雨が静かに降る朝は無彩色、心の中まで雨が降る

撮影ノート『手賀沼有情』 (2021.3.13)
(アルツハイマーになった妻)

雨が静かに降る朝は無彩色、心の中まで雨が降る。210313.jpg

最近広場から子どもたちの元気な声が聞こえないのはコロナのせいかと思ったが、こんな看板も影響しているのだろうか。210313a.jpg

街灯の下、雨に濡れて咲くコブシの花。スズメもツグミもムクドリも来ていない広場。210313b.jpg


『ここを終わりにする』 (2021.3.13)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「どこにいる?」「家」「高野山の家?」「そう」「ここを終わりにするのでお礼の手紙を職員さんに渡した」「どうして」「いつまでもいると迷惑が掛かるから引退する」「どこへ行くの?」「そこまでは考えていなかった。自分で探す」「あんたは今グループホーム寿にいる。ここだって入るのは大変だった。私と一緒に住んでいた頃病気がちになって、私はあんたの介護をしきれなくなった。あんたもこのままでは共倒れになるから施設に入りたいと言って、ケアマネージャのMさんに探してもらって、グループホーム寿をあんたと私が見学して申し込んだ。直ぐには入れず去年1月に入居できた。規則正しい食事や介護、訪問診療の先生の診察を受けてあんたはすっかり元気になった。グループホーム寿はいつまでいてもいいんだよ」「私はどうすればいいの。いつまでも世話になっていたら迷惑を掛ける。一人で死ぬしかないと思った。ここをやめてからどうするかまで考えていなかった。自然に消えると思った。私はバカになって、いいことをするつもりで手紙を渡して、清々しい気分になってあの世へ行けると思った」「死ぬのはそんなに簡単じゃない。あんたが死んだら私は悲しい」「私は何ってバカなことをした。今日はこれで最後だと思って手紙を渡した。そうすれば死ねると思った」「もう心配しないで、私がちゃんと引き取って取り消すから」「私はおばかさん。お父さんに相談すればよかった。お父さん、取り消すように頼んで」「私がちゃんと引き取ったからもう心配しないで」「私は死にたいとは思っていない。バカになっていつまでも迷惑を掛けたくない、お父さんを苦しめたくないから夫婦を早く終わらせたい。死ぬ時は、後はよろしくねというくらいに思った。だから死ぬしかない」「死んだら私は辛い」「本当は私が辛いから死にたい」「もう心配しないで。明日も電話する」「待ってる」「時間だ、CD鳴らして」「・・・鳴ったから電話返してくる」210313c.jpg
(「手賀沼だって近いが出て行けないから遠い」と呟いた妻。今朝の手賀沼を見せたら、寂しいと涙を流しそうな沼。)