橙色が一瞬に塗り替えられてブルーの水面

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.11.23)
(アルツハイマーになった妻)

地平線の空の色に染まった沼に風が吹き、橙色が一瞬に塗り替えられてブルーの水面。201123.jpg

風が強まりブルーの沼、風の当たらぬ岸辺沿いに移動するコブハクチョウ親子。201123a.jpg

ハシボソガラスが飛び去れば、透かさず飛んできたツグミとムクドリ。201123b.jpg

『来てくれてありがとう』 (2020.11.23)
昨日午後の妻との面会、面会票を記入して提出。駐車場で待つと白いクマのぬいぐるみを持った妻が現れ、職員さんに渡された眼鏡をかけて網戸を開けた。風に吹かれもじゃもじゃになった髪を片手で直し、クマにお辞儀をさせ「来てくれてありがとう」「人形劇うまいね」「大学の時に始めたの。このクマさん、昨日旅行に行く前に誰かがくれた」「Aさんに頂いたんだ」「そうか、Aさんはいつも気にしてくれてありがたいね。まだお礼を言っていない」「昨日はどこへ旅行に行ったの?」「行ったよ。えーとね、バスに乗って行った。朝から行ったが泊まりはしなかった」「昨日電話したときは自分の部屋にいた。昼寝して夢を見たんじゃない?」「夢かもしれない。でも行ったよ。玄関前からバスに乗って前に座った。酔わなかったよ。どこへ行ったか忘れたが、ちゃんと帰ってきて部屋にいた」「今まで昼寝して寝てたんじゃない」「そうかもしれない。眠い」「そんなところで眠っちゃ嫌だよ」「眠らない。遠くが見えない」「老眼鏡かけてるからだ」「外したら見えたけど眩しい。年を取ると忘れることが多くなる。私も80になったから。あなたは90?」「82だよ」「おかしいんじゃないお父さんが二つしか年が違わないって」「あんたのお父さんは幹さん、私はお父さんじゃない、あんたの夫だよ」「夫だよね。あなたの奥さんは元気?」「私の奥さんはあんたじゃないの」「えっ、私はあなたの奥さんか」「マスクしてるから私のことが分からなくなった?」「分かるよ。声で分かる。人間、年を取ると色んなことを忘れる。どんどん忘れてしまって、忘れることまでなくなるのは死ぬときだ。人生っておもしろい。記憶がどんどんなくなっていくのは、自分の心がどんどんなくなっていくってことだね。それは淋しいよ」「昔のことを話したり、昔の写真を見ると忘れたと思っていたことも思い出すことがある。また来週来るよ」「来てくれてありがとう。気をつけて帰ってね」と、走りだした車に手を振っていた妻。201123c.jpg201123d.jpg

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