高台からしばし眺めた曇天の沼

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.3.31)
(アルツハイマー)

目が覚めたら腰が痛くて立つのも座るのも容易ではない。杖をついて近所の桃山公園に辿り着き、高台からしばし眺めた曇天の沼。200331.jpg

市民農園跡を見下ろせば、まだ咲いている桜の向こうのに咲き始めた菜の花。200331a.jpg

桃の花が咲く公園の広場を、何周もジョギングしていた近所の人。200331b.jpg


『外が大変だってやっと分かったよ』 (2020.3.31)
昨日午後の妻との電話、「もしもし、今どこにいるの?」「家だよ」「家って高野山の家?」「そう」「近いから会いに行きたい」「いまは外に出られないよ」「何があったか分からないがみんな行動を拘束されてるみたい」「コロナウイルスの伝染病が流行っているからだ」「日本中?」「世界中。中国だけじゃなく、アメリカもイタリアもスペインも大変なことになっているよ」「ここから出られないことの脅しかと思っていた。甘く見ていたのは間違い?」「志村けんさんがコロナウイルスで肺炎になって亡くなったとテレビで言っていたよ。あんたがそこにいたら、ウイルスが入って来ないように面会や外出を止めて守ってくれているし、平和台病院の先生が訪問診療に来てくれるから、病院に行って感染する心配もない。薬も薬剤師さんが届けてくれる。最近、目眩や吐き気、頭がガンガンすることや頭の中に仕切板が入ったような不快感もなくなったね」「頭の気持ちが悪いのはなくなって元気になったよ。だからちょっとだけ家に帰りたい」「伝染病が流行っていて外へ出ちゃダメなんだ」「ああそうかぁ。ここは私が入ることになっていたところだよね」「そうだよ。見学して、乗り気になって自分で申込書にサインしたよ」「それは憶えているけど、ここに入った時のことを憶えていないから、ここが同じところだとは分からない」「1月3日から9日まで膵炎再発で入院している間に訳がわからなくなった。退院したときはいろいろなことを忘れてしまい、1月12日にここに入居した時も混乱していた。半月以上経っていろいろ思い出し、会話もはっきりしてきた。ここにいたらバランスのとれた食事が出るし、夜も見回りに来てくれる。体調もずいぶんよくなったよ」「ここは私にとっていい環境なんだね。でも、帰れないのは辛いよ」「伝染病が治まったら外出して家を見に行ったり手賀沼を散歩しようね」「いつまで待つのか分からないけど、生きてるために我慢するよ。外が大変だってやっと分かったよ」「今日も元気な声を聞いて嬉しかった。明日も電話するね」「電話機、どうすればいい?」「事務所に返して」「分かった。電話ありがとうね」と、物わかりのいい妻を演じていたが、明日はまた忘れているだろう。200331c.jpg
(沼へ下りる階段の前に桃の花が咲いたと話したら、「その階段は怖くてもう降りられない。頭の中の散歩ではピョンピョン跳ねて降りているよ」と言った妻)

サクラが散り始めれば菜の花が見頃

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.3.30)
(アルツハイマー)

市民農園跡のサクラが散り始めれば菜の花が見頃。200330.jpg

やっと見付けたアオジはすばやく草に潜り、声はするが姿が見えないホオジロ。見上げて歩けば羽ばたいたヒヨドリ。200330a.jpg

鳥がいない朝だと嘆けば、我が家の庭に飛んできたムクドリ。200330b.jpg



『今どこにいるのだろうかと焦っちゃう』 (2020.3.30)
昨日午後の電話、「もしもし」「もしもし、雪止んだね」「木に積もった雪が落ちている。窓の外が雪で白くなったら自分がどこにいるか分からなくなった。頭の中であっちに行ったりこっちに行ったりしていて、窓の外を見るといつも見えてるものが見えなくて、今どこにいるのだろうかと焦っちゃう。頭がバカになっちゃった」「雪が止んだからその内に解けて見えるようになるさ」「トイレに行ってきて、窓の外にいつもの景色が見えないからどこにいるか分からなくて、廊下に出て戻ると駐車場に車がたくさん駐めてあったので自分の部屋っだと分かった」「分かってよかったね」「駐車場の向こうに行ったら広い道、市役所の方へ行って手賀沼沿いに歩いて坂を登ったら家、畑の道を少し行くと広場、昔は松林だったところだよ」「桃山公園だね。今朝、傘を差して高台から沼や、下のサクラや菜の花を撮った。広場に出たら赤、ピンク、白の桃の花がきれいだった。朝早かったし雨だから誰にも会わなかった」「ここから外へ出てもいい時になったら歩いて行きたい。景色が変わってると分からなくなっちゃう。あなたと♪オテテツナイデ~で行かないと迷子になっちゃう。天気がよくて、建物や景色がよく見えたら分かると思う」「そうか」「何にもすることがなくて、手賀沼の景色が浮かんできたが、景色が変わっていてどこだか分からなくなった。いつもの景色を探してもいつもと違う景色が出てきて、頭がおかしくなってしまった。あなたと一緒に行くときは、ズボンの後ろを持っていないと迷子になりそう」「ひもで結ぼうか」「アハハ。伝染病はいつ終わる?」「分からない。オリンピックも延期になったし、人から人へ感染するから、東京だって人の移動を禁止するかもしれない」「変な時代になったね。病気にならないように許可が出るまで待つしかないのか」「会えなくても毎日電話するからね」「電話機どこへ返すの?」「事務所」「右の切るボタンを押したら切れる?」と言った途端通話は切れた。200330c.jpg
(モニターをじっと見詰めたら「家に帰りたい」って叫んでるように見えてきた)

雪にはならず雨になった手賀沼

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.3.29)
(アルツハイマー)

自宅から畑の中の道を500歩、傘を差して立った桃山公園の高台。雪にはならず雨になった手賀沼。200329.jpg

市民農園跡を見下ろせば、雨に濡れたサクラと咲き始めた菜の花。200329a.jpg

雨に濡れ桃の花が鮮やかな桃山公園。200329b.jpg


『わからないけどわかった』 (2020.3.29)
天気が下降気味だから気分が落ち込んでいるだろうと思いながら電話した昨日午後、やっぱり予想は当たって「もしもし、あなたどこにいるの?」「家だよ」「家ってどこ?」「高野山」「直ぐ近くじゃないの、歩いて会いに行きたい」「いまは誰も外に出てはいけないの」「あなたは一人? 誰といるの?」「一人だよ」「私が行ってだめならあなたがここに来て泊まればいいじゃない」「私は泊めてもらえないし、外に出ちゃダメだから家にいるよ」「私を助けて、もうこんなところにいるのは嫌。なんでここにいるの?」「去年から、急にお腹が痛くなったり、吐き気や目眩で救急車を呼んだりタクシーで病院に行くことが増えた。私も年を取ってあんたを病院に連れて行く体力がなくなって、救急車やタクシーの運転手に助けてもらうことが多くなった。具合が悪くなったとき助けられないから7月にそこを申し込んだ。12月にやっと空きができた」「私はもう元気になったよ」「そこにいれば平和台のお医者さんが訪問診療してくれ、目眩の薬をもらってから元気になった」「時々お医者さんは来てくれるよ。あんたの病院は?」「伝染病が流行りだして、順天堂の先生が依田内科に手紙をくれて診察と薬は全て依田内科で診て貰っている」「それならよかった。私が一人になっちゃうから、あなた死なないでね」「心配しないで、注意してるから」「ちょっとだけでいい。あなたが迎えに来て家に連れてって」「伝染病の流行が終わったらね」「あなたがここに会いに来るのもダメ?」「2月末までは毎日面会に行って会っていたよ。伝染病が流行って、そこでの面会も、そこからの外出もできなくなったの」「来てくれたって、知らない」「ノートを見てごらん、書いてあるよ。面会に行けなくなってからは毎日電話してるよ」「知らない。市役所に行ったとき、家まで歩いて行ってこっそり見てこようと思った」「それは空想だよ」「そうかなぁ。家は高いところにあって、近くで沼も見られるし大好きだった。行けないなんてつまらない人生だ」「伝染病が治まったら家を見に行って手賀沼を散歩しようね。明日も電話するよ」「わからないけどわかった。電話どうするの?」「事務所に返してきて」「分かった。切るよ」200329c.jpg
(ここから階段を下り遊歩道を散歩していた妻。一昨年、もうここから下らないと約束した。丈夫だった頃を思い出し、決めていた折り返し点より遠くまで歩いて疲れ果てたことがあったから。)

強風にのたうち回る枯れた葦

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.3.28)
(アルツハイマー)

遊歩道から小鳥の姿が消え、強風にのたうち回る枯れた葦。200328.jpg

今年も巣作りを始めたコブハクチョウ夫婦、せっせとヒメガマの茎を集める。200328a.jpg

風を避けコガモは岸辺に隠れるように、浮上したカイツブリだけが水面を走る。200328b.jpg



『惚けると何も分からなくなって途中で消えちゃう』 (2020.3.28)
妻に電話した昨日午後、「もしもし」「はい」「どこにいるの?」「家だよ」「どこの家?」「高野山」「どこだか分からない」「友だちのAさんの家の前から坂を登ったところ」「ここからだと手賀沼の横を通って、坂を上り、神社から来る道を左に行ったところ」「そうだよ」「いつもその道を通って帰ることばかり考えていた」「そこが家だ」「お昼ご飯を食べて昼寝していたから惚けてて、何が何だかわからない。道は憶えていると思うが、それでも直ぐには分からない」「目が覚めたら道のことは思い出せるよ。午前中は何をしたの?」「えーとねぇ、なにかあって疲れちゃったの。えーとねぇ、惚けると何も分からなくなって途中で消えちゃう」「お昼ご飯はなに食べた?」「何だったか忘れたけど、おいしく食べたよ。食べた後で部屋に戻ってベッドに潜り込んだ。うとうと眠りかけたら電話が来た。訳が分からないからあちこち見たらラジオは消してあった。何か言ったけど変なこと言ったかな?」「直ぐ道の話を始めちゃうね。どうして?」「私は道を憶えるのが苦手だからじゃないかな」「もう目が覚めた?」「窓の外の垣根は赤い葉っぱが出てきて、駐車場には車がいっぱいある。その先は市役所の方に行って手賀沼沿いに家に帰る道。手賀沼からここへ来る道は大橋から来た道の坂を途中まで登って左に細い道に入ったところ。ここは何だった?」「グループホーム寿」「そう、寿のことは途中で消えちゃって思い出せない。大きいスーパー何だった?」「カスミ」「そこの裏から登ったところ辺りだと分かる。ここから356に出て、タビヤの先を左に入っても家に帰られるね」「そうだけど、また道の話しだね」「あはは」「手紙きた?」「来たような気もする。これかな。お母さん三寒四温で気温の変化は大きいが体調はどうですか。八王子の三人はみな元気です」「それ、娘のAじゃない。ちゃんと読んだ?」「読んだ気がするが後でまた読むよ」「今日も元気な声を聞いてよかったよ」「惚けているが死んではいないよ。電話、どこへ返すんだった?」「事務所」「いま部屋を出た。事務所に着いたよ。・・・電話終わりました」と、最後は事務所にいた人との会話で終わる。200328c.jpg
(強風に吹かれるままじっと耐える岸辺のヤナギ)

押し寄せる霧に見る見る消えた対岸

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.3.27)
(アルツハイマー)

押し寄せる霧に見る見る消えた対岸やネコの木の向こう側。200327.jpg

遊歩道脇で首を伸ばし羽ばたいたキジ、こっちに来るなと言っているように。200327a.jpg

待っても待っても鳴かないキジの雄。とことこ歩き始めたら畦道に雌、雄が近寄り過ぎたらちょっとだけ逃げ、また近寄れば振り返ってちょっと逃げる。200327b.jpg



『終わったらどこへ返せばいいですか?』 (2020.3.27)
昨日午後の妻との電話、「ありがとうございます。終わったらどこへ返せばいいですか?・・・分かりました。・・・もしもし、担当の人が電話機を持って来てくれた。元気ですか?」「元気だよ」「どこにいる?」「家」「ここから直ぐ行ける距離なのにずっと会えないね。風邪引いていない?」「引いていない」「お昼ご飯、何を食べた?」「レトルトの牛丼の具とサトウのご飯たべたよ」「ご飯、たくさん買ってある?」「地震用にたくさん買って、5食分使ったら補充してる」「それなら古くならなくていいね。私のお昼ご飯、みんなが食べ終わって二人だけが最後になった。お客さんみたいだった」「どうして?」「分からない」「お昼ご飯になったとき眠っていて遅れたのでしょう」「そうかもしれない」「何食べた?」「忘れた。昨日は外へ出掛けたよ」「どこへ?」「えーとね、どこだったかしら・・・」「空想じゃないの?」「そうかもしれない。夢だったのかな」「今は外に出してもらえないから夢か空想だね」「そうか、分からなくなっちゃった。テレビで感染のこと言ってた。だから外へ出してくれないのか」「我孫子でも一人感染者が出て、近隣センターなど市の施設を閉鎖したってAさんが電話くれた。テレビでも外出しないようにって言ってるよ」「外へ出ると感染するの?」「人から人へ移るから、誰が感染してるか分からないので怖い。買い物に出ても人には近寄り過ぎないように気をつけるよ」「元気でいるのは家族への貢献、地域への貢献だね。嫌だけど我慢するよ。あなたも気をつけて病気にならないでね。伝染が終わったら会いに来て散歩に連れてってね。ずっと会っていないから手をつないで歩きたいよ」「元気で待ててね。面会できるようになったら直ぐ会いに行って、一緒に散歩しようね。明日も電話するからもう電話機返してきて」「返すの?」「さっき担当の人に聞いていたよね。事務所に返して来て」「借りていたのか。行ってくるよ。・・・電話終わりました。ありがとうございました。まだ切ってないけど・・・」と手渡したらしくプツンと切れた。200327c.jpg
(先が見えない霧の朝。いつ妻と面会ができるかも霧の向こう)

曇天の薄雲の向こうに日の出

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.3.26)
(アルツハイマー)

曇天の薄雲の向こうに日の出。200326.jpg

鳴きながら頭上に飛来したヒヨドリ、咲き始めた花の間に見え隠れ。200326a.jpg

遊歩道と埋立地の間に集まって来たコガモたち。200326b.jpg



『どこにも出られない元気だけど』 (2020.3.26)
妻と電話で話した昨日午後、「もしもし」「はーい。今昼休みが終わって部屋に戻ったところ。職員の人が担当の人を部屋に送っていったりしている。ご主人はと聞かれたので高野山の家にいるって答えた。ここにいる人はみんなおかしいから、聞かれても訳のわからない作り話を言っているみたいだ。私は高野山にいることを知っているから答えたが、歩いても行かれるほど近いところだとまでは言わなかった。みんな何を言ったか忘れちゃうから私も適当に答えている」「食事が終わった後のお話会?」「そうじゃないよ。みんなほとんどしゃべらないもの」「じゃぁ職員さんとの話?」「そう。聞かれて知ってることは答えるが、知らないことは適当に答えるよ。手紙や回覧も持って来てくれる。これは私のもの、これは違うと言うと私のだけ置いていく」「他の人のものも持ってくるの?」「知らない。たとえばの話だよ」と、分かったようなよく分からないことを延々と話す。「ごめんね、話しの情景が見えないからよく分からない」と言えば、「頭の中がごちゃごちゃしている者の話がちゃんと分からなくたっていい。ここではそういう話しばかりだから」とちょっとご機嫌斜め。
「今日は天気がいいから元気そうだね」「元気だよ。どこにも出られない元気だけど、もう慣れたよ。ここに住んでる人とたまに話しても、全然違うことの答えが返ってくるから、お互いに適当に相づちを打ってるみたい。取り繕ってウソの会話ばかりしているからつまらない。それでいいんだ、直ぐ忘れちゃうから。話しをする人もいないから、食事が終わったらベッドで大の字になっている。電話を掛けてくれると話ができていいよ。長くなったから電話機を返してくる」と言って歩く気配。Oさんの声が聞こえて切れた。
前日と変わってハイな様子、ほとんど一人でしゃべり、私と話した気分になったのだろう。いつも私が言う「長くなったから」の台詞を妻が言って電話を終わった。こういう日の方が泣かれるより楽でいい。200326c.jpg
(コロナの猛威に面会も外出もなくて嘆く妻、ここならコロナも怖くない釣り人)

遊歩道に差し込み始めた朝日

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.3.25)
(アルツハイマー)

遊歩道に差し込み始めた朝日、パッと輝いたビオトープ脇のサクラ。200325.jpg

ホオジロを見付けて撮っていたら、頭上を通過し岸辺に着水したカルガモ。200325a.jpg

朝日を浴びて蘆の枯れ茎にオオジュリン。200325b.jpg



『一つだけいいことがあった』 (2020.3.25)
昨日午後の妻への電話、「もしもし」「もしもし、あなた。声を聞いただけで涙が出て来る。いま、みんなにもらった手紙を出して読んでいた。あなたはどこにいるの?」「家だよ」「ここを出て、坂を下って市役所の先を曲がって、坂を登ったら家。歩いて行ってはダメ?」「ダメ」「伝染病が流行ってるから? 私は元気だしここでは流行っていないよ」「外へ出たら流行ってる。我孫子でも感染者が出たよ。今は外へ出ちゃダメ。オリンピックだって延期するって言ってるよ」「それは見て知ってるけど。あたが迎えに来ることはできる?」「私も感染したくないからできない」「一つだけいいことがあった。あなたがくれたラジオ、点けると日本語を言っているし、日本の歌も聴ける。朝も、昼間も、晩にも点けるよ。ベッドの横に置いてある引出が付いたの、上はボールペンや鉛筆、その下はみんながくれた手紙を入れた。直ぐ出して読めるよ。カーテンを開けると駐車場が見えて、その先の坂を下れば家に帰る道が分かっている。帰りたいよ」「今は伝染病のワクチンも薬もないけど、できるまでには時間がかる。それまで罹らないようじっと待つしかない。みんなも同じだよ」「早く何とかならない?」「早くなんとかして欲しいね」「治まるまで待ってたら生きてるかどうか分からないよ。帰る道も忘れちゃって迷子になるよ。お医者さんにだって行っていない」「訪問診療にお医者さんが来てくれている」「私のところには来ないよ」「来ているよ。ちゃんと領収書が来たから」「そうか、忘れちゃった。ここで静かに待ってるだけ?」「そう」「ラジオは助かってるけど、あんたのことは全然言ってくれない。他のことはどうでもいい。私とあんたのことだけでいい」と言って初めて笑った。
「電話、長くなったから返してくる。どこへ返すの?」と言いながら歩いている様子。そのとき「どうしたの」とスタッフの人の声、「これ返すの」「一緒に行きましょう」と聞こえて電話は切れた。200325c.jpg
(水面を走るカイツブリを撮って、いつだったか散歩の時に「ああいうのを撮れる?」と言った発病前の妻を思い出す)

滝下広場のシダレザクラ

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.3.24)
(アルツハイマー)

滝下広場のシダレザクラ、スマホをかざし撮っていた同年代の人。200324.jpg

遊歩道の先から飛んできて、構えたカメラを覗き込むようなモズ。200324a.jpg

オオジュリンと入れ違いにシジュウカラ、真似をするにはちょっとふっくらしすぎ。200324b.jpg


『何だったか忘れたがおいしかったよ』 (2020.3.24)
昨日午後の妻への電話、電話機から漏れてくる「お父さんからですよ」とOさん、「ありがとう」と妻の声。
「もしもし」といきなり泣き声。「はーい、どうした?」「あなたが書いたものを読んでいたら電話が来た。いつのことか分からないが、私の体調が悪いときのことを読んだら大変だったのね。それを読んで泣きそうになっていた」「泣き声は嫌だね」「今どこにいる?」「高野山の家」「私も一緒に住んでいたところ?」「そう」「あなたは元気?」「元気だよ」「よかった。病気で入院してるかと心配していた。あなたがいないと私は困るから生きててね」「はいはい」「おかげさまで私は病気じゃない。だけど一人では耐えられなくなった。いずようがないから、家に様子を見に行こうと思った」「今はダメだよ」「伝染病が移るから? 移ってもいいから家に行きたい」「伝染病が移ると自分だけじゃなく、他の人にも移してみんなが迷惑するからダメ」「こっそり抜け出しちゃいけないものね」
話題を変えようと「お昼ご飯は食べた?」「食べた」「何を食べた?」「昼間つくってくれたもの、何だったか忘れたがおいしかったよ。あなたはご飯食べてる?」「ちゃんと食べてるよ」「どこで買っているの? セブンイレブン?」「そう」「具体的に聞かないと嘘かと思っちゃうから聞いてるの」「心配しなくても宅配弁当も配達されるし、通販やパルシステムも使ってる」「私には外のことは分からないの」「毎日電話して話しているよ」「知らない。忘れちゃったのかな」「電話した後、直ぐにノートに書いておくといいよ」「そうか、ノートに書いておくよ」「明日も電話するね」「じゃあ返してくる。誰に返せばいい?」「事務所に行ってOさんに返して」「Oさんね・・・・・Oさんいますか、主人との電話終わりました」とまだ切っていない電話機から漏れてきた妻の声。200324c.jpg
(空想の世界でしか手賀沼散歩できない妻に、見せてやりたい市民農園跡の桜と菜の花)

咲き始めた遊歩道沿いにサクラ

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.3.23)
(アルツハイマー)

枯れた葦の隙間からビオトープ辺りを眺めたら、咲き始めた遊歩道沿いにサクラ。200323.jpg

今朝も来たクロネコヤマトの裏の木に、遊歩道を人が通れば逃げて来て。200323a.jpg

鳴き声に呼び止められ戻って待てば数分後、また鳴いて羽ばたいたキジ。200323b.jpg



『頭の中では自然に手賀沼に行っちゃう』 (2020.3.23)
昨日午後の妻との電話、「もしもし、元気?」「元気だよ」「どこにいるの?」「家」「どこの?」「高野山」「私が住んでいたところ?」「そうだよ」「家の前に車が置いてあった。もうないの?」「まだあるよ、軽自動車一台」「知らなかった」「あんたも乗っていたよ」「車はもう忘れた。家が懐かしい。頭の中では自然に手賀沼に行っちゃう。あそこはこうなっていたと、自分で嘘のことを作っちゃう。家に行きたい。あんたは一人で住んでるの?」「一人だよ」「ご飯は自分で用意してる?」「してるよ」「かわいそう。私が作ってやりたい。だけどこっそり帰ったら叱られちゃうね」「今は外出できないからダメだね」「どうして?」「伝染病が流行っていて外に出られないの」「そうか。いつまでダメ?」「まだ誰にも分からない」「あんたは外に出るの?」「朝早く人が少ないときに手賀沼の撮影と、たまに食品を買いに行くよ。できるだけスーパーに行かないで、通販と宅配弁当を配達してもらう」「だいたい考えていたことと同じだ」と、次々問いただすような質問。家に帰りたい話し、家に帰る道の話になると感情が高ぶるので話題を変えた。
「今日は何したの?」「自分の部屋を掃除して、広い方には掃除をやる人が来ている」「自分の部屋は自分でするの?」「そうだよ。天気がいいから布団を干してくれた。外に出られないからつまらない。やることがないから布団のないベッドでバカヤロウと言ったら、掃除の人が覗いたから慌てて止めた。嘆いても仕方がないけど、外に出て歩きたいよ」「伝染病の流行が終わったら面会に行く。一緒に散歩しようね」「伝染病ってみんなが言うが嘘じゃないの?」「嘘じゃない、職員さんに聞いてみな」「聞けばみんなそうだって言うに決まってる」「面会禁止にして外の病気が中の人に移らないようにしているし、訪問診療のお医者さんや歯医者さんも来てくれる。そこが一番安全だよ」「一人になると家に帰る道のことばかり考えちゃうよ。どこの坂を登るか、家はどうなっていたか考えちゃう」「明日も電話するね」「ありがとう。病気にならないように気をつけてね。もう終わりか。電話機、返してくる」
外出できないストレスがたまっているようだ。話にまとまりはないが、頭はいつになくよく働いているようだ。泣く話しにならなかっただけでよかった。200323c.jpg
(空想の世界を散歩する妻、見えただろうか市民農園跡のサクラや菜の花)

コロナなんか吹き飛ばすほどの若い力

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.3.22)
(アルツハイマー)

コロナなんか吹き飛ばすほどの若い力、遊歩道脇に避け通り過ぎるのを待つマスク姿。コロナよコロナ、サッサと何処かへ消えちまえ。200322.jpg

いつも畑を闊歩して餌探ししていたのに、朝食は済んだのか木の枝でツグミが独り言。200322a.jpg

ちょっと歩いて立ち止まり、背伸びして鳴いて羽ばたいたキジ。200322b.jpg



『なんで私は市役所の施設にいるの?』 (2020.3.22)
昨日午後の妻との電話、「もしもし、電話代わった。泣けてきて声が出ないよ。どこにいるの?」「家にいるよ」「いつ迎えに来てくれるの? 待っても迎えに来ないんだもの。窓の外の市役所の駐車場に昨日はいっぱい車があったけど、今日は少ない。何かあったのかと思ったが、何が何だか分からない。一つ分からないことがあると、ごちゃごちゃになって全部が分からなくなった」「市役所の駐車場じゃなくて近所の人が利用してる駐車場だよ」「市役所の駐車場じゃないなら、なんで私は市役所の施設にいるの?」「そこは市役所の施設じゃなくて、グループホーム寿だよ」「グループホーム寿って、私が最初に入ることになっていたところ?」「そうだよ。あんたと二人で見学に来て、いいところだったから申し込んだ。申込書にあんたが自分で名前を書いたところだよ」「そのことなら憶えてる。ああよかった、入ることになっていたところにいるのね。それで少し分かった。グループホーム寿ってどこにある?」「寿にある。消防署の近く」「細い道を入って行くところ? いつだったか高いところから少し下ったところを歩いたよ」「面会に行ったときに私と一緒に散歩したときのことかな」「面会に来てくれたの?」「面会が禁止になるまでは毎日行って、天気のいい日は一緒に散歩したよ」「どうして面会できないの」「伝染病が流行っていて、病気をそこに持ち込まないようにするため」「伝染病のことは誰かに聞いているよ。寝たまま広い部屋に連れて行かれて、名前を呼ばれたから返事をした。その時から自分がどこにいるか分からなくなった」「たぶん膵炎になって、救急車で運ばれたときのことを思い出したのかな。退院して直ぐにここに来たが、その頃入院したことも、ここに来たことも憶えていなかったから」「今いるのは最初入る予定だったところ?」「そうだよ。そこにいれば安心だよ。生活面での面倒も見てもらえるし、訪問診療の先生も診察に来てくれる。頭の気持ちが悪いのも、目眩や吐き気も治ったでしょう。また面会ができるようになったら毎日会いに行くからね」「少し分かってきた」「明日も電話するね」「じゃあ、電話機返してくる」
妻は元気になったのに市の施設に入れられたままだと思い込んでいた。気を紛らわさせて空想のチェーンを断ち切るために、魔法の水(水にリンゴ黒酢で味付け)でも飲ませてとスタッフの方にお願いした。200322c.jpg
(桃山公園の高台から沼を眺めてから、行き先が決まった妻の散歩道。いまは、グループホームから自宅へ帰る道のことばかり。)

朝日を浴びて鳴きつづけるホオジロ

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.3.21)
(アルツハイマー)

朝日を浴びて鳴きつづけるホオジロ、一歩ずつ近寄りながら撮っていたら、ジョギングの人に驚いて飛んじゃった。200321.jpg

小枝の隙間を探し、レンズを向けてもじっと動かないモズ。200321a.jpg

撮ろうとすればちょこまかと動き回るシジュウカラ。200321b.jpg


『泣かれずに電話を終えるとほっとする』 (2020.3.21)
昨日午後の妻との電話、「もしもし、電話ありがとう。いつ、もう帰ってもいいよと言われるか待っていたが誰もそう言わない。私は元気になったよ。あなたの方に何か言ってきた?」「何も言ってこないよ。あんたが元気に過ごせるようにそこに入ったのだから、元気になっても帰されないよ。そこに行ってから頭の気持ちが悪いのが治ったよね」「治ったよ」「目眩がしたり吐き気がしたのも治ったよね」「治って元気になったよ」「元気になったのがずっと続くようにそこにいるんだ」「だけど、帰っちゃダメなの?」「桜が咲く頃になったら子どもたちが来て、外出届を出して家に戻って、みんなで食事をしたり手賀沼を見に行く計画をしていたね。だけど伝染病が流行って面会や外出ができなくなったから、計画を実行できないの」「ああ、伝染病だったなぁ。ずっと家に帰るとあなたが困るから、ずっと帰りたいとは言わないよ。ちょっとだけ帰りたいんだ。家は誰が守ってる?」「私が守ってるよ」「家は時々会うために大事にしよう。喜ぶために帰る。喜ぶために会う。一緒に会っておいしい物を食べたり見たいところを歩くのを大事にしようよ」「伝染病が治まったらそうしようね」「そのときは少しくらい泊まってもいいかなぁ?」「朝、あんたを迎えに行って、みんなで食事をしたり話をしたり手賀沼を見に行って、夕方になったらそっちへ送って行くよ」「なぜ泊まらないの?」「やっと安定した生活ができるようになったのに、環境が変わって睡眠障害になるのも嫌だし、泊まったときにあんたの体調が悪くなった時のことも心配だ。私も年を取り過ぎて、以前のように直ぐ病院に連れて行っり看病するのが難しくなっちゃった」「そうだね、二人とも80過ぎちゃうからね」「無理のない方法で長く楽しめるようにしようね。今日は元気な声で嬉しかったよ。ぼつぼつ電話機を返してきて」「また電話してね」
元気な声で、いつになく物わかりのいい妻だったが、しばらくしたら電話したことも思い出せないだろう。何度同じ質問と回答をしてきたことか。泣かれずに電話を終えるとほっとする。200321c.jpg
(単身赴任していた頃、たまに帰って妻と散歩した道。入り口にあったカッパの看板、「入るな」と通せん坊していた桟橋。時の流れの中で朽ち果てて、古い記憶を思い出させてくれる桟橋の残骸)

年々長くなってきた走る人の列

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.3.20)
(アルツハイマー)

年々入れ替わる走る人、毎年変わらぬ練習風景。年々長くなってきた走る人の列。200320.jpg

雲間からの陽光に、スポットライトを浴びたように輝く柏の街。200320a.jpg

スズメが集うクロネコヤマトの裏庭の木、遊歩道から飛んできてスズメを追い払ったヒヨドリ。200320b.jpg



『元気なのになんで外へ出てはダメ?』 (2020.3.20)
妻に電話した昨日午後、「もしもし、お珍しい」「えっ、どうして?」「だって話しをするの久しぶりじゃない」「昨日も電話で話したよ」「忘れることばかり多くてバカになっちゃった。逃げ出したら直ぐ帰られる距離のところなのに会えないよ。脱走して帰ろうかな」「ダメダメ、高齢者は新型ウイルスに感染すると大変だから外へ出ちゃダメなの」「私は元気なのになんで外へ出てはダメ?」「外へ出ると伝染病が移るから」「何もやることがなくて牢屋に入れられてるみたいじゃない。いま、ベッドに腰掛けて電話してる。私の部屋は東向きで、駐車場の向こうの家には太陽が当たってる。こっちは日陰だからしゃくに障る」「その家、結婚式にも来てくれた同期入社のYさんの家だよ」「ああそうか、その先に行くと広い道に出て、市役所の先を曲がると手賀沼沿いの知ってる道、坂を登ったら家じゃないの。帰りたいなってずっと考えている。私はすっかり元気になった。元気になってもここにいていいの?」「いいよ。元気に暮らしてもらうためにそこに入ったのだから。病院じゃないから退院はないの」「あんたは元気?」「元気だよ」「私はご飯を作ってもらってるけど、あんたは?」「自分で用意しているよ」「私が帰ってやってやろうか?」「自分でできるよ。あんたは元気に暮らせるようにそこに入ったんだ。そこで訪問診療の先生がくれた薬で目眩や吐き気、頭痛も治っただろう」「治ったね。もう頭が気持ち悪くならないし、つらくない」「そこに入ってよかったじゃない。今朝滝下広場を通ったら桜が大分咲いていた。桜が咲く頃は外出して手賀沼を見たり桜を見に行こうって話していたが、まだ面会や外出は解禁されないから今年はダメだね」「行きたかったのにしゃくに障るなぁ、伝染病の奴め」「テレビでオリンピックを予定通りやるか、延期するか、止めるかって大騒ぎしてる」「そうみたいだね。オリンピックはどうでもいいが、長生きして、元気で外へ出られる日を待つしかないか。あんたも元気でいてね」「歌でも歌って元気にしててね」「電話くれてありがとう」
話しがあちこちに飛んだが、詰まるところはまた家に帰りたいって話し。声は元気そうだった。200320c.jpg

市民農園跡から眺めた日の出前の沼

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.3.19)
(アルツハイマー)

市民農園跡から眺めた日の出前の沼。地平線は赤紫に染まり、上空には細くなった月。200319.jpg

浮上したカワウの目は緑に輝くガラス玉のよう。200319a.jpg

同じ場所で毎朝見かけるカイツブリ、今朝も潜水を繰り返したが、獲物を咥えた姿は見せてくれない。200319b.jpg



『私の頭はうまく働かなくなったらしい』 (2020.3.19)
昨日午後の妻との電話、「もしもし、私。なにかあったの?」「毎日一回の電話だよ」「瞬間的に何だろうと思うことが多くなって、私の頭はうまく働かなくなったらしい。手紙来たよ。昼のお弁当を食べて部屋に戻って、手紙を読み始めたら電話が来た。途中までしか読んでいないから質問するのはややこしいな」「項目ごとに書いてあるからどこから読んでもいいよ」「読んでも時間が経つと忘れちゃう」「忘れたらもう一度読めばいい」「ここのところ、『電話して、元気な声を聞くと私の心はうきうきと嬉しくなり、泣きそうな声を聞くと私の心も泣き出します。楽しいことを考えて、元気な声を聞かせてください』を読んだら泣けて来ちゃった」「それは困ったな」「たくさん書いてあるね」「隠さないで本当のことを教えてと何度も言われたからね、隠さず書いた」「私は騙されることは嫌なんだから」「途中で省くと直ぐ見付けて文句を言う人だから」「今日は調子がいいから高野山近くを歩いた」「それは空想だよ、そこからは出られないのだから」「そうだね」「昨日Aさんから里芋の煮物と蕪の漬け物を頂いて、昨夜と今朝、先ほどの昼食に食べたよ」「じゃあお礼言いに行ってくる。家に行く道の途中だもの」「今は外出できないよ」「そうか」「Kさんからも電話があって、手紙をくれるって言ってた。Aさんも手紙を書くって言ってた」「嬉しいよ。だけど、誰も来てくれないし、外へも行けない。一人で心細い」「みんな同じだよ。家にいて我慢してる」「どうして?」「世界中、コロナウイルスって伝染病が蔓延してるから。旅行にも買い物にも行く人が少なくて旅館やレストランや商店は大変だよ」「それ、テレビで見た。いつ終わるの?」「分からない。みんな困っていて、我慢してる」「私だけじゃないんだ。我慢するよ」「手紙を読んでから質問したい」「明日の電話の時にね」「分かった。電話どうやって切るんだった?」「分からなきゃそのまま職員さんのところに持って行って返して」「じゃあまたね。今、歩いている。」200319c.jpg
(滝下広場のシダレザクラが咲く頃に一緒に散歩しようと約束したが、桜が咲いても面会と外出の禁止は解けそうにない妻の住むグループホーム)

北新田方向へ飛び去ったオオハクチョウの群

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.3.18)
(アルツハイマー)

遊歩道に出たら飛ぼうと仲間を誘うオオハクチョウの鳴き声。15分ほど歩いたら沼上空を旋回し、北新田方向へ飛び去ったオオハクチョウの群。200318.jpg

声はするが姿を見せてくれないウグイス。じっと繁みを見詰めていたら、一瞬見せてくれた姿。200318a.jpg

二度三度水に飛び込んだカワセミ、一度も見せてくれなかった餌を咥えた姿。200318b.jpg



『電話を渡してくれた人が手を振っている』 (2020.3.18)
昨日午後の電話、Oさんから「入居前リバスタッチパッチパッチを使用していたが、目眩と吐き気があって中断していたので、アルツハイマーの進行を遅らせる薬の再開について訪問診療の医師に相談したいと思うがどうか」との話があり、「ぜひ相談して欲しい。訪問診療の先生からは、まず目眩や吐き気を解決してから考えたいと最初の診察時に言われたと記憶している。リバスタッチパッチの薬の量を減らして再開するか、アリセプトなどの飲み薬、あるいは副作用が強ければやめるの三つの選択肢があると思うが、今後指導して欲しいと契約時に説明してくれた看護師さんにも話してある」と答えた。妻にアルツハイマーの症状が出始め、3年前からリバスタッチパッチを貼るようになったが、徐々に薬の量を増やし上限量になって以来、目眩と吐き気の症状が出始め、昨年から急にその頻度が増えた。救急搬送されたJAとりで総合医療センターの医師からは、体質が変わってリバスタッチパッチパッチの副作用が出たことが考えられると説明され、年末から使用を中断していた。
妻に電話を代わってもらうと元気な声。「もしもし、あはは、電話を渡してくれた人が手を振っている」「手紙は着いた?」「まだ。来れば食堂の一人一人のポストに入っているかもしれないがまだ見ていない」「電話が終わったら見てきてね」「あなたはどこに住んでるの」「高野山」「前からいっしょに住んだ家だよね」「そう」「手賀沼に沿って歩いて行って坂を登るだけ、道は分かってるから脱走してあんたの顔を見て握手して、直ぐ戻れば見つからないよね」「それはよくない。もし脱走して新型ウイルスに感染したら、一緒にいる人みんなに移して迷惑を掛けるよ」「伝染病か。それならやめた。あんたを困らせる様なことはしないよ。買い物はどうしてる?」「またパルシステムに加入することにしたし、通販を利用してできるだけ外に買いに行かないようにしてるよ」「この電話機誰のもの? パナソニックと書いてあるよ」「事務所の電話を使わせてもらってるのさ」「じゃあ返してくる。またね」200318c.jpg
(写真:できた頃とは様変わりしたビオトープ。妻一人での手賀沼散歩は遊歩道終点折り返しだったが、私と一緒の時はビオトープ折り返し。「あんたと一緒だと運動にならない」が口癖だった。)

風が出始めて波立つ沼はブルー

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.3.17)
(アルツハイマー)

風が止んでオレンジ色に染まった沼を撮ろうとしたら、カメラにメモリーカードが入っていなかった。急いで家まで取りに戻ったら、その間に風が出始めて波立つ沼はブルー。200317.jpg

遊歩道脇の木の天辺で鳴いていたホオジロ。近寄ったら舞い降りて日向ぼっこ。200317a.jpg

撮ろうとすれば場所を変え、なぜか先を急ぐオオジュリン。三羽が交互に西へ西へと。200317b.jpg



『一方的にしゃべりまくった妻』 (2020.3.17)
昨日午後の電話、「もしもし、電話機、部屋まで持って来てくれたよ」と元気そうな声。
「どこにいるの?」「郵便局に手紙を出して、家に戻ったところ」「私に? なんで?」「昨日電話したときに、電話で聞いても忘れちゃうから紙に書いてと言ったよね、今までに電話で話したことをまとめて書いた」「私がそんなことを言った? 憶えていないよ」「手紙が着いたら読んでね」「分かった。明日には着くかな」「たぶん明日」「郵便局よりここの方が近いし、歩いたって直ぐなのに明日か。お昼ご飯が終わって後片付けをして、ちょっと前に部屋に戻ったばかり。部屋に戻ってひとりでいると話しをする人もいないし、何にもやることがない。この頃はラジオを点けてでたらめにボタンを押すと日本の歌のCDが鳴ったり、音楽ばかりのラジオが出たり、適当に音は出て来るよ。夜は、眠くなったら消しに行くのが面倒だから鳴らさない。今日は部屋に戻ったら直ぐに電話が来て嬉しかったよ。そうでなきゃ誰とも話しをできないから」「午前中は何をしたの?」「午前中はいろいろあって忙しかった。何をしたのか忘れちゃった。いろいろあったんだ。窓の外を見ると駐車場にいっぱい車が置いてある。外に出ている人もいるんだ。天気がいいから外へ散歩しに行こうかなと思った。家に行く道はちゃんと分かっているよ」「今は外へ出してもらえないよ」「一人だけでもダメかな?」「一人が外へ出て伝染病に感染して中の人に移したらみんなが迷惑するよ」「あんたはどうしてる?」「今日は郵便局に行った帰りにコンビニで買い物をしただけ。ずっと家にいる」「つまらないのは私だけじゃないんだ。我慢するよ、するしかないじゃない。ここにいればご飯も作ってくれる。ご飯はおいしいよ。話しをする相手がいないから退屈なだけ」「今日は元気な声が聞けて嬉しいよ」「もう電話を切って事務所に返してくるね。じゃあバイバイ」
一方的にしゃべりまくった妻、気分がよくなったのか元気に弾むような声。妻にとっての会話は自分がしゃべること。相づちだけを打ってくれるロボットでもあったら退屈しないのかも。200317c.jpg
(妻に誘われ手賀沼散歩をはじめた頃は、手賀大橋も古い橋、柏のビルも少なかった)

日の出前の水生植物園跡

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.3.16)
(アルツハイマー)

日の出前の水生植物園跡。日の出が見られそうな気がして岸辺に急ぐ。200316.jpg

日の出の瞬間半歩前に出ようとしたら、つま先に引っかかった草。スーッと近づく地面、カメラが危ないと差し上げて顔から地面へ。200316a.jpg

ウグイスを撮ろうとしていたら、すぐ前に飛び込んできたオオアカハラ。200316b.jpg


『電話で聞いても直ぐ忘れるから紙に書いて』 (2020.3.16)
昨日午後、Oさんに電話で春物の衣類への入れ替えを相談してから、妻と電話を代わってもらった。
「もしもし、暫くぶり。草臥れちゃった」「昨日は元気だったのに」「そうだった? 何が何だかわからない。私はいつここから出されるの? 帰る仕度をしなくちゃ」「出されないよ。ずっといていいんだ」「出なきゃいけないかと思った。今いる部屋は個人的な契約があるの?」「契約してあるよ」「どこまでが私が使っていい場所?」「ベッドのある部屋はあんた専用の部屋、ドアの外の廊下、食堂、トイレや洗面所はみんなで使う共通の場所」「いつまでもいていいの?」「いいよ」「あんたもここに来て泊まれる?」「それはダメ、面会に行って部屋に入ることはできる」「あんたはどこに泊まるの?」「高野山の家」「そこはあんただけの家?」「二人の家だよ」「だったら私も泊まれる?」「届けを出したら泊まれるけど、家に泊まって環境が変わると睡眠障害になるから家に来て泊まらない方がいいとケアマネージャだったMさんが教えてくれた。それで夜はそっちに戻って寝ることにしたよ」「睡眠障害はつらいものね」「どうしてここに入ったの?」「3年ほど前から目眩がしたり頭痛や吐き気が始まって、その頻度が段々増えた。将来のためにとMさんが紹介してくれて、あんたと私がここを見学に来た。あんたもここを気に入って申し込んだ。自分のことだからと申込書には自分でサインしたよ」「うっすら憶えてるけどこれがここだったのか」「去年12月に空きができて、あんたと私と子どもたちが相談して入居することにした。1月3日に膵炎再発でJAとりで総合医療センターに緊急入院して、9日に退院、12日に入居した。入院中には以前のことを忘れて入院したことさえ思い出せなかった。入居後、訪問診療の先生が薬を出してくれ、目眩や吐き気、頭痛はなくなって楽になったし、段々以前のことを思い出せるようになった」「そうか。いいところに入れた。電話で聞いても直ぐ忘れるから紙に書いて」「手紙に書いておくね。また明日も電話するね」「待ってるよ。じゃあバイバイ」200316c.jpg

(もうじき咲くと妻に話した数日前、もう咲いていた市民農園跡の菜の花)

釣堀脇まで来ると霧の中に日の出

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.3.15)
(アルツハイマー)

釣堀脇まで来ると霧の中に日の出、堀の周りを囲む釣り客たち。200315.jpg

鳴き声を頼りに濃霧の中、近寄って見上げれば天を仰いで鳴くホオジロ。200315a.jpg

遊歩道脇の枯れた葦に飛来、茎の間をちょこまかオオジュリンが二羽。200315b.jpg

『いつも手賀沼の景色が浮かんでくるよ』 (2020.3.15)
昨日午後の電話、「今日も元気、大きな声で話していたのが聞こえた」とOさん。「電話ですよ」と呼ぶOさんの声、「ありがとう」と元気そうな妻の声。
「もしもし、今どこ?」「家」「ノートを読んでいたら、私がベッドで泣いていたことや、赤とんぼをみんなで歌っていたことをあなたが書いていた」「2月のことだね」「ずっと、何となく物寂しかった。片っ端から忘れるし、刺激が小さくて、やれることは自分でやりたい」「そう言えばいいじゃないの」「せっかくやってくれるのに悪いじゃない。言えないよ」「雨が降りそうだったけど、今朝も写真を撮ってきた」「偉いね」「滝下広場のイトザクラが咲き始めた。釣堀の側ではノラネコに餌を与え、ネコに語りかけている男の人がいた」「見に行きたいけど、世界の状況が治らないと行けないね。どんな病気?」「まだ予防接種もない新しいウイルスの伝染病、高齢者が感染すると重い肺炎になる。呼吸困難になって苦しいし死亡率も高い。だから高齢者がいるそこでは感染しないように面会を中止したし、外出もさせないようにしてあんたたちを守っている。食事や洗濯の面倒、健康管理までやってくれて、そこにいれば安全だよ」「ここの人はよくやってくれているし、いいところに入れたと思うよ。今日は手賀沼が見える方に行ってセンターみたいな所に行った」「それは空想の中だよ、だってそこから外出できないんだもの」「そうか、実際には行かなかったんだ。いつも手賀沼の景色が浮かんでくるよ。手賀沼沿いに歩いて坂を登れば家だもの。我孫子はどうなってる?」「昨日、Aさんが電話をくれて、伝染病対策で我孫子図書館も今日から休館だって教えてくれた。学校だってずっと休みになってるよ」「電話で聞いても忘れちゃう」「何度でも見ることができるように手紙を書くね」「ノートが半分残っているから私も書く。早く治まって欲しい」「今日は元気になった声を聞いて嬉しいよ」「昨日までは生気がなかったが、今日から何となく張りのある声が出るようになった気がする」「長電話は迷惑になるから、また明日電話するね」「じゃあ切るね。あっ、向こうから受け取りに来てくれた」200315c.jpg
(いつの日か妻と歩いた散歩道、先が見えない濃霧の朝)

なぜか沼が泣いているように見えた曇天の朝

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.3.14)
(アルツハイマー)

この高台は、アルツハイマーの妻が空想の世界で手賀沼を眺める場所。見せてやりたいがコロナが邪魔してグループホームは面会禁止。なぜか沼が泣いているように見えた曇天の朝。200314.jpg

「どこ見て飛んで来るんだ」「おっと失礼、横ならいいかい」200314a.jpg

「ごめんごめん、びっくりさせちゃって」 目の前の畑で餌を啄んでいたツグミ、ミカンの木の天辺に逃げおいらの通り過ぎるのを待つ。200314b.jpg



『私の頭に入るように説明していないから』 (2020.3.14)
「もしもし、暫くぶりだね。どうして迎えに来てくれないの。今から外に出て歩くつもりで洋服を着替え、散歩の鞄を掛けていたところ」「今は外に出られないよ」「ここは知らない人ばかりで誰とも話をしていないし、誰も来てくれない。一人孤立して耐えられないよ。家に帰る道は知っているから歩いても帰られる」「道はちゃんと分かっていても、外に出ることはできないの」「なぜ出られないか誰も教えてくれない」「何度も電話で説明したけどなぁ」「私の頭に入るように説明していないから。ただ出られないと言われても分からない」「伝染病が流行っていて、高齢者が罹ると重症の肺炎になる。だから私も家にいて、食べるものがなくなったらマスクをして買いに行くだけ」「だったら肺炎になってみんなを呼んでやろうと思う」「肺炎になると苦しいし死亡率も高い。一人が勝手なことをして感染したらみんなに移してしまう。だからそこでは面会もできなくなったし、外へも出られないようにしてあなたたちを守っているんだ」「外のことが分からないから私の頭に入ってこない。ご飯は作ってくれるから食べるよ。私は社会の何なの? 私は情報不足なの。何をしたらいいのか分からない」「どう説明したら分かってもらえるかな。もうお手上げだよ」「お手上げの人など相手したくない。でも、あなたのい言うことを聞かないと、誰も私に教えてくれないからあなたに聞くしかない。今やっと分かったよ」「あんたも、そこにいる高齢者の人も感染しないように、面会できなくして、外に出さないようにしてみんなを守ってくれているよ」「伝染病が治まれまで外に出ちゃダメだって分かったよ。それまで我慢しなきゃならないことも分かったよ」と言って泣く。「私だってあんたに会いたいよ。だけど我慢してる。あんたもいっしょに頑張ってね。明日も電話するからね」「分かったよ。・・・電話どうやって切るんだろう」と小さな声が聞こえた。
毎日電話で説明し納得しても、直ぐに忘れて同じことの繰り返し。どうせ忘れるから妻にしゃべりたいだけしゃべらせると、「あんた、何か隠しているの?」と疑う。悩ましきことよ。200314c.jpg
(妻の散歩道だった滝下広場に咲き始めたイトザクラ)

枯れた葦の穂の向こうに日の出

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.3.13)
(アルツハイマー)

遊歩道を歩けば枯れた葦の穂の向こうに日の出。200313.jpg

まだ日差しが届かない岸近く、水を被り羽ばたいたコガモ。200313a.jpg

繁みで鳴くウグイスを撮ろうとすれば、ウグイスを追い出し小枝の新芽を啄むバン。200313b.jpg



『家に帰る道は分かるから遊歩道を歩いて帰る』 (2020.3.13)
昨日の午後も電話。Oさんが「お元気ですよ」と電話を代わってくれたが、「もしもし」と最初から泣き声。
「どうした?」「もうここにいるのは嫌」「今そこからは出られないの」「あなたはどうしてる?」「じっと家の中にいて、食べ物がなくなったら買いに行くだけ」「ここにいたら食事は全部やってくれるけど、ちょっと挨拶するだけでずっと一人でいるのは耐えられないの。家に帰る道は分かるから遊歩道を歩いて帰るよ」「今は外に出られないの。伝染病が流行っていて、高齢者が罹ると重症になるから、あんたを守るためにそこから出さないようにしているの」「どうしたらいい?」「今は伝染病の流行が治まるのを待つしかない。我慢してそこにいてちょうだい」「あなたのいる家に帰りたい。外に出られないなら迎えに来て」「外から病気をそこに持ち込まないように面会はできない」「会社の仕事はどうしてる?」「私は20年も前にやめたよ。Aは在宅勤務になって自宅で仕事をしているよ」「普通に生活できないのか。分かったけど分からない。家に帰りたい」「家に帰ったら共倒れになっちゃう。今の私たちでは、片方が感染したらお互いに面倒見られない。そこにいればあんたは食事も洗濯も、健康管理もしてくれて守ってくれる。つらいだろうが、面会が許されるまで我慢してね」「自分の気持ちを抑えるのが私の仕事か。私もそう思い直すしかない?」「そう」「あなたに会って、かぶりつきたい気持ちだけど仕方がないか。淋しくて泣いてたよ」「そこにいるのが一番安全。面会できる様になったらすっ飛んで会いに行くよ」「私を連れて行くのもダメだと分かった。家へ歩いて行こうと思ったが行ってはいけないと分かった。もう泣かないようにするね。会いたいって考えてもダメ?」「考えてもいいけど、考えるとつらくなるよ。ノートに日記みたいに思ったことを書いたら気が紛れるかも知れないよ」「ノートがあるから書いてみる」「昨日みたいに元気になってね。明日も電話するよ」「あなたも気をつけてね。電話切るよ」と、ずっと泣き声の妻だった。200313c.jpg
(妄想の中で妻が歩いて家に戻る道)

昨日が暖かかったので肌寒く感じた晴天の朝

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.3.12)
(アルツハイマー)

昨日が暖かかったので肌寒く感じた晴天の朝。シルエットになっていた水生植物園跡のケヤキの木。200312.jpg

遊歩道を歩けば、枯れた葦の穂の向こうに日の出。200312a.jpg

細い枝が重なり合う繁みにウグイス、毎朝鳴いていたが姿を見たのは今朝が初めて。200312b.jpg



『お昼ご飯食べたらAから手紙が来ていた』 (2020.3.12)
昨日午後の電話、スタッフの方から電話機を渡された妻は元気そうな声。
「もしもし、私。元気?」「元気だよ」「私は今日も雨かと思うと涙が零れそうになって、鼻水が出て、元気じゃなくなる。今日は天気がよくなったから外を歩きたいと思う。外に出られるようになったら、歩く練習をして遠くまで歩けるようになったらどこへ行こうか考えているが、まだどれだけ歩けるか分からない。玄関まで行って外を見るが、外のことは分からない」「外へ出られなくても、部屋の中や廊下を歩けばいい。それだって脚の運動になるよ」「昨日、オカメザクラの写真のハガキをもらった。きれいだね」「それを見て少しでも元気が出ると嬉しいよ」「そういう会話があると泣いちゃう」「泣くのはよくないよ」「会いたくても我慢してる。私は泣くよ」「今日は天気がよくなってよかったね」「あなたは元気?」「元気だよ」「外を見ると明るいから私も元気な声になったよ。元気になってもどこへも行けない。なんちゅうこっちゃ。お昼ご飯食べたらAから手紙が来ていた」「よかったね」「三人とも元気だって。2月にAと会ったとき、お父さんとわらくのMさんと子の神大黒天に行ったと書いてあるが、まだ思い出せない。流行している病気が収束したらお母さんに会いに行く。いっしょに散歩しよう。体に気をつけてって書いてあるのを見たら涙が出る」「今日は元気な声を聞いて嬉しかった」「世の中のごちゃごちゃもその内よくなるだろうね」今朝、写真撮りに遊歩道に行って、菖蒲園跡近くの畦道に菜の花が一本だけ咲いていた。家に帰ってきたら、散り始めたオカメザクラにメジロが来ていたよ」「あなたの声を聞いて、あなた相手に憎たらしいことを言ったら、泣きたい気が直ったよ。電話ありがとう。もう切るよ」「また明日ね」200312c.jpg

ケヤキの木の向こうに見えた月

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.3.11)
(アルツハイマー)

水生植物園跡に差し掛かれば、ケヤキの木の向こうに見えた月。200311.jpg

遊歩道脇の木の天辺、空を見上げて鳴くホオジロ。200311a.jpg

振り子が幾つも重なって揺れるように葦の枯れ茎、瞬時の隙間から撮れていたオオジュリン。200311b.jpg


『なんで私はここに入ったの?』 (2020.3.11
昨日午後電話したらSさんが応答「元気にしてますよ。ラジオ体操はやったし、ニコニコしてます。今は部屋にいます」と言って、「ご主人から電話」「ああよかった」と電話機を受け取る妻の声。
「もしもし、暫くぶりね」「昨日も電話したよ」「電話じゃ分からなくなっちゃう。なんで私は監獄みたいに閉じ込められているの?」「コロナウイルスが流行で、感染しないように外に出ないようにしてるんだ」「じゃああんたも家の中にいるの?」「家の中にいるよ」「何してるの?」「ご飯食べて寝るだけ」「私だけじゃないんだ。なんで私はここに入ったの?」「二人で家にいたとき、何回か救急車を頼んだり、タクシーの運転手に助けてもらってあんたを病院に連れて行ったが、私も年を取っていざというとき一人であんたを助けることができなくなってきた。それでそこの人たちに助けてもらうために入った」「そうだったのか。言いたい放題言ってはだめだけど、あんただからつい言ってしまった。」と、説明したときは理解するが、何度説明しても直ぐ忘れて、なぜ家でいっしょに暮らせないのか、なぜここにいるのかを悩んでいるようだ。
「昨日ハガキを出したよ」「今日来るかな」「未だなら明日だな」「あんたの声を聞いたら元気が出たよ。久々に笑った。いつ伝染病は治まるの? 憎たらしいけど手が届かない。だからふて腐っている。家の中じゃ動けないけど、テレビでニュースの時や音楽の時は見に行く。今は本も読みたくない。家の中じゃあ運動量も足りないよ」「部屋の中を歩き回ったり、本の文字を追うだけだっていいさ。気が晴れるよ」「声を聞いたら生き返った」と言って泣き声。「泣かないでね」「電話ありがとう。どうやったら切れるの、忘れちゃった」200311c.jpg
(写真:3年前ころは、ジャックに会いたい妻を連れて歩いた遊歩道)

霧雨に包まれ泣いているような沼

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.3.10)
(アルツハイマー)

霧雨に包まれ泣いているような沼。200310.jpg

霧雨が上がり始め、遊歩道を走り去った若い人二人。200310a.jpg

ツバキの花の蜜を吸っていたヒヨドリ、畑で餌を拾うツグミになんで焼き餅。200310b.jpg



『庭のオカメザクラがきれいだった』 (2020.3.10)
昨日午後、スタッフから電話機を渡された妻。「もしもし、私」と元気な声。「もしもし、元気そうな声だね」「今どこ? 家? 高野山の私たちの家?」「そうだよ」「電話機届けてくれたけど、何が何だかわからない。近くにいるんだよね」「いるよ」「電話が鳴ると私にかと思って慌てて部屋の外に出るが、直ぐ誰かが話し始めて、私にじゃないって分かる。やっと慌てなくても話せるね」「あんたの元気な声を聞きたくて電話したよ」「さっきまで、電話したのは昨日のことだったか、今日のことだったか分からなくなっていた」「毎日電話するから気にしなくてもいいよ」「今日は何をした?」「順天堂の先生からY内科に手紙が届いて、Y先生から薬の処方箋を出してもらって、薬局で薬をもらってきた」「よかったね」「私は案外冷静だよ。変なところへ電話しようとも思わないし、あんたが自分の家にいて家を守ってくれてるって分かったし、家も近いから安心したよ」と言って急に泣き声になる。「泣かないでよ」「泣くよ。早く正常に戻って、会いたいよ」「庭のオカメザクラがきれいだったから、朝の撮影から戻ってオカメザクラを撮ったよ。プリントしたハガキを出した。いつも写真を撮って戻る頃にあんたが雨戸を開けていたが、今は私だけだからまだ雨戸が閉まったままの写真だよ」「私がいないとダメだね。逃げ出して来いと言って欲しいな。でも、逃げ出したら大問題だね。何にもやることがないからつまらない」「歌を歌いなさいよ」「歌う気にならない。ひこひこ生きてるよ。ご飯も食べてるよ。みんなは外で伝染病が大変だって知らないみたい。だから私も言わないようにしている。玄関に行って外を覗くだけじゃ分からないよ」「ラジオを鳴らしておいたら一人じゃない気分になるかもね。明日また電話するよ」「あんたも外に出ないで、大きい病気をしないように自分を守ってね。電話ありがとう」と、少し落ち着いている様子だった妻。200310c.jpg

我が家の屋根やベランダの一部が見えた38年前

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.3.9)
(アルツハイマー)

我孫子に住み始めたころ、ここから我が家の屋根やベランダの一部が見えた38年前、いつの間にか新築の家が密集し我が家は見えなくなった。200309.jpg

遊歩道で何かを啄んでいたツグミ、散歩に人が来たら舞い上がり小枝の先に待避。200309a.jpg

何を見ているのかじっと動かないモズ。200309b.jpg

『生きながらえることを頑張るだけだね』 (2020.3.9)
昨日午後、グループホーム寿に電話、スタッフの方から「元気にお話ししていました。今は部屋にいるようです」と言って電話を代わってくれた。
「もしもし、あなたはどこにいるの? 心配していたよ。ここも何だかごちゃごちゃしていている」「どうしたの?」「何があったか分からない。もしかしたら私たちはここから出されるのかなぁ。あなたはここへ来ることはできないの?」「ずっと家の中にいて、そちらには行けないよ」「それなら私が家に行こうか」「それもできない。世の中、伝染病が流行っていて外に出られない」「そうかぁ。出るに出られないのだったね」「私もできるだけ家の中にいるし、そちらも外出はできなくなっているよ」「歩いて10分の近さだからあなたの様子を見に行こうかな」「あんたはそこから出してもらえないよ」「そうだったね。どうすればいい?」「そこにいればスタッフのみなさんに面倒を見てもらえるから、そこにいてね」「会えないのはつらいよ」「会いに行ってあげられなくてごめんね。私だって会えないのはつらいよ。みんな同じだ。我慢してね」「ラジオを点けても世の中のことも、あなたが元気だかも分からない。もういやだ。子どもたちはどうしてる?」「Aは会社には出勤せず、八王子の自宅で仕事をしている。Lは横浜でマスクをして勤務先に通ってる。みんな元気だよ」「それならよかった。早く正常になって欲しい。何もせずここにいるのはもういや」「コロナウイルスが治まったら、Aに来てもらって家を見に行ったり、手賀沼を見て、ご飯を食べに行こうね。それまで我慢して待っていてね」「我慢するけどいやだな」「我慢するしかない」「会いたくても会えない。外に出たくても出られない。生きながらえることを頑張るだけだね」「明日も電話するからね。私だってあんたに会いたいよ」「そう言われると泣けて来ちゃう」「泣いたり悲しんだり怒ったりすると病気になりやすい。病は気からでしょ、歌でも歌って、楽しいことを見付けよう」「電話ありがとうね。会いたいよ。顔を見たいよ。我慢してるよ。じゃ、さよなら」と電話を切ったが、最初から最後までイライラしているような妻だった。200309c.jpg
(妻が好きな手賀沼を見渡せる高台)

雨は止んだが未だ暗い沼

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.3.8)
(アルツハイマー)

右に行こうか左に行こうか迷って立ち止まれば、雨は止んだが未だ暗い沼。200308.jpg

カッパの噴水に行きたいコサギ、噴水の周りはカワウたちが占拠。200308a.jpg

遊歩道を横切り田んぼに舞い降りたコガモたち。200308b.jpg



『ここは平和でも心の中の満足度はゼロ』 (2020.3.8)
昨日午後の電話、「今日も落ち着いています」とOさん、妻に代わって「もしもし、あなた? 私、泣きそう。今日は私の鏡台のある部屋にいたり、広い部屋に呼ばれたり、今は小さい部屋にひとりだけ。窓の外の駐車場には車がたくさん見える。あんたは高野山の家にいるの?」「そうだよ」「近いから歩いても行ける。あとで歩いて行く」「今はダメだよ」「分かってる。今、ここは平和でも心の中の満足度はゼロ。誰か来た。ちょっと待っていてね・・・えっ、置いてあった?ありがとう。これ何だったっけ、えーと・・・眼鏡、眼鏡のケースだ。トイレかどこかに置いて来ちゃったんだ。それで、あなたはどこにいるの?」「自宅」「遠いの?」「高野山だから近いよ」「どこだか分からない。どんな風景だった?」「市役所の先を遊歩道に曲がって水の館の前からAさんの家の前を通って坂を登ったところ」「風景が見えない。今行ったら迷っちゃう」「来るときは迎えに行ってやるから心配ないよ」「高野山の私の家なら分かる」「そこが私の家だよ」「私の家をとっちゃったの?」「我孫子に来て二人で建てた家じゃないの」「そうか、自宅って私の家のことだったのか。国際的に蔓延している病気はどうなった?」「コロナウイルスね、世界中に広がっている」「悔しい、今すぐに飛んで帰りたいのに。いつ治まるの?」「分からない」「直ぐ帰りたいよ」「今は感染しないよう外には出られない。八王子にいるAだって会社に行かず自分の家で仕事をしているよ」「手賀沼に行った?」「朝早く、マスクを掛けて遊歩道を歩いて写真を撮ってきた。人が来ると近寄らないようにしてるよ」「直ぐ帰りたい」「今はダメ、そこに泊まっている人は外へ出してもらえないよ。みんな同じだから我慢してね」「分かってるよ」「風邪を引かないようにね。一人だけでいると空想の世界に入っちゃうから、みんなといっしょに広い部屋にも行ってね」「だいじょうぶ。会議か何かでしょっちゅう呼びに来るから」「Oさんに代わって」と頼んで電話を代わる。「はいOです」「毎日同じように家に帰る道の話しばかりです」「みなさん同じですよ」「デイサービスを中止するところもあって大変ですね」「こちらはまだそこまで行っていませんが、細心の注意をしています」と聞いて電話を終わった。200308c.jpg
妻が空想の世界の中で家へ帰ってくる遊歩道

ぽつりぽつりの雨に早々に退散

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.3.7)
(アルツハイマー)

散歩中の友と歩いた遊歩道、話題はコロナウイルスのことばかり。ぽつりぽつりの雨に早々に退散。200307.jpg

常連のカワウ、来てみれば指定席のつもりがカルガモの先客。200307a.jpg

食事の邪魔をしないようそっと構えたカメラ、二枚目を撮ろうとしたらムクドリたちに気付かれた。200307b.jpg



『声を聞いたら泣けてきちゃった』 (2020.3.7)
グループホーム寿に電話した昨日午後、Oさんは「お元気ですよ」とだけ言って電話機を妻に渡しに行った。名古屋では南区と緑区でデイサービスが全面休業になるとのニュースがあったように、介護施設での感染が心配されるようになった。ここでも感染防止対策に忙しいことだろうと思った。
「はい。電話ありがとう。嬉しいよ」と言って泣き声になった妻。「元気な声を聞くと嬉しいよ。泣くのは好きじゃないから泣かないで」「声を聞いたら泣けてきちゃった。今どこにいるの?」「自宅にいる」「高野山? 直ぐ近くだから家を見に行ってきた」「空想だろう?」「行ってきたと思うよ。手賀沼を見て坂を登ったら家が見えた。玄関前でピンポンって鳴らしたたけど誰も出てこなかった」「空想だよ。ずっと家にいたけど誰も来なかった」「でも、行ってきたけどなぁ」「コロナウイルスが流行っていて、そちらも外出できないはずだよ」「Aさんから手紙が来た。えーっと眼鏡。眼鏡がない、あった。新型のコロナウイルスが蔓延していて国中が人と人の接触をしないようにしているから会いに行けなくなった。分からなくなるのは自然の摂理だから嘆かないようにって書いてある。Aさんの俳句も書いてある」「今朝も親水広場まで行って写真を撮ってきた。あんたと仲よしだった大きな犬、シベリアンハスキーのジャックに会ったよ。家の庭ではオカメザクラがきれいに咲いている」「見に行きたい」「今はダメだから、写真を手紙で送るよ」「コロナウイルスだからって、なんで見に行ってはいけないの?」「感染すると重い肺炎になるから」「分かるけどいやだ。戦争が終わったら行けるよね。戦争じゃないコロナウイルスか」「ダメなものはダメ。みんな我慢してるんだ。わがままはダメだよ」「だって、話せるのはあんたしかいないんだもの。明日はいい子になってるから電話してね。あんたも生き残ってね、死んだらいやだよ。一人になっちゃうから」と言って泣きながら電話を切った。200307c.jpg

沼を渡る風に波立つ水面はブルー

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.3.6)
(アルツハイマー)

地平線の空がオレンジ色に染まっても、沼を渡る風に波立つ水面はブルー。200306.jpg

お気に入りのカッパの頭目指して飛んできたセグロカモメ。200306a.jpg

帰ろうとしたら、やっと陽が差し込み始めた親水広場。200306b.jpg



『庭のオカメザクラがきれいだったよ』 (2020.3.6)
昨日午後、Oさんに妻の様子を聞いた。「落ち着いていて元気にしている。体操をしたし、ご飯も食べた」と言われてしばらくしたら、「電話だよ」「はいはい。ありがとう」と漏れてきた声。
「もしもし、私。昼休みが済んで、私の分担の片付けをして部屋に戻ってやれやれといったところ」と、想像していた以上に元気そうな声。「頭はどう? もう痛くない?」「痛くないよ。今日はみんなが動いていて、その中に入って動いていたから気分がいいよ。今日は外へ出たよ。裏口の方で、ぐるっと回ると広い道に出る方。何て言ったらいいのかな、言い方は分からないが、下へ行く道が見える方」「駐車場側のテラスのこと? いつも洗濯物を干してあるところ?」「そうかも。天気が悪いときは廊下に干すよ」「それでどうしたの?」「天気がいいから外に出たらいい気持ちだった。私の部屋は東側に窓があるから外を見ると駐車場がある。その先に行くと広い道に出て東邦病院がある。ノートの地図を見てるから間違いないよ。もっと行くと市役所の方」「そうだね。地図の話しは今度会ったときのお楽しみにしようね」「私が考えていた道は、ノートの地図と同じだから、一人で歩いてもだいじょうぶ家に帰られるよ。天気がいいときに外へ出たら家に行くからね」「今はダメだよ」「どうして?」「コロナウイルスに罹ると高齢者は肺炎になっちゃうから」「そうだよなぁ。あんたも罹らないように気をつけてね」「今朝早くマスクをして、遊歩道を歩いてカッパの前まで写真を撮りに行ってきた。誰かが来ると近寄らないように注意して歩いたよ。でも人の集まるところには行かないよ。今朝は庭のオカメザクラがきれいだったよ」「天気がいいから外に出て歩いて家に帰ろうかな」「今はダメだよ」「そうだったね。頭の中で考えたことを言おうとすると、ごちゃごちゃになって分からなくなっちゃう」「地図の話しはまたの時に話そうね」「あんたはいま病気じゃないのね? この前、何処か悪いと言ったような気がする」「だいじょうぶだよ」「よかった。安心した。私たちは二人だけだものね」「他の人も電話を使うからもう切ろうね」「明日も電話してね。電話機、返してくる」と、また家に帰る道にこだわっていた妻。200306c.jpg

雲間からの淡い光に色鮮やかになったカッパ

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.3.5)
(アルツハイマー)

雲間からの淡い光に色鮮やかになったカッパ。アルツハイマーの妻が散歩する空想の時空、高々と噴水を上げていたかつての姿らしい。200305.jpg

遊歩道を歩けばホオジロの声、小枝の隙間を探して見上げれば天を仰ぎ鳴く姿。200305a.jpg

潜ったカイツブリの波紋を追って待てば、獲物を咥えて浮上したカイツブリ。二度三度咥え直してパッと丸呑み。200305b.jpg



『手賀沼を見て遊歩道を歩きたいよ』 (2020.3.5)
昨日午後、グループホーム寿のOさんから電話、「元気にしています。午前中は体操をやり、ご飯もおいしいと言って食べ、今は部屋でラジオを聞いているようです」と妻の様子を知らせてくれた。電話機を渡しに妻の部屋へ歩く気配、「あれ、眠ってる。お父さんから電話よ」、今度は「もしもし」と妻の声。「今日は参っちゃってる。眠ってしまったよ。昨日から頭がバカになっちゃった。今はどんな天気?」「雨が降ってる」「こっちは朝から雨が降っている。昨日夜から頭が痛くなった」「具合はどう?」「今は頭も冷たくなって痛くない。あんた今どこにいるの?」「家にいる」「どこの?」「我孫子の高野山だよ」「ここはどこ?」「我孫子市寿にあるグループホーム寿」「いまやっとどこにいるか分かった。ちょっとバカになってたのが治ってきたみたい」と、眠りから覚めて、訳がわからなくなっていたらしい妻。
「あんたはどこにいるの」「高野山の自宅」「それ、どこにあるの?」「そこから市役所の前を曲がって、水の館の前を通って坂を登ったところ」「私はずっとそこへ行くことを考えていた。ああ、帰りたい。ここから直ぐ近くだよね」「今はダメだよ。みんな家にいて外に出られないの」「どうして?」「中国から来たコロナウイルスが流行っていて、罹ると高齢者は肺炎になって危険なんだ。そこのホームにウイルスが入り込まないように面会を中止しているし、散歩などで外出することもできないんだ」「コロナウイルスってテレビで言っていた。しばらくはここで足止めってことか?」「そう」「コロナウイルスのせいなのか、いずれ治まる?」「その内に治まる」「いつ?」「それは分からない」「外に出たい」「今は出られない。泣かずに待っててね」「泣かないけど悔しいよ。帰りたいよ。手賀沼を見て遊歩道を歩きたいよ」「みんな同じように大変な時だから、一人だけわがままを言ってはダメだよ」「いやだけど分かった」「また明日電話するから電話を切って」「どうやって切るの?」「スタッフの人に終わりましたと言って返してきて」「じゃぁ事務所に行くよ」
前日とは一転して混乱気味の妻。やはり天気や気圧の変化があったからか、去年の今頃も天気が変わったとき同じようだった。そんなときは水分を取らなくなり、脱水気味になったことを思い出した。水を飲んでいるかが気になる。200305c.jpg



雨は止んでいたが今にも降りそうな空

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.3.4)
(アルツハイマー)

雨は止んでいたが今にも降りそうな空。200304.jpg

鳥のいない朝、岸辺に近寄ると驚いたように泳ぎ出てきたカイツブリ。レンズを向けたら飛び立って逃げた。200304a.jpg

コガモとカルガモしかいない岸近く、撮ろうとしたら羽ばたいてくれたコガモ。200304b.jpg



『物わかりのいいモードに戻っていた妻』 (2020.3.4)
昨日午後、グループホーム寿のSさんから電話、「奥様はお元気です。今日は泣いていませんでした。午前中は風呂に入ってさっぱりしました。自分でできることは自分でやってスタッフは見守っていました。今日はおひな様、ちらし寿司や天ぷらのお祝いの食事を楽しみました」と今日の様子を聞いた。
「だんな様から電話ですよ。元気な様子を話しておきました」「終わったらどこに返したらいい?」「ここで待っています」と電話機を渡しているような会話が聞こえ、妻の声で「もしもし、暫くぶりね」「昨日も電話したよ」「そうだった? 毎日隣にいるような気がしてたけど、考えてみるとずっと会っていないな。待っていてもなかなか来てくれないじゃない」「コロナウイルスの感染が怖くてずっと家の中にいるよ。そっちも面会中止になっているから会いに行けないよ」「天気がよくなったからここから出て散歩しながらそっちの様子を見に行こうと思ったけどダメだったか。いつになったら行けるかなぁ」「分からないけど、早くコロナウイルス流行が終わるといいね」「近くに散歩に出るのもダメかな。外出できるようになったら歩いて行きたい。300mくらいかな」「それよりは遠い。356を通って行くと1250m、市役所の方から手賀沼沿いだと2000mくらいかな」「けっこう遠いんだ」「家の庭のオカメザクラ、きれいに咲いてるよ。ハクレンの木にもいっぱい蕾があって三つくらいが膨らんで咲きそうになっているよ」「見たいけど行けないから今年は見られないね」「Sさんが待ってるでしょう。電話を代わって」と言ってSさんに代わる。お礼を言って、昨年同時期も天気が急変したり気圧の変化が大きいとき混乱することがあって、去年はふる里の道を歩くことばかり言って、空想の世界に入り込んでいた。そんな時は水分を取らなくなり脱水気味になったことがあり、今回も脱水気味だったかもしれないと伝えた。電話の声も元気になっていて、歩いて家に帰ることにもさほどこだわらず、物わかりのいいモードに戻っていた妻。200304c.jpg

赤紫に染まった空にケヤキの木はシルエット

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.3.3)
(アルツハイマー)

霧が出始めたころの水生植物園跡、赤紫に染まった空にケヤキの木はシルエット。200303.jpg

遊歩道を歩けば何かを啄むアオジ、一歩近寄って撮り、また一歩近寄って撮る。200303a.jpg

朝の散歩の帰り道、遊歩道脇の木から木へ、行く先行く先に飛び移って誘うモズ。200303b.jpg



『明日は迎えに来てね』 (2020.3.3)
昨日午後もOさんから電話、「昨夜はよく眠れた。朝はスタッフがお手伝いして着替え、食事もよく食べた。午後には皆さんとばば抜きのゲームをして、端は曲者だと言いながらゲームを楽しんでいた」と聞いてから、妻に代わってくれた。
「事務所に来たら皆さんが親切にしてくれてうれし涙が出るほど。居心地よく一日を過ごしている」「楽しく過ごせてよかったね」「でも、なんで私がこうなっているのか分からない。ここの人は過去のことは分からないから聞けないし、知らないうちにこうなっていて、過去のことが分からなくても自分ひとりで消化することにしたら気持ちは明るくなった」「過去のことが分からなくなったのは、忘れる病気になったから。めまいの薬をもらって頭がガンガンしたり、吐き気や目眩は治ったね。今はこうなんだと思って、余り深くは考えないで一日一日を楽しもうね」「今は市役所の先を曲がって手賀沼沿いに水の館の前を通って家に行く道のことばかり、繰り返し考えている。家に帰ってあんたの様子を見たり過去のことを聞きたい。自宅が近いのは自慢だが苦痛だ」「今は面会に行けないが、行けるようになったら過去のことを話してあげる」「そう聞いて嬉しくて泣けてくる」と涙声。「コロナウイルスの流行が治まって外出できるようになったら、A(長女)にも来てもらって一緒に歩こうね」「コロナウイルスはテレビで見た。そんなにひどいの?」「学校は休校、大相撲もプロ野球も観客なしで試合、会社も従業員は自宅で仕事。あんたはそこにいたらスタッフの方々が見守っていてくれるし、訪問診療でお医者さんも来て診てくれる。そこにいれば安全だから心配しないでね」「あなたは一人で住んでるの。お医者さんはどうするの?」「順天堂の先生が依田内科に手紙を出してくれて依田内科で診察してもらう。あんたとは電話では話せるから、面会が再開するまで我慢していてね」と話して電話を切った。
夕方、突然妻から電話、「私です。とりあえず今夜はここに泊まるのでお知らせします。明日は迎えに来てね」と、前に電話で話したことはもう忘れていた。「ごめんね、今はそこに行けないの。高齢でコロナウイルスに感染すると肺炎になりやすいし、私は心臓に人工弁が入っていてリスクも大きいからできるだけ外出を控えて家いるし、そちらも面会を中止している。そこにいればスタッフの皆さんが見守ってお世話してくれるし、訪問診療でお医者さんも来てくれる。そこは安全だから、スタッフの皆さんの言うことをきいて待っててね」「そんなに大変なの?」「日本中、世界中が大騒動、オリンピックだって中止になるかもしれないほどだよ。明日また電話で話そうね」「知らなかった。あんたも気をつけてね」と言ってOさんに代わった。「今は何もわからなくなっている時間だから、心配しなくてもだいじょうぶよ」と言ってくれた。何も分からなくなって、皆さんを煩わせている様だ。200303c.jpg

しばらく眺めた小雨降る沼

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.3.2)
(アルツハイマー)

傘を差し桃山公園の高台に立って、しばらく眺めた小雨降る沼。200302.jpg

埋立地の杭近く、じっと動かないカイツブリ。200302a.jpg

岸に近寄ったらバンが飛び立ち、泳ぎ出てきたコガモとカルガモ。200302b.jpg



『水を忘れずちゃんと飲んでね』 (2020.3.2)
昨日午後、グループホームのSさんから電話があった。「お変わりなく元気にしています。泣かなかったし、だいじょうぶです。ご飯も全部召し上がりました」とのメッセージのあと、「もしもし、誰でしょう」と妻の声。「もしもし」と言うと「あっ、身近な人」「そう、夫だよ」「だんな様でした」とちょっとふざけ気味。
「どうして電話してきたの?」「あんたが元気にしているか聞いていたの。そのあとあんたに代わってもらった」「闇取引か、なんか調べてたな」「違うよ。あんたが元気かどうか教えてもらい、そのあとあんたと話そうとしていたんだ」「そうだったのか。電話くれてありがとうね。いま、こっちではみんなが体操する部屋に呼ばれて、何かお話があるみたいだけど行って見ないとなんだかは分からない」と、呼ばれていることが気になっている様子。「ご飯ちゃんと食べてる?」「食べたよ」「泣かなかった?」「泣かなかった」と答えたあと、「どうして来ないで電話掛けてきたの?」「コロナウイルスが流行っていてできるだけ外出しないで家の中にいる。そちらのホームでも外からウイルスを持ち込まないように面会を中止している。面会に行けないから電話したの」「みんなと一緒に呼ばれたのもそういう話があるのかな。大事な話だったら今夜7時過ぎに電話するけどどこにいる。電話掛けるときはどこへ掛けたらいい? 家なの? 岩滑(妻実家)なの?」「自宅にいるけど、あんたは携帯電話を持っていないよ」「あぁ、そうだ。でも頼むからいいよ」「そこにいれば食事も洗濯も掃除も、体操だって、健康管理もみんな職員さんがお世話してくれるから心配しなくてもいいよ。もし大事な話があったら明日電話で話すときに教えてね」「分かった。ここにいたら安心していられるのね」「一昨日庭のオカメザクラが一輪咲いて、昨日はいっぱい咲いてた」「オカメザクラを見に行きたいな。でも今年はダメね」「去年はあんたが雨戸を開けたときに見て私に教えてくれたけど、今年は私が見て教えてあげるよ」と言って、ふと長女が書いた『水を飲もうね』の張り紙が目にとまった。「水を忘れずちゃんと飲んでね」と言うと、「ちゃんと飲むよ。係の人の指示をよく聞いて、ここにいるから心配しないでね」「また明日ね」「電話くれてありがとう」と言ってSさんに代わった。
電話しているときは状況を理解できているが、時間が経てば忘れてしまいそう。泣いたりパニックになったら魔法の水(リンゴ黒酢で味付けした水)を飲ませるようにSさんにお願いした。一口飲むと「おいしい」言って泣いていたのを忘れる魔法の水だから。200302c.jpg

今朝から撮影のスタート点を市民農園跡に変更

撮影ノート『手賀沼有情』 (2020.3.1)
(アルツハイマー)

月が変わったから、今朝から撮影のスタート点を市民農園跡に変更、当分は足慣らしに岡発戸新田の釣堀の先で折り返し。200301.jpg

背中だけを見せて動かないアオジらしき一羽、「ちょっと向きを変えてよ」と念じたらチラリとこっちを向いて飛び去った。200301a.jpg

「陽が当たってきれいよ」と散歩のおばさん、手招きして上を指さす。そっと近寄って見上げたら小枝の隙間に朝日を浴びたモズ。200301b.jpg



『そんな話聞いていなかった』 (2020.3.1)
昨日午後、グループホームのOさんが知らせてくれた妻の様子、「午前中は元気だった。入浴をして出てきたらみんなが体操をしていて、私体操大好き人間といって参加しました。食事は完食、食後に皆さんはゲームを楽しんでいたので誘っら、ゲームはしたくないと言って部屋にこもってしまった。午後からは落ち込み気味です」と。
「いま呼んできます」とOさん、「いいですか、あそこに座るわ」と妻の声。「もしもし、私です。待っていたのにどうして来てくれなかったの?今度会ったときにはバカ、バカ、バカ、と言ってうんと文句を言ってやろうと思ってた」と不機嫌そうな声で一気に言った。「いまコロナウイルスが世界中に流行っていて、日本でも安倍首相が集会やイベントを中止してと呼びかけ、翌日には全国の小学校、中学校、高校、などを春休みまで休校にするように要請して、働いているお母さんは困っちゃっているよ。看護師さんが出勤できなくなって診療できない病院も出てるほどだよ」「休校にしたらお母さんたちが大変だって知らない男が多いのかな。安倍さんもバカだね。あんたも来なくてもいい言い訳ができたのでしょ」とご機嫌斜め。「高齢者が感染すると重症の肺炎になるリスクがあるから、私もできるだけ外出しないで家に閉じこもっている。そちらのホームだって、外から来た人がウイルスを持ち込むのが怖いから面会はさせないようになった。だから会いに行けないので、電話であんたと話しをさせてもらってる」「そうか、そうだったのか。そんな話聞いていなかった」「テレビでもいっぱい報道してるよ」「それじゃぁニュースを見るよ。知らなかったから文句を言おうと思ったが、もう文句は言えないね」「ゲームはしないの?」「ゲームはいや。ご飯の後みんなとお話はするけど、部屋に戻るとひとりで淋しいから、なんで来てくれないと泣きそうになっていた」「困ったりつらいのはあんただけじゃない。高齢者が自宅にいる家庭では、家族が感染して高齢者に感染させることが心配だし、休校で子どもが家にいるお母さんは働きに行けなくなって困っているし、そこであんたたちの面倒を見てくれている職員さんたちだっていろいろ困っていると思うよ。それでもあんたたちを守ってお世話してくれてる。そこが一番安全だから、安心して過ごしてね」「分かった」「明日も電話で話そうね」「あんたも気をつけてね」と電話中は物わかりがいいが、直ぐ忘れて怒ったり泣いたりしないか気掛かりだ。
電話を終わって、オカメザクラを覗いた。たくさん花が開いていた。去年までは妻が雨戸を開けオカメザクラが咲き始めたこと、満開になったことなどを私に話しに来ていたことを思い出した。200301c.jpg