雲間から零れる陽光に一瞬輝いたネコの木

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.6.21)
(アルツハイマー)

雲の向こうに太陽、雲間から零れる陽光に一瞬輝いたネコの木。200621.jpg

親に餌を貰っていたのか水生植物園跡の小径、近寄ればパッと散り、これでも隠れたつもりかスズメの子。200621a.jpg

風があるからかいつもの木の隣、背の低い木で囀っていたホオジロ。200621b.jpg


『色々課題を出される』 (2020.6.21)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「私です。ここにいると色々課題を出される」「どういう課題?」「課題じゃないな、例えばテーブルの上の紙を取り替えること、分からない時は教えてくれる。よく分からない時、こっちから聞きに行くことが多いが、聞きに行ってもいいか迷うこともある」「ぼやっとして待つより、何を頼まれたか質問した方がいいと思う。何かやることがあると頭のトレーニングになるね」「部屋の東側の広い部屋で手伝いを頼まれるが、分からない時に質問するとよく教えてくれるよ。一日に一回か、二日に一回出番が回ってくる」「いいことだね」「私がどういう要求をされたか分からなくて、事務所の人に言うと必ず誰かが対応してくれる。私は何もしないでぼやっとしていられない人だから、頼まれたら喜んでやる。わざわざ私に頼むことを作ってくれているのかなぁ」「いいことだね。分からなかったり出来ないことだったら、正直に言うのがいいね。昨日頼まれた化粧品のこと、オリーブバージンオイルをDHCの通販に注文した」「昨日そんなこと頼んだの。ありがとう」「昨日JAとりで総合医療センターで検査結果を聞いてきた。結果は2月の検査と同じで変化していなかった。ポリープの見た目は癌の疑いがあるが、組織を取って検査した結果は悪性ではなく、9月に経過観察の胃カメラ受診を予約した」「変化がないっていいことだ。今のところバタバタすることはな無くてよかったね。ここにいて中のことだけ見たり聞いたりしていると私はダメになりそう。あなたのことや外の出来事の話を聞いて、私なりに考えるのがいいことだと思う」「そうだね。ぼつぼつ時間だ。CDを鳴らそう」「・・・CDを押す前にラジオが鳴り出した」「CDを押して」「ラジオが鳴ってるけど押すよ・・・歌が鳴った。・・・~春を愛する人は・・・~」「おーい。先に電話機を返してきて」「何か言った?」「電話機を返してきてから歌って」「分かった。行ってきます・・・電話終わりました」200621c.jpg
(遊歩道脇にこっちを見てよとユウゲショウの花。)

何日ぶりかの眩しい日の出

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.6.20)
(アルツハイマー)

何日ぶりかの眩しい日の出、靴に絡みつく濡れた草。200620.jpg

2~3分おきに鳴いて羽ばたく雄のキジ、どこにも見えない雌の姿。200620a.jpg

繰り返し小舟の中に飛び降りるハクセキレイ、出てきては縁の周りを歩き辺りを見回す。200620b.jpg


『化粧品がなくなっちゃた』 (2020.6.20)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「アハハ、こんにちは。ご機嫌いかが?」「まあまあだ。電話が終わったらJAとりで総合医療センターへ行く」「どうしたの?」「先月胃カメラで胃の入り口のポリープの組織を取って検査した。その結果を訊きに行く」「結果を知りたいから教えてね」「そうするよ」「あのね、化粧品がなくなっちゃた。まだビンに入っていたのがなくなって、私の名前が書いてない空き瓶があった。誰かが間違えたのかなぁ」「誰かが間違えたんじゃなくて、あんたが使い終わったのだろう。何がなくなった?」「オリーブオイルかな、眼鏡を掛けてないから読めない」「じゃあ、女の職員さんのところに行って、電話を代わってもらって。私が話すから」「今昼休みだからいるかなぁ。・・・済みません、夫が代わってと言ってます」「もしもし代わりました」「化粧品がなくなったと言うが品名が分からないので見て下さい」「あら、私も眼鏡がないと見えない。他の人に見て貰うからお待ち下さい」「・・・もしもし代わりました。オリーブオイルです」「もうちょっと詳しく分かりませんか?」「DHCオリーブバージンオイルで30mlです」「入手したらお届けします」「マイルドローションがあるから、届くまでそれを使うように言っておきますね」と、妻にも説明しているらしき会話。「もしもし、わかった?」「分かったから買って届けるからね」「ありがとう。あなたに化粧品を頼んでごめんね」「いいよ、通販で買うから恥ずかしくない」「アハハ。そうかぁ」「他に足りないものはない?」「分からない。お化粧してる時は分かっても、電話する時はもう忘れちゃってるよ。もうじき80だから化粧品もたくさんは要らない。じゃぁ、部屋に戻る。・・・」と無音が続く。保留しているらしい。事務所に連絡し電話機を見てくれるように頼み、妻の持っている電話機を呼ぶ。「やっぱり保留してました」と職員さん。CDラジオの電源を入れ、CDが鳴っていることを確認し、電話機を返しに行かせる。200620c.jpg
(今朝もまた同じ木の同じ枝にホオジロ、天を仰いで囀り続ける。)

笹の隙間を探して覗いた雨の手賀沼

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.6.19)
(アルツハイマー)

背が伸びた柵沿いの笹や葛の蔓。笹の隙間を探して覗いた雨の手賀沼。200619.jpg

雨に濡れたってへいちゃら、競って餌探しするムクドリたち。200619a.jpg

しばらく見ぬ間にびっしりと実をつけたマユミの木。200619b.jpg


『手紙は着いた?』 (2020.6.19)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「だあれ?」「えっ」「ダーリンからって言われたから誰かと思ったし声が違うよ。あなたは我孫子市内にいるよね」「そう、高野山」「直ぐ近くだね。昨日出した手紙は着いた?」「着いていない」「他の人にも出した」「どこで出した?」「我孫子駅からもっと西へ行ったところ?」「柏?」「拍で出したような気がする」「外出禁止だから行けないはずだけど」「荷物を集める人がここで出してもいいと言った」「夢を見たのかな」「ここから市役所の方に行って、東に行って坂を登れば家だよね。道は分かってるし、元気だから夢じゃない。私の頭はしっかりしている」「宛先を書いた?」「手紙の裏に書いてある通り書いて、柏へ行く人に渡した」「場所がどんどん変わっちゃうね」「もしかしてあそこかなって思うと頭の中の景色がそこへ代わっちゃう」「やっぱり夢だよ」「そうかなぁ。私はバカみたい。騙されているのかな」「誰だって夢を見るし、夢の中のことは辻褄の合わないことばかりだよ」「やっぱり私は騙されている。お昼ご飯はいっぱい食べたからお腹はいっぱい。窓の外を見たら景色はいつもの通り。垣根があってその向こうは駐車場。その先を市役所の方へ坂を下ったあたりから手紙が来たかと思って返事を出した。考えると頭の中はガーンとしてくる。私の頭はいつ元に戻る?」「昼寝してまだ目が覚めていないんだ。目が覚めれば治るよ」「私の話は内容的におかしい?」「おかしい」「私は狐に騙されているみたい」「私は狸に頭を叩かれたような気がする」「アハハ、狸かぁ。私が騙されてるのがおかしかったら笑ってよ」「アハハ」「こんちきしょう、頭を殴ってやろうと思ったが電話じゃ殴れないよ。アハハ」「もう時間だ。CDを鳴らしてよ」「・・・あれ、矢印は?・・・この大きいボタンだ。・・・鳴った」「電話機返してきてから歌ってね」「・・・終わりました」「はい、もしもし、今受け取りました。ニコニコ笑いながら部屋に戻りました」とOさん。200619c.jpg
(草苅が済んでいない桃山公園の高台。踏みそうになってはっと気付いたネジバナ。)

薄雲の向こうに一瞬見えた遅い日の出

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.6.18)
(アルツハイマー)

薄雲の向こうに一瞬見えた遅い日の出。200618.jpg

首を伸ばしたから鳴くぞとレンズを向けたら、ひと声鳴いて羽ばたいたキジの雄。200618a.jpg

親が餌を咥えて近づいたら、口を開け餌をねだるムクドリの子ども。200618b.jpg


『あなたも長生きして』 (2020.6.18)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「昼寝していた。午前中に体操をして疲れた」「目が覚めた?」「まだ寝ぼけてる。頭の上の方に眠いのがある。寝ると直ぐ眠っちゃいそう。午前中は何をしたの?」「今朝、パソコンの部屋の電灯が突然消えた。電子基板が故障したらしい。KS電気で新しいのを買って工事を頼んだら、エアコンの工事が詰まっていて7月始めまで工事できないと言われた。そんなに待てなくて困ったら、時間は未定だが明日工事をしてくれる人を探してくれた」「KS電気なら直ぐ近くだね。ここから坂を下りたところ?」「そう」「家だって近いのに私は帰られないの?」「日帰りで家に来ることを計画していたが、伝染病が流行って外出も面会も出来なくなった」「だったら二人で家に住めないの?」「去年暮れまでは二人で暮らしていた。あんたが二度も入院したし、夜中に体調が悪くなって、目眩や吐き気で何度も病院に行った。私も年をとってあんたの面倒を見られないことが増えた。二人でグループホーム寿を見て申し込んだら、12月に空きが出て今年から入ることが出来た」「どうやってここへ来た?」「1月3日にJAとりで総合医療センターに入院して9日に退院したが、あんたは入院中に自分の居場所さえ分からなくなった。私が運転しAが付き添って入居したこと、AとLが鏡台などの荷物を運んだことも理解できなかったみたいだった」「利根川の橋を渡ったことを憶えてる。ここに来てから、申し込んだところに早く行きたいと思った。最近、ここが申し込んだところかなと思うこともある。私は長生きしてお返しするから、あなたも長生きしてね」「もう時間だ。CD鳴らして」「ランプは点いてる」「CDボタンを押して」「うん、後は分かる。・・・鳴ったよ。電話機はどこへ返すの?」「事務所」「ドアを開けたよ。・・・事務所に来た。終わりました」「もしもし、受け取りました」と職員さんの声。200618c.jpg
(今年も咲いたザクロの花、市民農園跡の片隅に。)

ドジョウすくいの踊りの稽古みたいにアオサギ

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.6.17)
(アルツハイマー)

ケヤキの大木が影を落とす蕎麦畑、やっと蕎麦の花に射し込み始めた陽光。200617.jpg

5分待っても鳴かないキジに、意地になって待ち続けたらやっと鳴いて羽ばたく。200617a.jpg

ドジョウすくいの踊りの稽古みたいにアオサギ。200617b.jpg



『切れちゃったのか』 (2020.6.17)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「お久しぶり、どなた、アハハ」「昨日も電話したよ」「そんなのもうすっ飛んじゃった。2~3回は会った事務所の人が電話機を持って来てくれた。」「ほとんど毎日持って来てくれてる人だよ」「私は電話機しか見てないから分からない。今どこにいる?」「高野山の家」「坂を登ったところの家に時々行くよ。その近く?」「その家、二人で建てた家」「自分の家にいるのか、こんちきしょう。これからは安心してあなたのところに行ける。昨日はチャンスかと思ったがダメだった。今日は?」「今日もダメ。伝染病が流行っているから外出できない」「そうか、ずっとダメか」「7月5日には面会できるよ。あんたは大きな部屋の窓ガラスの内側、私は外の駐車場で、お互いに顔を見ながら話が出来る」「明日はダメ?」「予約は7月5日」「そんなの知らない」「ティッシュの箱の裏を見てごらん」「私の字で7月5日って書いてある。ここで一緒に住めないの?」「私には入居資格がないからダメ」「それなら家で一緒に住めないの?」「あんたと二人で住んでいたが、私も年をとってあんたの面倒を見られなくなり、あんたはグループホーム寿に入居して専門の職員さんにお世話をお願いしている」「二人とも高齢だからもう出来ないか。これからずーっと別に住むのね」「伝染病が治まって、子どもたちが来た時など日帰りで家に来て一緒に過ごし、夕方はグループホーム寿に戻ることは出来るよ」「辛いけどあなたのせいじゃないよ」「時間になったからCDを鳴らして」「・・・鳴ったよ。~春を愛する人は・・・~」「おーい、電話機返してきてから歌って」と言っても反応がなく。最後まで歌って「あれ、切れちゃったの?」「もしもし、もしもし」と繰り返しても聞いていない。「切れたのか」と言ってプツンと切れた。事務室に電話、「電話の途中で歌い始め、電話機を返すのを忘れているみたいです」「分かりました。あっ、来ました。大丈夫ですよ」と職員さん。200617c.jpg
(市民農園跡を眺め、飽くことも知らず囀り続けるホオジロ。)

雲を染め、薄雲の向こうに日の出

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.6.16)
(アルツハイマー)

雲を染め、薄雲の向こうに日の出。200616.jpg

浮上したら相棒は反対方向に浮上、水面を蹴って相棒のところに駆け寄るカイツブリ。200616a.jpg

飛び回るツバメを眺め右を見たり左を見たり。200616b.jpg



『面会時間を予約した』 (2020.6.16)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「歌を歌っていて、いま泣いている。歌のドラマの中に出て来るのはあなただと思った」「何の歌?」「あなたが何処かで買ってきた歌だよ」「CD鳴らして歌を歌ったの?」「そう」「自分でCD鳴らせたの?」「出来たよ。ここには友だちもいないし、天気がよくてもつまらない」「7月5日の面会時間を予約した」「待って、忘れるから書いておく。何だった?」「7月5日の日曜日、午後1時30分からの面会を予約した」「書ける鉛筆が見つからない」「慌てないで、引出にボールペンもあったでしょう」「あった、何を書くの?」「7月5日午後1時30分から面会」「どこで?」「あんたはデイサービスの人が使う広い部屋の南側の窓の内側、私は外の駐車場に行って窓ガラス越しに話すの」「なんでそんな面倒な面会にするの? 意地悪な面会だね」「伝染病が流行っているから安全な方法を考えてくれたんだ」「ガラス越しに話すより私が外に出て行こうか?」「外出禁止だから外には出られない」「じゃああなたが入ってくる?」「面会禁止だから私は中に入れない」「窓は閉めたままで?」「窓ガラスを間にして面会するの」「声が届かないよ」「左右両側の窓を開けてあるから声は聞こえる」「抱きついたりタッチするのはダメ?」「ダメ」「そんなのないよ」「嫌なら面会を止める?」「止めて、止めて。あれ、そう言ったら止めてもいいことになっちゃう? それでもいいから顔を見せてにする。面会はいつ?」「さっき書いたでしょ」「7月5日か?」「そう」「私が玄関から出てあなたのところまで行ってもいい?」「勝手なことばかり言わないで。1時30分に私が着いたら職員さんに連絡して、職員さんがあんたを窓の内側に連れて来てくれるよ」「ああ、ややっこしい。外へは出られない。情けない面会だ」「もう終わりの時間になった。CDをもう一回鳴らしてから電話機を返してきて」「はいはい。・・・~春を愛する人は・・・~あれ、こっちかな、・・・終わりました」200616c.jpg
(ビオトープで出会ったジャックくんの散歩。お父ちゃんにスマホの使い方を教えて貰っている間、まだ冷えていた道に腹ばいじっと待っていた)

日の出と蕎麦の花を撮ろうとしていた人

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.6.15)
(アルツハイマー)

ケヤキの下の朽ちたベンチの向こう、日の出と蕎麦の花を撮ろうとしていた人。200615.jpg

ケヤキの木に重ねて撮った日の出、雲の向こうに薄ぼんやりと。「思ったより赤くならないね」と先着の人。200615a.jpg

遊歩道の木で鳴いていたホオジロ、葉陰に隠れて撮らしてくれない。諦めて立ち去ろうとしたら飛んできて、遊歩道脇の枯れ草に止まって囀るホオジロ。200615b.jpg

『いいニュースがあった』 (2020.6.15)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「眠っていたら電話だって起こされた。お昼食べた後に眠くなって寝てしまった。いま何時?」「1時10分」「たくさん寝たかと思ったが30分くらい寝ただけだ。今日は月曜日?」「日曜日」「それならよかった。みんなは食堂に残って何かしていた。あなたは何をした?」「昨日は親戚にお中元を贈った。あんたのN姉さんと妹とのMさんにも贈ったよ。MさんにはAが色々とお世話になるからね」「ありがとう」「Aから電話があって、夏の寝具を買ってグループホーム寿へ送ると言っていた」「嬉しい。まだ冬のままだから。Aは私の娘?」「そうだよ。あんたと私の長女」「どこにいる?」「八王子に住んでる」「ああ、分かった。八王子のAだね。気にしていてくれて嬉しいね」「昨日爪が伸びたと言っていたがどうした?」「そのままだよ」「職員さんと話した?」「何も言っていない」「今日は日曜だから明日職員さんに言うといいね」「忘れるから後でメモしておく」「後だと忘れるよ」「電話機を持ってるから片手では書けない」「電話機を置いて書いたら?」「置いたら声が聞こえなくなる」「明日電話した時にまた話すね。いいニュースがあった」「いい臭いがする?」「ニュースだよ。7月になったら日曜日だけ面会できる。時間を予約して、あんたは通いの人たちが使う広い部屋から窓ガラス越しに外を見て、私は駐車場からあんたを見ながら話が出来る」「ガラスがあったら話しが聞こえない」「左右両隣の窓は開けておくから声は聞こえる」「予約はどうする?」「私が予約するからあんたは待っていればいい」「いつ?」「予約したら電話で知らせる」「忘れそうだ」「予約したら職員さんが憶えていてくれるから大丈夫。ぼつぼつ時間だ。CDを鳴らしてから電話機を返してきて」「・・・ボタンを押したけど鳴らない」「電源コードは外れていない?」「もう鳴ってる」「自分で出来たね」「出来ると思う」「電話機を返してから歌ってね」「行ってきます・・・何だか知らないけど」と言った途端プツンと切れた。200615c.jpg
(鳴いて羽ばたき、草むらに向かって尾羽を広げる雄のキジ。二度三度繰り返しても現れない雌)

水生植物園跡に咲く蕎麦の花

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.6.14)
(アルツハイマー)

水生植物園跡に咲く蕎麦の花。ときおり遊歩道から回り道して花を眺める散歩の人。200614.jpg

行く手に飛んできたスズメ数羽、カメラを向けたらひと声残してパッと飛び去る。200614a.jpg

目の前で虫を見付けたムクドリ、「どうだいうまそうな虫だろう」と見せびらかす。200614b.jpg


『爪を切りたい』 (2020.6.14)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「アハハ、待ってました。私から電話しようと思ったが、どうしたら掛けられるか分からない。全くバカだね。泣けるほど分からない。爪を切りたいがどうすればいいか分からない」「爪切りは刃物だから職員さんに預けてある。職員さんに爪を切りたいって言えばいい」「言ってみる。今まで好き勝手にやってきたが、出来なくなったらどうしたらいいか分からなくて情けない。あんたはどうしてる?」「分からないことがあったらAやLに電話して聞いたり、写真の友だちに聞くよ」「何はどの職員さんに聞いたらいいかって分からない」「どの職員さんだっていい、その人が分からなければわかる人に聞いてくれる」「私は何だって自分で出来る気になって、あの人たちは何のためにいるのだろうと思って見くびっていたから、職員さんに聞こうなんて気がつかなかった。あなたに言われて気がついたよ。私も80になって、まだなっていない?」「あと五ヶ月ほど経たないとね」「自分では自立して何でも出来ると思っていたが、歳を考えると出来ないことや分からないことがどんどん増えるって分かった。人に聞く以外に方法はないものね。もっと謙虚にならないとダメだって分かった」「グループホーム寿は介護施設だから、職員さんが生活を支えてくれる。分からないことは職員さんに聞けばいい。担当が違えば必要な人に伝えてくれるから」「今まで何でも知ってるつもりで聞こうとしなかったが、やっと分かった」「ぼつぼつ時間だ。CDを鳴らして」「何で?」「歌を歌うのは頭のリハビリだから」「CDは自分で出来るよ。CDの聴き方の絵を見ればいい。あなたが見やすいところに貼ってくれた?」「私じゃない。職員さんでしょう」「・・・ほら、鳴った」「電話機を返してから歌ってね。返す時に職員さんと代わってね」「・・・今村です。主人が代わってって」「代わりました」「爪が伸びたと言っていたので様子を見て下さるよう担当の方にお伝え下さい」「分かりました」200614c.jpg
(今朝も歩いた、妻が妄想の中で歩く遊歩道。妄想の中に見る胃景色は、自分が動けば景色も動くと言っていた妻。)

蕎麦の花を撮っていたらポツリポツリと雨

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.6.13)
(アルツハイマー)

蕎麦の花を撮っていたらポツリポツリと雨、遠くまで行くのは止めて親水広場に向かう。200613.jpg

常連のカワウも来ていないカッパの噴水。手賀大橋の向こう、桟橋付近に整列していた白鳥ボート。200613a.jpg

クローバーを食べに子ども五羽を連れてきたコブハクチョウ母さん、父さんは待ちくたびれたかちょっと離れて羽繕い中。200613b.jpg


『この頃私は淋しい』 (2020.6.13)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「アハハ、懐かしい人の声だ。この頃私は淋しい。あなたは?」「淋しくない」「男だから?」「毎日あんたの声を電話で聞いているから」「私は道に迷った感じ。何が何だかわからないから適当にやっている。時間が過ぎるのを待っだけ。ここで色々やっていても、私個人のことではない。何処かに連れて行かれるが、行きたくて行くんじゃない。ついて行くだけ。私はこんなに弱かったのかと思って泣けてくる。今日はいい日だ。あなたの声が聞こえたから。もうずいぶん会っていないね」「二月末から面会禁止になったから三ヶ月半ほど会っていない」「私は面会禁止が理解できていない」「伝染病が流行って、外の人が面会に来ると病気が中にいる人に感染するから面会禁止になった」「待てど暮らせど誰も会いに来てくれない。どうして過ごせばいいか分からない。いつだったか、誰かが手賀沼に連れて行ってくれ、東の方に行って坂を登ったら私たちの家があった。あなたを呼んでも出てこない。連れて行ってくれた人が今は留守だと言った。がっかりして何もやる気がしなくなった。今はここで息をしているだけ」「今は外出禁止で外に出られないから、家に行ったのは想像だよ」「窓の外を見たら駐車場があって、その先には市役所の方へ行く道がある。手賀沼の近くで東に行って坂を登ったら家だったよ。昨日は手紙が来た」「誰から?」「横浜市保土ヶ谷区って書いてある」「Lからだね。何って書いてあった?」「中味がない」「じゃあ読んだんでしょ」「分からない。私の娘?」「次女だよ」「なんで今村じゃないの」「結婚して夫の姓にになったから」「私は男の子を産んだ?」「女二人だけ。長女がA、次女がL。時間が経つのが早いね。もう終わりの時間、CDを掛けてから電話機を返してきて」「よっこらしょ。・・・鳴ったけど聞こえる?」「聞こえる」「電話機を返してくる・・・終わりました」「もしもし、代わりました。今日はいいお顔をしていますよ」と職員さん。200613c.jpg
(空想の世界を歩いて妻が家に戻るという手賀沼沿いの小径。遊歩道を歩けば人や鳥の姿はなく、異次元の時空にワープしたような感覚。遠くでキジが鳴いて引き戻された現実の時空。)

網の前で背伸びして、鳴いて羽ばたくキジの雄

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.6.12)
(アルツハイマー)

網の前で背伸びして、鳴いて羽ばたくキジの雄。網の向こうに雌がいるのか。200612.jpg

子どもたちが食べ終えるのを待って、羽繕いするコブハクチョウ母さん。200612a.jpg

コブハクチョウ母さんがちょっと動いた隙を狙い、さっと羽毛を拾って逃げたスズメ。200612b.jpg


『何処か施設に入りたい』 (2020.6.12)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「お父さんから電話ですよってからかわれたけどあなたの顔が思い出せない」「思い出すように二人並んで撮った写真があるでしょ」「写真なんかないよ。あなたが来て探してよ」「面会禁止だから行けないよ」「大事なものだと思って何処かに仕舞っちゃったんだ。どこにある?」「知らない。もしかして鏡台の引き出しかな」「いっぱい入ってる。何が何だかわからない。自分が自分じゃないの。私は色々やりたい人だけどやる気がしない。あった、二人で並んだ写真。写真を見てこれがあなたの顔か、これが私の顔かと思ったが、写真を見ないとあなたの顔が頭に浮かばない。昨夜はひとりぼっちでどうやって生きるか考えて泣いた。一人だけでいるのは辛いこと」「二人で一緒に暮らせなくなってごめんね。私も年をとってあんたを支えるのが難しくなった」「ごめんは私の方も同じだよ。私の頭は惚けてダメだから何処か施設に入りたい」「アハハ、そこは施設だよ」「えっ、どうして?」「あんたが施設に入りたいと言って、Mさんが探してくれ、二人で見学して申し込んだのがグループホーム寿だよ」「ここは申し分ないよ。ご飯もおいしいし、色々親切に世話してくれる。あなたもここに一緒に住めばいい」「私はまだ入居の資格がないからダメ」「昨日片倉台団地で近所だったKさんから電話があった。5年前から大病を患っていたがやっと回復して、あんたはどうしているかと電話をくれた。施設に入ってると言ったらよろしくお伝え下さいって言っていた」「そう、憶えていてくれて嬉しい。だんだん人や景色の記憶が消えていく。はっきり頭に浮かぶのは生まれた家の周りの景色。観音堂に巡礼が来たよ」「もう時間になった。CD鳴らして」「さっきラジオを鳴らしたよ」「じゃあ、CDボタンを押して」「CD押して矢印も押した。・・・鳴ったから電話機を返してくる。・・・今村です。主人が電話機を返して来いって」「もしもし、電話機を返して頂きました」と職員さん。200612c.jpg
(パラパラと落ち始めた通り雨、ケヤキを傘にやり過ごす。在りし日の菖蒲祭りにモデルたち、和服姿で休んだベンチも今は朽ち果て。)

撮ろうとしたら雲に隠れる日の出

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.6.11)
(アルツハイマー)

雲間に見えた日の出をケヤキに重ねようとと欲張って移動、撮ろうとしたら雲に隠れる日の出。200611.jpg

朽ちたベンチに飛んできて、何が気になるのか、ベンチの下を覗くハシボソガラス。200611a.jpg

今朝も来ていたコブハクチョウ親子。田んぼの周りに巡らせた網が功を奏したのか、毎朝クローバーを食べに通う市民農園跡。200611b.jpg


『何の日だと思った?』 (2020.6.11)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「あー草臥れた」「なんで草臥れた?」「今日は何日?」「6月10日」「何の日だと思った? お祭りよ。今日だったか昨日だったか分からなくなったが御霊様のお祭り」「そんなお祭りの予定はないけど」「ここは学校じゃないの?」「グループホーム寿だよ」「なぜここにいるの?」「私が年をとってあんたの面倒を見ることが難しくなってきたの。あんたはグループホーム寿に入居して、私の代わりに専門のスタッフにお世話して貰ってるの」「色々やって貰っているが、そういう認識はなかった。私の生き方の信条に合致しない」「あんたは自立して生きようとしてきたが、私もあんたも年をとって出来ないことが増えた」「それはそうだ。私より二つも大きくて、年をとってもう無理だよね」「考えていたことには宗教上のこともある。私の生まれた家は神道であなたの家は仏教でしょう」「あんたとも話し合って、私たちは既存の宗教との関わりから離れ、一関の樹木葬墓地に入ることにしたでしょ。千坂げんぽうさんが迎えに来てくれて、大きくなった樹木葬墓地を案内してくれた。入り口に近い場所に埋葬場所を選んで、墓標はガマズミの木を植えることにしたね」「細かい事は忘れたが、見に行ったことは憶えている。断片的にしか景色を思い出せない。樹木葬墓地のことを思い出したら気が楽になった」「千坂さんが樹木葬墓地を立ち上げたころ、私は一関にいてお手伝いをし、千坂さんの考え方を学んだ。一生を終えたとき、自然に負荷を掛けないで、自然を守ることにしたいと話したら、あんたも大賛成してくれたね」「色々考えてくれてあって嬉しいよ。色んなごちゃごちゃが整理できたみたいでよかった」「時間が来たからCDを鳴らそう」「電源が入らない」「コンセントは?」「抜いてあった。・・・ランプを点けて、CD押して、矢印を押した。・・・そら鳴った」「電話機を返してきてから歌ってね」「はいね。・・・今村です。終わりました」と電話機を返す。200611c.jpg
草地を這うように見え隠れするキジの雄、近くに雌がいるのか鳴いて羽ばたく。)

好物のクローバーを啄むコブハクチョウ親子

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.6.10)
(アルツハイマー)

ふかふかに伸びたクローバーの葉に身を沈め、好物のクローバーを啄むコブハクチョウ親子。200610.jpg

水生植物園跡の畑に蒔いた蕎麦、背が伸びて一斉に白い花。ケヤキの向こうに目映い日の出。200610a.jpg

待っても待っても鳴かないキジの雄、辺りを見回したら草むらから雌が二羽。200610b.jpg


『目が覚めてきた』 (2020.6.10)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「目が覚めてきた」「眠っていたの?」「眠っていた。電話機を持って来て、起こしてくれた。まだ何かが中途半端な感じ。昨日と一昨日は具合が悪かった気がする」「昨日と一昨日はボケボケだった」「来てくれたの?」「電話した」「一昨日は大掃除中に大きな部屋で掃除が終わるのを待っていて、どこに来ているか分からないと言っていた。昨日は手賀沼で水泳をするから何処かに泊まりに来ていると言っていた」「昨日は何を話しているのか、自分が何を言っているのか分からない日だった」「昨日は何が何だかわからないって連発していたが、今日はまともだ」「今日は自分が言ったことを反芻できる。あなたと話していても自分が正常に会話が出来ていると思う」「今日はちゃんとしているよ」「昨日は眠っているのか目が覚めているのか分からなかったが、今日は目は覚めているって分かる」「昨日は眠りが深くて目が覚め難かったのかな」「目が覚めていても前後のことが分からなくなって、何が何だかわからなく、自分がかわいそうだった」「年をとれば誰だって不都合なことが増える。内臓が悪くなる人、手足が悪くなる人、物忘れする人とそれぞれが何処かが衰え、だんだん悪いところが増えて一生が終わる。これは誰もが通る道。老いて行くのと上手に付き合うしかない」「何とかなるよ。何とかなるけどだんだんひどくなるのは辛いことだよ。今週は切ない週だった。午前中に広い部屋で何かをしていた。何を言っても反応がなかった。トンチンカン言う人はもうどうでもいいでしょ」「トンチンカン言っても大事な人は大事な人」「嬉しいこと言ってくれるね」「ぼつぼつ時間だ。ラジオでCDを鳴らして」「いま寝転がっている。よっこらしょ。・・・ラジオのランプが点いた。CD押して矢印押した。・・・鳴ったよ。~春を愛する人は・・・~」「電話機返してきてから歌ってよ」「座っちゃったから立てない。よっこらしょ。ドアの外に出た。・・・終わりました」と電話機を返す妻。200610c.jpg
(網に囲まれた田んぼの周りを右に行ったり左に行って、背伸びしてから鳴いて羽ばたいたキジの雄。くるっと背を向け開いた尾羽。)

何日ぶりかの眩しい日の出

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.6.9)
(アルツハイマー)

何日ぶりかの眩しい日の出。200609.jpg

今朝もお気に入りの枝に陣取って囀るホオジロ。200609a.jpg

目の前を飛び、やっと止まってくれたヒメジャノメ。200609b.jpg


『プールは今週で終わり?』 (2020.6.9)
「もしもし」「は~い」「天気がよくなったね。お昼休みが終わって、寝ようと思ったら電話が来た。私たちのプールは今週で終わり?」「プール?」「私は惚けてる。手賀沼で、何だろう、水浴するのかな」「そんなことないよ。今は外出禁止だから」「ここでは誰も外出禁止だって言わなかった。誰かの手紙では見た。プールじゃないな、何だかわからなくなった。あなたは家にいて、やることがなくて暇?」「色々やることはある」「何を?」「掃除したり洗濯したり食料を注文したり」「それは普通の家事でしょ。私は手賀沼で水泳をやるために泊まり込んでるのでしょ」「そこはグループホーム寿、介護をしてくれる施設で、私とあんた二人で見学に来て入居の申込みをした」「そのことは憶えている」「今年からその施設に入居して、専門のスタッフが生活支援や健康管理をしてくれ、平和台病院の先生が訪問診療に来てくれている」「私一人だけ?」「私はまだ入居させて貰う資格がない」「あなたの施設は東我孫子から利根川の方に行ったところ?」「それはあんたが去年まで通っていたロイヤルのデイケアや和楽園のショートステイ。私は高野山の家にいる」「私がいるのは個人の家でやっている施設?」「平和台病院関連の介護施設で、グループホーム寿」「どこにある?」「市役所から坂を登って消防署近くの交差点の手前を左に入ったところ」「だんだん頭の中の地図が分かってきた。ここから広い道に出て、市役所の先を東に行って、坂を登ったら家」「玄関のチャイムが鳴った。ちょっと見てくるから待ってて」と玄関に行って戻れば、電話は切れていた。再度呼び出し、「明日も電話するね。ラジオを点けてCDを鳴らして」「ラジオは鳴ってる」「じゃぁ、CDボタンを押して」「押した。矢印を押したら鳴った」「電話機を返してきて」「・・・今村です、終わりました」「もしもし電話機受け取りました」とOさんの声。「今日はどこにいるかわからない様子でした」「お天気のせいでしょ、大丈夫ですよ」とOさん。200609c.jpg
(草刈りが終わった市民農園跡の草地、ホタルブクロの小群落だけを刈り残して。)

草苅跡のクローバーの背が伸びて食べ頃

草苅跡のクローバーの背が伸びて食べ頃

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.6.8)
(アルツハイマー)

田んぼの周りに設置した網の背が高くなって、市民農園跡に通うコブハクチョウ親子。草苅跡のクローバーの背が伸びて食べ頃。200608.jpg

花を愛でる人たちが来ないから、花の命も短めになるような水生植物園跡。200608a.jpg

ホオジロの囀りが聞こえる日と聞こえない日、今朝は耳鳴りが少なくよく聞こえた鳴き声。200608b.jpg


『ここの付き合いも疲れる』 (2020.6.8)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「いま講義を聴いている」「何の講義?」「何だか訳がわからない」「聞かなくていいの?」「聞いてもおもしろくないからいいの」「電話していてみんなの邪魔にならない?」「邪魔にならないように外に出る・・・大掃除中だから出られないって」「みんなで大きな部屋に集まって掃除が終わるのを待ってるのね」「何だか知らないが、みんなと一緒に呼び出されてここに来た」「みんなは何してる?」「テレビを見ている。あなたはどこにいるの?」「高野山の家にいる」「なんで電話したの? 久しぶりだから?」「毎日電話してるよ、昨日も、一昨日も」「えーっ、知らない。私惚けてるのかな」「忘れただけだよ」「何だか訳がわからない。毎日忘れるって変だよね」「忘れることが多くなっただけ」「じゃあ、お前みたいなのはもう要らないから別れるって言われたら困るよ」「そんなこと、絶対に言わないから大丈夫」「ここはどこ?」「あんたの部屋がある建物の中の大きな部屋。歌を歌ったり体操する部屋でしょ。いま掃除中だからみんなで集まって掃除が終わるのを待ってるの」「見てもいないのによく分かるね。ここは訳の分からないところ。テレビが点けてあって、みんなで見ている。テレビは好きじゃないから私は見なくていい。みんなと一緒にいると連れて行ってくれるから、分からないときはみんなの後をついて行くだけ。みんなの後をついて行くのは苦手で好きじゃない。訳のわからないところに入れられて、ああ、ここの付き合いも疲れるね。お昼食べて寝ようとしたらここへ連れてこられ、半分眠った状態。どこにいるのか分からない」「寝ぼけていても元気な声だと分かった」「当たり前じゃん」「明日また電話するね。自分の部屋に帰ったらCDを鳴らして、歌を歌ってね」「そうする。いまは何に焦点を合わせたらいいか分からない」「電話返してきて」「分かった・・・終わりました」200608c.jpg
(妻を連れて散歩していた頃、妻と遊んでくれたシベリアンハスキーのジャック。この仕草、おやつが欲しいとおねだり。)

ベンチの間にあったもう一本のケヤキの木

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.6.7)
(アルツハイマー)

菖蒲まつりをはじめた頃、ベンチの間にあったもう一本のケヤキの木。200607.jpg

獲物を見詰めているのか、水面を覗きじっと動かないオオバン。200607a.jpg

曇天の空に向かって囀るホオジロ。200607b.jpg


『私本来の強気で生きる』 (2020.6.7)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「やっと声が聞こえた。部屋にあったあなたからの手紙を読んで涙した。何でこんなになったか分からない。今後どう生きるか考えていた」「今は一日一日を元気で過ごすこと」「どうしたら元気になる?」「くよくよしないこと」「何が原因でこうなったか分からない」「あんたのお母さんも、S姉さんも同じ病気になった。物忘れはしてもお母さんは長生きしたし、S姉さんも物忘れしても元気。あんたもグループホーム寿に入ってから元気になってずいぶん回復した」「治るには時間が掛かるし、泣いたって治らない。私本来の強気で生きるのがふさわしいでしょ。手賀沼の風景を思い出すのが支えになっている。手賀沼を思い出し、夫や友だちの支えがあって、元気になってお礼が言いたい」「膵炎で我孫子東邦病院に入院し、再発でJAとりで総合医療センターに入院し、グループホーム寿に入居してからも、友だちのAさんにはお世話になったね」「東邦病院は憶えていないが、取手は少し憶えている。ここに来たことは憶えていない。ここに来てから、誰かが来てくれたことは少し憶えている」「平和台病院の訪問診療の先生に診て貰ってから、膵炎も再発していないし、去年苦しんだ目眩や吐き気も治ったね。グループホーム寿にいれば専門のスタッフの人たちが生活支援や健康管理もしてくれる。別々に住んでいても、面会や外出が解禁されたら日帰りで家に来ることも出来るし、私も面会に行ける」「わかった。こんなになってごめんね」「あんたは何も悪くない。安心していて」「今を受け入れて元気になるよ。あなたも元気でいてね。私はあなたを放り出してあの世へは行けない。元気になるよ」「もう時間だ。CDを鳴らしたら電話機を返してきて」「ラジオを点けてCDを押した。矢印も押した。・・・鳴ったから行ってくる。ドアを開けた。まっすぐ行くね。・・・今村です。終わりました」「もしもし、電話機受け取りました」200607c.jpg
(昨日から短い棒を咥えて遊ぶカラス二羽。何がおもしろいのか咥えた棒を互いにやりとり。)

友だちがみんな元気だった頃のノスタルジア

「撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.6.6)
(アルツハイマー)

朽ちたベンチ、菖蒲園があった頃の名残の花。友だちがみんな元気だった頃のノスタルジア。200606.jpg

たった一羽で潜水を繰り返すカイツブリ、昨日まで一緒だった相棒はどこへ行った?200606a.jpg

ふと見付け、思え出せないクモの名前。「アイウエオカキクケコ・・・ン」まで呟いたが出てこない。名前が気になって気になって苛立ち、デビューしたてのスマホは言うことをきかず、これが加齢の惚けなのか? 友に教えを請いやっと「ササグモ」が蘇る。200606b.jpg


『な~んだ、びっくりした』 (2020.6.6)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「な~んだ、びっくりした。お昼食べた後、眠った。ちょっと寝ただけでもたくさん寝て寝過ぎたかとびっくりしたら、電話だって持って来てくれた。びっくりしたからもう目が覚めた」「目が覚めてよかった」「なんで?」「目が覚めないと惚けてるもの」「アハハ、まだ頭の中がごちゃごちゃしてる。今どこにいる?」「家」「窓の外の駐車場の先、市役所の方へ行く道で信号を渡って坂を登ったところ」「信号を渡ってまっすぐ行ったら手賀大橋を渡って沼南へ行くよ。信号を左に曲がらなきゃ」「信号を渡ったら家まで着いちゃう。いつも曲がるのが当然と思っているから曲がる意識がないんだ。頭の中じゃなく、実際行くときは分かると思う。現実と夢の中は違う。今は夢の中だ」「目が覚めたらちゃんと分かるさ」「眠った後は惚けてる。分からなくなって戻るとごちゃごちゃで何が何だかわからなくなる。あなたがカメラを構えてにやにや笑ってからかおうとするのが頭の中に出てきた。顔が写るの何だったっけ?」「鏡台」「そう。その横に電話が置いてある」「電話じゃなくラジオでしょ。電話はあんたが手に持って、耳に当てて聞いてるでしょ」「両方音が出るから一緒かと思った。じゃあ電話機はいつもどこにあるの?」「事務所。事務所から借りているんだ」「だからさっきの人が持って来てくれたのか」「そう。話し終わったら事務所に返さなくてはいけないの。こんなこと話してる内に時間が過ぎちゃった」「変なことばかり言う電話でごめんね」「あんただけのせいじゃない。CD鳴らして」「電源押して、CD押したが変わらない」「三角の矢印を押した?」「押したけど・・・鳴った」「もう一人で出来るね」「出来たり出来なかったりだ」「電話返して来たら歌って。頭のリハビリだ」「今、靴を履いてる。・・・あっ、人が来た。終わりました」「もしもし、電話機預かりました」「ありがとうございました」200606c.jpg
(ホオジロの定位置にムクドリが二羽が仲睦まじく。)

薄雲の向こうに瞬時の日の出

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.6.5)
(アルツハイマー)

薄雲の向こうに瞬時の日の出。200605.jpg

昨日と同じ田んぼの畦道で鳴いて羽ばたくキジ。200605a.jpg

田んぼに飛び込んでは舞い上がるムクドリたち。200605b.jpg


『明日は帰る』 (2020.6.5)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「嬉しい、アハハ。お昼食べて、寝たら眠っちゃった。窓の外の駐車場の向こうは市役所の方に行く道、手賀沼の前で東に行って坂を登れば家。明日は帰る」「まだ帰れないよ」「中国の病気でか。嫌だね。ここは私が住んでいてもいい家、何人住んでいる?」「お仲間は9人、いつも一緒に食事をする人たち」「あなたは好きなときに来て会えるの?」「今は面会禁止」「これも中国から来た病気のためか。家に帰るのもダメ?」「今はダメ。伝染病が治まって面会や外出が解禁になったら、家に来て子どもたちも来て一緒に食事したりお話しできるよ。夕方になったら戻って、夜は自分のベッドに寝るの」「家に泊まっちゃダメ?」「寝る場所が変わると、せっかくよくなったのにまた睡眠障害になっても困るし、もしあんたの調子が悪くなっても私一人では助けられないもの」「そうだったね。その都度出来ること出来ないことを言ってくれないと忘れちゃう。言われたらあなたの言う通りにする。私は家に行っても夜は戻って来て自分のベッドで寝る。自分の体、あなたの体を考えて出来るだけ長く暮らせるようにする。それは分かっているが、直ぐ忘れちゃう」「昨日夕方、立て替えて貰った香典のお金が着いたとあんたの妹のHさんから電話があった。ご主人のKさんは脳梗塞になって、家の中だけの生活で、自分でお風呂に入ったり家の中を歩くことは出来るが、病院やトコヤへの外出はHさんが車で連れて行っていると聞いた。Hさんも一人でKさんを支えて頑張っている様子だった」「Hも大変だね。一人で頑張っているんだ。偉いね」「ぼつぼつ時間だからCDを鳴らして。鳴ったら電話機を返してきて」「ラジオは点いてるよ」「じゃあCD押して」「押してから矢印を押した。・・・鳴ったよ。・・・~春を愛する人は~・・・歌ってると涙が出ちゃう」「電話機返してきてから歌ってね」「・・・終わりました」「もしもし、電話機返して頂きました」と職員さん。200605c.jpg
(木漏れ日の射し込む草むらにホタルブクロウの花。)

クローバーを啄むコブハクチョウ親子

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.6.4)
(アルツハイマー)

草苅跡に伸び始めたクローバーを啄むコブハクチョウ親子。200604.jpg

大きなケヤキの下の朽ちたベンチ、座って花を見る人も来なくなった水生植物園跡。200604a.jpg

「今朝は鳥が少なくてホオジロさえも鳴かない」と言ったら、指さして「あそこで鳴いてる」と散歩の人。聞こえるのは耳鳴りだけ。200604b.jpg



『火木土はここに来るの?』 (2020.6.4)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「はーい」「自宅ですか?」「自宅にいる」「自宅兼仕事場?」「会社は20年前に退職し、毎日が日曜日だよ」「じゃあ怖いものはないね」「あるよ。あんたが病気をすること」「その要望に応えるのは難しいね」「昨日プリントを頼まれた二人の写真を届けた」「着いた。大きい厚紙に貼ったのは手賀沼コンテストのパンフレットの横に置こうと考えていた。前に貰ってなくした写真と同じだね。私とあなたが並んでる。サインペンで書いた手紙はいま読んだ。お昼食べて戻ったら手紙と写真が来ていて、どうして着いたか不思議に思った」「昨夜プリントして、今朝グループホーム寿の玄関前に行って、Oさんに電話して、玄関の前で渡した。市役所から高齢者肺炎球菌感染症予防接種の案内が送られてきたのでそれも届けた。訪問診療の時にやってもらえるとのことだった」「その手紙は知らない」「Oさんから先生に渡してくれるから大丈夫。それとティッシュ5箱も預かってもらったから、なくなったら職員さんに頼めば出してもらえるよ」「そんなこと知らなかったからびっくりして心臓がパンクしそうだ。こんなによくやってくれるから元気にならないとダメだね。そう言っている間に泣けてきた」「泣かないでよ」「もう泣くのは止めます。弱いねぇ、私は」「昨日、ラジオのボタンを押し間違えてCDを鳴らせなくなって職員さんに見てくれるように頼んだけど治った?」「憶えていない。やってみるね。・・・電源ボタンを押したらランプが点いた。ラジオが鳴ってる」「CDボタンを押して」「押したら音が止まった。三角の矢印を押した。・・・歌が鳴ったよ。聞こえる?」「聞こえる。明日も電話するから電話返してきて」「火木土はここに来るの?」「火木土はあんたがロイヤルのデイケアに行っていた曜日。もう通っていないよ」「そうか。あんたはここに来るの? あっ、伝染病でダメか」「電話機返してきてから歌ってね」「切らずにそのまま返すよ。・・・今村です。終わりました」と電話機を返す妻。200604c.jpg
(二羽同時に浮上したカイツブリ。今朝も仲良く繰り返す潜水。)

時期がくれば花を咲かせる残った菖蒲

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.6.3)
(アルツハイマー)

水生植物園が手入れされなくなって、荒れ地になった菖蒲園跡。時期がくれば花を咲かせる残った菖蒲。200603.jpg

虫が湧いたのか田んぼからおびただしいムクドリの鳴き声。電線に一休みしに来るムクドリたち。200603a.jpg

曇天の空を見上げて囀るホオジロ、今朝もいつもと同じ木に。200603b.jpg


『昨日はプールへ行った』 (2020.6.3)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「しばらくぶり、あっ、毎日だったね」「そう」「昨日はプールへ行った」「水着を持っていないのに?」「ああそうか。今は惚けてる。眠ってはいなかったが寝ようとしていて、頭が混乱している。昨日は手賀沼コンテストのパンフレットを壁に貼った」「そうだったね。こっちでは今朝からダスキンの植木屋さんが剪定をしたり庭の草取りをしている。私が水やりをサボってニシキギとムクゲが枯れた」「私が行ってよければやってあげる」「今は外出できない」「そうだね。何でプールに行ったんだろう。訳がわからない。さっき、手賀沼が岩滑の前にあると思った」「手賀沼は我孫子だよ」「私、惚けた。小さい字は読む気がしない。伝染病が治まって外へ出たら私も回復すると思う。手賀沼コンテストの写真は頭にこびりついていている景色だが、今は行けない」「伝染病が治まったら一緒に行こうね」「兄弟で行くのはいいね」「私らは夫婦だよ」「そうか、あなたは私の夫だった。何でか手賀沼の写真コンクールのパンフレットが気になる。だからベッドにいても見えるところに貼ってある。その手前にラジオがある」「頭のリハビリになるから歌うといいよ」「どこへ行って歌えばいい?」「自分の部屋でCDラジオと一緒に歌えばいい」「ソニーのラジオはあなたのプレゼントだった。私はこれで終わりにしたくないから、伝染病がいつなくなるか窓の外の景色の変化を見ている。それでよくなると思う。伝染病でもじゃもじゃになった頭を整理したい」「さて、CDを鳴らしてから電話機を返してきて」「手が滑って何かを押した」「最初からやり直して」「やっぱりダメ」「電話機を返し、係の人に代わって。見てくれるようにお願いするから」「・・・主人が代わってって」「もしもし、代わりました」「済みません、CDをうまく鳴らせられないから見てやって下さい」「分かりました。見てきます」200603c.jpg
(何年か前妻と散歩した遊歩道、標識を見た妻が「ハコネウツギなの? 紅白だからゲンペイウツギって思っていた」と言ったのを思い出す。)

対岸の丘も消えた霧の朝

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.6.2)
(アルツハイマー)

対岸の丘も消えた霧の朝、うっすら見えた日の出もまた霧か雲の中へ。200602.jpg

水生植物園跡に昔を偲ばせる菖蒲が咲いた。200602a.jpg

飛来して田んぼに佇むアオサギが二羽。200602b.jpg


『鏡台は送り返さないの』 (2020.6.2)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「「はいはい」「部屋の中の飾りを直している。あなたの手賀沼写真コンテストの写真のパンフレット、CDの聞き方の絵、小さな額が重ならないようにしていた。その前のテーブルにCDラジオがある」「お昼は食べたよね」「食べた。夕食も食べた」「夕食はまだ」「だって暗いもの」「天気が悪いから。まだ1時ちょっと過ぎだよ。あんたと私が二人並んだ写真が出てきたら壁に貼っておいて」「二人で撮った写真はないよ」「鏡台の引き出しにもなかった?」「私じゃ見つからないから、あなたが来て探して」「来てと言われても行けないよ」「そうだね、伝染病でダメだった。原本はあなたが持ってるでしょ、もう一度作って」「プリントして送るよ。送っても何処かに仕舞い込まず壁に貼ってね」「大事だから仕舞うと出てこなくなる。私は困った人だね。鏡台は送り返さないの?」「どうして?」「だって家に帰るでしょ」「今はそこがあんたの家」「帰ったらダメ?」「ダメ」「どうして?」「私たち二人は年を取って出来ないことだらけ。私はあんたを病院に連れて行くのも難しくなったし、あんたも施設を探してと言って、ケアマネージャのMさんが探してくれてたグループホーム寿を見学して申し込んだ。空きが出来て今年から入居出来た。そこは食事、洗濯などの生活支援、健康管理や訪問診療の先生が来てくれて病院に通わなくてもいい。家に帰ったら私が介護しなくてはならないが、出来なくなってごめんね」「年だから仕方がない。ごめんはこっちだよ。あなたが私を守るためにしてくれたのに、ここを出ると言ってはダメだね。直ぐそれを忘れちゃう。自分が自分に困って泣けてくる」「泣かないで。歌を掛けよう」「歌いたくない」「歌えば気分が楽になる」「ランプを点けた。CDを押したが音が出ない」「三角の矢印を押す」「押した。・・・音が出た。電話機返してくる」「戻ったら歌ってね。頭のトレーニングだよ」「・・・終わりました」「はい、電話機受け取りました」と職員さん。200602c.jpg
(青空の下で羽繕いに余念がないホオジロ。)