暗いオレンジ色に染まった地平線沿いの雲間
撮影ノート『手賀沼有情』 (2021.1.22)
(アルツハイマーになった妻)
暗いオレンジ色に染まった地平線沿いの雲間。
明るくなり始めた沼、霧が出て浮き上がって見えるネコの木。
空と沼を赤く染め、対岸の雲から登る日の出。
『私はどこにいるの?』 (2021.1.22)
昨日午後の妻との電話、泣き声で「もしもし」「は~い」「今どこにいる?」「家、直ぐ近く」「直ぐ近くって私はどこにいるの?」「グループホーム寿」「分からない」「介護施設にいる。一昨年病気がちになって、私があんたの介護を出来なくなった。あんたはグループホーム寿に入って食事、洗濯、掃除、入浴、体操などの生活の面倒を見てもらい、訪問診療の先生が来て診察してくれている」「今私が住んでいるのは手賀沼の近く、・・・分からない」「昼寝してた?」「寝ていた」「まだ目が覚めていないね」「窓の外に駐車場が見える」「駐車場の右の道を真っ直ぐ行って、広い道に出たら右に行くと市役所入り口、その先の信号を左に行って、Aさんの家の前から坂を登る」「登ったら私たちの家がある。はっきり場所と道路の位置関係が分かって泣けてきた。窓の外には駐車場、真っ直ぐ行くと広い道、手賀沼の北側の道を東に行くと神社がある。神社の手前の坂を登ると私たちの家。早く治って外を歩きたい」「目が覚めてきたね」「駐車場の横を通って歩いことがある。私はいつ外へ出られるの?」「今はコロナが流行っていて出られない」「ああそうだ、ラジオが言っていた。お父さんが迎えに来て家に帰れないの?」「そこにいて、コロナが収まったら日中に外出して家に戻り、夕方にグループホーム寿に戻ることは出来るようになる」「ずっとはダメ?」「ずっと家に帰るとあんたの介護を私がやらなくてはならない。それが出来なくなったからあんたはグループホーム寿に入った」「お父さんも歳だから無理だね」「あんたはそこに入ってから、目眩、吐き気、頭がガンガンの苦しみが治って、膵炎も再発していない。そこで生活の面倒は見てくれるからずっといていい」「私だって治りたい。頭の中で色んなことが繋がらない。いつの日か繋がると嬉しい」「毎日電話する」「お父さんの声を聞いて、話しからお父さんだと想像出来る話になると嬉しい」「時間になった。CD鳴らして」「・・・鳴った。電話機返してくる」
(仄暗い斜面林の中、センダンの実を啄むツグミ。)
(アルツハイマーになった妻)
暗いオレンジ色に染まった地平線沿いの雲間。

明るくなり始めた沼、霧が出て浮き上がって見えるネコの木。

空と沼を赤く染め、対岸の雲から登る日の出。

『私はどこにいるの?』 (2021.1.22)
昨日午後の妻との電話、泣き声で「もしもし」「は~い」「今どこにいる?」「家、直ぐ近く」「直ぐ近くって私はどこにいるの?」「グループホーム寿」「分からない」「介護施設にいる。一昨年病気がちになって、私があんたの介護を出来なくなった。あんたはグループホーム寿に入って食事、洗濯、掃除、入浴、体操などの生活の面倒を見てもらい、訪問診療の先生が来て診察してくれている」「今私が住んでいるのは手賀沼の近く、・・・分からない」「昼寝してた?」「寝ていた」「まだ目が覚めていないね」「窓の外に駐車場が見える」「駐車場の右の道を真っ直ぐ行って、広い道に出たら右に行くと市役所入り口、その先の信号を左に行って、Aさんの家の前から坂を登る」「登ったら私たちの家がある。はっきり場所と道路の位置関係が分かって泣けてきた。窓の外には駐車場、真っ直ぐ行くと広い道、手賀沼の北側の道を東に行くと神社がある。神社の手前の坂を登ると私たちの家。早く治って外を歩きたい」「目が覚めてきたね」「駐車場の横を通って歩いことがある。私はいつ外へ出られるの?」「今はコロナが流行っていて出られない」「ああそうだ、ラジオが言っていた。お父さんが迎えに来て家に帰れないの?」「そこにいて、コロナが収まったら日中に外出して家に戻り、夕方にグループホーム寿に戻ることは出来るようになる」「ずっとはダメ?」「ずっと家に帰るとあんたの介護を私がやらなくてはならない。それが出来なくなったからあんたはグループホーム寿に入った」「お父さんも歳だから無理だね」「あんたはそこに入ってから、目眩、吐き気、頭がガンガンの苦しみが治って、膵炎も再発していない。そこで生活の面倒は見てくれるからずっといていい」「私だって治りたい。頭の中で色んなことが繋がらない。いつの日か繋がると嬉しい」「毎日電話する」「お父さんの声を聞いて、話しからお父さんだと想像出来る話になると嬉しい」「時間になった。CD鳴らして」「・・・鳴った。電話機返してくる」

(仄暗い斜面林の中、センダンの実を啄むツグミ。)
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