ネコの木の耳や腰の辺りに残っていたサギたち

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.10.11)
(アルツハイマー)

ネコの木の頭と背中から一斉に飛び立ったサギの群、まだ暗くて撮れない。少し明るくなって撮れば、ネコの木の耳や腰の辺りに点々と残っていたサギ。201011.jpg

市民農園跡の埋立地の杭にもサギの群。コブハクチョウが岡発戸新田の釣堀前へ向かうころは、残っているサギは僅か十数羽。201011a.jpg

誰もいないケヤキの木とソバ畑の周り、「近くで見たい」と階段を下っていった散歩の人。201012b.jpg

『眠っていた。今何時?』 (2020.10.11)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「眠っていた。今何時?」「1時11分」「お昼ご飯の後だな。食べていつ寝たか憶えていない」「寝転がってる? 起きて」「起きた。耳が遠い」「聞こえてる?」「全然聞こえてる。一生懸命目を開けようとしてる。窓の外は雨だから暗い。私、ダメになったからもう死んでもいい」「いやだよ。私のためにも生きてよ」「そうか、お父さんのためなら生きなきゃ。昨日は家に行って留守番した」「私はいなかったの?」「いなかった」「外出禁止なのに抜け出したの?」「どうして出ちゃダメ?」「伝染病が流行っているから」「そうか。伝染病か。私は昨日何をしていた?」「去年も台風が来たとき空想したり夢を見て、それが現実と区別できなくなった。今、台風が来てる」「寝てたから夢を見ていたのかな。頭ぽんぽん叩いたら痛い。お尻ペンペンの方が痛くない。あはは」「また寝転がった?」「ベッドにお尻を下にして頭を上に向けてる。あはは。こんなこと言ってると目が覚める」「台風が近づいて、昨日は悲観的な空想をしていたようだった」「今日は悲しくないよ」「もうじき台風が消えるからかな」「家に行って留守番したのは昼寝の夢か。私眠ってた?」「さっき、昼寝していて電話だって起こされた」「昼寝したか忘れた。そんなことまで忘れて、私、死んだ方がまし」「死んだら私がひとりぼっちになっちゃう」「ああ、そうか。私はあなたを元気にするために生きてなきゃならなかった。こんなこと言ってると劇のセリフみたい」「あんたは大学のころ人形劇をやって伊豆の学校を回っただろう」「えっ、・・・人形劇やった。夏休みに学校を回った。何で知ってた?」「アルバムの写真を見た」「写真どこにある?・・・ラジオの台の下にいっぱいあった。片倉台団地を見に行った写真、子どもを抱いた写真、・・・もっと下かな」「時間になった。明日は面会に来るよ」「嬉しい」「CD鳴らしてから電話機返してきて」「・・・鳴った・・・ありがとう。あはは」と職員さんと話す明るい声。201012c.jpg
(パンを買いに行こうとしたらバッテリーが上がってしまった車、昨日朝からルームランプを点けたまま、「ドジやなぁ」と笑っているように見えたシュウメイギクの花。)

じっと動かない残った半数のサギたち

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.10.10)
(アルツハイマー)

埋立地の杭の上にダイサギとチュウサギが混じった群。雨だっていつものように飛び立った約半数、じっと動かない残った半数のサギたち。201010.jpg

小降りになって飛び始めた残っていたサギたち。桃山公園や水神山古墳を越えてどこへ行く?201010a.jpg

ザアと来た雨にケヤキの木もソバの花も霞む。201010b.jpg


『私の夫ですか?』 (2020.10.10)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「どなた?」「詮です」「私の夫ですか?」「そう」「この近くにいる人?」「はい」「声が違うから一瞬誰かと思った。ここに一番近いあなたからの電話を待っていた。今日帰るのに、自分では帰れないから、お迎えが来ると電話連絡があるだろうと思った。お金がないし、来なければもう一泊すると誰に知らせようかと思っていた」「あんたはグループホーム寿に今年1月からずっといて、帰らなくてもいい。お金も心配しなくていい。毎月支払っている」「知らなかった」「今いるのはあんたの部屋。ベッドもある。鏡台もある」「鏡台はAが発送してくれた。私は病気が多かったからここに入ったって誰かに聞いた」「去年、あんたは病気がちだった。私が十分な介護が出来なくなって、あんたと二人でここを見学して申し込んだ。満室だったので待って、今年1月に入所出来た。私が十分に介護でなくてここに入った。ごめんね」「ごめんねはないよ。私があなたの面倒を見るつもりだったのに、こっちがごめんだよ。家は坂を上った所。土地を探しに来てこに家を建て、子どもは小学校と中学校に通った。玄関前に駐車場、中に入ると左にお風呂とトイレ、居間の左に台所、奥に茶室。二階に私とあなたの寝室もあった。頭の中にある家に帰りたくて、わんわんとは泣かないけど心で泣いていた。誰か来てくれないかなと思っていた」「二人で暮らしても、私が介護出来なくなって、二人で見学して申し込んだ希望の所に入れた」「私は邪魔で追い出されたとは思っていないよ」「家にいて病気がちだったのがここに来て元気になった」「悪かったこと、よくなったことの自覚はない」「以前もそうだったが、あんたは台風が近づくと悲しいことばかり考える。もうすぐ治るからね」「電話くれて嬉しい。生きる力が出てきた」「明日も電話する。CDを鳴らしたら電話機を返してきて」「・・・鳴った・・・」、無言で電話機を返し「電話機受け取りました」と職員さんの声。201010c.jpg
(色づくのを楽しみにしていたカラスウリの実、蔓をたぐり寄せてもぎ取られ、残ったのは二つだけ。地面にはおびただしい蔓。)

ザアと来て、雨を降らせて沼を渡る低い雲

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.10.9)
(アルツハイマー)

ザアと来て、雨を降らせて沼を渡る低い雲。201009.jpg

傘を叩く雨粒の後ろから拍手を打つ音、愛宕大権現の碑に祈っていた散歩の人。201009a.jpg

通り雨が遠ざかれば、くっきりと見え始めた釣堀前に繋がれた小舟。201009b.jpg

『どこが悪かったの?』 (2020.10.9)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「ご主人の詮様からって言われた。どこにいるの?」「Aさんの家から坂を上ったところの家」「私の家だ。二人で建てた家?」「そう」「一人で?」「一人でいる」「いいなぁ。私も終わったらいてもいい?」「何が終わったら?」「身体の悪いところが治ったら。なんで私はここで寝ている?」「去年あんたは病気がちで私が介護していたが、十分な介護をできなかったので、私の代わりにグループホーム寿で介護してもらっている」「私はどこも悪くない。どこが悪かった?」「目眩や吐き気、頭がガンガンして何度も病院に行った。去年の夏には膵炎になって、救急車で東邦病院に入院した。今年の正月にも膵炎が再発してJAとりで総合医療センターに運ばれて入院した」「なぜ私はここにいいるの?」「去年の夏、私があんたの介護を十分出来なくて、あんたは施設に入りたいと言った。二人でグループホーム寿を見学して良い所だから申し込んだ。満室なので待って、今年1月からここに入居できた。正月にあんたの入居の仕度をしにAとL二人の娘が来たら、あんたは嬉しくて食べ過ぎた。娘たちが帰った後で膵炎を再発して入院した」「おばかさんだったねぇ」「入院中に色んなことを忘れ、ここに入所したのも憶えていなかった」「全部忘れたのじゃなく、何かの拍子に思い出すこともある」「ここでは食事や洗濯などの生活面、訪問診療の先生の診察もある。目眩や吐き気、頭がガンガンするのはなくなったし、膵炎も再発していない」「何が原因だった?」「膵炎は分からないが、目眩や吐き気などは、体質が変わって、背中に貼っていた薬の副作用だったかもしれない」「私と別に暮らしてあなたは助かってる?」「助かってる。同じ屋根の下じゃないが、お互いに生き延びられる。近くにいて電話も出来るし、面会も出来る」「あなたは苦労したね」「時間になった。CD鳴らして」「・・・鳴った」「電話機返してきて」「・・・今村です。電話終わりました」201009c.jpg
(また降り始めた通り雨、誰もいない赤と白のソバ畑の前。)

寂しさが雨粒に乗って落ちてくる沼の夜明け

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.10.8)
(アルツハイマー)

寂しさが雨粒に乗って落ちてくる沼の夜明け。201008.jpg

誰もいないケヤキの周りのソバ畑、ふと「雨に濡れたソバの花を撮りに行こう」と思った。201008a.jpg

ケヤキの木と、赤と白のソバの花。これに日の出を入れて撮ったであろう昨日朝のカメラマンたち。濡れた草が踏みしめられていた撮影の跡。201008b.jpg


『昨日は病気になった』 (2020.10.8)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「昼寝しにベッドへ入っていた。昨日は病気になった。夜になって吐いて、薬を飲んで落ち着かせた。胃の気持ちが悪かったが眠って、今朝起きたら治っていた。昨日、家に帰りたいと言ったら今は夜だからダメだとか言われた」「今日、ご飯は食べた?」「お昼ご飯を食べて部屋に戻って寝た」「朝ご飯は?」「食べた。午前中は何か手伝うことがあるかと思って待っていたが何もなくてゆっくりした。部屋に戻ったら昼ご飯だと呼びに来た」「ちゃんと食べた?」「おいしく食べた」「治ってよかったね」「昨日は色んなことがあって気持ちが休まらなかった。お父さんと話していると安心していられる」「私はあんたのお父さんじゃなくて夫だよ」「分かってるけど、ずっとお父さんって言って慣れているから」「昨日電話したとき、あんたは私があんたの夫であることや子どもたちとの関係も分からなくなっていた。そのことばかり考えてパニック気味だった。私は子どもたちのお父さん、あんたの夫だと分かって落ち着いたようだった」「昨日電話した? そんなこと話したのも知らない。昨日の夕方は地獄だった。部屋の前の流しに吐いて、トイレに入ったら誰かがドンドンって戸を叩いた。ランプが点いているから分かるはずだと怒ったら叩くのをやめた」「治ってよかったね。今日、家の中を整理していたらあんたのお父さんの傘寿、お母さんの喜寿のお祝いを娘たち夫婦と孫たちでやったときの写真が出てきた。今度の面会に持って行くね」「嬉しい」「時間になった。CDを鳴らして。自分で出来る?」「出来るよ。・・・鳴った」「電話機返して職員さんと代わって」「・・・夫からです」「もしもし、代わりました」と職員さん。昨日午後の電話のことは憶えていないのに、夕方気分が悪くて吐いたことは具体的に話した妻。空想の話しかと思って確認したら吐いた事実はなかった。昨日気分が悪かった感情だけが残り、忘れた部分を空想して埋め、私に話したらしい。201008c.jpg
(雨に濡れ透き通るように白いソバの花。)

上空の空の色に染まる夜明けの沼

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.10.7)
(アルツハイマー)

北北東の風に波立ち、上空の空の色に染まる夜明けの沼。201007.jpg

岡発戸新田の釣堀前、波立つ水面に小舟のシルエット。201007a.jpg

日の出とソバの花を撮ろうとしているのか、日に日に増えるカメラマンの数。201007b.jpg


『何をやっても全部空振り』 (2020.10.7)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「公子です」「詮です。もう泣いてるの?」「泣くのが商売になった。何をやっても全部空振り」「何があった?」「私はひたすらお父さんを探していたの。私を育てたのは岩滑でしょ」「公子は岩滑の中島幹さんとさか江さんの間に生まれた四女、私は今村恒治ときんの長男。詮と公子が結婚し今村公子になった。私はあんたの夫」「知らなかった」「あんたは私をお父さんと呼ぶけど、あんたのお父さんは岩滑の幹さん。二人の子どもが私をお父さんと呼ぶから、子どもに分かりやすいようにあんたも私のことをお父さんと呼んだ。癖になって、ずっと私のことをお父さんって呼んだ。私は子どもたちのお父さん。あんたの夫だよ」「子ども二人は誰の子?」「公子と詮の子ども。AとL」「AとLがいるのに、私は突き放されて、一人になって柏の何処かに入った」「今年初めからずっとグループホーム寿にいる。去年はあんたが病気がちで、私が面倒を見るのが困難になった。あんたが施設に入りたいと言って、ケアマネージャのMさん紹介でグループホーム寿を二人で見学した。良い所だから申し込んだが空きがなく、空き待ちをして今年1月からここに入居した。今日までずっとここにいる」「そうか」「ここでは食事、洗濯、掃除、体操などあんたの面倒を見てくれているし、訪問診療の先生が来て診察してくれる」「病気になったのは忘れた。何かの事情でここにいると思った」「ここへ来てから、目眩、吐き気、頭がガンガンするのが治って膵炎も再発していない」「公子って誰?」「あんたのこと」「だったら私はあなたの妻だった?」「そう」「その辺があやふやでトンチンカンになった」「子どもたちと一緒に私のことをお父さんと呼んでいたからこんがらがった」「私はお父さんが二人いると思ってこんがらがった」「これからは私のことを詮さんとかあなたって呼べばいい」「ああ目がパッと開いた」「時間になった。CD鳴らして」「・・・鳴った。電話返してくる。・・・電話終わりました」201007c.jpg
(「私を忘れないで」とゴーヤーの棚の隅にアサガオ)

なかなか明るくならない曇天の沼

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.10.6)
(アルツハイマー)

なかなか明るくならない曇天の沼。201006.jpg

水神山古墳の裾にくっきりスカイツリーの灯。201006a.jpg

昨日一日でずいぶん食べられてしまった桐の実。201006b.jpg

『今日は何した?』 (2020.10.6)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「元気?」「元気」「今日は何した?」「依田内科に行った」「どうしたの?」「インフルエンザ予防接種をし、市の健診、膵臓のエコー検査の予約をした」「膵臓の検査は何を期待するの?」「嚢胞の大きさが前回と変わっていないこと。もう何年も変わっていない」「よかった。もし悪かったらどうしようかと思った。私たち、別に暮らしてた方が長いね」「結婚して56年の間に、中国2年と一関6年の単身赴任、海外出張が4年、それと今年あんたがグループホーム寿に入ってからの9ヶ月。離れて暮らしたのは56年の内12年そこそこ。一緒にいた方が長いよ」「一緒にいたのは短いと思ったが、そんなに長かったんだ。一人で生きていると、もうやめたって気持ちになりそうだが、夫や子どもがいると思ったらしっかり生きようと思うよね」「そうだね」「今日は気分がいいけど、体調が悪いときはあなたがいたらって思うことがある。くよくよしたって治らない。もうやめたと思って眠っちゃう」「二人で暮らした時も体調が悪いと辛かった。去年は目眩や吐き気、頭がガンガンした。膵炎にもなって苦しんだ」「苦しかったことはすっからかん忘れた。嫌な奴と結婚したって言わないでね」「そんなこと思わないよ」「しばらく会っていなかったね」「昨日面会に来た」「どこへ?」「あんたは広い部屋の窓の内側、私は裏の駐車場にいて面会した」「何を話した」「私たちの家の中や外、近所の写真を見て話した」「忘れた。その写真は」「あんたに渡した」「どこだろう。・・・ないよ」「鏡台の引出は?」「見た」「他の写真は?」「それもない」「写真は持って行ったときに見て、しまい忘れたのが出てきたらまた見ればいい」「また写真持ってきて」「あんたの双子の妹を連れて、厳美渓、毛越寺、中尊寺、十和田湖、三内丸山へドライブしたときの写真にしようか」「見て思い出したら嬉しい」「時間になった。CD鳴らしてから電話機返してきて」「鳴った。返してくる。・・・プッ」と切れた音。201006c.jpg
(「もう帰るのか」と呼び止めるようにモズの声。)

赤く染まった地平線の空と沼

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.10.5)
(アルツハイマー)

家を出て歩き始めたらポツリポツリと雨。急ぎ戻って、雨ガッパの上着だけ羽織り桃山公園の高台に立てば、赤く染まった地平線の空と沼。201005.jpg

やがて岡発戸の丘の上を赤く染めて日の出。201005a.jpg

ケヤキの木の脇でソバ畑を撮っていた人、ソバ畑の先の日の出を待っていたのだろうか。201005b.jpg

『来てくれたの、嬉しい』 (2020.10.5)
昨日の妻との面会、グループホーム寿の玄関先で妻からリクエストされていた自宅の中と外、近所の写真を職員さんに渡し、妻へのインフルエンザ予防注射の調査票を記入しサイン。裏の駐車場で待っていたら満面笑みの妻が窓ガラスの向こうに現れ、「来てくれたの、嬉しい。これ邪魔ね」と言いながら網戸を開ける。職員さんから写真の入った封筒を渡され、写真を見た途端に泣き顔になって手で顔を覆う。「どうして泣くの?」「だって、これ、私たちが建てた家。涙が出てきて止まらないよ」と顔を上げたらよろけ、職員さんが持ってきてくれた椅子に座る。「これ、南側から見た家。これ、玄関前。これはどこから見たの?」「写真見せて」「これ」「家の前を通り過ぎて三軒ほど北側」「ベランダから見た手賀沼の方だ。台所でしょ、リビングも変わっていない。洗面所とトイレの入り口、タオルはしわくちゃじゃなく掛けてる?」「毎日取り替えてるがしわになって掛かっていたね」「写真見るとちゃんと思い出す。家に帰りたいよ。子どもたちは? AやLは来ている?」「仕事もあるし家庭もあるから来ていない」「何で家に帰っちゃダメ?」「伝染病が流行っているから。伝染病が治まったら外出して家を見に行こうね」「なんで私は外に出ちゃダメであなたは出て来るの?」「私だって気をつけて車で来てる。あんたと一緒に住んでる人はみんなお年寄り、あんたが外出して伝染病になったらみんなも感染しちゃうじゃない」「そんなら一緒に住んだらいい」「あんたと二人暮らしになったら、去年のようにあんたのことまで私がやらなきゃならない。私がちゃんと出来ないからあんたにはここに入ってもらった」「そうだったね。私がここにいたらあんたが助かるね」「そうだよ」「あなたも年だから気をつけてね」「気をつけるよ。私はあんたの夫だって分かってる?」「今日は最初から分かっていたよ」「来週の日曜も来るし、来ない日は電話するからね」「来てくれてありがとう。また来てね」と泣き顔で手を振る妻。201005c.jpg201005d.jpg

赤くなってスーッと消えた雲の隙間

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.10.4)
(アルツハイマー)

暗い曇天の南側、赤くなってスーッと消えた雲の隙間。201004.jpg

花を撮って以来忘れていたザクロに木、ふと見上げたら色づいた実が幾つも。201004a.jpg

遠回りして帰った住宅地、そっとレンズを向けたのに逃げたヒヨドリ。201004b.jpg



『明日来てね』 (2020.10.4)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「お昼食べて眠くなって眠った」「目は覚めた?」「覚めてきた。外は曇っていて天気みたいにボーッとしてる。起きたばかりだから。あなたまだ何処かに勤めている?」「勤めは20年も前にやめた。」「今は何してる?」「家にいる」「ひとり暮らしででしょ。何してる?」「朝早く写真を撮りに行って、食事の仕度、洗濯、掃除、細々したことがいっぱい。あんたが家でやってたことを全部やる」「男だってやってもいいんだよ。ここにいれば食事は作ってくれる。楽だよ」「化粧品がなくなったからオリーブオイルと化粧水を用意してとSさんから電話があった。注文するので化粧水の空ビンの品名を読んで」「見てくる。・・・あなたとの結婚記念の写真があった。私、白いドレス着てる」「何処かに仕舞い込んで見つからなくなった写真だね。化粧水のビンは?」「ない」「お化粧に何を使った?」「やったときでないと分からない」「以前、化粧品がないと顔が突っぱると言ったね」「なければクリームをつける」「名前は?」「眼鏡をかけないと読めない。なくて困ったとき言うよ。眼鏡があった。ユースキンだ」「顔に塗るの?」「塗ると思うよ。お化粧するとき困ったらメモして渡す。今は電話の時間がもったいない。探すとあっちもこっちもごちゃごちゃになる」「もういい。ずっと前に買ったマイルドローションを買っておく。もう探さなくていい」「バカな私の頭、ぽんぽん叩いてやる。アハハ」「明日は面会に行く」「嬉しい。来てくれるの」「いつものようにあんたは広い部屋の窓の内側、私は裏の駐車場にいて面会する」「そんなの知らない。もう忘れた。こんな人だから気にしないで。引出から出していっぱい散らかった。出したもの、整理しないで又入れておく」「時間だ。CDを鳴らして。明日行くね」「明日来てね、・・・鳴らないよ」「コンセントに挿してある?」「外れてた。・・・鳴った」「電話機返してきて」「あかんべーだけど返してくる・・・電話終わりました」201004c.jpg
(散歩道の道路脇。コンクリートの継ぎ目に根を張ったコスモス、「ここだって悪いとこじゃない」と花一輪。)

高台に着けば、雲の裾と沼を赤く染めた夜明け

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.10.3)
(アルツハイマー)

高台に着けば、雲の裾と沼を赤く染めた夜明け。201003.jpg

雨埋立地の杭から次ぎ次ぎ飛び立つサギの群、東我孫子の丘を越えて行くのはダイサギだろう、あとに残ったチュウサギらしきは対岸や水神山古墳を越えて行く。201003a.jpg

岡発戸の丘の上から日の出。沼を眺めていた散歩の人に「日の出は未だですか」と問われ「あと10分くらい」と答えたら、待ちきれず日の出直前に立ち去った。201003b.jpg


『自分専用の部屋って幸せ』 (2020.10.3)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「あれ、出ていない」「もしもし」「聞こえた。耳に当てるところを上に向けていた。一休みしようとしていたら電話が来た。ずっと家にいた?」「午前中は家にいた。この電話が終わったら病院に行く」「何処へ?」「JAとりで総合医療センターに検査結果を訊きに行く」「何の検査?」「先日、胃の入り口に見つかったポリープを胃カメラで検査した。心配することはないと思う」「私は、部屋のチェックに人が来るかもしれないから部屋の中を片付けている。こういう仕事は疲れる。私の不得意なことだもの」「今日は、あんたの夫は私だって分かる?」「分かってる。どうして?」「昼寝した後はよく忘れられるから」「アハハ。今日はまだ寝ていなかったから分かる」「昨日Aさんを知らないと言ったが分かる?」「分かってるよ。古くからの友だちだし、Aさんの家から坂を上ると私たちの家。話しの中で突然出てきたり、この人の話しだと図星でないと誰のことか思い出せなくなるだけ。疲れたときや眠いときは頭がごじゃごじゃでトンチンカンになるよ。みんなと一緒に色々やるけど、私みたいなものがやっても無駄になることばかりだよね」「無駄じゃない。何でも自分でやってみないと出来なくなるよ」「そうね。お父さん」「は~い」「こういう会話をすると嬉しい。疲れがとれる気がする」「いま一休みしようとベッドに座ってる」「寝転がっていないね」「大丈夫、寝転がっていない。寝転がったら直ぐ眠っちゃう。私みたいなのがやることは部屋の掃除くらい、何をやるかわからない人が何人もいるが、私がやるべきでないことにしゃしゃり出て、仕事を貰いには行かない。言われたことだけをやる。自分の部屋に自分の鏡台、ラジオ、ベッドがあって、押入には自分のものが入っている。自分専用の部屋って幸せだよ」「時間になった。CDを鳴らして」「・・・鳴った」「明日も電話するよ」「ありがとう、元気の素だよ」「電話機返して」「・・・電話終わりました」201003c.jpg
(白く輝くような蕎麦畑の脇、凜と立つケヤキの木)

振り返れば霧に霞む住宅の上に月

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.10.2)
(アルツハイマー)

桃山公園の高台に立ったが沼どころか直ぐ下の市民農園跡さえ見えない濃霧。振り返れば霧に霞む住宅の上に月。201002.jpg

流れる霧が薄くなったら現れた対岸の鉄塔。スカイツリーの灯か水神山古墳の斜面脇に。201002a.jpg

水生植物園跡を通過する霧の塊、ケヤキの木の根元は霧に見え隠れ。201002b.jpg


『Aさんって誰?』 (2020.10.2)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「公子です。泣きべそをかいている。今どこにいる?」「高野山の家」「どこ?」「Aさんの家の前から坂を上ったところ」「Aさんって誰?」「あんたと一緒に近隣センターこもれび設立に尽力したり、一緒に香港や天津に旅行した人」「じゃあ一番近しい人じゃない。私、頭がバカになってて思い出せない。この狭い部屋から外は分からない」「窓の外に駐車場があるね」「ある」「その先に進んで広い道を市役所の方に行き、手賀沼の手前から東へ行く。Aさんの家の前から坂を上った所に住んでいる」「私たちが建てた家の近く?」「二人で建てた家。去年まで二人で一緒に住んでいた」「えっ、私たち結婚してたの? ご苦労様だねえ。家の前を通り過ぎて左に行くと新しい小学校が出来た」「高野山小学校だね。我孫子に来たころ、プレハブの仮校舎を建て、新校舎に建て替えていた。もう35年以上も前」「私の頭からその後が抜けている」「私の転勤で、横浜の片倉台団地から我孫子に引っ越すので、高野山に土地を買って家を建てた」「片倉台団地のことは思い出した。家を建てたのは手賀沼側から神社の近くの坂を上った所。何回思い出そうとしてもごちゃごちゃ。部屋の中と窓の外を見て自分がどこにいるか自覚した。鏡台は古くなって壊れ、テープで止めてある」「私があんたの夫だって分かる?」「数日前に思い出した気がする」「昼寝した後は忘れちゃうね」「鏡台も、ベッドもある。私はいつまでここにいられる?」「いつまでいてもいい」「鏡台の引き出しに外国の写真アルバムがある」「あんたと、妹三人のヨーロッパ旅行だね」「最後の方に凱旋門がある」「パリだね」「船で瀬戸内海を渡るのがある」「ライン川でしょ」「写真があると思い出す。お茶もやった。身につく財産だから惚けても体が覚えている。ここでもお茶を点てた」「目が覚めたね」「嬉しい。思い出した。もう電話機返さなきゃ」「CDを鳴らしてから返して」「・・・鳴った・・・電話終わりました」201002c.jpg

(霧に消えた岡発戸の丘、ときおり微かに見える滝前の住宅地。霧の中に湧き出るように日の出。)

細かい雨が舞っていた桃山公園の高台

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.10.1)
(アルツハイマー)

細かい雨が舞っていた桃山公園の高台。今月は撮れるものがあろうがなかろうがここに通おうと思う。手賀沼を教えてくれた友が昨年11月始め急逝する前、最後の二週間ほどを一緒に撮った場所。まだ聞きそびれていたことを自分で見付けようと。201001.jpg

埋立地のサギの群、撮れたころは半数以上が飛び立った後。201001a.jpg

公園の広場を歩けば街灯の下、浮き上がっているように見えたマユミの実。201001b.jpg


『私はいつ帰るの?』 (2020.10.1)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「は~い」「昼寝してた。今日は何でか疲れてる」「毎日疲れてるって言うね」「眠い。食べ物はちゃんと食べている。眠いのは寝るしかない」「私と話してるのに眠っちゃ嫌だよ」「分かってる。天気はいいし空は青空。窓の外の垣根を剪定して綺麗になった。左の方の下に切ったのが落ちている。その先はまだ剪定してない。三本の枝がぶら下がっていてどこともつながっていない。外を見ていると目が覚める」「目が覚める前に電話の時間が過ぎちゃう」「私はいつ帰るの?」「どこへ帰る?」「分からないがあなたが探してくれたところ」「二人で見学して申し込んだのはここだよ」「何処かへ帰りたい。その思いが募ると泣けてくる」「あんたは何でも自分でやりたい人がが、目眩や吐き気、頭がガンガンして去年は自分ではほとんど出来なくなった。代わりに私がやったが、私じゃ出来ないことがいっぱい。二人で困って、あんたは施設に入りたいと言い出した。去年7月にケアマネージャのMさんの紹介でここを二人で見学し、あんたも気に入って申し込んだ。去年12月に空きが出来て入れることになった。入る直前にも膵炎で入院し、その間に色んな記憶が消えた。記憶が回復する前にここに入ったから、申し込んだところとここが別なところだと思い込んでしまった」「申し込んだのはうっすら憶えてる。何処かに入った時、担架に乗せられて運ばれた。私はもうダメ、死ぬのかなと思った」「最初の膵炎の時は東邦病院、今年正月の再発はJAとりで総合医療センターに救急搬送してもらった。退院して直ぐここに入居した」「いつよくなった?」「ここに入って、訪問診療の先生に診て貰っている。おかげで膵炎も再発していない。目眩や吐き気、頭のガンガンも治っている」「そういう苦しい時のことは憶えていない」「こんなに元気になって嬉しいよ。もう時間が過ぎた。CD鳴らして」「電源入れてボタンを押した。鳴った」「電話機返して」「・・・電話終わりました」201001c.jpg
(妻が見たら、「もうちょっと透いて見えるようにしたら」と言いそうな我が家の庭のヒガンバナ。)