しすぎる日の出。200224a.jpg

帰宅したら朝日を浴びていた庭のオカメザクラの木、枝先に赤い蕾が膨らみ始めた。200224b.jpg



『忘れないように一緒に写真を撮って』 (2020.2.24)
ホームの玄関に入ったら職員さんが妻の部屋のドアを開け「旦那さんが来ましたよ」と伝えていた昨日午後。部屋から出てきた妻が「私の旦那さんじゃなくてお父さんよ」と言ったら職員さんは笑いながら「はい、そうですか」と。いつもと同じ時間に着いたのに、「ずっと待っていたのに来てくれなかった」と文句。「私はあんたのお父さんじゃなくて夫だよ」「えっ!お父さんじゃないの?」「あんたのお父さんは中島幹さん、私はAやLのお父さん、あんたの夫だよ」「あなたと結婚してたの?どうして結婚することになったの?」「斉藤先生に自宅に来いと呼び出され、行ったらあんたがいたんだ。佐倉小学校の先生だったあんたと結婚して武蔵小山に住んで、あんたは大井町の立会小学校に勤めるようになった」と言うと、アルバムを見ながら「どうして等々力にいたの?」「武蔵小山のアパートの隣の部屋の菅原さんがナオミ保育園に勤めていて、ゼロ歳保育をやっていると聞いたから近くの等々力に引っ越した」「そうか、それで等々力にいたんだ」と少し思い出した様子。昼食後眠ってしまったのと、手や顔の皺が気になって水が足りないのかと思って水を飲ませた。
アルバムの後半、横浜の片倉代団地時代の写真をみながら、「今日はどこから来たの?」「自宅から」「横浜じゃぁ遠いからなかなか来られないのね」「自宅は高野山。直ぐ近くだから毎日来てるよ」「じゃぁ私たちが建てた家に一人で住んでるの?かわいそうに。私も家に帰りたい」「子どもたちが来たときに外出して行こうね」と言って、日本の歌のCDに合わせて歌わせた。
出会い、結婚、勤務先退職と東京都の教員採用試験、武蔵小山に住み等々力への転居と幾つかのことを一気に話し、一つのことを思い出す暇もなく、次々思い出そうとすることが変わったから頭の中を混乱させてしまったのかと、説明を急ぎすぎたことを反省。同時に幾つものことを思い出させようとしても無理、ゆっくりと一つずつ、妻のペースに合わせて話さないとダメだと自分に言い聞かせる。3時のおやつの時間が近くなって、「明日も来るよ」と言ったら「忘れないように一緒に写真を撮って」と言った妻。200224c.jpg