上空は薄雲でも、地平線高くまで厚い雲

撮影ノート『手賀沼有情』 (2021.3.12)
(アルツハイマーになった妻)

上空は薄雲でも、地平線高くまで厚い雲。日の出はなさそうな空模様。210312.jpg

岸辺のヤナギが急に輝き、振り返れば厚い雲から出て薄雲の向こうに日の出。210312a.jpg

木の天辺に膨らんだ芽を啄むシジュウカラ。210312b.jpg


『方向が分からない』 (2021.3.12)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「午前中が終わったばかりでも太陽が部屋に入らない。私、方向が分からない。どこから太陽が入るか見当が付かない」「午後だから太陽は西へ行く。部屋の窓は東向きだから日は入らない。窓の外の垣根の向こうに陽が当たって明るくなる」「ここには冷たい風が来る」「窓は開いていない?」「さっき開けたが閉めた」「エアコンは?」「点いているけど風が冷たい」「職員さんに見て貰おう」と職員さんにエアコンのチェックをお願いした。部屋は暖まっていて風だけが出ていたので風を止めたと職員さん。妻に代わると「あっちの部屋は陽が当たっていた。外に出れば日向ぼっこできる。あなたは家にいるのね、陽は当たる?」「南側の窓からは日が入っている」「いいな、私は引っ越したい」「あんたの部屋だって午前中は日が入る」「だって私は午前中に部屋にいない」「何をしてた?」「もう思い出せない」「午後西日が入ってくると夏は辛い」「そうだね。日の入りは廊下側だね」「そう」「そういうことが分からなくなった。部屋の中に一人でいるのは辛い。お父さんに会いたい。誰だっていいから話したい。私って一人でいられない性分だね。私の部屋には太陽が当たらない。太陽はいい友だちなのに。窓の外を見て太陽はどっちか考える。それが分からないと辛い。死ぬわけではないからここで頑張る。私のお母さんは田舎にいる」「20年以上前に亡くなった」「私の故郷は掛川市岩滑、私とお父さんは別々だけど我孫子市だね」「そう」「お父さんからの電話は滅多にないから色々言いたい」「毎日電話してる」「知らない。悪い娘だね。娘は私の子どもたちだ。私は母親、お父さんも父親、あなたはお父さんじゃなく私の夫。手賀沼だって近いが出て行けないから遠い」「毎日電話する」「お父さんは近くにいても話しだけでは遠い。私の頭に景色が浮かばない時は何も分からなくなる。その時はごめんね」「時間だ。CD鳴らして」「・・・鳴った。電話返してくる」210312c.jpg
(テレビのアンテナから民家の庭に飛んだヒヨドリ、庭木の隙間から覗けば梅の小枝に。)