今朝は間に合った市民農園跡の日の出

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.4.30)
(アルツハイマー)

今朝は間に合った市民農園跡の日の出。200430.jpg

水を張り始めた田んぼに十数羽、桃山公園から舞い降りてきたムクドリ。200430a.jpg

田んぼからムクドリに追い出され、遊歩道脇の木に逃げたホオジロ。200430b.jpg


『歌を歌っているから気分がいいの』 (2020.4.30)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「はいはい」「直ぐ近くから聞こえる、近くにいるの?」「家にいる」「手賀沼から坂を登ったところだね。久しぶりに行きたいな。今日はずっと歌を歌っているから気分がいいの。あなたは?」「普通だよ」「体調は?」「普通だよ」「普通だけじゃダメ、元気だよって言われないと嬉しくない。私が住んでいるここは何?」「グループホーム寿」「市がやっているの?」「平和台病院系列の施設だよ」「入るには何か理由がいるの?」「入りたい人が申し込む。待っている人が多くて直ぐには入れない」「私はどうだった?」「運がよく、急に空きができて早く入れた」「運がよかったのね。窓の外は西日が当たって垣根の上の方だけが赤く輝いている。透き通った感じ。その先に行くと市役所の方に行く道に出て、手賀沼に沿って歩いてAさんの家の前から坂を登ると家。そのまま進むと駐車場や店がある」「セブンイレブンとガストだね」「そう。近くにお寺のお墓があって、集会所がある。何度も利用したよ。あなたが撮った高野山の写真が並べて飾ってある。東へ行くと自動車学校や中学校があって、その先から利根川沿いに行ったのは何だった?」「ロイヤルと和楽園だね」「1号室があった」「和楽園のショートステイだ。1号室が好きだったね」「まだ道は憶えているよ。だけど大分忘れちゃったから、外に出てもよくなったら、一緒に行ってここは何って教えてね」「面会や外出禁止が解除になったら一緒に散歩に行こうね」「ここはいいところだよ。おいしいご飯が出るし、落ち着いているし、喧嘩もない。ここは最高。だけど他所を知らないから比べようがないか。でも、離れるつもりはないよ。あなたが近くにいるから」「あれ、何日か前はここにいるのは嫌、帰りたいって言ったのに」「いまは帰れないって分かったから」「CDが鳴ってるけど自分で点けたの?」「そう」「電話が終わったらボタンの位置を書いた絵をファックスで送るね。じゃあ、電話返してきて」「分かった。またね」200430c.jpg
(繋がれたボートにイソシギが一羽、去年も撮った同じボートの上のイソシギ)

遊歩道脇に咲いたハナミズキ

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.4.29)
(アルツハイマー)

滝下広場の遊歩道脇に咲いたハナミズキ。200429.jpg

カメラを向けた瞬間気付かれて、飛び立って逃げてしまったアオサギ。200429a.jpg

遊歩道を見下ろして鳴くホオジロ、おでこに点けた糸くずが気になる。200429b.jpg


『誰かに騙されている気がして心細い』 (2020.4.29)
昨日午後、電話機を渡された妻、「もしもし」「はいはい」「家にいるんでしょ、元気?」「元気だよ」「誰かに騙されている気がして心細い。私の身の回りに取り付いている感じ」「何が取り付いている?」「分からない。気持ちが悪いよ」「いつから?」「夜中から」「もしかしたら天気が変わるからかもしれないね」「それでこういう気持ちになるのかな。私を半端にする人がいるような気がする」「あんたは天気が下り坂になるとき、淋しくなったり、辛くなったり、泣きたくなるみたいだね。天気が回復すれば治るさ」「天気で私の頭が不安に思うようになるのはなぜだろう。道は分かっているから、ここを抜け出して家に行ったらどんな罰を受ける?」「伝染病に感染して肺炎になって苦しむことかな。他の人を感染させる罪を犯すことにもなる。だからそこでは面会も外出も止めている。国中の人が外出を控えて家にいるよ。不安な気持ちになるのは天気のせいだけじゃなくてみんな同じだと思う」「あなたの居る家に行きたいけど、いまは行くことができない。あなたは一人で家にいて、食料の買い物も困るだろうとずっと考えていた」「夕食は宅配弁当、朝のパンだけはセブンイレブンにマスクを掛けて行くけど、もうスーパーに行っていない。パルシステムに加入したし、アマゾンなどの通販も使っている。外出しなくても生活には困らないよ」「ここに縛られていたくないけど、ここは私の保護地区? 会いたくて泣けてくるよ」「そこにいたら専門家の職員さんがいるから家にいるよりずっと安全。辛いだろうが我慢してね」「分かったけど分かりたくない。伝染病だからいつ治まるか分からない。私は何をしていたらいいの?」「歌を歌おうか。ラジオの電源を入れて」「ちょっと待って、入れたよ」「CDボタンを押して」「押したら字が変わった」「矢印を押して」「鳴った」「じゃあ電話機を返してきてから歌ってね」「やり方を絵に描いて」「分かった。書くよ」「電話ありがとう。電話返してくるね」200429c.jpg
(私が来るのに合わせて出てきてくれたように、昨日と同じ場所からコガモのペア。)

戻って来れば陽はすでに眩しく雲の上

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.4.28)
(アルツハイマー)

日の出を撮ろうとシャッターを押せば、メモリーが入っていないとモニターに表示。慌てて家まで引き返し、戻って来れば陽はすでに眩しく雲の上。200428.jpg

浮上して道草する間に先に行ったカイツブリの相棒、鳴きながら慌てて後を追い掛ける。200428a.jpg

オオバンの雌を巡る争いか、羽ではたき脚を上げてのぶつかり合い。200428b.jpg


『あなたは結婚してるの?』 (2020.4.28)
天気下り坂でも元気な声だった昨日午後の妻、「もしもし」「は~い」「あなたの知っている人かなぁ、電話受け取って持って来てくれた。いつもにこやかに持って来てくれるよ」「私は事務所に掛けているから、職員さんだよ」「元気ですか?」「元気だよ」「どこにいるの?」「高野山の家」「近いじゃん、浜岡にいるかと思った。近いから歩いて行けるけど、いまはダメだね。ここにいるとよそ行きの顔をしていなきゃならない。よそ行きの顔じゃないようになりたいけど、急いでもできないからにこやかにしている。あなたは自分の家にいるって羨ましい」「一緒に住んでいたのが一人になると大変だよ。炊事、洗濯、掃除、買い物、全部一人でやるんだから」「私がやりに行ってやりたい」「二人とも年取って、出来ないことが増えて、二人で暮らすのが難しくなったし、あんたの健康を維持するためにあんたはそこに入所した。私は自分一人なら手抜きしながら、何とかなっているよ。トイレの電気を消し忘れたり、失敗はあるけどね」「トイレの電気は昔からじゃないの。私はここを出て、帰ったら何処かに働きに行かなくっちゃ」「80の婆さんを雇ってくれるところなどないよ」「あはは、まだ50くらいかと思っていた。働かないでどうやって暮らすの?」「私だって20年前に仕事をやめてから年金生活者じゃないの」「そうか、厳しいね。あなたは結婚してるの?」「してるよ。あんたとね」「私とか、あはは。一緒に住んで、話がしたい」「一緒に住んでいた頃は、あんたはお外様。さんきゅう会のボランティアや近隣センターづくり、コーラスや茶道で忙しかったじゃないの」「そんなことはもう全部忘れた。私はここに住んで、ときどき家に帰りたい。いつになるの?」「分からない。伝染病が相手だから。CDを掛けて、電話を終わりにして歌を歌って」「分かった。電源点かない。あっ、コードが抜けていた。電源入ったよ」「CDボタンを押したらその下の矢印ボタンを押す」「えーと、こうだな。鳴ったから電話を返してくるよ」200428c.jpg
(今朝もまた、仲睦まじいカルガモのペア。コロナの蔓延なかりせば、面会に行けただろうに寂しがる妻に。)

薄雲の向こうに登った日の出

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.4.27)
(アルツハイマー)

薄雲の向こうに登った日の出、花房の根元から開き始めた藤棚の花。200427.jpg

テリトリーへの侵入者を見付けたのか、水面を叩く羽音を残し飛び立ったコブハクチョウ。200427a.jpg

撮ってくれと言わんばかりに立ち止まったツグミ。200427b.jpg


『知ってる道でも迷子になるのが怖い』 (2020.4.27)
元気な声だった昨日午後の妻との電話、「もしもし」「はいはい」「昼休みが終わったところ。天気はいいけどちょっと疲れた。食事が出た。サッサと食べて急いで部屋に戻ってしまった人が多かった。自分の分を後片付けしたら、まだどうしたらいいか分からなくて残っている人がいた。初めての人は食べ終わっても自分で片付けることに慣れていないから手伝ってきた。部屋へ戻ってベッドに横になろうと思っていたら、ご主人から電話ですって持って来てくれた」「今は部屋にいるんだね」「そう。カーテンを開けて外を見ると、西日に照らされて明るいけど、この部屋は東向きだから暗い。垣根の上の方が赤くてきれい。西日の当たってる先へ行ったら市役所の方へ行く道に出ると思う。手賀沼まで行けば斜めに坂を上がったら家だと分かってる。あなたはどこにいるの?」「家にいるよ」「職場が近いからそっちに行っているかと思った」「会社はずっと昔に退職して仕事はしていない」「ああ、そうか。私はどこにいるの?」「グループホーム寿」「市役所の方から慈恵医大の方へ行く道?」「あはは、迷子になったな。コナカの後ろ、消防署のところの十字路の近く。二人で見に来て申し込んだところだよ」「申し込んだのは憶えているけど同じところかは分からない」「同じだよ」「そうか、356に出て東へ歩いてお寺の近くで曲がって手賀沼の方に行く。店が二つあった」「ガストとセブンイレブン」「そこから入ると家があって、通り過ぎると神社への道」「そう」「知ってる道でも迷子になるのが怖い。一緒に歩いて教えてね」「面会と外出が解禁になったら一緒に散歩しよう」「いつ?」「伝染病に訊かないと分からないな」「早く家に行きたいよ」「気長に待って」「泣いても解決しないからもう泣かない。ぼやーっとしていて、あなたと電話するときに好き放題言うしかない」「参ったな」「いいじゃん」「ぼつぼつ電話返してきて」「うん、行ってくる。事務所に誰もいないよ」「食堂に職員さんがいるだろう」「いたいた。今村です。終わりました」200427c.jpg
(岸辺から並んで泳ぎ出したカイツブリのペア)

枯れ穂の向こうに登った日の出は眩しすぎ

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.4.26)
(アルツハイマー)

水に映った日の出を撮ろうとしていたら、「ここがいいな」と近寄って来た若者4人。マスクも掛けず、スマホで日の出を撮ろうとしているらしい。仕方がないから10mほど下がれば撮れなくなった水に映った日の出。枯れ穂の向こう登った日の出は眩しすぎ。200426.jpg

水路の向こうの埋立地の木、何かが動き咄嗟に撮れば、木に止まっていたキジの雄。200426a.jpg

浮上して埋立地の杭に登ったカワウ、何を探すのか右を見たり左を見たり。200426b.jpg


『歌ったら気持ちが楽になった』 (2020.4.26)
昨日午後、電話に出た妻はちょっとハイ、「もしもし」「はいはい」「電話してくれて嬉しい。天気はいいけどすごい風が吹いてるね。天気予報を見たら、こっちは嵐みたいに風が吹いて雨が降るみたいだ」「明日までは晴れても、月曜日頃から雨みたい」「他にやることはないから天気予報を見たよ。いま家にいるの?」「そう」「何してるの?」「食事の用意をしたり、たまには掃除をして、今朝は洗濯したよ。あっ、干すのを忘れてまだ洗濯機の中だ」「脱水してあれば大丈夫だから電話が終わったら干しな。ちゃんと干せる? 近いから帰ってやってやりたいけど、今はダメだね」「あんたがやるのを見ていたからできるよ」「自分の仕事を作ろうと思っているから、そこまで行ってできたらいいな」「CDは聞いた?」「今日はまだ聞いていない」「聴いたらいいのに」「今電源を押した。その次はどうする?」「CDボタンを押す」「どこにある?」「字の出ている窓の左下」「押した。次は?」「矢印を押す」「鳴ったよ」「昨日やり方をメモしただろう」「何処かにあった。これだ、一番電源ボタン、二番CDボタン、三番矢印ボタンって書いてある。忘れたら来て教えて」「今はダメ」「そうか、テレビで家にいなさいって言っていた。~秋を愛する人は心深き人 愛を語るハイネのような 僕の恋人~」「歌うのは電話が終わってからにして」「どこに電話があるの?」「いま話してるじゃない」「そうか、あなたと話してるのね。歌ったら気持ちが楽になった。本当は外に出て体の運動がしたい」「いまは外に出てはダメ」「あなたは82、こんな私でももうじき80、後を追い掛けるためには歌を歌ったり、運動するしかないね」「面会できるようになったら一緒に散歩しようね」「その散歩って言葉が出てこなかった」「今日は元気でよかったよ」「ぼつぼつ切る?」「電話機返してきて」「この部屋のじゃないね、返してくるよ。 ・・・済みません。終わりました。ありがとうございました」と電話機を返す妻。いつになく陽気だった。200426c.jpg
(仲睦まじく岸から出てきたコガモのペア)

昨日刈り取られた水生植物園跡の菜の花畑

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.4.25)
(アルツハイマー)

昨日刈り取られた水生植物園跡の菜の花畑、代わりに咲き始めた藤棚の花。200425.jpg

藤棚の向こうに日の出。日に日に伸びて膨らむ藤の花房。200425a.jpg

葉が茂る桜の木に飛んできたホオジロ、見上げて隙間を探していたら目の前に。200425b.jpg


『~春を愛する人は~』 (2020.4.25)
妻に電話した昨日午後、「もしもし」「はいはい」「ラジオを点けようと思ったらうまくいかない。ガーガー言うようになっちゃった」「そういうときは職員さんに教えてもらうといいよ」「事務所に訊きに行こうと思ったが、訊いてもいいか迷っていた」「ラジオかCD、何を聞きたいの?」「今は歌」「電源ボタンを押して消して」「どこにある?」「上の左の方」「あった。これね。消えた。あなたお元気ですか?」「元気です」「私のだんな様でございますね。私なんかつまらない時間を過ごしています。時間つぶしです」「どうしたの?」「電話機を持って来てくれてからかわれちゃったから」「CDを聞きたいの?」「そう」「電源ボタンを押して」「押したら点いた」「窓枠の左下にあるCDボタンを押して」「窓の下は壁だけだよ」「その窓じゃない。ラジオの、文字の出て来る窓」「ああ、これか。どれだろう。CDがあった。押したら字が変わった」「その下の方の矢印と二本棒のあるボタンを押して」「押した。歌が鳴りだした。もう一回最初からやってみる。順に言って」「電源ボタンを押して」「消えた」「電源ボタンを押して」「字が出てきた」「CDボタンを押して」「どこだどこだ、はい押した。字が変わった」「矢印を押して」「できた。鳴ってる」「よかったね」「もう一度やってみる。あれ、忘れちゃった。メモするから言って」「一旦消して。一番は電源ボタン、二番はCDボタン、三番は矢印」「じゃあやってみる。点いた。CD、CD、どこにある。あった。矢印って字のボタンがないよ」「記号だよ」「矢印と縦のイコール? 鳴りだした。~春を愛する人は・・・~」とCDに合わせて歌い出した。一番だけ歌うと、「おさらいするよ。電源を切った。ただ今から音楽の時間を始めます。一番は電源、二番はCD、三番は矢印。嬉しい、自分でできたよ」「もう電話は終わりの時間。続きは明日ね。鳴らしたままで電話返してきて、そのあと歌を歌ってね」「もう事務所に来たよ。まだつながっているけど」とOさんに代わって、たぶん忘れるから、忘れたら教えてやって下さいとお願いした。200425c.jpg
(遊歩道からネコの木を望めば水面から湧き出る霧。さてさて今日はどんな日か)

日の出も見られそうにない曇天の沼

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.4.24)
(アルツハイマー)

日の出も見られそうにない曇天の沼。地平線が赤らみ沼を染める。200424.jpg

網を干す鉄パイプを掠めて飛んだハクセキレイ。モニターで見れば嘴に獲物。200424a.jpg

葉が茂りなかなか撮らせてくれないヒヨドリ。200424b.jpg


『自分の気持ちを発散させる術がない』 (2020.4.24)
妻に電話した昨日午後、「もしもし」「はいはい」「元気?」「元気」「元気ですって言われても姿を見に行けないから辛い。あなたが元気じゃないとき何にもしてあげられなくて申し訳なく涙が出る。あなたの状態は?」「何も悪いところはない。一人で頑張ってるよ」「2~3ヶ月ぶりにお昼を食べた」「毎日じゃないの?」「中学の方へために行ったがいつだったか分からないから適当に言った。お昼ご飯が済んで歩いて部屋に戻った。ノートやあなたが作った『公子と詮の新聞』を見てこんなことがあったのかと手が震えて涙が出てきた。今は体力的にはよくなったが、泣けてきて涙が出る」「いい天気だが夕方から天気が崩れるから悲観的なモードになったね。天気回復だった昨日ははしゃいだ気分になっていたよ。電話中にCDに合わせてふるさとを歌って三番が終わるまで待たされた。またすぐに治るさ」「今は自分の気持ちを発散させる術がない、窓から見ると今日はいい天気、大きな雲がが浮いている。西日を浴びた道が見える。手賀沼に出る道だなと思う。想像できるところにいるのは幸せ、できないところにいたらもっと辛い。歩いて帰られるほど私は元気なのに帰れない。ラジオを聞くことで救われている。夜眠れないときにはラジオを聞く」「昨日のようにCDに合わせて歌うといいよ」「外へ出られないのは辛い。治らないと退院できないの?」「ここは病院じゃない、グループホーム寿だよ。あんたと一緒に見学して申し込んだ施設だよ。食事や生活面の支援をしてくれ、訪問介護のお医者さんも来てくれる。二人とも年を取って出来ないことが増えて、それを助けてくれる施設だよ」「何人入っているの?」「9人が定員、大勢の職員さんが交替で支援してくれている。夜も何回か見回りに来てくれている」「そうか、それで鍵を閉めておいても開いているのか。私ばかり楽をして悪いね」「あんたが元気でいてくれれば嬉しいよ。電話が長くなったから、また明日話そうね」「じゃぁ電話返してくる。いま廊下を歩いています。着いたよ・・・。済みません、電話終わりました。ありがとうございました」200424c.jpg
(遊歩道に鳥が見つからない朝。鳴き声で見上げた木の天辺にホオジロ。天気回復、泣くのか歌うのか今日の妻)

水生植物園跡の緑が濃くなったケヤキの木

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.4.23)
(アルツハイマー)

水生植物園跡の緑が濃くなったケヤキの木、半分刈られて小さくなった菜の花畑。藤棚の花房が少し開いて紫色に。200423.jpg

花壇の周りでちょこまかと餌を探し歩くツグミ。200423a.jpg

昨日からヒヨドリが集まり始めた木、今朝も5~6羽が出たり入ったり。200423b.jpg


『兎追いしかの山~』 (2020.4.23)
昨日午後、天気が回復してさて妻の様子はどうかと電話。職員さんから電話子機を渡され、「そのまま、そのまま話せばいいの」と職員さんの声。ボタンを押そうとしたらしい。
「もしもし」「はいはい、元気そうだね」「今、家にいるの?」「そう」「わざわざ電話下さって何のご用?」「いつもの電話と同じで、あんたの元気な声を聞くため」「いつもっていつ?」「毎日だよ」「知らない、久しぶりじゃないの。直ぐ近くに住んでいて、歩いてくれば直ぐなのに電話してはもったいないじゃないの」「伝染病が流行っていて、家から出てはいけないからだよ」「声が小さくて聞こえにくい」「どこを耳に当ててるの?」「真ん中の辺り」「もっと上の方」「あっ、聞こえてきた。ラジオを自分で点けられたよ。点けてみるね。聞こえる?」「聞こえた」「一番目と二番目のボタンを押すと声が出る」「ボタンの名前は?」「AMとFM」「CDは掛けられないの?」「どのボタン?」「こっちからは見えないから分からない。CDってボタン探して」「これかな、窓の中の数字が動き出した。歌が出てきた」「できたね」「私の好きな歌だ、歌っちゃお。兎追いしかの山~小鮒釣りしかの川~」「もしもし、オーイ」と叫んでも応答はなく、電話子機をマイクに仕立てて歌い、三番が終わるまで待たされた。「歌はいいなぁ、気持ちがよくなる」「毎日CDを聞いたらいいよ」「どのボタンを押したんだろう?」「CDのボタンを押して、次は矢印を押す」「どこにある?」「見えないから分からない。どこにあったか忘れたよ」「忘れるのは私じゃないの。近いから教えに来て」「面会できないからダメだね」「いろいろ押してみる。自分でやれて嬉しい」「毎日聞くといいよ」「ボタンが分からなくなったら?」「職員さんい教えてって頼みな。明日も電話するから練習しておいてね」「分かった。またね。あれ、どこを押すのだろう」と言いながら歩く気配。
家に帰りたいとは一度も言わず、CDラジオや電話機のボタンを押すことに熱中していた妻。珍しい日。200423c.jpg
(仲良く並んで泳いできたカイツブリ、同時に潜り同時に浮上。)

刈り取られた市民農園跡の菜の花畑

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.4.22)
(アルツハイマー)

刈り取られた市民農園跡の菜の花畑、通路脇に一列だけ残して。200422.jpg

遊歩道を歩けば、枯れた葦の穂の向こうに雲間の日の出。マスクを着けず遊歩道を走るジョギングの人、思わず背を向け息を止めて通り過ぎるのを待つ。200422a.jpg

遊歩道脇で囀るホオジロ。近くを散歩の人が通り過ぎても逃げもしないで。200422b.jpg


『悔しいなぁ、今は我慢か』 (2020.4.22)
元気な声だった昨日午後の妻との電話、「もしもし」「はーい」「あなたに電話しようと一生懸命電話番号を調べていた。もう暗唱できた」「毎日私から電話してるのに、何の用事?」「いつ帰れるか聞こうと思って」「伝染病が流行っていて、面会も外出もできないし、私も感染しないように家にいる。今は帰れない」「伝染病かぁ。いつになるか分からないね。悔しいなぁ、今は我慢か、バカヤロー。これあなたに言ったんじゃないよ、伝染病に言ったんだ。ここから逃げ出し、市役所の先から手賀沼の傍を通って坂を登れば家。帰らなきゃ洗濯物だって溜まってる」「洗濯物が溜まったって職員さんに言えばいい」「そう言う。だけど帰りたいよ」「伝染病がなければ、娘たちが来たとき外出して、家でみんなで食事したり話をすることにしていたが、伝染病で面会も外出もできなくなった」「代償はくれないの」「国が国民全員に10万円ずつくれる」「もらっても、すぐ近くにいるのにオーイと呼ぶこともできないし、本を読む気にもならない。ここにいたらご飯も出るしおやつも出るからいいけど、ここにいるのはもう飽きた」「贅沢言うなよ。去年辛かった頃、施設に入りたいって言って、一緒にここを見学して申し込んだのに」「申し込んだのは憶えてる」「12月まで待って空きができ、仕度をしていた。1月になって膵炎を再発して入院し、その間にいろいろな記憶が消えて、ここへ入所したことも記憶に残らなかった。ここに来て、膵炎も再発していないし、目眩や吐き気、頭や耳がガンガンするのもなくなった」「元気になったよ。ご飯も出る、何もしなくても生活できて至れり尽くせりだけど、私は何をしていればいいの」「ラジオやCDを聴く、テレビを見る、写真を見る、ノートに書く、新聞や本を読む。いっぱいあるよ」「後で喜びになるように、わがままは言わないで解除になるのを待つね。だけど家に行きたい」「天気回復で元気な声になったね」「私も元気を維持する。あなたも病気にならないでね。電話できてよかった」「明日も電話するよ」「ありがとう。切るよ」200422c.jpg
(繁みの中に雌がいるのか、鳴いて羽ばたき繁みに向かって尾羽を広げるキジの雄。)

水生植物園跡のケヤキに若葉

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.4.21)
(アルツハイマー)

水生植物園跡のケヤキに若葉、菜の花の隙間に緑が目立つ。200421.jpg

うかつに急いだ菜の花畑の小径、餌を啄んでいたツグミを驚かせる。木に止まり通り過ぎるのを待つツグミ。200421a.jpg

鳴き声はするが見付けられなかったホオジロ。諦めて数歩歩けば、若葉の小枝に降りて囀るホオジロ。200421b.jpg


『生きる目的は何なの?』 (2020.4.21)
案の定泣き言ばかりだった昨日午後、「もしもし、誰?」「アキラ」「私のだんな様だ。今どこ?」「高野山の家」「小学校や中学校の近く? 手賀沼から坂を登ったところ?」「そう」「私は何も分からなくなって泣いていた。生きる目的は何なの?」「伝染病が治まって、会える日まで元気でいること」「中国から来た伝染病? いつ終わるか分からないし、泣く条件しか頭に浮かばない。いいことの材料なんかないよ。一日中この部屋にいるのは辛い。今生きてる人は等しく巻き込まれて、私だけじゃなくても淋しくて嫌だよ。あなたは元気?」「元気だよ」「よかった。会えないからあなたの顔を忘れた」「二人で撮った写真があるだろう」「探してみる。これで仕事が一つできた」「私は79歳、あなたは?」「今日82歳になった」「早く会わないとお互いに死んじゃう」「天気が悪くなると泣き言ばかりだね。明日か明後日は天気がよくなるから辛いのも治るよ」「一人でいる時はめそめそしているよ」「一人じゃないように毎日電話してる」「片っ端から忘れるからダメ。やることもないからベッドで寝ている」「ラジオを聞いたり、音楽を鳴らしたら」「音楽は聴きたい人が楽しむだけで、今は聴きたいと思わない。あなたの顔も思い出せない。希望を持てと言われてもできない」「今は会いに行けないから、あんたの元気が出るように毎日電話している」「私はどこにいる?」「グループホーム寿」「市役所から手賀沼沿いに歩いて、坂を登って家に行こうとすると分からなくなって終わっちゃう。電話くれるだけで生きる気が出て来たよ。あなたも病気にならないでね。あなたと作った家に住んでいたことは憶えているよ。私、強くはなれない。もう終わりにしよう、泣いた鼻水が布団に落ちちゃう」「ラジオを点けたの?」「点けた。聞こえるでしょ。鼻水が口に入ってきた。拭いたら電話機を返してくる」「明日も電話するよ」「お願いね。電話ありがとう。切るよ。あれ、切れない」「事務所に返して」「じゃぁ行くね」
しばらくして「電話終わりました」と妻の泣き声。「大丈夫よ」と職員さん。雨の日は涙、涙の妻。200421c.jpg
(曇天の朝早くから釣り人のボート。夕方は晴れる予報だから、妻の鬱的な気分も治るだろうか。)

雨に濡れていた菜の花と八重桜

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.4.20)
(アルツハイマー)

桃山公園の高台に立てば、雨に濡れていた菜の花と八重桜。200420.jpg

公園の広場で餌探ししていたムクドリたち、その真ん中に舞い降りたキジバト。一斉に逃げたムクドリたち。200420a.jpg

帰り道で餌探ししていたムクドリたち。驚かさないようしばらく待って、遠回りして帰った雨の公園。200420b.jpg


『帰りたいけど帰れない』 (2020.4.20)
昨日午後の妻との電話、「もしもし、昼寝していたらご主人から電話だと起こされた」「いい天気になって声まで元気になったよ」「喉がかさかさで低い声だけどね。窓の外の垣根の葉が真っ赤でいい気持ち。今日は何曜日?」「日曜日」「日曜日か。帰りたいけど帰れない、いつ私は解放されるの?」「分からない」「実際には行っていないけど、家に行こうと思ったら家の近所の階段の前にいて、家の前に出ようと登ったら違うところに出た」「空想だね」「部屋から廊下に出て歩いたら、広い道に出て市役所の近くにいた。手賀沼の傍を歩いて、家のある方へ坂を登ったら家がなくなっていた。通り過ぎて中学の方へ行くと中学もなくなっていた。途中で分からなくなったら、いつの間にか部屋に戻っていた。会いに行っても一度も会えなくて、ひねくれてベッドに寝てしまった。近くまで行って、あなたを呼んでも返事がないから、また間違えたと思った。全くおたんこなすだよ。明日は家に帰るの?」「伝染病が流行っているから帰れない」「そうだ。ダメなんだ。窓の外の垣根が赤くてきれい。そっちへ行けば家に帰られるが、垣根の背が高すぎるし、外へ出ちゃダメだと自分でもそう思っている。夢の中でも垣根の向こうに行けない。今度こそと思って夜寝たら、廊下の途中から外に出て、家とは反対の西の方に行っていた」「夢だねぇ。何をやってもうまくできない夢は私も見るよ」「もう少しで家だ思うと家が消えちゃうって嫌だね」「外はいい天気だよ」「一緒に散歩に行きたい」「伝染病が治まったらね」「いつのことやら。惚けちゃって嫌になるな」「惚けたっていい、古いことをいっぱい憶えているよりも、先の楽しいことを考えよう」「どのくらい待つの?」「分からないけど半年か、2年か、会えるまで元気でいようね。今日は元気な声でよかったよ。明日も電話するね」「明日は何日?」「4月20日」「あれ、何だったっけ?」「私の・・・」「分かった、プレゼントしなくちゃ。でも、ここにいちゃできない。電話待ってるよ」200420c.jpg
(雨に霞むネコの木。また鬱的な気分に後戻りかグループホームで妻)

埋立地へ向かうカルガモのペア

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.4.19)
(アルツハイマー)

岸辺に釣り人が並び、居場所を取られて埋立地へ向かうカルガモのペア。200419.jpg

ここにいるぞと言わんばかりに、天を仰いで鳴きつづけるホオジロ。200419a.jpg

鳴いて羽ばたいた雄のキジ、遊歩道を越えて飛んできた雌。雄が近寄ればちょっとだけ逃げる振り。200419b.jpg


『私は何人子どもを産んだ?』 (2020.4.19)
荒れる天気を気にして妻に電話した昨日午後、「もしもし、いまどこにいるの?」「家」「どこの家?」「高野山」「私と住んでた家ね、嬉しいけど淋しい。誰がどこにいるか分からないから泣いている。私は誰?」「イマムラキミコ」「キミコはどこにいるの?」「グループホーム寿」「ひとりぼっちで辛い」「会いに行けないから毎日電話してるよ」「毎日?」「昨日も電話したよ」「憶えていない。私は何人子どもを産んだ?」「二人、Aは八王子、Lは横浜に住んでるよ」「それは私の記録の一ページだった。あなたには全然会えないし、どこにいるか分からないから死んだかと思った」「死んだと思った?」「私がこんなだから嫌になって、私を棄ててどこかへ行ってしまったかと思った」「毎日あんたのことが気になって電話してるよ」「念のため確認するけど、356のお寺の辺りを右に曲がって手賀沼の方に行ったところの家にいるの?」「そこにいるよ」「下から行くと、市役所の先を曲がって手賀沼沿いに歩いて、坂を登ったところ?」「そこだよ」「あなたの電話は嬉しい。色んなことを思い出すから。バカになって、忘れないように書いたメモがある。詮と公子の子どもは二人、Aは八王子、Lは横浜。八王子と横浜には公子の双子の妹がいるって書いてある」「MさんとNさんだね」「誰も来てくれないから淋しいよ。あなたも来てくれないから辛いよ。近いから家に帰りたい」「伝染病が流行っているから会いに行けない」「テレビで日本中そうだって言っていたから知っている」「なんで私はここにいるの?」「私が年を取ってあんたを助けることができなくなってきたから。あんたも何処かの施設に入りたいと言って、二人でグループホーム寿を見学して申し込んだ」「申し込んだのは憶えている。それがここ?」「そう。そこに入ってから訪問診療の先生に見て貰って、膵炎も再発していないし、目眩や吐き気、頭や耳がガンガンするのも治ったね」「自分でもそう思う」「伝染病だって家よりそこにいる方が安全、流行が終わったら会いに行くし、一緒に散歩もできる」「それなら生きているかいがある」「また明日電話するね」「待ってるから電話してね。ありがとう」
天気が荒れるから落ち込んで泣いたり辛くなっている妻。いつも同じパターンだ。200419c.jpg
(妻を鬱に追い込み泣かせた天気、やっと回復し輝くようなヤエザクラと菜の花)

桃山公園の高台に立てば雨に煙る沼

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.4.18)
(アルツハイマー)

桃山公園の高台に立てば雨に煙る沼。左手の傘を風に取られまいとすれば、右手のカメラまで揺れて邪魔する風。200418.jpg

雨に濡れ、風に波打つ菜の花畑。誰も通らない遊歩道。200418a.jpg

まだ公園になる前の松林だった頃、18年前には私の背ほどもなかったマユミの木、今は見上げるほどの大きな木。200418b.jpg


『変な魔法を掛けられているみたいだ』 (2020.4.18)
昨日午後の妻との電話、「もしもし」「はーい」「今、昼休み。部屋に戻って午後の仕度をしていた。鏡台の前には昨日作った切り紙細工が飾ってある。可愛いよ。夜に読んだ本もある。日野原重明の『生き方上手』って表紙。どこから来た本か分からない。鏡台の前にいると落ち着くから椅子に座っている。午後に何をするかは分からない。どこの事業所に行くかまだ言われていない。去年は手賀沼を西に向かって離れたところへ行った」「去年は家からロイヤルのデイケアに通っていて、そこにはまだ入っていなかったよ」「じゃあ、去年はどうしていたの?」「ロイヤルに通ったり和楽園のショートステイに行っていた。8月末と今年の正月は膵炎になって入院もしたよ」「憶えていないけど、膵炎になったってノートに書いてあった。昨日のことだってちょっとしか憶えていない。市役所から家の方へ坂を上がって中学の前の356に出た。後は記憶がない」「今は伝染病が流行っていて外に出られないよ」「全国的になったね。新聞で読んだ。今は変な魔法を掛けられているみたいだ。ドアを開け、見えているところは分かるけど、見えていない廊下の左右には何があるか分からない。トイレだけはどこにあるか分かる。催眠術を掛けられているみたい。どうやって私の頭の中を迷わせているの?」「私にも分からない」「体育館に集まれと言われたら体育館にいる」「何かを考えるとそういう風にできちゃうの?」「窓の外を見ると駐車場がある。その先に行こうと思うと広い道がある。自動車の店があって、下って行くと市役所、手賀沼の脇を通って、坂を登ると家がある。今は外に出ないで家にいなさいって言っているのに、ほんとに訳がわからない。こういう世界もあるのだなと思って窓の外を見ている。あなたとの会話は普通にできるのになんでだろう?」「天気が下り坂で気圧の変化が大きいから、空想と実際のことがごちゃごちゃになったんだ。その内に治るよ。長くなったからまた明日電話するね」「待っている。どこへも行かないからね。バイバイ」200418c.jpg
(庭にムベの花が咲いた。私が植えたムベは蔓が伸びるからと目の敵にしたが、花が咲いたときだけは可愛いねと眺めていた妻。)

鉛色の曇天の空、沼に映って鉛色の水面

(アルツハイマー)

鉛色の曇天の空、沼に映って鉛色の水面。200417.jpg

隠れん坊の相手をさせるアオジ、ファインダーを覗き右に行ったり左に行ったり。200417a.jpg
撮った瞬間名前が出てこない。アイウエオカキクケコ、そうだコゲラだ。200417b.jpg

『空想の中での外出』 (2020.4.17)
昨日午後の妻との電話、「もいもし、みんなで食事をして、昼休みが終わってトイレに行ってきたところ。今から仕度しなくちゃ」「何の仕度?」「えーとねぇ」「何処かに行くの?」「バスに乗って行く。そこで体操をする」「今はどこにも外出できないでしょう」「体操をできるところへ行くよ。学校だったり、何処かの会社だったり、体育館を借りて広いところで体操する。他にも体操する人がいるから順に交替してやる」「今から行くの?」「分からない。今日は天気がよくないから行かないかもしれない」「いつ行くの?」「今から行くからみんな並んでと言われてバスに乗る。どこへ行くかは、着いてからここはどこだと言われる。我孫子の道はだいたい知っているから、どこへ向かっているかわかる。降りて体操する。降りてから、一列に並んで歩いて行くこともある。何処かへ勝手に行こうとする人もいるから監視が厳しい。男の先生が何人も行く」「今日は行くって言われた?」「言われてない。ここにいると頭がバカになる。行くと分かっていればいいけど、言われてからでないと分からない。今日は何曜日?」「木曜日」「週に三回通っているから、適当なときに連れて行ってくれ、自分の思いでは動けない。言われたとおりやることにしている」「それはロイヤルに通ったときの外出のこと?」「そっちなら道は分かるから違うよ」「いろいろ教えてくれてありがとうね」と話を終わらせる。妻が「仕度をする」と行ったとき私が「何処かに行くの?」と質問したので、デイサービスに通っていた頃の記憶につながって、空想に入り込んでしまったらしい。
電話機を返しに行ったとき、妻がパジャマ三枚の洗濯物を私に渡そうと何処かに仕舞い込んだと前日言っていたことをSさんに伝え、空想なのか本当なのか調べて貰うように頼んだ。そのとき、今日はバスで何処かに体操をしに行く古い記憶に入り込んでいたことを話したら、グループホーム寿では外へ出て体操はしていないと言っていた。200417c.jpg
(畦道を急ぎ足のキジの雄。雌の前に出て、羽ばたき尾羽を広げて雌に見せたつもり。とうに雌は飛び退き知らん顔。)

菜の花畑に着いたら霞の中に登っていた日の出

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.4.16)
(アルツハイマー)

菜の花畑に着いたら霞の中に登っていた日の出。200416.jpg

日の出とともに埋立地の前に次々現れるコガモたち。200416a.jpg

ジョギングの人が来たら岸辺の繁みに飛び込んだホオジロ、隠れたつもりでも隙間を探して覗けば丸見え。200416b.jpg


『待つしかないと自分に言い聞かせている』 (2020.4.16)
最初から妻は泣き声だった昨日午後の電話、「もしもし」「はいはい、いい天気だね」「いい天気で垣根の葉は真っ赤だけど私の心は安まらない。ノートを見ていた。外から見えることは文章になるが、心の中は文章にならない。読み直すと、こうだったのかと泣けてくる」「ノートに書いていた頃に比べたらずいぶんよくなっているよ」「診察に来た山本先生に目眩の薬を飲んでねと言われたと書いてあった」「薬を飲んで、目眩や吐き気、頭がガンガンするのが治って記憶力もずいぶん回復したようだ」「自分でもそう思う」「コナカの周りを歩いたとあなたが書いていて、その次にはあなたから電話が来たと私が書いていた」「伝染病が流行りだして面会と外出ができなくなって、毎日会いに行っていた代わりに電話するようになった時のことだね」「ノートに書いておくといいね。何も外のことが分からなくなって、垣根の葉が赤くてきれいだとしか書くことがなくなったから書くのを止めていた。また書くよ。書くことで外のことも分かって、辛いことを後世に記録として残すことにもなるし、人生の経験の一つ一つだから記憶も戻るかもしれない。家に帰る道を忘れないように繰り返して思い浮かべていたが、今は帰ってはダメだってこと、昨日から分かった。今はじっと待つしかないと自分に言い聞かせている。家までの道を忘れずに思い出していると、Aさんの家から坂を登ると家が見えて、家の形まで憶えている。家の前を通り過ぎると356に出る。中学の前に出る道も憶えている。早く家に行きたい。ごめんね、私がこんなになっちゃって。だんだんよくなってきたことを書いておくよ。廊下に出て戻ってくるとラジオから聞こえたし、テレビでもやっていたから伝染病のことも理解できた。あなたが来たら寝間着を三枚持って行って洗ってもらおうと仕舞っておいた。なかなか来られないね」「仕舞っておかずに、頼めば洗ってもらえるよ」「直ぐ頼むよ」「また明日電話するね」「電話ありがとう。切るよ」200416c.jpg
(散歩の途中で出会ったときは、妻の遊び相手をしてくれたシベリアンハスキーのジャック)

菜の花畑の向こうに日の出

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.4.15)
(アルツハイマー)

菜の花畑の向こうに日の出。畑の小径を沼の岸辺に向かう釣り人。200415.jpg

日の出とともに出てきたオオジュリン、蘆の枯れ茎に止まって皮を剥ぐ。200415a.jpg

僅かに残った花が揺れ、葉の陰から姿を見せたホオジロ。200415b.jpg


『時が過ぎるのを待つしかないの?』 (2020.4.15)
昨日午後の電話、「もしもし」「はいはい」「さっき昼ご飯食べて、部屋に戻って眠っちゃった。窓の外の垣根の葉が赤くてきれいだよ。午前中には散歩した」「伝染病が流行っていて外出はできないよ」「じゃあ夢だ。私はトンチンカンで相手にならないね。その内に目が覚めるからいいよ。家にいろってラジオが騒がしいのは何の話し? 何か事件があった?」「伝染病が流行ってるから外へ出ないでってこと」「お父さんにどうしたらいいか聞こうと思って歩いて家に帰る夢を見た」「私はあんたの父親じゃなくて夫だよ」「私のお父親はミキさん、あなたは子どもたちのお父さんだけど、長い間お父さんって呼んでいたの」「分かってるんだ」「垣根の葉が本気で赤くなっている。朝起きて、あなたに会いに行こうと思って嬉しかった。目が覚めてダメだと分かってまた寝た。ラジオで日本が大変なことになっていると言ったがどうして?」「初期の頃の伝染病への対応が遅れたから」「政府が迅速に対応しなかったから? 80の前で死ぬのは嫌だ、まだ生命があるなら生きたい。私、まともでしょ。目が覚めてラジオのニュースを聞いたから。それで家に帰れないって分かった。時が過ぎるのを待つしかないの?」「そうだね。今はグループホーム寿にいれば守られているから心配しないで」「あなたは大丈夫? あなたも私の部屋に来たら?」「私は入れてもらえないの。夕ご飯は宅配弁当。生協のパルシステムや通販を使って食料を買って家にいるようにしているから大丈夫」「市役所の前を通って、手賀沼沿いに歩いてから坂を登ると家に行けるけど、新聞を見て今はダメだと分かった。病院に行ったら感染した人も来るでしょ、ここを確保できていてよかったね」「病気になると病院に送られるから元気でいてね」「頭の中は元気じゃないが、会話でばれないようにするね。また電話してね」「明日も電話するよ」
今日は一人でしゃべりまくっていた妻。新聞を見たりラジオを聞いた記憶が残っていたらしい。200415c.jpg
(雌の横を通り過ぎ、前に出て尾羽をパッと開く雄。ちょっとだけ逃げて横を向く雌。また追い掛け前に出て尾羽を開く。恋の駆け引きか二羽のキジ。)

いつの間にか葉が茂っていたコブシの木

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.4.14)
(アルツハイマー)

朝日を浴びて輝く菜の花、いつの間にか葉が茂っていたコブシの木。200414.jpg

遊歩道脇の埋立地、枯れた葦のカーテンの向こうで抱卵中のコブハクチョウ。眠っているかと思えば、そっと目を開け、また閉じた。200414a.jpg

浮上してちょっと泳いでまた潜る。獲物は捕れているのかカンムリカイツブリ。200414b.jpg


『自分じゃもう治ったようだよ』 (2020.4.14)
妻に電話した昨日午後、元気そうな声で「もしもし、頼りになる人と話したくて電話しようと思ったが掛けられなかった」「毎日こちらから電話してるよ」「思い出せないけど、毎日掛けてくれたら嬉しい。ここは長くいるところじゃなくて嫌だよ。家に帰りたい」「長くいてもらわないと困るな。近いから毎日面会に行っていたし、天気のいい日には一緒に散歩していた。子どもたちが来たときには家に来て一緒にご飯食べたり散歩して、夕方にはそこへ戻ることにしていた。だけど伝染病の流行で面会も外出もできなくなった」「じゃあ、私が家に帰ればいい」「家にいた時は、入院したり体調が悪くなって病院に連れて行くことが多く、私が年を取ってあんたを助けることが難しくなった」「共倒れになるから、二人で見に行って入ることにしたところがあったね」「それが今いるところ、グループホーム寿だよ」「もう入っているの?」「そう、そこに入って訪問診療のお医者さんに診てもらい、膵炎も再発していないし、目眩や吐き気、頭がガンガンしたのも治っている。食事や掃除洗濯、間違って飲まないように薬の管理もしてもらっている。私一人じゃ出来ないよ」「もう治ったから帰って自分でできるよ」「急に体調が悪くなることもあるから、夜も巡回してくれている。今日は調子がいいけど、昨日みたいだったら私も困っちゃう」「昨日のことは忘れたが、二人とも生き延びるためにもう一緒には家にいられないのね。それが一番いい方法か」「今日はよく分かってる」「自分じゃもう治ったつもり。市役所の先から手賀沼に沿って歩いて坂を登り家まで帰られるのになぁ」「いつもその話は聞いてるよ」「あなたに嫌われたら辛いから、一人じゃ帰らないよ。電話返しに行くね。電話ありがとう」
「もう終わった? 切るね」とOさんの声。前日とは別人のように物わかりがよく、明るく元気な声の妻だった。200414c.jpg
(水を張り始めた田んぼ。相棒が来ないからか、つまらなそうに歩き回るムクドリ一羽。)

北東の突風に奪われそうになる傘

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.4.13)
(アルツハイマー)

雨の高台に傘を差して立てば、北東の突風に奪われそうになる傘。200413.jpg

雨に濡れ色鮮やかな菜の花。咲き始めた遊歩道脇の八重のサクラ。200413a.jpg

桃山公園の散歩道から沼が見える場所。斜面林が芽吹き葉が繁り始めると狭まる視界。200413b.jpg



『自分が誰だか分からない』 (2020.4.13)
混乱気味だった昨日午後の妻、「もしもし、私、バカになっちゃった。何処かへ行こうと思ったが、雨が降っていたから捨て鉢になって何もしないで寝ていた。ここにいると閉じ込められた感じでバカになる。ご主人から電話と言われて誰からだろうと思った。色んなことがあって、頭がごちゃごちゃして私の名前も分からなくなった。事務所の人に私の名前を聞いたらはぐらかされてしまった。あなたのお名前は?」「イマムラアキラ」「私の旧姓はナカジマ? 今は何なの?」「イマムラだよ」「私は誰? 本名が分からない」「イマムラキミコだよ」「あなたはイマムラさん?」「そうだよ」「今やっと家が見えて来た。下の道から坂を上がったところ。誰もいない空き家みたい。ここであなたと暮らしたの?」「あんたと36年もこの家で暮らしていたよ。空き家に見えるの? 今も私が一人で住んでいるよ」「ああよかった。自分が誰だか分からないと人を探すこともできない。私もそこへ行っていいのね」「今は伝染病が流行っていてダメだけど、治まったら子どもたちも呼んで、家を見に来て一緒に食事をしたり手賀沼を見ようね」「いつ? 伝染病が相手だから分からないか。私はどこにいるの? ここはどこ?」「窓の外を見てごらん。駐車場が見えるね」「見える」「その先の広い道を下ると市役所、手賀沼沿いに行くと水の館があって、坂を登ると家」「具体的に言ってくれると分かってくる。会いに行きたいな」「今は外出も面会もできないから毎日電話してるよ」「今日のことは分かったが、前はどうだったか分からない。電話じゃ顔が見えないから現実味がない。早く会いたいよ。知らないことばかりで道も人もわからなくなったけど、市役所から手賀沼沿いに歩いて坂を登れば家だって分かってきた」「泣かないでよ」「嬉し泣きだよ。今は戦争と同じで不条理なことばかり」「不条理ってなに?」「頭の中に家があって見えるのに、そこに行こうと思っても行けないもの」「明日も電話する。もっと思い出せると思うよ」「分かった。事務所に電話機を返しに来た。・・・済みません、電話終わりました」と泣き声。「もう終わったの」と職員さんの声。200413c.jpg
(今朝もいたムクドリの群。群から外れ近寄ってくる二羽、驚かせないようにじっとしていたらすぐ前で何かを啄む。)

桃山公園の高台に立てば小雨に煙る沼

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.4.12)
(アルツハイマー)

桃山公園の高台に立てば小雨に煙る沼。妻と散歩のときは沼を見に立ち寄った高台。200412.jpg

沼沿いの遊歩道でいつも出会う散歩の人、傘を差し足早に通り過ぎた岸辺の道。200412a.jpg

広場に出たら桃の木の下に集まっていたムクドリ十数羽。餌があるのか思い思いに歩き回って何かを啄む。200412b.jpg


『私のお父さんじゃなくてだんな様』 (2020.4.12)
「もしもし」「はいはい」「やっとお父さんがつかまった」「毎日電話掛けてるよ」「困っちゃって電話しようとしたができなかった。どこにいるの?」「高野山の家」「近くにいてくれて嬉しい」「どうしたの?」「ここを出て、広い道を下って手賀沼沿いにい行って坂を登れば家だけど、もう歩けないかもしれない。タクシーに乗ったらどう言ったらいい?」「タクシーに乗るときは私が一緒に乗るから心配ないよ」「ああよかった。鏡台などは持って帰るの?」「どこへ?」「明日迎えに来て家に帰るのでしょ」「伝染病が流行っていて外には出られないよ」「どうして私はここにいるの」「私が年を取ってあんたを助けられないことが増えたし、あんたは食事の用意や家事も苦手になって何処か施設に入りたいと言い出した。Mさんに紹介してもらい二人でグループホーム寿を見て申し込んだ。今年1月から入居した」「家に帰っちゃダメなの?」「帰っても、私が病院に連れて行ったり食事の用意をするのが難しくなった」「そうだよね、お父さんの方が私より年上だものね」「私はあんたのお父さんじゃない、夫だよ」「私はお父さんの娘じゃなくて、あなたは私のご主人様か。電話が来たときお父さんからって言われたから、私は誰と結婚したかと考えたが分からなかった」「S先生の家で会って、浜岡で結婚して、東京に出てきた。AとL二人の子どもが生まれ、私は二人のお父さん。あんたのお父さんは中島Mさん、お母さんがSさん」「あなたの親は?」「今村TとK」「あなたは私のお父さんじゃなくてだんな様。ああよかった、あなたは厄介な人と結婚したね。ここは私の終の棲家だったんだ。よく面倒見てくれて、お医者さんも来てくれるし、いいところだよ。でも、ちょっとだけ家に帰りたい」「伝染病が治まったら外出して家を見に行こうね。一緒に散歩もしようね」「いつ?」「ウイルスに聞かないと分からない」「アハハ」「長くなったからまた明日電話するね」「電話、待ってるよ。ありがとう」200412c.jpg
(妻と歩いた散歩道。私を残してなだらかな坂を下り、階段を登りながら手を振っていた妻を思い出す。外出できるようになったら連れてきてやりたいと思う。)

潜水を繰り返しながら移動するカワウの群

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.4.11)
(アルツハイマー)

交互に潜水を繰り返しながら移動するカワウの群。小魚を咥えて浮上しした一羽、すばやく咥え直して飲み込む。200411.jpg

遊歩道脇に夢中で鳴くホオジロ、散歩のおばさんがスマホをかざしても逃げようとしない。200411a.jpg

しばらく姿を見せなかったが、お気に入りの鉄パイプに戻って来たカワセミ。200411b.jpg


『少しだけでいいから家に帰りたい』 (2020.4.11)
昨日午後の妻との電話、「もしもし、今どこ?」「家だよ」「直ぐ近くなのに何か急用?」「毎日電話しているじゃない」「毎日? 毎日電話くれたって記憶にない。今日は何の用事?」「あんたが元気かなと思って」「元気かって、時々横になって休むことはあるが、熱も出ていないし、変わったことはない」「どこで電話している?」「部屋にいるよ。いつも疑問に思っているけど、私は何でここにいるの?」「去年から二度も膵炎になって入院したし、目眩や吐き気、頭がガンガンして、辛くて何度も救急外来に行った。私も年をとって病院に連れて行くのが大変になったし、あんたも自分で食事や身の回りのことが苦手になって、何処か施設に入りたいと言い出した。ケアマネージャのMさんが紹介してくれて、あんたと一緒にグループホーム寿を見学し申し込んだ。、何ヶ月か待って今年1月に入所できた」「申し込んだことは憶えているが、ここに入ったことは知らない」「入院していた間に記憶が消えて、退院して記憶の混乱が治る前に直ぐここに入所したから記憶が残らなかったのだろう」「それで、申し込んだところにいつ入るの?」「ここが申し込んだところ」「もう入っているのか。周りの景色を見て、見たことのあるところだと思った。誰がここの費用を払うの?」「私が払っている」「あなたに苦労掛けたのね。心苦しいよ」「気にしなくていい。ここにいれば、食事、洗濯、掃除はやってもらえるし、訪問診療の先生が来てくれて、膵炎や辛かった目眩や吐き気、頭がガンガンするのも治って、私も安心しているよ。」「私もここにいるのがいいと思うが、少しだけでいいから家に帰りたい」「伝染病が流行って、外出も面会も止めてあんたたちは守られている。伝染病が治まったら家を見に行ったり、一緒に散歩しようね」「そんなこと言われると泣けてくる」「泣いたら私も辛いよ」「ごめん。嬉しいよ。ありがとう」「また明日も電話するね」「電話機返してくる」と言って、事務所で「電話終わりました。ありがとう」「じゃあお茶でも飲もうね」との会話が聞こえ電話は切れた。また同じような話しの繰り返しだった。200411c.jpg
(朝の散歩から戻ってくれば、久々に埋立地の杭にカワウが集まり、遊歩道沿いの岸には釣り人が並ぶ)

菜の花も色褪せて見える曇天

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.4.10)
(アルツハイマー)

今にも降り出しそうな雲、菜の花も色褪せて見える曇天。200410.jpg

ぽつりぽつりと降り始めた雨、じゃれ合うように若葉の間を潜るスズメ。200410a.jpg

ここまで来ると見える我が家の近所。いつも大きな声で「おはよう」と挨拶してくれた人、大きなマスクをかけて黙って会釈。200410b.jpg


『昔のことはいっぱい憶えているね』 (2020.4.10)
昨日午後、電話機を渡された妻、「どうするのかな」と言った途端切断。再度かけ直すと、切ってしまったと職員さんに相談に行っていた妻、「もしもし、触ったら切れちゃった。不細工なことして恥ずかしい。ごめんね。私バカになっちゃった」「ちょっと間違えただけ」「理屈を聞くと納得するが、記憶に残らない。片っ端から消える」「消えてもいいよ、何度でも同じことを言うから」「淋しいことや辛いことだって直ぐ忘れるけど、すぐまた考えちゃう。市役所のところから沼に沿って歩いて、坂を登れば家。鍵はどうなっているか、あなたはいるか考えるが、どうしようもなくてばたんきゅう。私の心の課題だからまたすぐに考え、何をしていいか分からなくなってイライラ」「いつも家に歩いて帰る話しが多いね。いまは外出禁止で外に出られないのに」「言われたらそうだと思うけど、考えているときはそんなこと忘れている」「でも、昔のことはよく憶えているね。初めて出会ったときのことだって憶えていたね」「S先生の家に呼ばれて、行ったらあなたに会った。結婚式の時に写真館の前でタクシーから降りて花束を溝に落とし、運転手が洗ってくれた。何年か前、S先生が亡くなってお宅に行ったとき年取った奥さんが泣いてかわいそうだった」「昔のことはいっぱい憶えているね」「でも、昨日のことはもう思い出せない」「昨日は昼寝中に電話したから、グループホーム寿にいるのにどこにいるか分からなかった。学校か病院に入院していて私が迎えに来ないからと泣いていた。やっとグループホーム寿にいると分かって安心したようだった」「全然記憶にない」「今日は元気な声で嬉しかったよ。長くなったからまた明日話そうね」「電話ありがとう。返しに行ってくる」と言って、切断しないまま事務所の人に電話機を返す声。200410c.jpg
(大分積み増した抱卵中の巣、母さんの傍でじっと見守っていた父さん)

霞か薄雲の向こうに淡い日の出

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.4.9)
(アルツハイマー)

藤棚に膨らみ始めた蕾を眺めていたら、霞か薄雲の向こうに淡い日の出。200409.jpg

遊歩道脇まで朝日が差し込めば、蘆の枯れ茎の皮を剥ぐオオジュリン。200409a.jpg

転ばぬように一歩ずつ菜の花畑への傾斜を登って、ふと見上げたらこっちを見ていたモズ。200409b.jpg


『私が入る予定のところ?』 (2020.4.9)
泣かれて困った昨日午後の電話、「もしもし」「泣き声は嫌だよ」「ずっと泣いていた」「何が辛かったの?」「あなたがどこかへ行って、いくら待っても帰ってこないから。声を聞いて嬉しくてまた泣けた」「ずっと家にいて、毎日電話したよ」「知らない、電話してきたのは他の誰かだよ。・・・ベッドの上に寝たら泣いた鼻水が逆流しちゃった。私はいま学校にいる。いつ迎えに来てくれる?」「学校じゃない、グループホーム寿だよ」「どこにあるの?」「消防署の先の交差点を過ぎたら最初の路地を左に曲がって、突き当たりを右に曲がったところ」「そこはあなたと見に行って、私が入る予定のところ?」「そうだよ」「ああよかった。私はそこに入っているのね」「壁の方を見て、家にいたとき使っていた鏡台があるでしょう」「あるある」「入所したときに娘たちが二人で運んできてくれたよ。テーブルの上にラジオもあるでしょう」「あなたが買ってくれたラジオ」「そこはあんたの部屋」「学校だか病院に連れて行かれて、ずっと迎えに来てくれなかった。私が入ることになっていたところに来ていたとは知らなかった」「もしかしてJAとりで総合医療センターに入院した時のことかな。入院中にすっかり忘れて、退院したらどこに行っていたかも分からなかった。記憶の混乱が治らないうちにグループホーム寿に入所したので、入る予定だったところに来ているとは思えなかったのかな」「やっと分かった。気が楽になった。私はここにいていいのね?」「いいよ、そこはあんたの部屋だから。コロナの伝染病が治まったら、外出して家を見に行ったり一緒に散歩しようね」「それを聞いて嬉しい。ずっと前に消えていなくなり、私を見捨ててもう来ないのかと思った」「一緒に散歩したり、家を見に行くためにも元気でそこにいてね」「やっと分かって安心した。もう泣かないよ」「明日も電話するね」「待ってるよ。ありがとう」
何度も忘れ、何度も同じことを話して、一日一日が過ぎて行く。外出も面会もできなくなってストレスが溜まってきたようだ。200409c.jpg
(菜の花に埋もれそうに止まっていたホオジロ、こんな光景を見たらストレスもやわらぐだろうに。)

桜が散って菜の花が見頃になった市民農園跡地

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.4.8)
(アルツハイマー)

桜が散って菜の花が見頃になった市民農園跡地。200408.jpg

ヒヨドリが飛び去ったら入れ替わりにシジュウカラ。200408a.jpg

レンズを向けたら逃げたシジュウカラ。200408b.jpg


『何で私はここにいるの?』 (2020.4.8)
妻に電話した昨日午後、「もしもし、お昼ご飯が済んで一休みしていたところ」「眠ってたの?」「ちょっとだけ。ここから近いから電話より帰った方が早い。直ぐ行こうか?」「いまは外出も面会もできないよ」「どうして?」「伝染病が流行っていて、感染防止のため」「あなたはどうしてる?」「家にいるよ」「食べ物はどうするの?」「なくなったら買いに行く」「だったら私がここから歩いて行ったら買い物に行くより簡単じゃない」「あんたが外出して感染したらそこの他の人たちも感染させちゃう。だからそこは外出禁止になったの」「何で私はここにいるの?」「家にいたとき、お腹が痛くなったり、目眩や吐き気や頭がガンガンして頭の気持ちが悪くなって何度も救急車やタクシーで病院に行った。私も年を取り過ぎて思うように動けないし、あんたも介護してくれる施設に入りたいって言い出した。ケアマネージャのMさんの紹介でそこを見学し、あんたも気に入って申込んだ。何ヶ月も待って、1月にやっと入居できた」「憶えていないけど、あなたにずいぶん苦労かけてるね。私は元気になったし頭の気持ちも悪くない。もうここにいる意味がない」「そこにいたら訪問診療のお医者さんが来てくれ、薬をもらって、頭の気持ちが悪くて辛いのも治った。お腹も痛くならなくなった。そこでは食事、洗濯や生活面で専門の介護支援が受けられる。伝染病の防御もしっかりしている」「長くここにいたの?」「3ヶ月くらい」「まだ3ヶ月か。もう何年もいたかと思った。3ヶ月くらいでわがまま言っちゃダメだね。今日は以前のことを思い出せない」「眠ったからだよ。目が覚めたら思い出すよ」「私にとっても、あなたにとってもここにいるのが一番いいの?」「そうだよ。そこで楽しみを見付け、笑顔で過ごして」「笑ってなんかいられないよ」「じゃぁ自分で足の裏や脇の下をくすぐったら」「アハハ」「また明日電話する」「あなたも元気でね。ありがとう」で切れた通話。200408c.jpg
(我孫子に引っ越してきて間もない頃の手賀沼散歩、「これがオオバン」と教えてくれた妻。市の鳥になった程たくさんいたが、いまはめっきり数が減ってしまった。)

赤紫に染まった空を映す沼

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.4.7)
(アルツハイマー)

薄雲の向こうはもうじき日の出、赤紫に染まった空を映す沼。200407.jpg

遊歩道を歩いていたキジ、水路を飛び越え畦道で鳴いて羽ばたき、くるっと向きを変えて開いた尾羽。200407a.jpg

散ったソメイヨシノにまだ通ってくるヒヨドリ、蜜を吸っているのか逆立ちをして。200407b.jpg



『えーと、いちいち憶えていないよ』 (2020.4.7)
妻に電話した昨日午後、「もしもし、こんにちは」「元気な声だね」「元気になったよ。悪い声だと嫌な奴だと言って可愛がってくれないと困るからね」「お昼ご飯、ちゃんと食べた?」「食べたよ」「何食べた?」「今日はね、えーと、いちいち憶えていないよ。何を食べたか聞くならノートに書いておかないとダメだな」「ラジオ聞いてるの?」「ベッドに腰掛けて聞いてた」「日本の歌のCDも聞いた?」「でたらめにボタンを押すからから何が鳴るか分からないけど、日本の歌も鳴るよ」「分からないときには職員さんに頼めばやってくれるよ。昨日頼んでおいた」「じゃあそうする。外と遮断されてるから何があったか分からないが、何かあったの?」「やっと緊急事態宣言が出るようだ」「テレビが東京のことばかり言っていたような気がする」「東京と神奈川、千葉、埼玉らしい」「直ぐ近くでも、どんどん家が遠くなる。外を歩かなくて脚が弱ったら歩いて帰れなくなる」「あんたのS姉さんは脚が弱らないように合戸のホームで一生懸命歩いているってN姉さんが電話で言っていた。あんたも廊下を歩けばいい」「今村さん何してるのって言われちゃうな」「脚が弱って歩けなくならないようにトレーニングしているって言えばいい」「それがいい。そうするよ。世の中が騒がしくて、外に出て歩けないって、初めての断絶の経験で辛いよ」「いまは生きてることが大切。脚が弱らないように廊下を歩いてね」「アハハ、分かったよ」「また明日電話するね」「電話ありがとう。明日も待ってるよ。廊下に出たら事務所だから電話を返してくる。・・・・・電話終わりました。ありがとうございました」
日替わりで気分が鬱的になったり治ったり。天候の変化と関係がありそうだが、自宅にいた昨年より明るくなって鬱的な期間が短くなったように感じる。200407c.jpg
(遊歩道のソメイヨシノが散って咲き始めたカンザン。緊急事態宣言が出ても健康維持のための散歩は禁止されないと聞いて安堵)

なぜかコロナが頭をよぎった今朝の日の出

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.4.6)
(アルツハイマー)

斜面林の向こうが輝き、なぜかコロナが頭をよぎった今朝の日の出。人が見えたら端に避け、通り過ぎるのを待った遊歩道。200406.jpg

足元を見れば、タンポポまでがコロナに見える不安感。遅きに失しただろう非常事態宣言。200406a.jpg

茂みの中に飛び込んで、なぜか鳴かない隙間から見えたホオジロ。200406b.jpg


『自分でも変わったと思うよ』 (2020.4.6)
泣かれるかと恐る恐る電話した昨日午後、「もしもし、お昼ご飯食べて、大きい教室に来ていた。部屋はワックスを掛けているから別の部屋から電話してる。他の人はリーダーが広い部屋へ連れて行って何かお話ししている。久しぶりだけど元気?」「私は元気。昨日も電話したよ。」「昨日何を話した?」「みんな元気だが自分だけ元気じゃないと泣いていた。明日から泣くのは止めるって言ってた」「いつだって泣きたいよ」「泣くのは嫌いだよ。私まで辛くなるから。最近、ずいぶん回復してよくなったね」「自分でも変わったと思うよ。新聞を読んでも直ぐ忘れたのに、書いてあることが理解できるようになった。私はどこが悪かったの?」「家にいた頃、膵炎になって二度入院したし、目眩や吐き気、頭や耳がガンガンし、頭の中に仕切板が入っていると訴えることが多かった。背中に貼る薬の副作用を心配し、Y先生からも、救急外来の先生からもしばらく使用を止めるよう指示が出た。直後にグループホーム寿に入居して訪問診療の先生が目眩の薬や血流をよくする薬を処方してくれて頭の気持ちが悪いのは治った。膵炎も再発していない」「頭の気持ちが悪かったことは憶えていなが、いまは頭の気持ちは悪くない」「今日は元気な声で、会話もはっきりしてる」「話を聞いてそうだと思うし、客観的に見てよくなったからここにいる意味はなくなったと思う。私は私として自立するために家に帰りたい。辛くても歯を食いしばって我慢する」「そこにいる意味は大きいよ。家に帰っても私たち二人は年をとり過ぎ、急に体調変化があっても助けられない。いまあんたの状態がいいのは、そこにいて訪問診療の先生の診察を受けているし、健康や生活は専門の介護をしてもらい、伝染病に備えても細心の防御している。家に帰ったらできないことばかりだよ」「みんな向こうでテレビを見てる」「あんたも行って見たら」「そうする。電話を切るよ」200406c.jpg
(羨ましくも見える、いつも同じ場所で出会うカルガモのペア。)

黒い雲から出て薄雲の中に日の出

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.4.5)
(アルツハイマー)

黒い雲から出て薄雲の中に日の出。200405.jpg

淡い日差しの中を飛んできたツグミ数羽、膨らみ始めた新芽を啄みに来たのか。200405a.jpg

揺れる水面を目で追えば、突如浮上したカワウの嘴に大きな獲物。200405b.jpg


『思うように事が運べないのは辛いよ』 (2020.4.5)
天気の変化が激しいから気分が下降気味かと思いつつ電話した昨日午後、当たりだった。「もしもし」と最初から泣き声。「泣いてるの?」「元気なつもりでも、病気が私を追い掛けてきているみたいだ。みんな平気な顔でいるのに私だけが辛いのは、私は病気に違いない」「みんなといるときも泣いていたの?」「泣いていなかった。自分の個室に戻ってから泣いた」「みんなだって部屋に入ったら泣いた人もいるかもよ。あんた一人だけが辛いって分からないじゃない」「みんなが平気でいるのに私の心が辛いのって悔しいよ」「昨日はずいぶんよくなって嬉しかったけど、治ってきたからまた負けず嫌いの虫が動き始めたかな。今はどこも悪いところはないよ。そこへ入ってから、薬を飲んで膵炎も再発していないし、目眩や吐き気、頭や耳がガンガンしたり、頭の中に仕切板が入っているような気持ち悪さもなくなっている。いまはどこも悪くないよ」「私はずっとリーダーでやってきたでしょ、いまはみんなが話してるのに私だけが元気がないんだもの。どうでもいいことを勝手にしゃべってる人たちと一緒だと、思うように事が運べないのは辛いよ」「仕事じゃないからどうでもいいじゃない。みんな言いたいことが別々だから。昨日はあんたの理解力がずいぶん戻って来たと思ったよ。理解力が戻って来たから脈絡のない話しには入りにくくなったんだと思うよ」「話しに入れないのは悔しいし辛いから部屋に戻ってきた。個室でよかったと思う。好きなように泣けるもの」「泣くんじゃなくてラジオを聞いたり、日本の歌のCDをかけて歌えばいいいじゃないの」「そうか、ラジオを点けるか。明日からは頭を切り換えて泣くのは止めるよ」「明日じゃなく今日からね」「分かった。頭を切り換えるよ」「明日の電話でどうなっているか楽しみにしてるよ。もう電話機返してきて」「じゃぁ切るよ」
しばらく隠れていた負けん気とわがままが出てきたらしい。ショートステイで話し相手だった気の合った人が来ていなかったとき、別の人たちとの話の輪に入れなくて同じような不満を言ったことがあった。200405c.jpg
(お前には羽があるのに飛び越せないのか金網の柵。背伸びして向こう側を覗き、鳴いて羽ばたき尾羽を広げたキジ。)

山の端の薄雲の向こうから日の出

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.4.4)
(アルツハイマー)

山の端の薄雲の向こうから日の出。200404.jpg

残り少ない花を潜って未練気にホオジロ。200404a.jpg

葦の茎の皮を剥いでいたオオジュリン、レンズに気付いたかパッと飛ぶ。200404b.jpg


『伝染病に気をつけてここで生き抜く』 (2020.4.4)
期待と不安半々で妻に電話した昨日午後、妻は元気な声。「もしもし、わたし。さっきまで考えていたの。帰りたいなぁっていう気持ちだが、 帰れないっていう結論。東京の病院が満員になるほどの伝染病だから外に出られない。ここでやれることをやるしかないって、自分では客観的に見ているつもりだけど、他の人のことは知らないので自分だけのセリフ」「勉強したね」「何度か聞いたような気がするし、新聞を見てそう思った。ノートに書いておいた。あなたはどうしてる」「朝食の後片付けをしていて、食器を持ったまま転んで食器が割れて飛び散った。床やソファーが汚れて、助けてーって叫びたかった」「助けに行けないから放っておきな」「ダメだよ、私が生活してるもの」「私の同級生のTさんの奥さんが入っているところも2月末から面会できなくなったそうだ」「かわいそうに。私は伝染病のことが分かったから、ここにいることでほっとした気分。ここにいたらお医者さんが来てくれるって、あなたが書いておいたのを読んだ。忘れないように私もノートに書いておいたよ」「すごいな。全部分かっちゃったね」「あなたはどこにいるの?」「家にいる」「外には行かないの?」「パンを買いにコンビニに行く以外ずっと家にいるよ」「家に帰って一緒に暮らしたい」「お互いに年を取り過ぎて難しくなったね」「そうだね」「伝染病のこともあるし、あんたはそこにいたら家にいるより安全だよ」「医師の手を借りて、与えられた環境の中で生き抜く。伝染病に気をつけてここで生き抜く。だけど辛いなぁ」「伝染病が終わったら会いに行くし、家を見に来ることもできる。一緒に散歩もできる。頑張って待とう。明日も電話するね」「分かった。事務所に電話を返してくる」
びっくりするほど家に帰れない理由を理解していた。昨年夏、急性膵炎で入院した以前に戻ったような妻だった。さて、明日はどうなっていることやら。200404c.jpg
(来年は見せてやれるだろうか菜の花やケヤキの芽吹き、ダメならばオリンピックだって中止だろうに)

タシギじゃなくてオオジシギ

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.4.3)
(アルツハイマー)

ムクドリ数羽が突然飛び立ち何かが走った。咄嗟に撮った数枚に写っていた一枚をタシギと書いて投稿しようとしたが、何となくしっくりしなくて投稿できない。「嘴の基部がタシギより太いように見えます。オオジシギではないか」との友のアドバイスでオオジシギと書き直した。200403.jpg

オオジュリン数羽が枯れた葦の間を移動、急に紛れ込んできた一羽、よく見たらアオジ。200403a.jpg

ちょっと離れて、「こっちこっち」と隙間に出てきたオオジュリン。200403b.jpg


『何を話そうと思ったか忘れちゃった』 (2020.4.3)
妻に電話した昨日午後、Oさんが電話機を妻に渡す声「お父さんから電話ですよ」「わざわざありがとう。何分くらい話してもいい?」「何分でもいいですよ」と会話が漏れてきた。
「もしもし、昼ご飯食べてから部屋に戻ってラジオを点けたら音楽が鳴った。そのとき電話を持って来てくれた」「昨日友だちのAさんにポカリスエットと何日分かの新聞を持って行ってもらった」「受け取ったと思うけど、どこだったかな。・・・ないよ。事務所で聞いてくる」と。Oさんが部屋に来て探してくれているらしき会話が聞こえ電話が切れた。
15分後に電話すると、「いま盛り上がってみんなとお話中、新聞に出ていたお父さんの撮った鳥の写真の話しかな。どうします?」とOさん。「楽しくやってるならまた後で電話します」と切った。
また15分ほどしてかけ直したら、「まだお話してるけど呼んできますね」とOさん。「もしもし、ごめん。あなたがどんな人かって聞かれたから、出張に出掛けたらあっちこっちに行って、どこにいるか分からなくなっちゃう人だと言ったら、みんなゲラゲラ笑ったよ」「そう、おもしろい話ができてよかったね。化粧品がなくなったって聞いたからまとめて買っておいた。いま不足しているのはなに?」と聞いたら鏡台の前に行って調べ始めたが、直ぐ他のことが気になって脱線。やっと使い切った二品目の商品名を聞き出した。「後で届けておくからね」「近いから私が取りに行こうか?」「伝染病が流行っているからダメだよ」「そうだったね。何を話そうと思ったか忘れちゃった」「明日も電話するから、思い出したら明日教えてね」「じゃあ電話機を返してくる」と言ってプツンと切れた。
外出の仕度をして、グループホーム寿まで化粧品を届けたが、妻に気付かれると帰りたいと泣かれるだろうから玄関前でOさんにそっと渡して帰る。いつまで続くだろうか面会できない期間。200403c.jpg
(金網の向こうに雌がいるのだろうか、昨日朝も今朝も、金網の前で鳴いて羽ばたいていた雄のキジ)

遊歩道を歩けば枯れた葦の向こうに日の出

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.4.2)
(アルツハイマー)

遊歩道を歩けば枯れた葦の向こうに日の出。右に行っても左に行っても見つからなかった隙間。200402.jpg

散歩の人が近寄って来たら、遊歩道から飛び立って通り過ぎるのを待つツグミ。200402a.jpg

鳴き声を頼りに探したら、繁みの隙間から見えたホオジロ。200402b.jpg


『外へ出られないのは健康的じゃない』 (2020.4.2)
妻に電話した昨日午後、「もしもし」「もしもし、元気な声だね」「元気でいるものですか、よたよた歩いてるよ。午前中はみんなで集まって何かお話を聞いたが、あまり聞きたいお話でもなかったから記憶にない。お昼ご飯を食べ、みんなで掃除をして、自分の部屋に戻った」「ご飯はおいしかった?」「おいしかったよ」「よかったね」「今日は雨だけど、窓から見ると垣根があって、隙間から車がいっぱい駐車していた。その先の広い道を下ったら市役所、手賀沼沿いに家に行く道は分かるから、あなたが本当に家にいるか検分に行こうかと思った。トイレに行って戻って来たら、電話が来たと繋いでくれた」「ありがとうって言ってる声が聞こえたよ」「私はちゃんとお礼を言って、丁寧に応対するようにいつも心がけているよ。そうすればやさしく対応してもらえるもの」「午前中にAさんから電話があって、私が腰が痛いとブログに書いたから、必要なものがあったら買ってきてくれるって言ってくれた。足りないものの買い物をお願いした」「彼女は優しいね。手紙もくれたよ。私も元気になったから帰っていろいろやってあげる。ここにいるのは意味ないもの」「家にいるときは、目眩や吐き気、頭がガンガンしたり、頭の中に仕切板があるみたいだと苦しんでいたが、そこへ入って平和台病院の訪問診療の先生が定期的に来て診てくれすっかりよくなった。そこでは元気に過ごせるように健康面や生活面で面倒を見てもらえる。そこにいる意味は、家にいては難しい健康的な生活を維持できるってこと」「外へ出られないのは健康的じゃない」「いまは伝染病が流行っているから外へ出られないの」「そうか。日本中?」「日本だけじゃなく世界中」「厄介だね。いつ終わるの?」「分からない。終わったら一緒に手賀沼へ散歩に行ったり、家を見に戻ったりしようね。続きの話は明日しよう」「じゃあ、電話機を返してくる」200402c.jpg
(強風に波立つ水面すれすれに飛ぶユリカモメ、こんな日はさりげなく急ぎの用事を思い出し、散歩を断っていた妻を思い出す)

霧に消えた対岸や岡発戸新田の突端

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.4.1)
(アルツハイマー)

多少腰の痛みがやわらいで、500歩の道のりを800歩程かけて辿り着いた桃山公園の高台。霧に消えた対岸や岡発戸新田の突端。200401.jpg

高台の下の市民農園跡、小糠雨に濡れたサクラの花と菜の花。200401a.jpg

鳴き声が聞こえる方を見上げていたら、サクラの花が揺れ蜜を吸うヒヨドリの姿。200401b.jpg



『私あなたと結婚してたの?』 (2020.4.1)
妻に電話した昨日午後、「もしもし」「はいはい、元気のいい声だね」「肩の荷が下りたから」「何があったの」「結婚式に行ってきたから」「誰の?」「姉妹会の誰かの・・・うーん、分からなくなった」「毎日電話しているけどそんなことなかったな」「毎日? 私、何って言ってた?」「いつも同じような会話だよ」「私の頭には一日一日が別々には入っていないの。面倒くさいとか可愛いとかでおしまい。私はどこにいるの?」「グループホーム寿」「当たり~。ここはホテル?」「あんたが元気になって過ごせるようにお世話してくれるホーム」「あんたはどこにいるの」「家」「直ぐ近くの?」「そう、二人が一緒に住んでいた家」「手賀沼から坂を上がったところ?」「そう」「二人とも元気?」「誰と二人?」「結婚した人と」「結婚した人ってあんたじゃないの。いまは一人で住んでるよ」「私あなたと結婚してたの? 私は誰と結婚したのかって考えたが分からなかった。あんただったのか。一人で住んでるの? 一人で困らない? 淋しかったり辛くない? 頭を撫で撫でしてあげよう。ああ、家に帰りたい」「伝染病が流行っているから外出できないよ」「人の出入りが激しいところに行ってはダメとテレビで言ってた。いつまでダメ?」「分からない」「夫婦だからあなたもここに来て一緒に住んだらいいのに」「私はそこに泊めてもらえないの」「夫婦でもダメか。訳のわからないことが続いて、家は下の道を歩いて坂を登ったところだと憶えていたが、そのとき夫が誰か頭に出てこなかった。人が大勢いると誰が誰だか分からなくなる。自分の子どもか兄弟の子どもかも分からなくなって、一人ずつでも顔は同じに見えちゃう」「そうか、今日は頭の中がごちゃごちゃしてるみたいだね」「結婚した相手も分からなくなって困っちゃうな。あはは。今日は夫が誰だったか考えちゃったが、あんただったのね」「分かってよかった。長くなったから、また明日電話する」「明日も電話してね。他人じゃなくてよかった。電話機返してくる」
夫が誰だか分からなくなったと笑って話した妻、私は笑えない。天気が悪くなる前によくある症状だ。2004014.jpg
(植えたばかりの垂れ桃の苗木を見て、「咲いたら見に来ようね」と言った妻。二年ほど前の散歩のときだった。)